「……と、こんな所かな?」
「ごめんユーノ君。まだちょっと分かりにくいかも……」
時空管理局を名乗った少年と出会ったその日の夜。
入浴を済ませた姉妹は部屋に戻ると早速ユーノからその組織について話を聞いていた。
もっとも、仲良くベッドに並んで座ってはいるが、なのはは真面目に話を聞き、ルティシアはガンビットを弄りながらではあるが。
「そうだね……えっと」
「学校で例えるなら1クラスを1つの次元世界とします。クラス内でトラブルが起きていないか……ケンカやイジメが有ったら仲裁したり、隣のクラスのルールを持ち込ませない様にしたり。学校の物を盗もうとした人を捕まえたり、ですね」
ガンビットで簡易的な画像を出しながら、ルティシアが補足を入れてみる。口では分かりにくくても、画像があれば分かりやすかったのか一応理解はしたようだ。
「ボク達の世界ではかなり大きな組織だから、協力出来るならそれがいいと思う……けど」
「フェイトちゃんが助けたい人によっては……」
「戦いになる可能性はありますね。警察と裁判所が一緒になっている組織でしょうし、面倒な事になるかもしれませんが」
ユーノの声が尻すぼみになるのを察して、不安そうにルティシアを見るなのは。
そのルティシアはいつも通り淡々と考えを述べる。
「ただ、ここにいる限りは彼らに権限は無いとは思いますが。このデータを見る限りでは、ここは管理外世界と呼ばれている様ですし、この世界で法律上の相互関係はありません。……あくまでも、この世界とはですが」
「管理外?」
「簡単に言えば、魔法がある世界か否か、ですね。ロストロギア……発達し過ぎて壊れた世界の危険な遺産をどうにかしよう、という事がそもそもの目的ですから」
「管理局設立の話を良く知っているね」
管理局と関係が無いらしい世界にいたルティシアが知っている事に驚くユーノに対して、ルティシアが返した内容は。
「彼らが使っていたらしい探査機からデータを貰っています」
「「え?」」
淡々と返ってきた予想外な内容に二人は目が点になり、視線はルティシアの手元のガンビットへ。
「まさか……、ルティちゃんごみ掃除って……」
「細工はしましたが、壊してはいません。きちんと戻しました」
「それ犯罪じゃ……」
「ロストロギアや危険物の管理、犯罪者の捜索に捕縛という理念や行動自体は私も気になりませんが、四六時中この辺り……ユーノが来る前からなの姉さんの周りで良く見かけた事は、看過出来ず細工していました」
「ふぇ!? 私見られてたの?」
悪い事は駄目と言おうとしたのに、また予想外な答えが返ってくる。
「私が来る前のものはどうにも出来ませんが、来た後の……特に非常識なタイミングで来ていたものは、画像に姉さん達が映らない様にしました」
「え? え?」
「今更ですが、魔力が高い者を確認していたのかもしれませんね。ユーノやクロノさんを見る限り、子供でも普通に現場で働く事が当たり前の世界の様ですし」
「確かに、ミッドの就業年齢はここより低いかな」
パニックななのはを片手であやしながらのルティシアに、ユーノは同意を示す。事実、発掘したのはスクライア族で、その発掘現場で指揮をとっていたのが彼なのだから。
「とりあえず、クロノさんとその仲間らしいメンバーには特に問題は無さそうです。フェイトの恩人らしい方が管理世界の人で、問題行動をしていなければ争いにはならないと思います」
「……そっか」
先程の件はあるものの、妹の判断は聞くようだ。
「なのははどうしたい?」
ユーノの問いに。
「私はフェイトちゃんを助けたい。信じてるから、管理局の人とも協力出来るならしたいかな」
ガンビットが映像を投影する。
クロノと、それを圧倒する少女。笑いながら、力を振るうその姿を。
「この子を止めたいという、クロノ君の気持ちも分かるから」
見る限りクロノはかなり強い。魔力そのものではなく、戦い方が。訓練された力の使い方を知っている強さ。ただ、相手が強すぎただけ。
