魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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その55 すれ違う想い

 蒼い月の照らす異界と化した戦場で、真紅の闘気を纏っていた少女と黒衣の少女、二人が上空から墜ちてくる。突如、辺り一帯を薙ぎ払った衝撃波によって、持っていた得物ごと切り裂かれて。

 

 

 消耗が大きかった為に離れて二人を見守っていたなのはやアルフ、そして四人の救援の為にその場に駆けつけてきたクロノとユーノの前での、刹那の出来事だった。

 

 

「ルティちゃん、フェイトちゃん!」

 

 

「フェイト、ルティシア!」

 

 

 二人が墜ちてくるのを見て、自身がかなり消耗しているのにも構わずなのはが飛び出し、間髪置かずにアルフも続いた。

 

 

「なのは! アルフも!」

 

「二人の事は僕に任せるんだ!」

 

 

 危ない、と前に回り込んだユーノがなのは達を押し止め、消耗している二人を彼に任せたクロノは、三人を抜き去り墜ちてくる二人の元に急いだ。

 

 

「フェイト……!」

 

 

 二つに分かれたバルディッシュを呆然と見つめているフェイトを、ルティシアは引き寄せて唱え空中に留まる。飛行魔法を発動し、続けざまに治療魔法をフェイトに施す。

 

 

 フェイトも、バリアジャケットの上から腕などに僅かな出血が見られるが、それよりもバルディッシュへのダメージによる精神的ショックの方が上回っていた。

 

 

「ごめんなさい、本来私がもっと気を付けなくてはいけなかったのに……」

 

 

 感情に突き動かされるままに動き、後一体で終わるという油断や、周囲への注意を疎かにし過ぎたが故に受けた一撃。

 

 

 相手の技量も高かった為に完全に防ぐ事は恐らく出来なかったが、フェイトを庇う事くらいは出来たかもしれない。

 

 

 後悔はある。あの異常ともいえる感情の事も気になる。しかし……。

 

 

「ガンビット」

 

 

「何をするつもりだ」

 

 

 ルティシア達の居る場所に到着して、何故か慌てて顔を背けたクロノには答えず、四基全てのガンビットを呼び出してフェイトの周囲に配置すると、形成されるフィールドで包みそのままなのは達の方に移動させる。

 

 

「ここでフェイトを護りながら戦うのは、得策ではありません。ですが、後方にはユーノが居ます。私の防御手段は基本的に個人用のものばかりですが、ユーノなら」

 

 

「全部押し付けるつもりか」

 

 

「信頼です。少なくとも、ユーノが防げないなら私のも突破されるでしょうね」

 

 

 ルティシアの使う事が出来る防御魔法は、多くが複数を守る事に向いていないモノばかりだった。そして、個人用では三角錐状や障壁状に展開したガンビットの形成するフィールドの方が上だった。

 

 最も、形成されるフィールドの大きさはかなり小規模なものであるため、設定以上に拡大すると簡単に解けてしまうという欠点もある。

 

 

 なのはやユーノと共に活動することが多く、ユーノは言うに及ばず、なのはの防御力も上がってきたがために、そちら方面の鍛練を怠っていた。

 

 

 逆に、中・遠距離のなのは、近・中距離のルティシア、補助のユーノと分担が出来ていたとも言えるが。

 

 

「色々と後悔はありますが……それは後です。ここを終えないと、次もありませんしね」

 

 

 フェイトを引き寄せる時に手放した鞘は、そのまま地上に落ちてしまったが、半ばから折れた愛刀はそのまま持っていた。そっと、右手に持った刀を握り直す。

 

 

「そうだな。それよりも……」

 

 

「何でしょうか?」

 

 

 互いに、何やら口論中の二体の魔族を見据えながら。

 

 

「少しは隠せ!」

 

 

「ほとんど見えていませんし、いつかの時の方がこれより余程破れていたと思いますが」

 

 

 纏っていた闘気や刀に阻まれたおかげで、衝撃波による影響は余り出ていないルティシアだが、着ていた戦闘下衣がところどころ破れていた。

 

 

「君の所では恥じらう文化は無いのか!?」

 

 

「多分ありますが、戦闘の際そんな事を考えていては闘えないかと。恥じらうよりも、倒す手段を講じます」

 

 

「やっぱり君は君で問題あるな。その辺りは、なのはやフェイト達に任せよう」

 

