魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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その61 繋がる形

「――管理外世界の生物が襲われてる? どういう事だ、エイミィ?」

 

 時空管理局本局内の一室。現在アースラが改修作業中で使用出来ない為に、一時的にアースラのスタッフが借りている部屋で、クロノがエイミィからある情報を聞かされていた。

 

「えとさ、本当につい最近なんだけど、狂暴な生物とか居るじゃない? その中でも、局員が苦戦するようなのを相手にしているグループが居るそうなんだ」

 

「何故そんなことを……。それは、管理局員が?」

 

「ううん。さっきお昼の時に、技術組のマリーやエスロん、リニスさん達と一緒だったんだけど……」

 

 エイミィが管理局の制服のポケットから取り出した携帯端末。それを操作して画像を表示させると、クロノに見せる。

 

 訝しげに端末を覗き込んだクロノだが、すぐに驚きで目が見開かれる。

 

「エスロんが知り合いから貰った画像を送って貰ったんだけど、これに映ってるのって……」

 

「間違いない。なのは達の所に来た相手だ」

 

 画面に写っていたのは二人の人物。近距離から撮影されたものらしく、ある程度はっきりとした画質で写っていた。

 

 一人は仮面を付けている人物。ピンク色の髪をポニーテールに纏め、色合いの濃い服と、同色で縁取りされた白いコート状の物でデザインされた……おそらくバリアジャケットを着ている。そのスタイルから女性と思われるが、デバイスらしき剣を構え凛々しささえ感じさせる姿は、魔導師というよりは剣士に見える。

 

 そして、もう一人の人物。フード付きの外套で全身を覆い、左手に剣を下げたその姿は、つい先日交戦したばかりの魔族とおぼしき人物だった。

 

「やっぱり……。クロノ君の報告資料を見ていなかったら、あたしもそのまま流していたよ」

 

「これを撮影したのは?」

 

「自然保護隊。サーチャーで見回りしている時に、偶然撮影されたものらしいよ」

 

 自然保護隊は管理局の外部組織の一つ。その名が示す通り、辺境世界における自然の保護や観察などを主な仕事とするが、その中には密猟者の取締りも含まれていた。

 

「彼女らが戦っていたのは、保護対象ではないんだな?」

 

「うん。むしろ、襲ってきて手を焼く部類」

 

「対象の生物はどうなった?」

 

「それが、打ちのめしはしたんだけど、トドメはさしてないらしいよ」

 

「なに?」

 

「倒した後は、その生物に近寄って何かしてたみたいだけどね。詳しくはエスロんも聞いていないみたいでさ。画像は、「謎の魔獣ハンターみたいで面白そうだから!」で、貰ったそうだよ」

 

「あいつは……」

 

 アースラスタッフの一員である、技術部の少女の声で今の台詞が再生され、思わず頭を抱えるクロノ。

 

 その動きが止まって、ハッと頭を上げる。端末を片付けようとしていたエイミィが、それに驚いて思わず仰け反る。

 

「うぉぅ、どうしたの、クロノく……」

 

「エイミィ、グループと言ったな? エスロから他のメンバーの事は聞いていないか?」

 

「あ、うん。もう一枚あるよ。……これだけど、こっちにはフードが居ないんだよね」

 

 端末を再び操作して、表示された画像を見せる。

 

「別の二人だな。同じ仮面という事は、剣士とは仲間なのだろうか」

 

 そちらの画像に写っていたのも二人の人物。

 

 ウサギらしき面を付けた赤いドレスの女性……というよりは少女だろうか? 身の丈程の、大きなハンマー型デバイスを振り上げていた。その動きのせいで、三つ編みにされた髪が二本、宙に跳ねている。

 

 もう一人は犬の面を付けた、筋骨隆々の色黒の男だった。黒い胴着の様な物を着て、銀色の籠手を嵌めた両手を構えている。

 

「フード以外の三人も魔族なのかな?」

 

「……いや、断言は出来ないけど多分違うと思う。少なくとも二人は、デバイスらしきものを持っている……まぁ、異世界の住人が、デバイスを使うかどうかは分からないが……こっちに侵入している奴等なら使うかもな」

 

「本当に、面倒な話だよね」

 

 溜め息を吐くクロノに、自身も溜め息を吐きながらエイミィも同意を返していた。

 

「全くだ……ん?……これは」

 

「どうかしたの、クロノ君?」

 

 もう一度一枚目を確認していたクロノが、エイミィに画像の一点を指す。剣士らしき女性の、剣を持っていない方の手。何かを携えている様にも見える。

 

「ここを拡大してほしい」

 

「うん、ちょっと待ってて」

 

 室内にある端末の前に座り、手慣れた手付きでキーボードを操作。ケーブルを伸ばして携帯端末に繋ぎ、大型モニターに画像を繋ぐ。そして、徐々に拡大していき――。

 

「――第一級捜索指定遺失物。ロストロギア……闇の書……」

 

