魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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間章 A’s~Sts
その76 「メリークリスマス」


 

 

「――ふっ! はっ!」

 

「……つっ! はぁっ!」

 

 吐き出される、鋭くも短い烈拍の呼吸は同じ。

 

 重く、踏み抜くような足捌きが床を鳴らし。

 

 音もなく、床を滑るような動きで相手に迫る。

 

 二人の持つ木刀が、何度も激しい打ち合いを演じていた。

 

「良い腕ですね、シグナムさん」

 

「シグナムでいい。恭也殿こそかなりのものだ。良い騎士になれる」

 

「俺も、呼び捨てで。しかし、シグナムは騎士というよりも武士な気がするんだがな」

 

 高町家にある道場内。

 

 そこで稽古試合をしている恭也とシグナムは、まさに対称的だった。

 

“静”と“柔”が恭也ならば、シグナムは“動”と“剛”。

 

 かと思えば、両者は動きを逆転させて刃を重ねる。

 

 恭也が小太刀を模した二刀なのに対し、シグナムは長刀の一振りのみを構えていた。

 

「お兄ちゃんも、シグナムさんも、頑張ってー!」

 

「恭也さんとシグナム、良い勝負だね」

 

「恭ちゃん、負けちゃ駄目だよー! シグナムさん、恭ちゃんを倒しちゃえ!」

 

「……この世界に、ソウルはないはず。しかし、それに劣らぬ何かを感じる」

 

 道場の端、横一列に座ってこれを観戦する五人。

 

 なのはとフェイトは二人共を応援し、シグナムに一本取られた美由希のそれは、やや力が入った極端なものだった。

 

 恭也には常に勝ち続けてほしいが、ごく稀には負ける姿も見てみたい。

 

 もちろんそれは、命が関わらない時に限るが。

 

 そしてシグナムに同行してきたメーアは、自分の視点で恭也の動きを観察し、酷く感心していた。

 

 魔法やそういった力を抜きで考えれば、この世界における恭也の動きは驚異に値する。

 

「……美由希とやらからもその片鱗は感じる。真面目に鍛えれば、あの世界でも剣聖になれる」

 

 自分の知る人間世界。

 

 そこで暮らす冒険者の中でも、最上位のさらに一部の者しか名乗る者がいない二つ名。

 

 剣士としては完成に近い恭也はもとより、美由希からもその可能性を感じていた。

 

 一対一の向かい合っての試合であれば、魔法を使わせることなく得意の“足”で接近戦に持ち込めば、冒険者を相手に今でもかなりいいところまではいくだろうが。

 

 二刀流……ダブルブレードを初めとする、武魔両道の者を相手にすれば苦戦は免れない。

 

 逆に言えば、そういった者以外であれば充分通用する強さである。

 

 ……その時、武を競っていた二人の木刀の動きが止まった。

 

 恭也の振るう木刀の一振りが、シグナムの脇腹に寸止めで添えられる形で。

 

「私の敗けだな」

 

 シグナムがそう言って構えを解くと、恭也も木刀を下ろす。

 

 道場の中央に戻って一礼する二人に、観戦していた者達から拍手が送られる。

 

「……惜しい」

 

 手を叩きながら、ポツリと呟くメーア。

 

“闇の円卓の騎士”メイアとしてではなく、純粋に強さを尊ぶ者の一人として。

 

 今の彼女には、かつての強さは無い。

 

 あの“夜天の書”にまつわる事件で、深く傷付いた彼女の力は主に封じられ眠りについており、現在は魔力を持った人間の子供でしか無かった。

 

 もっとも、考えのそれ自体は、強い者が上に立つという魔族としての考えであったが。

 

「ふむ……だが、意外と悔しさは少ないな。それよりも、次は勝つという思いの方が強いか」

 

 敗けはしたが、清々しさも感じられる。

 

 一人の剣士として、納得のいく試合が出来たことも大きいだろうと、シグナムはそう納得していた。

 

「良い試合をさせてもらった。ありがとう、恭也」

 

「こちらこそ。また、いつでも来てください」

 

 恭也もまた、存分に力を出し切れる相手をしたことで、充足した時間が得られていた。

 

 普段は発展途上の美由希が身体を壊さないように気を配るが、今の時間はそれをしなくても良かったからだろう。

 

「それにしても、暑いな」

 

 美由希から渡されたタオルで汗を拭う恭也。

 

 12月25日。

 

