魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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その36 「これよりアースラは――」Bパート

 アースラの艦内通路を走る姉妹。

 

 

「ねえ、ルティちゃん」

 

 

「どうしましたか? 姉さん」

 

 

「ジュエルシード集め、いよいよ最後だね」

 

 

「そうですね……。そういえば、1ヶ月ちょっとになるのですね。始めてから、ユーノと出会ったあの日から」

 

 

 ブリッジに続く扉が見えてくる。

 

 

「ユーノ君との出会い、魔法との出会い、フェイトちゃんやアルフさんとの出会い。戦ったり、怖い思いもたくさんしたけど……でも」

 

 

 扉の前で足を止め、開くのを待つ。

 

 

 なのはは見つめている妹に笑顔を見せた。

 

 

「それ以上に、良かったと思う気持ちが強いよ」

 

 

「……私は間違っていたのかもしれませんね。進む道を塞いで護るのではなく、道を斬り開き共に歩む事が必要な事なのかもしれません」

 

 

 瞑目して呟き、昨日の夜に思った事を修正する。

 

 

 開いた扉の先では、転移装置に乗ったユーノがこちらを見ていた。

 

 

 フェイトとアルフは既に向かったようで姿は見えない。

 

 

「遅くなってごめんなさい」

 

 

「遅れてごめんなさい」

 

「大丈夫だよ~。じゃ、転移装置に乗ってね」

 

 

「はい!」

 

 

 姉妹が乗ると転移装置が作動し始める。

 

 

「ユーノ君、時間がかかったかもしれないけど最後のジュエルシード、頑張ろうね!」

 

 

「君達姉妹が居なかったら、ボク1人だったらもっと時間がかかっていた……ううん、無理だったと思う。それが、こんなに早く集まるなんて。本当にありがとう」

 

 

 姉妹にユーノが頭を下げる。

 

 

「そんなことないよ」

 

 

「3人で力を合わせた成果……で、いいのではありませんか?」

 

 

「うんうん」

 

 

「分かった、じゃあそういうことで」

 

 

 装置が作動し、光に包まれていく3人。

 

 

「あ、空からだから気を付けてね~!」

 

 

 

「ええええ!?」

 

 

「なのは!?」

 

 

 放り出された先は空。

 

 

 周りには雲、下には大海原。落ちながら、なのはは赤い宝石――レイジングハートを取り出す。

 

「行こう、レイジングハート。……風は空に、星は天に。輝く光はこの腕に、不屈の心はこの胸に! レイジングハート――セーットアップ!」

 

《stand by ready》

 

 

 桜色の魔力光に包まれて、左手に杖――レイジングハートを持ち、まとった白いバリアジャケットに濃紺のマントが大きくはためいている。

 

 

《flier fin》

 

 

 靴から1対の桜色の光の翼が生えて、なのははユーノとフェイトが待つ場所に。その前に視線を下へ――。

 

 

「そういえば、飛べたっけ? ルティシア」

 

 

 落下の途中でルティシアを背中に乗せた狼形態のアルフ。やや上に居るなのはを追い越そうと加速する。

 

 

「もちろん飛ぼうと思えば可能です。飛行魔法、射手座の黄金聖衣、後は自分の翼ですね」

 

 

「……自分の?」

 

 

 アルフが振り返って背中にいる少女を見る。

 

 

 いつもの黒い戦闘下位姿。翼等当然見えない。

 

 

「どこに?」

 

 

「もちろん背中から……」

 

 

「やめて。後、フェイトの前でもするんじゃないよ?」

 

 

「? 分かりました」

 

 

 何かを想像したアルフに言われ、首を傾げながらルティシアも了承する。

 

 

「残りの魔力少ないんだろ? 乗せてやるから攻撃に集中しな」

 

 

「ありがとうございます。では、闘気と使える力をフル活用します」

 

 

 深紅と黄金の混じった闘気を開放しながら、首回りで輝く力に意識を傾け――囁くようにその力を言葉にする。

 

 

  バルゴ

「<乙女座>、お願いします」

 

 

 ネックレスから外れた小さな飾り。それは、等身大の黄金のオブジェとなり――分解。

 

 

 ルティシアの身に、黄金聖衣が纏われていく。

 

 

 肩や足などの部位がなく、胴にもひびが入り、他の黄金聖衣同様損傷が激しいが、闘気を高めて扱う事に関して最も優れている。

 

 

「それにしても、凄いよねこれ」

 

 

「うん。一本ずつかまとめてか、決めようなのは」

 

 

 ユーノが張った結界の中、海上に発生した6つの竜巻。ジュエルシードにより発生したものに間違い無いだろう。

 

 