 

「一方的に私が負ける気がしますが……」

 

 

 こちらが警戒している様に、魔族側もまた口論しながらもこちらを逃がすつもりは無いようだ。

 

 

 光を阻み、闇の力を強める蒼い月。これにより聖衣の力が制限されているのもあるが、『守る』や『倒す』ではなく、負の心のまま『破壊』の力を振るった事。今の自分に、聖衣を纏う資格は無いと考えたルティシアは自前の真紅の部分部位防具……プロテクターを身に付ける。

 

 

 戦闘下位の破れていた部分の一部も、覆われて見えなくなる。

 

 

「それでやはり駄目そうですか?」

 

 

 そっと、携帯電話型の端末を弄っていたクロノが、ため息をついて端末を懐にしまう。

 

 

「駄目だな、エイミィ達と連絡が取れない。フェイト達を転送してほしかったんだが」

 

 

 クロノとしても、裁判や嘱託試験等で親身になっていた事もあり、フェイトの事は心配だった。

 

 

「この月匣は外からは入りやすいですが、中からは出にくくなるように張られています。解除するには、それ以上の魔力で別の月匣を張るか、張った本人を倒すしかありません」

 

 

「なるほど。なのはの状態も気になるし、君にまた暴走されても面倒だ。あいつらをどうにかするしか無い……か」

 

 

 杖型デバイス……S2Uを魔族達に向けながらクロノが前に出る。

 

 

「お喋りはそこまでにして、話を聞かせて貰う!」

 

 

 いつも通りに名乗らないのは、相手が組織名を伝えても意味がない魔族関係と分かっているためだろうか?

 

 

 よく通るクロノの声に、二体の魔族も反応を示した。

 

 

「確かに、相手を前に口論など大変失礼した」

 

 

「まだこっちの話が終わっていないんだけど?」

 

 

 着込んでいる朱色のフード付きローブで、目元もはっきり分からない位に覆っているが、くぐもって聞こえた声の感じからすると女性らしかった。

 

 

 そして、自分との口論を中止してまで人間に反応したことに、アーギルシャイアは不満を露にしている。怒りで魔力が高まっているのか、その長い黒髪が揺らめいている。

 

 

「大体、あなたは鍵の監視役でしょう? 結果的には助けてもらったわけだけど、あっちの監視はいいわけ?」

 

 

「無論監視はしているさ。それと、後にするんだアーギルシャイア。苦情は後で聞く。今は彼らとの話が先だ」

 

 

 ローブの『女』が、左手に持った剣を向けながらアーギルシャイアを赤い眼光を強めながら睨むと、不承不承ながらも彼女は口をつぐんだ。

 

 

 魔力をそれなりに消耗した遠距離主体の自分と、近接の『彼女』。隣に立っている状態で力ずくで来られると明らかに自分が不利だからだ。

 

 

 アーギルシャイアが黙った事で、クロノは冷静に『女』の実力を把握する。

 

 

「ルティシア、あのローブの方は知っているのか?」

 

 

「いえ」

 

 

 小声で問うクロノに、ルティシアも小さく答える。

 

 

「私が初期学習で魔族の事で教わるのは、よく使役される等で『こちら』に出て来やすい下位以下と、戦の先陣を切るような上位のごく一部の戦法だけなのです。この世界での勉強が終わり帰国すれば、本格的な指導が始まると思いますが」

 

 

 下位以下の魔族は人間との契約や使役される形で人界に現れる事が多いため、勉強の際もまずそこから触れられる。魔界と繋がりやすい人界の一部では、自然発生のように現れる事もあるためだ。

 

 

 魔界以外では力が制限される神々の結界と、最下位に位置するモノに至っては自我すらないものが多いため、高町家の面々のように武に秀でた人間なら倒せる程度の強さではあるが、脅威になるのはその数だろう。

 

 下位以下は、魔界には数え切れない程居るとさえ言われているのだから……。

 

 

 そして、それらとは別に魔族の事を学ぶ際に題材にされるものが一部の上位個体である。戦場での武を示す事で、自らに付き従う者を増やすことを狙った彼らは、大きな戦で度々その姿を見せていた。四大貴族と呼ばれていた者達もそこに含まれている。

 

 

 そのような者達が用いた戦法等を使って講義を行っていたのだ。

 

