魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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 詰め込み番外編のラストとなります。

合わせて、A’sの序章その1も兼ねています。
 
 



その47 歩み、動き出す者達

 夕暮れ時の賑やかな街中。様々な商店が面した大通りで、道行く人々が思わず足を止めて見つめる先に、五人組の一行が居た。

 

 

「何か、みんなに見られてる気がしない~?」

 

 

 前に三人、後ろに一人、それに挟まれる形で真ん中を歩いている五人目。

 

 

 長い金髪を緑のリボンでツインテールにし、フリルが付いた黒いワンピースを着た一番小柄な少女が、前を歩く三人に話しかける。

 

 

「え、そうかな? この時間だといつも人通りが多いから、そう感じるだけかも。ね、フェイトちゃん?」

 

 

 そう答えたのは、前を行く三人の内の右端を歩く少女。短めの茶色の髪を、太いピンクと細い黒のリボンでツインテールにして、着ている小学校の白い制服の肩の部分には、フェレットに似た小動物が乗っている。

 

 

「ごめん、なのは。わたしはこの時間にここを歩いたことが無いから。ルティ、どう?」

 

 

 話を振られた左端を歩く少女は、後ろを歩く少女とよく似ていた。違いは、身長と、フリルが無いシンプルなデザインの黒いワンピース、長い金髪をツインテールにまとめているリボンが、太いピンクのものとやや太めで強めの赤色をしている点である。

 

 

「普段と変わらない……と言いたい所ですが、私とアルフに向いている気がします」

 

 

 両サイドの少女に両腕をそれぞれ抱え込まれて、後ろ向きに引きずられながら、濃紺の髪を細く黒いリボンでポニーテールに結い、なのはと同じ白い制服を着た少女が淡々とため息混じりに答えた。

 

 

「ん? そうかい? あたしは特に感じないけどね。アリシアも余りキョロキョロすると危ないよ。あんたが怪我でもしたら、プレシアが暴れてアースラを壊しそうだし」

 

 

 最後尾を歩いているのは一行の最年長と思われる女性で、長いオレンジ色の髪をストレートに流した状態で、スタイル抜群な身体でシャツにショートパンツというラフな格好をしている。

 

 

「アリシアの不安の除去と、私の安寧の為にそろそろ腕を……」

 

 

「「だめ」」

 

 

 ルティシアの言葉を、文字通り一言で切って捨てるなのはとフェイト。

 

 

 なのはの肩にいるフェレットが、頭を左右に振りながら「きゅ-」と鳴いている。

 

 

「あはは、ルティお姉ちゃん。ユーノお兄ちゃんがそろそろ諦めたら? って」

 

 

「何ですか、ユーノ。私は在り方は少し変えますが、自由まで失うつもりはありませんよ」

 

 

 楽しそうなアリシアが、ユーノの念話が聞こえないルティシアに通訳すると、恨みがましそうな視線をフェレットに向ける。

 

「でも、不思議な話だけどさ。 あたしは、今のその光景が三人が成長しても続いている気がするんだけど」

 

 

「あ、ワタシも~!」

 

 

「やめて下さい、二人も。それに成長してもこの光景って、色々問題があると思います」

 

 

 ニヤニヤした表情を浮かべたアルフも、この流れに便乗する。

 

 

 アルフとアリシアにはそう言いつつも……、成長したなのはとフェイトに、引きずられてどこかに連れて行かれる図という光景が自分の中でも浮かんでしまい、慌てて脳裏から締め出す。

 

 

「(そういえば、この縮んだ身体も成長して……いえ、戻って? いっているわけですが、本来の背に追い付いた後はどうなるのでしょうか? こちらの世界に来てからのペースだと、後数年で追い付く筈ですが。髪の色の件もですが、時間が経てばその内治ると言われても、元の身長からその後の成長にかかる時間を考えたら、引きずられるどころか抱えあげられるのでは……)」

 

 

「ルティちゃん、また何か考えてるね。雰囲気がいつもと少し変わるから、すぐ分かるよ」

 

 

「うん。それに、微妙に深刻そう。もう一回オハナシかな?」

 

 

「プライバシーというものもあるのですが……。深刻そうといっても、私の身長が伸びるかどうかという問題です」

 

 

 頭越しに交わされる会話に、ため息をつく。

 

 

「あんた竜なら大きくなれるんじゃないの?」

 

 

「なれますが、この姿には関係ありませんから」

 

 

「見たい見たい! 竜の姿見たい!」

 

 

「私も見たことないかも」

 

 

「わたしも」

 

 

「ここで変わるわけにはいきません。それに、私が言うのもあれですが、私の竜は体格による力そのものと、吐息……ブレスの威力と範囲の広化、巨体による移動手段程度です。本国の一部の竜族の方は、高まる魔力で真価を発揮しますが、私にはありませんしね。そういう、巨体を生かす機会でもあればお見せしますが……。何にしても、この姿の成長には無関係です」

 

 

「え~、ルティお姉ちゃんはまだ良いじゃない。ワタシはフェイトよりお姉ちゃんなのに、大きく引き離されてるんだよ?」

 

 

「アリシアはまだまだ成長すると思いますが……」

 

 

「ん~、でもフェイトやなのはお姉ちゃんはそれ以上に伸びそうだし……。やっぱり、運動もした方がいいのかな~」

 

 

 ジ~っと前の三人を見てから、自身の小柄な身体を見下ろす。

 

 

「う~ん、私もアリシアちゃんは伸びると思うよ? 運動はした方が良いかもしれないけど」

 