戦術を力で破る。そしてその表情からして、力を使う事に躊躇いは……無い。彼女の言うゲームの邪魔をすれば容赦なくその力を使うだろう。
「この子を止める為にも……!」
翌日。姉妹が学校の授業を終えて、公園に集まった6人。
「早速だけど、答えを聞かせてほしい。可能ならすぐにでも行動に移りたいから」
包帯姿で切り出したクロノに、なのはとフェイトは顔を見合わせた。
やがて、頷き合うとクロノに向かい――。
「私はクロノ君達に協力しても良いかなと思っています」
「わたしも、協力します」
協力を申し出た。
「ありがとう。本来なら、民間人をロストロギアの件に巻き込みたくは無いが、君達は知らない内に何かに巻き込まれているらしい。管理局としても、可能な限り助けたいと思っている」
それと……と、ついていた杖を脇に挟むと、ポケットから青い石を取り出す。
「それ!?」
「ジュエルシード。どこで?」
取り出した石を見て騒ぐ面々に、クロノは公園内の森を指す。
「昨日のあの後だ。あそこの木の根元で、近くにいた鳥によって起動したが、どうにか鎮めた」
クロノはそれをフェイトに手渡し、フェイトは受け取ったジュエルシードとクロノを交互に見ていたが……やがてバルディッシュに納めた。
「ロストロギアは管理局がしかるべき場所に保管するモノなのだが……。君が、君が渡す人が誤った使い方をしないことを願うばかりだ」
管理局に誇りを持っているクロノとすれば、渡す事はあり得ない事なのだが……。ただ、こちらは渡す際についていき捕まえる事が出来るが、あちらの行動が全く読めない為に断腸の思いで手渡した。
全ては犯罪を防ぎ、あの少女の真意を問い質す為に。
『話は済んだみたいね』
6人のすぐ近くの空中にディスプレイが現れ、そこにはエメラルドグリーン色の髪をした女性が映っている。
「艦長」
『初めまして皆さん。時空管理局のリンディ・ハラオウンよ』
「……ハラオウン?」
笑顔の女性と仏頂面の少年を見つめるなのは。
『クロノは私の息子なの。仲良くしてあげてね~』
「かあ……艦長!」
『じゃあ、クロノ執務官。皆さんと打ち合わせをするから、アースラに案内してあげて』
「……分かりました」
クロノの抗議もどこ吹く風とばかりに聞き流し、伝える事を伝えるとディスプレイが消える。
「今から僕達の船に転移する。もちろん、変な事はしない」
※ ※ ※
案内された場所は、SFみたいな船の中には違和感がある和室だった。
シシオド
四季の植物や鹿威し(竹で出来ているカコーンと音がするもの)等が備えられている。
部屋に居るのは6人とこの船……アースラの艦長リンディ。それとお茶とお茶菓子を出してくれたエイミィと名乗った少女だった。
正座は苦手なんだよ……というアルフ以外は、出された座布団の上で正座している。
「昨日クロノが集めたデータによると、このロストロギア――ジュエルシードはAクラスの危険度を持っているわ。本当に危険な代物よ。クロノも言った通り、本来なら私達管理局が全権を持って回収し、しかるべき場所に保管するのだけれど……。それ以上かもしれない危険物、いえ危険人物を抑える事も大事だから……」
「はい、クロノ君からも聞きました。気を付けますので、宜しくお願いしますリンディ艦長」
なのはが頭を下げると、ユーノも頭を下げながら口を開く。
「この件が終われば、ボクはジュエルシードを管理局に預けようと思っています」
「そうしてくれると助かるわ。フェイト……さんだったかしら?」
ユーノに微笑んでから、真面目な顔になるとフェイトの方に。
「はい」
「あなたの方の用事が終われば、ジュエルシードを私達に任せてくれるように頼んでほしいの」
リンディがエイミィに視線を向けると、頷いたエイミィが何かを操作。
空中にジュエルシードを写したディスプレイが現れる。
「これは次元震と呼ばれる次元災害を引き起こす事が分かったの。これを複数個持つという事は危険極まりない事なの」
驚きに眼を見開くが、すぐに伏せられる。