 

「恐らく、あの者達は表に出ずに裏の活動がメインか、全く別の仕事をしていたのではないでしょうか」

 

 

 そう述べたルティシア。これはザハク達と闘った時から考えていた事でもあった。少なくとも中位以下の実力ではなく、騎士を名乗る彼らが仕える程の主が率先して戦場に赴いていたならば、その特色故に主の名と共に伝わっている筈だからだ。

 

 

「その通り。我等が主と共に『外』で闘ったのは、神々同士の争いの……最初期の頃のみ。以降は主の意に従い『国』を作り、守る日々だ」

 

 

 ルティシアの推測に『女』は頷き、補足も付け加えた。

 

 

「そんなお前達がどうしてこちらの世界に出て来ている? お前達の仲間もジュエルシードを使って何かを企んでいたが、一体何をしようとしているんだ!?」

 

 

 クロノの問いを聞き、『女』の左目の赤い眼光が鋭くなった。

 

 

「騎士が行う事の理由など決まっている。主のため、ただそれだけだ。ザハク達が用いた手段は知らぬし、知る気も……無いがな」

 

 

「ふざけるな! 大きな次元災害を引き起こす所だったんだぞ!?」

 

 

 キッパリと言い切ったその姿に、クロノがデバイスを突き付けて声を荒げた。

 

 

「それはお前達の世界での判断の話であろう。私にはあの者達の回りくどい話は理解出来ないが、少なくとも制御可能だからこそ行っていた筈だ。性格に問題があるが、サムスンは研究肌の優秀な魔導師だからな。何らかの確証があったのだろう」

 

 

「それでも、プレシアさんや多くの人の心を弄ぶ様な行為は……!」

 

 

 ルティシアの非難に、『女』は冷たい視線を向けた。

 

 

「それも双方の価値観の差だ。議論を重ねても、この件は平行線だろう。言っておくが、手段がザハク達のものしか無いのであれば、私はそれをあらゆる手段を用いてでも実行する。例えそれが、汚名を残すしか無い方法だとしても……な」

 

 

 『女』の静かな気迫。絶対に曲げないという意志が、二人にも伝わってくる。

 

 

「じゃあ、あたし達の邪魔をしないでよ」

 

 

 

「この者達とは、可能ならば先に交渉を行いたかった。拒否されても、堂々と闘い手に入れさせて貰うがな。禍根を残すやり方では、無用な敵を増やす」

 

 

「ちょっとは言うことを統一しなさいよ。あらゆる手段を使うって言ったでしょう!?」

 

 

「それしか手段が無いのであれば、だ。特にこれはメインの方法。行動は迅速が鉄則、だが慎重も必要だろう? 失敗をするわけにはいかない」

 

 

 再び言い合いを始める二人。

 

 

 そこに――。

 

 

「交渉って、話し合いですよね?」

 

 

 いつの間にか二人の背後に、ユーノに肩を貸してもらい支えられたなのはが声をかける。

 

 

「姉さん?」

 

 

「ユーノ、連れてきては駄目じゃないか」

 

 

 持っていた刀が当たらないように、ルティシアがユーノの反対側からなのはを支え、クロノはそのユーノを睨む。

 

 

 ガンビットに守られたままのフェイトと、アルフも近くまで来ていた。

 

 

「そうは言っても、こうと決めたなのはは譲らないよ」

 

 

 勿論止めたよ、と言いながら困ったようにユーノは言った。

 

 

「ごめんね、クロノ君。でも、どうしても……」

 

 

 クロノに申し訳なさそうにしながらも、すぐに視線を魔族達に向ける。

 

 

 その真っ直ぐな眼差しを、まだ何かを言いかけたアーギルシャイアを制して、『女』も真っ向から受け止めた。眩しいものを見るように、赤い光を放つ目が細められる。

 

 

「そうだな。これは私個人の理由だが、出来れば先に話し合いを行いたかった。襲撃をした時点でもう不可能だがな」

 

 

「プレシアさんの……フェイトちゃんの家族の事もありますし、今回は急に襲われました。だから、私としてはみなさんの事は良い……とは思えません」

 

 

「それは仕方がないだろうな。もっとも、謝罪するつもりはない。私個人としては思うところもあるが、それぞれが主のために行動し、我等にとってはそれが何よりも優先される。……アーギルシャイア達の行動も、そういう意味では間違っていない。……ただ、“私”にとってのより良い結果の道のりが遠のいただけ」