「待って。あの竜巻は一つ一つかなり強力なものみたいだ。なのはもフェイトも最初は無理をせず、竜巻を弱めながら封印していった方が良いかも」

 

 

 ユーノが自分の目で見た推測を述べる。

 

 

「そっか」

 

 

「分かった」

 

 

《shooting mode. set up》

 二人が頷いて、レイジングハートは砲撃モードへと変形する。

 

 

 アルフが試しにバインドで縛れないかと試してみたが、簡単に弾き消されてしまった。

 

 

「確かに厄介だね。ルティシアどうだい?」

 

 

「やってみます。アルフ、もう少しだけ上空にお願いします」

 

 

「あいよ」

 

 

 3人のやや上へと舞い上がる。

 

 

 ルティシアからは変わらず深紅と黄金の闘気が放たれている。すなわち竜としての力と、究極の小宇宙(コスモ)とも呼ばれるセブンセンシズ。

 

 

 胸の前で両手を合わせて――。

 

 

 オーム

「Ω」

 

 

 高まった闘気と共に両手を真っ直ぐ上に伸ばし――。

 

 

  ハナ

 解放つは竜の――自らに流れる2つの内の1つ雷竜の力。両手が激しく放電を始め、その様は雷の塔が2つ建っているかのようだ。

 

 

 やがて、両手の間で融合した雷が雷球を作り始める。生まれた雷球はゆっくり上昇しながら、徐々にその大きさを増して――。

 

 

「ゲインシューター」

 

 

 巨大化すると同時に放電を開始し、放たれた雷は6本の竜巻全てを範囲に納める程の巨大な魔方陣を海面上に描く。

 

 

「皆と先に進むために……道を切り開きます!」

 

 

 雷球からは更なる放電と同時に、魔方陣内に束縛用に調整された雷の嵐が吹き荒れ竜巻に次々と絡まっていく。

 

 

 雷に絡まれた竜巻が徐々にその力を落とし始め、横から伸びてきた淡い緑とオレンジの魔力光を放つ鎖が、弱まった竜巻を完全に固定していく。

 

「なのはーっ!」

 

 

「フェイトーっ!」

 

 

 視点を変えれば、そこにはそれぞれの魔力光を吹き上げ足下に魔方陣を展開した少女達の姿。

 

 

 竜巻に向けたレイジングハートの、天に向けたバルディッシュの先端で光が輝き――。

 

 

「ディバイィィーーン……バスタァァ――!」

 

 

「サンダーーレイジッ!」

 

 

 一直線に突き進む砲撃と、天から降り注ぐ雷が竜巻を封印せんと放たれる。

 

 

 次々と竜巻を鎮めていき――残る2本の竜巻が束縛の全てを弾くと、バスターとレイジに対抗するかのように重なっていく。2色の光の接触面には障壁が発生している。

 

 

「受け止められた!」

 

 

「魔力障壁。結構強力な」

 

 

 なのはとフェイトはそれぞれの魔法を中断し、何かを放とうとしている人物を見る。

 

 その人物――ルティシアは、アルフの上で器用に姿勢を……結跏趺坐と呼ばれるそれに変え再び闘気を高めていた。

 

 

「Ω……天魔降伏」

 

 

 爆発的に高まった闘気は天に立ち昇り――竜巻へと墜ちてくる。

 

 

 止めようとした障壁をあっさり撃ち破り、竜巻の力を圧迫していく。

 

 

 闘気を放ちながら、ちらりと視線をいつの間にか近くに寄ってきていた2人を見る。

 

 

 なのはの足下に展開している魔方陣は、普段よりも格段にその大きさを増している。

 

 

「フェイトちゃん。せーの……で同時にいこう?」

 

 

 それに頷きを返し、目の前に展開している自らの魔方陣越しに、天からの闘気に抗おうとする竜巻を見る。

 

 

「ディバインバスターに更に力を、いけるね……レイジングハート?」

 

 

《of course. my master》

 

 

 頼もしい答えに笑みを浮かべ――すぐに真剣な表情に戻り竜巻を見据える。

 

 

 レイジングハートの先端には光が集い、フェイトはバルディッシュを大きく後ろに構え――。

 

 

「せー……のっ! ディバインバスタァァー……オーム!」

 

 

 頭に思い浮かんだ、妹が力を高める際に言っていた言葉を付け加え解き放つ。

 

 

「サンダー…スマッシャー!」

 

 

 バルディッシュで勢い良く魔方陣を突き――。

 

 桜色の光の奔流に添うように金色の光の奔流が流れ、やがてそれは螺旋状に絡み障壁を張る余裕もない竜巻を撃ち抜いた――。

 

 

 その衝撃に、爆発音と共に大きく海水が天へと吹き上がる。

 

