魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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その39 「徒労に終われ」

「あそこのエレベーターを使えば、駆動炉の所に行ける」

 

 

 フェイトの案内で進んだ4人は、その部屋を守っていた傀儡兵を倒し駆動炉へ繋がっているエレベーターの前まで来ていた。

 

 

「ありがとうフェイトちゃん。……ここはもう大丈夫だから、フェイトちゃんはお母さんの所に」

 

 

「……うん」

 

 

 その為に立ち上がり、ここまで来た大事な友達の手になのははそっと触れる。

 

 

「……あ」

 

 

「私は、上手く言えないけど……頑張って」

 

 

 心からのその一言に、フェイトもまたなのはの手の上に片手を重ねて「ありがとう」と返すのだった。

 

 

 そこに、離れてアースラのエイミィから連絡を受けていたユーノが小走りで寄ってきた。

 

 

「ルティシアとクロノが突入したって。それに、次元震も徐々に規模が拡大しているらしい。そっちは今リンディ艦長が抑えているそうだけど、急いだ方が良いかも」

 

 

「フェイトちゃん!」

 

 

「うん! アルフ、行こう」

 

 

「あいよ!」

 

 

 ユーノの話を聞いたなのははフェイトを見つめ、それに頷いてみせるとアルフを促す。

 

 

 駆け出して行った2人を見つめ、自身もまた濃紺のマントをひるがえしながらエレベーターに向かう。

 

 

「私達も後からきっと行くから。(みんな気を付けてね。)……行こう、ユーノ君!」

 

 

「うん!」

 

 

 エレベーターの中で、なのはは胸元に手を当てた。そこには、ルティシアからお守り代わりに受け取った黄金の小さなオブジェがネックレスからぶら下がっていた。

 

 

 手を当てていると、それだけで暖かい力と勇気が湧いてくる様だった。

 

 

 やがて、扉がゆっくり開いていく。

 

 

 まず目に入るのは巨大な装置。妖しい光を放ちながら稼働しているそれが、目的の駆動炉だろう。

 そして、当然の様に待機している無数の傀儡兵達。そして……。

 

 

『血を流せ』

 

 

 双頭の4足獣に跨がり、槍を持った鎧兜姿――アラケス。

 

 

『定めじゃ』

 

 

 漆黒のネジ曲がった刃の両手鎌を持ち、戦士装束姿の炎に包まれた男――アウナス。

 

 

『アビスの力を知れ』

 

 

 飛行する、深海魚めいたグロテスクな姿をしたもの――フォルネウス。

 

 

『憐れな虫けら共』

 

 

 見覚えのある人外の3体と、赤い着物を着て半透明な何かをまとわりつかせた金髪の女性。

 

 

 ただし、その4体共が表情が無く感情も感じられない。まるで傀儡兵の様に。

 

 

「ユーノ君、あれって……」

 

 

「少なくとも、偽者だと思う。姿形を似せた傀儡兵みたいなもの……かな」

 

 

「あの女の人も……だよね」

 

 

「彼等の仲間……だろうね」

 

 

 一斉に構える傀儡兵他の相手を見て、なのははレイジングハートをギュッと握り締める。

 

 

「でも、私達はここで立ち止まれない。先に、未来に進むために!」

 

 

 そのなのはの前にユーノが立つ。

 

 

「前に立つのはルティシアがやりたい事だろうけど、今はボクが。防御は任せて、なのはは攻撃に集中して」

 

 

 そう言ったユーノになのはは小さく笑みを浮かべた。

 

 

「いつも背中を守ってくれてありがとう。ユーノ君がいてくれたから、いつも背中が暖かいよ」

 

 

「その分、攻撃はなのはやルティシアに任せてしまっているけどね」

 

 

 話はそこで終え、2人は向かってきた異形の集団を迎え撃つ。――震動と桜色の閃光が駆動炉の間を満たしていった。

 

 

    ※※※※※

 

 激しく金属同士のぶつかり合う音が響く。澄んだ青色をした大型の傀儡兵の振るう剣の横っ腹を、ルティシアは肘打ちで払い除け一気に破壊しようと蹴りを放つもバリアで受け止められる。

 合間にクロノから飛ぶ魔法の弾丸も、剣やピンポイントに張られるバリアで防がれていた。

 

 

「時間を稼がれてる! 少しだけ引き付けてくれ!」

 

 

 振り向かないまま軽く頷くと、右手を引き低く身構えて突進する。バリアを展開している正面から、雷を帯びた右手で殴りかかる。

 

 

「ライトニングボルト」

 

 

 バリアとぶつかり合いスパークする。貫かんとばかりに徐々に右手の力を増していくにつれ、相手のバリアもまた出力を上げ――真横を駆け抜けたクロノが素早く相手の 肩に乗るとデバイス――S2Uを押し付ける。

 

 

《break impulse》

 

 

 この傀儡兵の固有震動数を割り出し……、振り払おうにもバリアに集中しているため動きがとれないまま震動エネルギーが送られ粉砕される。

 

 

「プレシアが居るのはすぐ近く急ご……大丈夫か?」

 

 