 

 

 静かななのはの宣言に、しかし『女』は理解を示す。瞑目したのか、赤い眼光を閉ざして、嘆くかのように静かに言葉をこぼした。

 

 

「あなた、ちょっと見ない間にかなり変わったわね。融通が全く聞かなかったのに、変に自分勝手になったというべきかしら?」

 

 

「……主や、“国”に残っている彼女達の気持ちが分かった気がする。まぁいい、小さき戦士よ。我等に言いたいことは以上か? 無ければ……」

 

 

 不審とも驚きとも取れる言葉を述べるアーギルシャイアに、うつむいた『女』は小さく呟きながら軽く頭を振る。

 

 

 ややあって顔を上げた『女』の顔には光が戻っており、剣を構え直す。アーギルシャイアの周囲にも四色の光球が現れる。

 

 

 クロノも隙無く身構え、ルティシアはなのはを庇うように少しだけ前に出る。

 

 

 ユーノやアルフもそれぞれ構える中、なのはだけは動きを見せない。

 

 

「みなさんのことは認められないけど!」

 

 

 ただ静かに、真っ直ぐな視線を向けていた。

 

 

「協力出来るなら協力したい。少なくとも、あなたには」

 

 

「なのは!? 何を言っているんだ!!」

 

 

 予想外ななのはの言葉に、一瞬面食らったクロノだがすぐに気を取り直したようだ。ショック状態のフェイト以外の三人も、驚きの表情を浮かべてなのはを見ていた。

 

 

 それは魔族達も同様の様だ。

 

 

 そんなことを気にすること無く、なのはは静かに語り始めた。

 

 

「少なくとも、あの人は他の魔族の人達と違う気がするの。本当に必要な時以外、力を使いたくない……そんな感じが。それに、長くお話している間に攻撃をしようともしてこないというのも変だよ。今までに出会った魔族って、みんなすぐ襲ってきたし、話をしながらも攻撃をしてきたよ?」

 

 

「それは確かに……」

 

 

 なのはの話に、思い当たる節があるユーノが同意を示した。

 

 

「だから、少なくともあの人だけは信用出来る……かなって。駄目……かな、クロノ君?」

 

 

「危険過ぎる。そう思わせる演技だったらどうするんだ!」

 

 

「あはは、そうだよね。だから……」

 

 

 なのははそこで言葉を区切ると、魔族達を……『女』だけを見つめた。その青い瞳の目で、『女』の見えないフードの奥を見透かす様に。

 

 

「だから、クロノ君が信じられる位、ウソ偽り無くお話してくれませんか? もしかしたら、協力出来るかもしれません」

 

 

 アーギルシャイアが睨み付ける中、『女』は黙りこんでしまう。予想外過ぎたのか、完全に固まり、再び光点が閉ざされていた。

 

 

 その様子に、アーギルシャイアはますます不機嫌さを増していく。

 

 

「姉さん……、良いのですか?」

 

 

 ルティシアも、不安と警戒が入り交じった複雑な表情を浮かべていた。

 

 

「うん。今までの他の騎士の人だったら駄目だけど。それに」

 

「それに?」

 

 

「あの人、誰かに似ている気がするかなって」

 

 

「誰か……ですか?」

 

 

「気がするだけ、だけどね。戦わなくてすむなら、それだけ早くフェイトちゃんを休ませてあげられるから」

 

 

 自分自身も疲労が大きい筈なのに、それでもフェイトの事を心配するなのは。

 

 

「あたしは、余り協力したくないね。あいつらにはウチをメチャクチャにされたんだし。どんな理由があったとしてもね」

 

 

 アルフはそう言い切るとまた心配そうにフェイトへと視線を移した。

 

 

「ボクはなのはの気持ちを信じるよ。ジュエルシードの時も、なのはの想いが道を切り開いたからね。なのはは、自分の信じる道を進んだら良いよ」

 

 

 ユーノは、いつもの様に柔らかな笑みを浮かべながら頷いて見せた。

 

 

「僕としては反対だ。執務官としてでもあるが、あの者達はまだ信用出来ない。知人としても、それは変わらない。ただ、気になる点はある」

 

 

