魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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その33 「選択肢は貴方方にあります」

「ごめんなさい。もう1度お願いします」

 

 

「アリシア・セイティグ。民間協力者として度々管理局と共に行動していたようだ。管理局というよりは、特定の個人かな」

 

 

 特に気を悪くした様子も無く補足と共にもう1度話すクロノ。

 

 

 治療され、不要となった包帯等を外しながら目でデータを追っている。

 

 

「(アリシア姉様がこの世界……いえ、ミッドチルダに……?)」

 

 

「ルティシアさん? もしかして、この方……」

 

 

 先程からのルティシアの様子に何かを感じたのか、リンディが声をかける。

 

 

 名前を出した瞬間、濃紺色の髪を結ったポニーテールが揺れるほど反応し、濃紺色の瞳は見開かれたのだ。

 

 

 先程までの淡々とした感じや雰囲気から一転したその変化に、リンディが気付かない筈が無かった。

 

 

「身内……です」

 

 

「そう……」

 

 

「彼女の最後の記載があるのは32年前で、それ以降は一切ありません。君の身内ならそちらに戻っているのかな?」

 

 

「(ちょっと行ってきますね)」

 

 

「(行ってくる)」

 

 

「(行ってくるね)」

 

 

 クロノに話を振られ、ルティシアの脳裏をよぎったのはあの日の三人の姉の姿と声。

 

 

「……仲間と共に戦場に出向いたまま、戻ってきていません……」

 

 

「……そうか。すまない」

 

 

 その、やや沈んだ声で何かを察したのかクロノが謝る。

 

 

「大丈夫です。強い人ですし、共に行った仲間も皆頼りになる人達ばかりですから」

 

 

「そうか、早く戻るといいな」

 

 

 戻ると信じている少女に合わせる様に、クロノも同意を示した。

 

 

 二人のやりとりを、お茶を飲みながら聞いていたリンディは、会話が一段落するのを待ってルティシアに話しかける。

 

 

「ルティシアさん。あなたが第97管理外世界――地球に来たのは勉強の為だけですか? これは、答えたくなかったら答えなくても良いけど」

 

 

 ルティシアは暫し考える。

 

 

「あ、勿論それで捕まえたりはしないからね? あの子達の自然な表情や態度で、あなたが悪い目的で来たわけじゃない事は分かったから」

 

 

「友達関係にはややトラブルはありそうだが」

 

 

 付け足すリンディとクロノ。

 

 

「後者は何故かあの様になるだけで、私だけが悪い訳では……」

 

 

 ただ、護りたいから危険な存在には近寄らせたくないだけ。

 

 

 しかし、結果的にはなのはやフェイト達に助けられる事が多いのも事実。その矛盾に自らの情けなさを感じ、最近は深夜に一人鍛練を続ける。

 

 

 いつの間にか消えていた、転移事故の後からの頭痛。ならば、衰えた身体能力も戻るかもしれないと、ひたすらに。

 

 

 元の身長に戻ってしまうと、魔法で子供の姿に変わる必要は出てくるが――。

 

 

 勿論、フェイトにばれたことやフェイトがなのはに言う機会を窺っている事等知る由も無い。

 

 

 システムに伝える積りが全く無いから当然である。

 

 

 ――閑話休題――

 

 

「……そうですね。私は勉強と共に、あの地で時々確認される魔力反応の調査です」

 

 

「魔力反応?」

 

 

 クロノは眉をひそめて聞き返す。

 

 

「私がお世話になり始めた時には既にあの地にサーチャーが来ていました。最初は地球の技術なのかと思いましたが……」

 

 

「そんなことは無かった……わよね~」

 

 

 ルティシアの言葉の続きをリンディが継ぎ、それにルティシアも頷く。

 

 

「……それから暫くして、魔族と妖魔……魔族の下位種族と思ってください、と戦いサーチャーが彼らの物かと思っていました」

 

 

「そう思っても仕方の無い状況よね、それでは。」

 

 

「そもそも、魔族とは何だ?」

 

 

 管理局の事を知らないんじゃ、と呟くリンディがお茶に砂糖を入れているのを横目に見ながらクロノが問いかける。

 

 

「自らの欲を満たすために、他者の欲や負の感情を利用する存在。支配欲が特に強い彼らは、自らの力を高める事に余念がありません。負の感情を糧とするが故に、他者に甘言を使い成功の直前に絶望に突き落とすモノ、ひたすらに殺戮を行うモノ、ターゲットが才能有る者の場合は、長い時間をかけてその力を奪ったり、より自らの力を高める為にとり憑いたりします」

 