 クロノが呆然として呟いた。

 

 拡大された画像――そこに写っていた一冊の本。表紙に黄金の剣十字が装丁されたその茶表紙の本は、管理局が長年追い続けてきた――第一級に指定する程危険な、ロストロギア。

 

「闇の書……? クロノ君、何か知ってるの?」

 

「知ってる。……とても、嫌な因縁があって、ね」

 

 クロノの只ならぬ様子に、エイミィが不安そうに訊ねると、クロノが苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。

 

 その時、部屋の扉が開いて数人の人物が駆け込んできた。

 

 クロノはすぐに元の仏頂面へと戻り、エイミィが咄嗟に――しかし自然に思える動きでモニターの画像を落とし、二人は扉の方へと振り向いた。

 

「クロノ君、エイミィさん!」

 

「アリシアから、こんな画像が」

 

 入ってきたのはなのはとフェイト、二人に両腕を引きずられる様にしてルティシア。ユーノとアルフに、遅れてアリシアが息を切らせて入ってくる。

 

 フェイトが手に持っている新品の携帯電話。その開かれた画面に、先程クロノ達が見たばかりの、剣士とフードの“女”が写っていた。

 

「あ、あはは、エスロん喋り続けてるね」

 

「あ、あいつ……この画像が重要証拠とかだったら問題だぞ。僕達だけならまだ良いが……」

 

 苦笑するエイミィと頭を抱えるクロノに、入ってきた五人(ルティシアは後ろ向きに引っ張られていたため)はキョトンとした表情を浮かべた。

 

 ……が、すぐに用件を思い出して勢いを取り戻す。

 

 駆け寄ってきた六人を迎えると、入ってきたメンバーが身内ばかりの事もあり、クロノはエイミィを促すと先程消した画像を呼び出させる。

 

「僕達もついさっき知ったばかりなんだが」

 

 二枚の画像を表示させる。もう一枚の方は、アリシアは持っていなかったらしく全員が食い入る様に見つめていた。

 

「一人は白いだけのお面だけど……」

 

「ウサギと犬のお面……?」

 

「何でお面なんて付けてるんだろう?」

 

 ユーノやフェイト、アリシアはその違和感を覚える光景に困惑していた。

 

 なのはも画面を見つめていたが、「う~ん」と首を傾げる。

 

「ねぇ、ルティちゃん」

 

「何でしょう、姉さん?」

 

「あの白い仮面の剣の人と、ハンマーの子。どこかで見たことあるような気がするんだけど……」

 

 なのはがそう言った瞬間、クロノが鋭い目をなのはに向けた事にルティシアは気が付いたが、その目から何か理由があると察してあえて触れない。

 

 クロノの方も気が付かれた事には気が付くが、こちらも何も言わずなのは達に注意を傾けていた。

 

「私もそんな気がするのですが……そういえば、姉さん。ローブの魔族の事も、誰かに似ていると言っていませんでしたか?」

 

「うん……。でも、思い出せないの。思い出しかけると、まるで隠れてしまうみたいで……」

 

「「あ……」」

 

 二人の話を聞いていたユーノと、ずっと画面を見つめていたアルフが同時に声を上げると、周りから二人に視線が集中する。

 

「ボクのは後からで大丈夫だから、アルフ先で良いよ」

 

「そうかい? じゃ、悪いけど先に。エイミィ、男の頭部を拡大できるかい?」

 

 エイミィの指が軽やかに動くと、すぐにアルフが望んだ画像が表示された。

 

「こうかな?」

 

「ありがとね。う~ん……この蒼いの、耳に見えるんだけど……」

 

 アルフが指摘したのは男の頭部にある、白い頭髪に隠れて飾りにも見える蒼い何か。

 

 自身のを動かして見せると、確かに男のそれも同じに見えてくる。

 

「ユーノ達と同じ使い魔の可能性があるわけか」

 

「そう、ボクと同じ……って違う! クロノ! ボクは使い魔じゃないって言ってるだろう!?」

 

 クロノの発言に猛然と反論するユーノ。

 

 よくフェレットもどきだの、なのはの使い魔扱いをされる為、二人のこんなやりとりは日常茶飯事であった。

 

「あたしもさ、最初はそう思ってたんだよね」

 

「あはは、あたしも時々思ってるよー!」

 

 最初の出会いの関係でフェレットのイメージが強いアルフと、何故か笑いながらアリシア。

 

「む……アルフはともかく、アリシア。課題、増やすからね」

 

「えええっ!? ユーノお兄ちゃん、私にだけ酷いよ!?」

 

「君には、普通にこの姿で授業しているじゃないか!」

 

 悲鳴を上げて抗議をするアリシアに、この件で引くつもりが無いユーノは強気で返す。

 

 当のなのはは困った様に笑うだけで、何も言わないが。

 

「アリサ達と一緒の時はフェレットなのにー!」

 