 左手を押さえたり確かめているルティシアに声をかけるが、本人からは大丈夫の一言のみ。

 

 

 黄金聖衣の手のパーツ――指だけを出している作りの関係で、出発前の傷口の方は見えないが昨日からの連戦と掴まれた事による疲労の方が少しずつ出ていた。

 

 

「傷は治せても、疲労の方は治せませんから。出血したら、血は戻らない事と同じです」

 

 

「君はここに来る前にも消耗しているだろう?」

 

 

「そうですが、ここで止まるわけにはいきませんから。魔力は昨日消耗してしまったため余り回復していませんが、今回消耗しているのは闘気。私の気力が完全に尽きない限り、戦う事は可能です。今なら、引けない理由もありますしね」

 

 

 ポニーテールとマントを揺らしながら走り始めた姿に、クロノは呆れた風に肩をすくめると先を急ぎ始めた。

 

 

 

《blaze cannon》

 

 

 ドアを塞いでいた瓦礫を砲撃で吹き飛ばして中に突入する。

 広めな部屋の中には少女――アリシアが入れられたカプセルと黒衣の魔女だけがいた。

 

 

「そこまでだ! プレシア・テスタロッサ……それとも、利用している魔族とやらか?」

 

 

 杖を突き付けながら叫ぶクロノに対し、プレシアは虚ろな表情と笑みを浮かべている。

 

 

「私は取り戻すのよ……。こんな筈じゃなかった世界の、全てを……」

 

 

「世界はいつだって! こんな筈じゃない事ばっかりだよ! ずっと昔からいつだって! 誰だってそうなんだ!」

 

 

 感情の籠らないプレシアの話し方に違和感を感じながらも、クロノは語り続ける。

 

 

「こんな筈じゃない現実から逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ! だけど、自分の勝手な思いに無関係な人間まで巻き込んで良い権利は、どこの誰にもありはしない! 目を覚ませ、プレシア・テスタロッサ!」

 

 

 時の庭園を断続的に襲う震動以外は静かな室内に。最初はかろうじて聞こえる程小さく……、やがてはっきり聞こえる様に笑いが室内に響き渡る。

 

 

「面白い事を言うわね。人間を巻き込んで良い権利? あなた達には無くても、“我等”にはある」

 

 

 瞬間、プレシアから吹き上がったのは紫色と闇が混ざった様な、何か。同時に、震動が激しくなる。

 

 

「ジュエルシードへの力を強めたのか!? 仕方がない、捕縛する!」

 

 

 それを合図に、ルティシアが真横に跳ぶ。

 

 

「魔を貫け フェニックス・レーザー!」

 

 

《stinger snipe》

 

 

 気付かれぬ様に高めた破邪の炎。圧縮された数条の深紅の熱線が、青い光の鞭が螺旋を描きながらプレシアへと迫り――。

 

 

「…………!」

 

 

「な……!?」

 

 

 デバイスを持っていない手をかざす――それだけで熱線と鞭が動きを止めた。

 

「それなら……、スナイプショット!」

 

 

 鞭を引き戻しリチャージ、初撃に勝る速さと威力で再びプレシアへと迫る。

 

 

「徒労だわ。あなた達の行為など、全て」

 

 

 軽く払い除ける仕草だけで、全て弾かれてしまう。

 

 

「融合しているせいで魔力が……。破邪すら届かない」

 

 

「何とか隙を作るしかない、か」

 

 

 身構える2人に、プレシアは冷笑を浮かべ一歩を踏み出し――

 

 

「クロノ!」

 

 

「な……がっ!?」

 

 

 唐突にクロノの前に現れた彼女から拳の蓮撃を受ける。バリアジャケットの上から伝わる衝撃に大きく吹き飛ばされていく。

 

 

「――くっ!」

 

 

 それを見て、ルティシアは背後へと拳を放つ。

 

 

 ぶつかり合う音と共に拳が杖で受け止められる。

 

 

 1度距離を取り――ルティシアの姿が見えなくなると同時に、プレシアの姿もまた見えなくなる。

 

 

 室内のあちらこちらから、ぶつかり合う音と空気の震えが起こり、その度に室内に少しずつヒビが入り、欠片が舞い散る。

 

 

 2人が現れたのは中空。左の正拳突きを杖で払われたルティシアの姿。

 

 

 そして、その左腕を――丁度傀儡兵に掴まれた部分をあり得ない程の力で掴まれる。

 

 

「……ぁぅ」

 

 

 聖衣が軋む程の力で掴まれたまま、振り回され横の壁へと投げ飛ばされる。

 

 

 叩き付けられ、砕きながら壁にめり込んだルティシアと、片膝をついて額から血を流すクロノを見て、プレシアは狂笑を浮かべ――途端咳き込み始める。

 

 

 口から溢れているのは……血。

 

 

「……無駄なのだ、貴様等のやることなど。全て、徒労に終われ」

 

 

 唇の端から血を流し、“プレシア”の身体から闇が静かに吹き上がっていった……。

 

 

 




next


両局面で行われる戦闘


絶望感漂う場所に、闇は力を増していく


「何か方法はあるはず」
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