 

「アリシアは座学ばかりだから。わたしやクロノもいるから、もっと実習を増やしてみる?」

 

 

 周りの通行人に気を付けながら、フェイトが軽く背後を振り返って声をかける。

 

 

「ワタシはみんな程の、魔法を使う才能は無いから……。デバイスをいじったりするのは好きなんだけどな~。いつかは、お母さんやリニスみたいに研究者とか……」

 

 

「まあ、あれこれ考えるよりも……」

 

 

 そう言って落ち込むアリシアの頭を、横に並んだアルフが乱暴に撫でる。

 

 

「わっ!?」

 

 

「今は、アリシアがやりたいようにやったら良いじゃないか」

 

 

 それらを聞いていて、前月の自分を思い出したなのははクスリと笑みを浮かべた。

 

 

「私も学校で、将来について考えたよ。結局、まだ決まってないけどね」

 

 

「わたしは、なのはやルティと一緒にいくから。でも、しばらくは嘱託魔導師の認定試験に合格する為に頑張らないと」

 

 

「ふぇ? 何それ、フェイトちゃん」

 

 

「そういえば、さっきの騒動でまだ言っていなかったね」

 

 

 操られてのこととはいえ、ジュエルシードを運んでいた次元航空艦を撃墜し、次元災害を引き起こそうとしたことは重罪であり、クローン研究についても犯罪である。まず、家族で共に暮らすことは不可能であろう。

 

 

 過去に関わっていた違法研究については、進めていたプロジェクトチームの上層部の問題をエイミィが見つけたため、そちらについては協力者と共に何とかなる見通しが立った。

 

 

 よって、家族で暮らすために先の二つの問題の対処を考える必要がある。そこで出された案が……

 

 

「……司法取引というものですか?」

 

 

「え、どういう意味? ルティちゃん」

 

 

 ルティシアに頷いたフェイトは、なのはに向かって説明を続ける。

 

 

 クローン研究で得られた技術の内、医療に転用出来るものの提供や、プレシアの知る違法な研究や行いをしていた者達の情報提供。

 

 

 後は、管理局への勤労奉仕などで罪を償うのだが、ここで話を聞いていたフェイトが名乗りを上げた。リニスは生活費を得るためにミッドで働くことになっているのもあるが、リンディやエイミィが以前からお薦めしていたということもあった。

 

 

 当初、フェイトに危険な事をさせたくないプレシアは反対していたのだが、二人からお薦めされていた“ある理由”を口にしたフェイトに折れた。

 

 

「“ある理由”……ですか?」

 

「どういうの? フェイトちゃん」

 

 

 そこまでは分からないルティシアは首を傾げ、なのはも足を止めて問いかけた。

 

 

 フェイトもまた足を止めて、どこか恥ずかしそうにしている。夕陽のせいか、その白い肌が赤く染まっている様にも見える。

 

 

「えっとね……母さんの罪の軽減というのはもちろん何だけど……」

 

 

「うんうん」

 

 

「嘱託魔導師になれば、異世界での行動がかなり自由に出来るんだ」

 

 

「はい、それで?」

 

 

「二人と……一緒に居られるから……」

 

 

 キョトンとしているルティシアと、喜びを全身で表すなのは。みるみる輝くような笑顔を浮かべる。

 

 

「なるほど、リンディさんとエイミィさんにそう唆さr」

 

 

 雰囲気を壊すことを言う人物の頭に、両サイドから同時に手刀が落とされる。

 

 

「キューキュー……」

 

 

「そうだね。殴られる度に、本当に賢さが落ちていってるんじゃないかい?」

 

 

「賢さなのか、鈍感が増しているのか分からないけどね~。ルティお姉ちゃん、口にしなかったら良かったのに」

 

 

 なのはの説教と、フェイトの抗議する姿を、離れた所で二人と一匹は眺める。

 

 

 アルフとアリシアの手には、いつの間にか近くで仕入れた惣菜があった。

 

 

「翠屋って所はまだなのかな? 甘いもの早く食べた~い」

 

 

「連絡はしてあるっていってたけどね。間に合うのかね」

 

 

「キューキュー」

 

 

 通りで行われている賑やかなやりとりを、通行する人々が避けながら、しかし面白そうに、あるいは微笑ましそうに眺めていく。

 

 

 その光景は、道路を挟んだ反対側の通りを進む二人の少女からも見えていた。

 

 

「あそこで遊んでるのは、ルティシアちゃんと……二人はお友達なんかな? お姉ちゃんがいるとは言うてたけど。まあ、取り込み中みたいやから、話はまた今度でええかな」

 

 

 車イスに乗った少女と、その側で佇む赤い髪の少女。その赤い髪の少女に表情は無く、無機質な感じの視線を反対の通りに向けている。

 

 

「……大が二、中が二、小が一……にえ」

 

 

「ん? 何か言うた? メーアちゃん」

 

 

 車イスの少女が赤髪の子に訊ねると、首を左右に振られる。

 

 

「……何でもない、はやて」

 

 

「そか? じゃあ、早くうちに帰ってご飯にしようか! いっぱい食べなあかんからな!」

 

「……そんなにお腹すいてない」

 

 

 言葉を交わしながら、二人は家路を進んでいった。

 

 

 尚、騒いでいた某一行は翠屋の閉店時間前に駆け込むことになったという。

 




 
 
 
 ルティシア、強打による賢さ低下もしくは鈍さ上昇疑惑。
 

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