「すみません……。それでも、私はあの人を……」
「余程の事情なのね……。もし、何かあれば遠慮なく頼ってね? 組織としても、個人としても」
「はい」
母プレシアの管理局嫌いを考えると協力は出来そうに無いが……。あり得ないとは思うが、もし危険な事を知らないでいるのなら……。
「という事で……ジュエルシードの探索エリアのデータ提供をするから、ある程度の指揮だけ聞いてちょうだい。……ああ、アルフさんそんなに怖い顔はしないで? 危険物だから、状況確認と状態に応じた対処の指示だけだから。暴走しているものに魔力をぶつけるのは、そちらも危険でしょう?」
「そういう事なら……仕方ないね……」
こんこんと言って聞かせる感じのリンディに、苦虫を噛み潰した表情で答えるアルフ。
「では早速一ヶ所目で~す」
話は終わりと判断したエイミィがディスプレイの映像を切り替えた。
「え、分かってるの?」
「こちらの技術力はかなり高いのですね」
4人に加え、ルティシアも驚いていた。
「ふふ~ん、凄いでしょう~? 技術部の子が、ジュエルシードを見るなり作り上げたんだよ!」
「作ったのは彼女であって、お前じゃないだろう……」
どや顔のエイミィにツッコミを入れるクロノ。
「まあ、いいからいいから。とにかく、場所は判明しているから行けるなら今すぐでも大丈夫だよ」
それを聞いて立ち上がる4人……も、フェイトとユーノは立ち上がれず足を抑えている。
……痺れたらしい。
フェイトをアルフが抱え、フェレットに変身させたユーノはなのはの肩にくの字に置かれる。
エイミィに連れられ部屋の外に――。
「ごめんなさい、みんなは先に言ってください。私は用事を先に終わらせますので」
まだ座ったままのルティシアがリンディの方に顔を向けた。
「ルティちゃん……」
「大丈夫です。それに一緒に戦う為にも、先に伝えておかなくては」
不安そうななのはに頷いて見せる。
部屋に残ったのはルティシアとリンディ、クロノだった。
「それで話って?」
「実は……」
※※※
「異世界からホームステイ……ねぇ~……」
「にわかには信じられない話だ」
「では〈エリクス(神聖治療魔法)〉」
クロノの身を白く淡い光が包む。
「これは……」
痛みが消え、包帯を外すと傷跡なども消えていた。
「もし出血をしていた場合、流れた血までは戻りませんので」
「あなた、管理局で働かない?」
「申し訳ありませんが、使用回数もありますので遠慮しておきます」
「残念ね……」
ルティシアは心底残念そうな二人に、聞きたかった事を聞く。
「あなた方の世界で、魔族と呼ばれる怪しい存在は確認されていますか? 他の名前かもしれませんが……」
ルティシアの問いかけに二人が動きを止めた。
「どこかで見た気が……クロノ?」
「はい、少しお待ちを」
リンディがはて? と口元に手を当て、クロノがデータを調べ始めた。
やがて……。
「ありました。と言っても、三十数年前のデータですね」
「内容は?」
「当時の管理局員に化けていたり、違法行為に携わっていた職員と共に居た異形の生物。これを取り締まろうとした局員と、異形の生物を魔族と呼んだ民間協力者が討伐しています。……ん、このデータはシークレットだったようです。一般職員では見れないように」
「変ね……シークレットを入れるなんて」
首を傾げている二人にルティシアの表情は真剣そのものである。
「民間協力者の名前は分かりますか?」
「ああ。えっと……」
ここで聞くとは思わなかった名前に――。
「アリシア・セイティグ」
ルティシアは一瞬理解が追い付かなかった……。
next
少しずつ明かされていく闇
青き石を集める度に闇は深まる
????「選択肢は貴方方にあります」
(注)
撮影云々の所ですが、strikers の管理局の紹介映像か何かで、なのはのレイジングハートを受け取る前の頃が映っていた様なややあやふやな記憶からです。いつから撮ってたんだ、と思った記憶はあるのですが……。
間違っていたら即修整させていただきます。