 

「「ろくなものじゃないな(わね)」」

 

 

 説明を聞いての二人の反応は見事に重なった。

 

 

「ミッドに居たのもそういう奴等か」

 

 

「アリシアさんが帰還した理由を、ミッドに潜んでいたのを討伐仕終えたからって判断しても良いけど、また潜り込んでいる可能性もあるわね」

 

 

 腕を組んで考えるクロノと、頬っぺたに指を当てて考えるリンディ。

 

 

「ちなみに魔族が居た場合、あなたはどうするのかしら? 管理局に協力してくれる?」

 

 

「ね……アリシアがどの様な経緯で共に活動していたのかは分かりませんが、どちらかと言えば個人的な活動だと思います。特定の個人とありましたが、そこには何か理由が有ったと思うのです」

 

 ルティシアは考える二人をジッと見つめる。

 

 

「例えば……」

 

 

「――管理局に表立って協力出来ない何かがあったとかよね」

 

 

「かあさ……艦長! 管理局にそんな……」

 

 

「だって、内部に居たんでしょう?」

 

 

「………ッ!」

 

 

 リンディにあげた抗議は、返された一言で中断する。

 

 

 先程、自分で読み上げた内容を思い出して。

 

 

「特定の個人というのは 、魔族の現場にたまたま居合わせ存在を知った人か、信頼出来る知人といった所かしら」

 

 

「私も魔族と戦う事は異論はありませんが、それはこの地の安全を確保してからです」

 

 

「……それはミッドチルダを放っておくということか?」

 

 

 ルティシアを見るクロノの目が細められる。

 

 

「クロノ……」

 

 

「ミッドチルダには戦える人が少なくとも居ますが、この地には居ないのです。並の妖魔ならお世話になっている方々でも倒せますが……。明らかにおかしな強さですし。……しかし、空中からの広範囲攻撃は無理と思います」

 

 

 いさめるようなリンディと、客観的な理由を述べる。

 

 

「それに、ここはミッドチルダにとって管理外の筈です。何かの時に間に合わないどころか、来ない可能性もあります」

 

 

「…………」

 

 

「私にしても全てを防げる訳ではありませんが、それだからこそここで少しでも力になりたいのです。誰かのための爪牙になるために」

 

 

 宿敵である邪竜族は、他の世界に出るような話を聞かない為そちらは考えなくても良さそうだが、アウナスやアラケス、フォルネウス等上級以上の魔族には一人では苦戦は必至だろう。

 

 

「例え、自分はどんなに傷付いても?」

 

 

 そう言うクロノに頷くルティシア。

 

 

「それだな」

 

 

「それね」

 

 

「何の話でしょうか?」

 

 それぞれの姿勢を崩さないままに頷く二人に、問いかけるルティシア。

 

 

「ルティシアさん。あなたが今後も戦い続けるなら、一人で戦い続ける事は難しいわ。例えどんなに強くても……ね。一人で全部を救う、気持ちは立派だけど。ここがあなたの国なら、周りの人も戦い馴れているでしょうけど、ここにいるあなたの仲間はゼロ」

 

 

 

 問いには答えず、しかし表情を厳しくしたリンディの話に続いて、クロノもまた真面目な表情で口を開く。

 

 

「誰かを頼って戦う事は恥では無い筈だ。仲間と協力して、より良い結果を求めても良いんじゃないか?……って艦長? 何してるんですか?」

 

 

 ハンカチで目頭を押さえているリンディを訝しげに見るクロノ。

 

 

「あの……普段から人に頼らない子がこんな事を……後でエイミィと会話記録聞き直さないと」

 

 

「艦長――!? 僕だって普通に頼っています!」

 

 

 そこでジッと見ているルティシアの視線に気付いて、咳払いと共に明後日の方向に向くクロノ。

 

「ミッドの……管理局内の事もあるから今すぐどうこうというわけではないけど、そちらでの学校が落ち着いたら、1度ミッドに変なのがいないか見てもらいたいわね。こちらで調べても、誰が信頼出来るかを見定めながらになるけど……」

 

 

「それが狙いでしょうね。疑心暗鬼を誘い、争いになるように。つくづく面倒な連中だ」

 

 

「魔族の得意分野ですね」

 

 

 お茶を注ぎながらのリンディとそっぽを向いたままのクロノを交互に見つめ、正座をしたまま眼を閉じ――何かを呟くと再び眼を開ける。

 

 

「私は、こちらでの学習及び調査を重視しています。ジュエルシードに関連して魔族が現れているため、この件には最後まで関わりますが。ミッドチルダ……時空管理局については、積極的な接触は今は控えたいという所が本音です。アリシアがそうしていたのも何か理由があってのことでしょうし。……ただし」