 

「すご……」

 

 

 アースラでその様子を確認していたエイミィの前には、6個のジュエルシードを示す光点の横に complete の表記がされたディスプレイがある。

 

 

「あんな子達が一緒だったら助かるんだけどな……って、リンディ艦長? 何か……え、対魔力防御と衝撃に備えるように? わ、分かりました!」

 

 

 エイミィの会話を聞いていたランディとアレックスはすぐに行動を開始する。

 

 

 エイミィも手早く操作し、集まって健闘を称え合っている5人に通信を繋ぐ。

 

 

『みんな、艦長が周囲に気を付けるようにって。念のため、備えておいてくれるかな?』

 

 

 現れたディスプレイに映るエイミィをキョトンと見つめるメンバー。

 

 

「え、でもジュエルシードも落ち着いています……けど」

 

 フェイトの手の中の6個のジュエルシードを見つめてから、代表してなのはが困った様に言うと、モニターのエイミィも困った笑みを浮かべる。

 

 

『うん、こちらでもジュエルシード6個の封印は確認したよ。でも、艦長からの指示だから何か意味があるんだと思うんだ。急いでこっちへの転送を準備するか……』

 

 

 途中で通信が途切れる。

 

 

 アースラ内に警報が鳴り響く。

 

 

「な、何? 次元干渉? ……本艦及び該当エリアに魔力攻撃!?」

 

 

「アースラ対魔力防御を出力全開! 衝撃に備えて!」

 

 

 いつの間にか艦長席に着いていたリンディから指示が飛び、予め警戒体制にあったアースラは魔力シールドを展開し攻撃を防いでいた。

 

 

 さすがに衝撃の方は完全に防ぐ事はできず、ブリッジも大きく揺れて、杖を支えに床に膝をついて備えていたクロノも倒れないように堪えていた。

 

 

 晴天だった空がにわかに曇った海上。

 

 

 黒雲が広がり柴電の雷をまとい始める。

 

 

 やがて幾筋もの雷は一ヶ所に――5人の頭上に集い――。

 

 

「させません。カーン!」

 

 

 集束した柴電の雷をルティシアが張った結界が受け止める。……が、余りの衝撃にアルフごと下へと押される。

 

 

「ルティちゃん!」

 

 

「ルティシア!」

 

 

「援護するよ!」

 

 

 なのは、ユーノ、アルフが更に障壁を張って。

 

 

 その様子をフェイトは呆然と見つめていた。

 

 

「母さん……どうして……」

 

 その手からジュエルシードが浮かび上がっていくが、それを阻める者はいなかった。

 

 

 空中に溶け込む様にジュエルシードが消えると、柴電の槍も次第に収まっていく。

 

 

「まさか……あれはあのババアが…!」

 

 

 何かに気付いたアルフが敵意を剥き出しに呟くと、力を失ったかの様に落下し始めたフェイトを慌てて受け止めようと下に回り込む。

 

 

 急に力を失ったフェイトに慌てて近寄るなのはと、まだ攻撃が来ないか警戒しているユーノを見て、ルティシアはフェイトを受け止め引き始めた黒雲を見上げた。

 

 

「今の魔法……僅かに感じたあれは確かに……」

 

 

「リンディ艦長! ジュエルシードが何者かに奪われました!」

 

 

 衝撃に揺らされながらも、エイミィは状況の確認に努める。

 

 

「エイミィ、追跡は?」

 

「大丈夫だよクロノ君。ちゃんと捕まえてあるよ!」

 

 

「よし! さすがだ」

 

 

 それを確認して、リンディが席から立ち上がるとブリッジ内のメンバーに指示を飛ばす。

 

 

「余波が落ち着き現場の5人を帰艦させた後に――」

 

 

 モニターの中の力を失った少女を見つめながら――。

 

 

「これよりアースラは本件の重要関係者、プレシア・テスタロッサの逮捕……及び犯人に利用されている彼女の救助を行います!」

 

 

 




next


事件の裏に潜んでいた敵


戦いは庭園を舞台に繰り広げられる


「皆といる未来を」
 
 
 
 
 
(出典)
 乙女座の黄金聖衣:聖闘士星矢シリーズより


 ゲインシューター:スーパーロボット大戦シリーズより



(補足)
 ルティシアが扱う雷技はバニッシュ及びゲインを加えた三種となります。


 バニッシュは近接叩き付け用に、ゲインは中距離広範囲用。ただし後者は消耗が激しい為、今の彼女では今回の様に補助が無ければ、すぐにガス欠状態に陥ります。

名前が出ていないサンダークラッシュは基本的な雷パンチのため、名前を言っていないだけで使われています。
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