「こっちで会うわけにはいかないだろう! 学校とか色々問題が出てくるし」

 

「それはどうでも良いが、ユーノ? さっき何を言いかけたんだ?」

 

 何やら賑やかにやりとりを続ける二人を制して、クロノがユーノに話を振る。

 

「あ、ああ。そのフードの人。この間、顔が少しだけ見えたんだ」

 

「なに?」

 

「身体の左側が黒い鎧……甲冑? で、右部分は眼を閉じていたけど、赤い髪の女性だった」

 

 話を聞いていたエイミィが、簡単に描かれたデータを呼び出した。それは、“女”の特徴などを記録した簡易資料だった。剣や、黒い鎧の左半身等に追加していく。

 

「何か、随分特徴的な外見になりそうだよね。隠してるのはこういう理由だからかな?」

 

「他にもあるかもしれないぞ、エイミィ」

 

 暫定的な外見を表示させたエイミィに、クロノは肩を竦める。

 

「赤……」

 

「赤……ですか……」

 

 一方で考え込んでいたなのはとルティシア。そして――。

 

「赤い髪……最近会ったのは……ヴィータちゃんとメーアちゃん?」

 

「ヴィータとメーア……あの剣士の女性も……どことなく誰か……シグナムさん?」

 

 二人の中で、少しずつパズルのピースが埋まっていく。

 

「なのは、ルティ? どうしたの?」

 

 ぶつぶつと小さく呟いている二人の様子を見て、不思議そうにフェイトが訊ねる。

 

「何か思い付いた事があるなら教えてほしい。この者達は、第一級捜索指定遺失物……分かりやすく言うと、とても危険なロストロギアに関与している疑いがある」

 

「えっ!?」

 

 フェイト達と平穏な暮らしをする為に、様々な司法取引の結果、数年間の勤労奉仕を申し渡されたプレシアとは一週間に一度しか会えない。

 

 その奉仕期間をさらに短縮するために――優秀な魔導師は一人でも多く欲しいという、クロノやリンディ達とは別の管理局の思惑はあるが、そして何よりも自分がそうしたいと決めたから選んだ、管理局の嘱託魔導師の道。クロノやリンディ達の元で学んでいるフェイトには、その言葉が意味する危険さがよく分かった。

 

 他のメンバーにも――その言葉の意味が分からない者にも、大なり小なりにその危険さは分かった。

 

「彼女達は、現時点ではそのロストロギアの所持疑惑というだけだ。二週間近く前の件は管理外世界で、かつこちらの住人が犯人では無いという事で、そちらから攻めるのは難しい」

 

 クロノが一同を見渡しながら、静かに語る。

 

 普段は賑やかなアリシアも、今のクロノから何かを感じているのか、茶々を入れずに真面目な顔で聞いていた。

 

「だが、僕は……個人的な事と言うのは承知の上で、この件を担当したいと考えている」

 

「クロノ君……?」

 

 普段、“個人的な事”等とは言わないクロノの……そんなクロノを知っている付き合いの長いエイミィだからこそ分かる、この一件に対する並々ならぬ意欲。

 

「そして、これを一人で解決出来ると言う程、自惚れるつもりはない。すまないが、君達の力を貸して欲しい」

 

 そう言って頭を下げるクロノ。数秒経たずに――。

 

「勿論、お手伝いさせて! クロノ君」

 

「クロノ達には色々力になって貰っているし、嘱託魔導師としても、わたしも協力する」

 

 待機状態のレイジングハートとバルディッシュを、差し出した手のひらに乗せて――なのはとフェイトが。

 

「魔族達の事も気になりますが、何よりも誰かを助けるのに理由は要らないと思います」

 

「友達だしね」

 

 ルティシアは薬指に黄金の獅子の指輪を嵌めた右拳を、ユーノもさっきのやりとりとは違っと笑みを浮かべながら、右手を差し出した。

 

「管理局はまだ余り好きじゃないけどさ、あんた達には世話になったし。何よりもフェイトがやる気だからね」

 

「私も、クロノお兄ちゃん達に協力するよ!」

 

 アルフの拳と、アリシアの銀色の銃型デバイス――ベレッタロウズⅡ。

 

「あ、言うまでもなくあたしも協力するからね、クロノ君」

 

 戦いはからっきしだけどと言いながら、エイミィも笑って拳を。

 

 Cの字が描かれた状態で――。

 

 クロノはカード形態で待機中のデバイス――S2Uを持った右手を伸ばし、一同の手で円が描かれる。

 

「……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

(NG編)

 

「マジカル☆プリンセス リリカルなのはと!」

 

「ガ……ガー……しゅ、守護天使フェイトが……」

 

「「闇を払う力になります!」」

 

 

「夢の話じゃなく、現実的に協力してくれ」

 

 

 

「ルティちゃん、逃げたの」

 

「なのは、これ止めよう。台詞が……ちょっと恥ずかしい……かも」

 

 

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