 

 

「ある程度信頼が出来る個人的な協力なら行う、でいいのかしら?」

 

 

「はい。少なくとも、リンディさんとクロノさんとは」

 

 

「クロノで良い。それにしても、短時間でそんな判断していいのか?」

 

 

 もっと考える時間とか要るだろう? と言うクロノに対し、大丈夫ですと答えるルティシア。

 

 

「失礼でしたが、感知魔法を使わせてもらいました。お二人は魔族等の類いではなく、話の内容も私には不利益はありません。そちらにもし魔族等が居るのなら、見過ごせません」

 

 

「そんなにはっきり分かる魔法なのか?」

 

 

「マナ……いえ、魂の色は魔族は違いますから。ただ、今使った魔法は個人対象のもののため、多人数には向きません。多人数用のものもありますが、大雑把な効果でしかありません。例えば、建物内の人間を調べたいのに、その建物の周りの人間も巻き込み、さらに信頼性も劣るため悪意を持った普通の人間を感知する事もあります。……はっきり分かる程の上位魔族ならともかく、こそこそしている様な下位には向きません」

 

 

「上位が居ないにこしたことはないが、下位は下位で面倒だな」

 

 

「時間かかりそうね~……」

 

 

 管理局だけの人数を見ても時間がかかる事は明白だった。

 

 

 やがて、よし…とリンディが呟く。

 

 

「ルティシアさんの事は、この件の間はなのはさん達と同じく現地協力者の一人にしましょう。変に警戒されても困るし。いつかこちらの準備が出来次第、タイミングを見て行動を開始しましょう」

 

 

「そうですね、艦長。管理局が、悪しき存在によって間違った方向に行くのは、絶対に避けるべき事です」

 

 

 リンディにクロノが頷いた所で、ディスプレイが表示される。

 

 

 映っているのはエイミィ。

 

 

『リンディ艦長、クロノ君……ってあれ? 怪我治ってる?』

 

 

「それについては後だ。何かあったのか?」

 

 

『あ、うん。新しいジュエルシードが見つかったけどどうかなって』

 

 

 エイミィの話を聞きながら、視線はリンディの方に。

 

 

 その視線を受け、リンディは立ち上がりながら凛とした仕事時の顔に変わる。

 

 

「クロノ執務官、出られる?」

 

 

「勿論です」

 

 

 クロノはカード型の待機モードになっているデバイスを取り出す。

 

 

「ルティシアも来てくれないか?」

 

 

 それを聞いて、ルティシアも正座から立ち上がる。

 

 

「分かりました。ですが、姉さん達の方は大丈夫ですか?」

 

 

『大丈夫だよ~』

 

 

 画面が切り替わってなのは達が映る。

 

 

 4人は結界の中で、怪獣とも言えそうな毛むくじゃらで二本足で立つ巨大生物と戦っていた。

 

 

『ふぇ~!? 魔法が吸収されて跳ね返ってくる~!?』

 

 

『なのは! 左目だ! 左目で吸収してるんだ』

 

 

『吸収されない死角か、接近戦』

 

 

『あんなにでかい毛むくじゃらだと、あたしが殴っても効果無さそうだね。バインドで捕縛して死角から派手なの撃ちこむかい?』

 

 

『大きくてちょっと違う様な気がするけど、あれ狛犬だよね? ……じゃなくて、大きいのいきます』

 

 

『なのは待って!? あれが跳ね返ったら危険だから!』

 

 

『…………』

 

 

『フェイト!? 大丈夫だから! 狙いは違うから!』

 

 戦闘しながらも賑やかな面々。フェイトが撹乱しつつ、ユーノとアルフがバインドで縛っていく。

 

 

「あれは……管理外世界に居る巨大生物じゃないか。何であんなものが……? いや、考えるのは後だ。ルティシア、行こう」

 

 

「……大丈夫そうですね」

 

 

 ルティシアが背を向けた背後で、ディスプレイが桜色に染まった。

 

 

    ※ ※ ※

 

 

 アースラから転移した先は結界の張られた川の近く。

 

 

 丁度ジュエルシードが光を放ち、発動する直前だった。

 

 

「遅かったか」

 

 

 それを見て、クロノはデバイスを待機モードから起動させる。

 

 

「変なモノが出ないと良いのですが」

 

 

 左手を一振りすると、虚空から鞘に入った刀――愛刀<氷雨>が現れる。

 

 右手で抜き放つと、左手はそのまま鞘を持つ。

 