 クロノは厳しい表情のままだった。なのはにそう伝えると、押し黙ったままの『女』に声を張り上げた。

 

 

「お前達に聞きたいことがある!」

 

 

「……何を?」

 

 

「魔界に人間が居るのかどうかと、お前達が人間を保護していたことがあるかだ」

 

 

「……どちらも肯定。だが、何故あな……お前達がそれを知っている?」

 

 

「とりあえず、その答えで今は十分だ」

 

 

 『女』の答えに、驚きが含まれていたのを感じとり、クロノは追求させないとばかりに言葉を切った。

 

 

「……そうだな。事情を先に」

 

 

「あーーー、じれってぇ! 協力するってぇなら、して貰えば良いだろうが!! こんな風にな!」

 

 

 言いかけた『女』の声を遮って、その場に響き渡ったのは粘つくような男の声。

 

 

 先に、炎の龍で爆散した筈の魔族の声。

 

 

 その声に魔女は嗜虐の笑みを浮かべ、『女』の顔には赤い光が戻る。

 

 

「ま、待てマゴス!」

 

 

「〈メガ・アブソーブ〉!」

 

 

 六人を包み込む様に発生したのは水色の霧。

 

 

 それはユーノが結界を張るよりも早く、六人を覆い隠していた。

 

 

「やっぱりこうじゃないとね。良い死んだふりね、マゴス」

 

 

「俺様を倒すなら、消滅させる位じゃないとな。ごちそうさま」

 

 

 四散していた水色の粒が集まって、アーギルシャイアの横で再び人型を形成。その体に吸い込まれる様に、霧が収束していく。

 

 

「成果は?」

 

 

「三人だな。抵抗が一人、魔力無しが一人、変なバリアで霧が届かなかったのが一人。ま、目当てのデカイのと、おまけで二人なら良いだろ」

 

 

「マゴス、貴様!!」

 

 

 味見したものを答えるかの様なマゴスに、『女』は怒りを露にする。

 

 

「不意打ちだろうが何だろうが、目的を忘れんじゃねぇぜ? それに、ちゃんと一声かけてやったじゃねぇか。あの坊やは抵抗しやがったしな、意思強いねぇ」

 

 

「しかし、これで今後に支障が出たらどうする!」

 

 

「あら、あの書に使えるのは一人一回だけでしょ? 少なくとも、吸った子達にはもう用はないから遠慮無く倒せるじゃない」

 

 

「少なくとも、俺達は目的のために行動してるんだ。あんたにとやかく言われる筋合いは無いぜ?」

 

 

 『女』に対して、アーギルシャイアとマゴスは敵視にも近い視線を向けていた。

 

 

「やはりこれがお前達の目的か!?」

 

 

 魔力を吸われたアルフを支えながら、クロノが怒声を発した。

 

 

 ルティシアも意識を無くしたなのはを抱き抱え、ユーノはまだ自力で飛ぶ力を残していたためクロノのフォローに向かった。

 

 

「こ、これは……」

 

 

「はは、良い勉強になったか?」

 

 

「悪く思わないでね? これもヒトダスケなのよ」

 

 

 『女』が何かを言うより早く、マゴスとアーギルシャイアが煽るように口を開いた。

 

 

「それならこちらもそう対処させてもらう!」

 

 

 クロノの宣言にマゴスは嘲笑を上げた。

 

 

「ひゃっはっは、威勢は良いがここは俺様の月匣の中。奇跡でも起きねぇと出られやし……」

 

 

 と言いかけたマゴスや魔族達を、真横からの赤い閃光が飲み込むと同時に大きな爆音が響き渡った。

 

 

 その光が放たれた方向。一キロ程離れた場所に、空色の人型をしたものが浮かんでいた。

 

 

 身長は数メートル、鎧を着込んだかの様にも見えるその体と、右手に持ったライフル銃。

 

 

 兜の小さな十字の黒い面貌には、目らしき黄色い光点が二つ浮かんでいた

 

 

 背中には白い大きな翼を生やし、肩には金髪の少女が座っていた。

 

 

「当たった! フェイトを苛めた相手だもん、クロノお兄ちゃんの合図まで待ったしこれくらいしても良いよね? ラミエル」

 

 

 少女――アリシアが、銃型のデバイスから表示されるモニターを見ながら、完成した相棒たる天使を見つめた。

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