 

 ジュエルシードの光が徐々に収まり――その場所に人型のシルエットが見える。

 

 

 体のラインがはっきり浮き出ている青いボディスーツからは、その筋骨粒々な肉体が只者じゃないことを伝える。

 

 

 赤い靴と、背中に背負ったガスボンベの様な物から伸びた噴出口が取り付けられた赤い手袋。

 

 縦に細長い白い顔に、厚く赤い唇と鋭い眼光を放つ目。頭部には赤いモヒカンが風に揺れている。モヒカンを挟む様に、左右に2つずつネジの様なモノも見える。

 

 

「あれは……確か……」

 

 

 何かを言いかけたクロノを遮り、それはその赤く厚い唇をにやりとつり上げた。

 

 

「ふしゅるるる……邪魔する奴は殺す! ここで俺に出会った不運、丸焼きとなって悔やみながら死ぬがいい! がががーーーっ!」

 

 

 ルティシアの首もとが一瞬だけ輝いた。

 

 

「(……バルゴ? 私の目には何も見えないって、この間もそう言う事を言われていませんでしたか?)」

 

 

 2人を焼き尽くすために、男のその両手から炎が放たれた――。

 

 

 

 

 

 

 

 その上空。誰にも気付かれる事無く潜む2つの黒い影。

 

 

 一人はティーカップの様な物を、一人は小皿の様な物を持ちそこから何かを摘まんでは顔と思われる輪郭の方へと運ぶ。

 

 

「さて……いよいよ最初のゲームもクライマックスだね、アーちゃん?」

 

 

 

「そうですね……って、あんな変なモノを持ってこなくても、もっとマトモなモノは無かったのですか?」

 

 

 明るく楽しそうな声と、静かで落ち着いた声。

 

 

「どうせ廃棄されてた物だから。玩具は有効に使わないと、ね?」

 

 

「まぁ、私も気にしませんが。あくまでも見た目の問題というだけですから」

 

 

「あはは、それはあるね。さて、こっちの駒は順調かな? あっちの邪魔には使えそうだし」

 

 

「はい、後は……私達が望む結果になるかどうか、です」

 

 

「あたしはあっちを潰せればそれで良いけどね。協定がなければ自分でやってるのに」

 

 

「うふふ。この次元世界はあちらにとって住み心地が良い場所ですから。様々な思惑、欲望が無数に蔓延る世界」

 

 

「そんな世界。あたし達が壊しちゃう!」

 

 

「こっそり勢力を伸ばす積りだったのでしょうが、偶然とはいえ見付けたからには見過ごす訳にはいきません」

 

 

「協定のグレーゾーンを使って……ね」

 

 

「うふふ、人聞きの悪い事を」

 

 

「あはは、あたし達もあっちも人じゃないから良いよ」

 

 

「さて……貴方達にとっての最善を得るか、最悪を得るか。選択肢は貴方方にあります」

 

 

「どっちに転んでも、あたし達に損はないしね~。アーちゃんの話を聞いて、あたし達が楽しめる選択をしてよ?」

 

 

 2人の前にはアースラと6人の幻影が浮かんでいた。




next


突如その姿を現した銀の少女


警戒されるもまるで意に介さない


その銀の少女から示された、残るジュエルシードの場所


????「この程度出来なくてどうします」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 


戦闘相手について。後者の方はともかく、前者は帰り道に丁度目に入ってため、最初に考えていた相手から変更してしまいました。



今回も、年代等は時代系列を参考に合わせています。参考先がずれたら、こちらも変わる可能性がある事をご了承下さい。


以降はキャラクターのとても簡単・安易な設定になりますので、興味が無い方はここまでで。



そして、今回も変なネタばかりでごめんなさい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今回年数が少し出ていますが……。ルティシアを始め、彼女達は超長寿な聖竜の血を引いているため、見た目に反して成長速度は非常にゆっくりです。


一定まで成長すると外見の変化は止まり、アリシア達初期組で大学生(成人を過ぎた)程度、ほぼ最終組のルティシアは中学生くらい。


成長にこだわる記述がこれまでにもちょこちょこありますが、例え僅かでも、実は身長に拘っていました。


髪型を合わせたり影響も受けやすく、戦闘以外は非常に流されやすい性格です。


後、今後多分出ることは無いと思うためここに。


 アリシアと共に組んでいた人の名前はラフェリーさん。もう一人の謎の女魔導師と3人で良く一緒にいたという設定。


 見た目は金髪眼鏡なフェラ~リな人。


 これで分かった方へ。あくまでも見た目だけです。その他は違いますので。……………多分。

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