 朝から粉雪が舞う天気であったが、道場内にはかなりの熱気が籠っていた。

 

 先に行われた美由希とシグナムの試合に、今の自分の試合。

 

 特に今は試合直後ということもあるが、それとは別の……直接的な原因に視線を向けた。

 

「おーい、ルティシア? もうちょっと下げられないか?」

 

「分かりました」

 

 マフラーで目以外の顔の大半も隠し、かなりの枚数の衣服を着込んでいる少女が頷くと、室内温度が徐々に下がっていく。

 

 夏以降は何かが吹っ切れたのか、時折道場に足を運ぶこともあったルティシアだが、日々の気温が下がるに連れてその頻度も減っていっていた。

 

 子供組は、本日月村家でクリスマスパーティーが行われる。

 

 時間になれば迎えが来るため、彼女としてはそれまでの間、部屋に閉じ籠るつもりだったらしいが。

 

 シグナムとメーアの来訪を知った、泊まりがけで遊びに来ていたフェイトとなのはによって、この場に連れ出されたらしい。

 

「それにしても、また随分と着込んでいるようだが、そんなに辛いのか?」

 

 美由希に礼を言ってタオルを受け取ると、シグナムはルティシアに問う。

 

「寒さ自体は体温を高めるればなんとかなるのですが、代わりに高温の熱源となってしまいます。ですので、服を着込むことで近くの人が火傷しないようにしているのです」

 

「その姿も配慮の内だったのだな」

 

 なるほど、と頷くシグナム。

 

「夜も、ルティちゃんを抱いていたら暖かいんですよー」

 

 ね? と、ルティシアを挟んで送られてきた視線に頷き、フェイトも同意を示す。

 

「アルフも暖かいけど、ルティはそれ以上だった」

 

 家の中に居れば、その部屋は暖房器具を使う必要も無くなってしまう。

 

 危険もなく、空気も汚さない天然のエコ暖房。

 

「確かに、主はやても最近はザフィーラとよく一緒にいるな」

 

 二人の説明に、シグナムは主の少女の姿を思い出した。

 

 はやての移動時にはよくリインフォースが抱いて運んでいたのだが、最近の彼女はザフィーラの背に乗ることが増えていたのだ。

 

 おかげで、リインフォースが寂しそうに佇む姿も見られるようになってしまったが。

 

「でも、ここまで着込む必要も、つもりも無かったのですが……」

 

「ルティ? 今、何か言った?」

 

「いえ、何も。気のせいではありませんか?」

 

 マフラーの内側での小さな呟きに、過剰に服を着せた人物が「うん?」と、小首を傾げた。

 

「そういえば、もう10時だな。そろそろ、迎えが来るんじゃないか?」

 

 時計を確認した恭也が妹達に声をかける。

 

「あ、そうだね。じゃ、行こうか? ルティちゃん、フェイトちゃん」

 

「はい」

 

「うん」

 

 なのはに続いて、ルティシアとフェイトも続いて立ち上がる。

 

「よし、美由希。俺達も父さん達の応援に行くぞ」

 

 クリスマス。翠屋にも大勢の客が訪れることを見越して、二人も応援に向かうのだ。

 

 もう一人、月村忍も手伝いに来るという。

 

「はーい。……あ、タオルもらいますねー」

 

「すまない。では、我々も引き上げるとしよう、メーア」

 

「……うん。有意義な時間だった」

 

 残るメンバーも、それぞれに動き出す。

 

 先に外に出ていたなのは達三人だが、不意に、ルティシアが背後から視線を感じて振り返った。

 

 その先にいたのは、赤い長髪の娘――メーア。

 

 彼女もコートなどを着込んでいたが、その目は挑発的なものを含んでいた。

 

「(……もうちょっと、強く出たらどうだ?)」

 

 声を使わない思考波の類い。

 

「(心配してくれているだけですから。それは素直に受け取るべきです)」

 

 ルティシアも魔晶石の魔力を用いて、メーアへ〈遠話〉で返す。

 

 妹が教えてくれた方法のおかげで、以前よりも魔晶石を気にして魔法を使うことは減っていた。

 

 それでも、今日のように相性が悪い精霊の時には力を貸して貰えないため、まだまだ頼ることには変わりないが。

 

「(……セイティーグの竜人も、形無し)」

 

「(この姿を見た所で、姉様達や仲間達も何も言いません)」

 

「(……明確な弱点持ちは大変だな。知られたくないであろう、私のような敵の前で)」

 

 メーアの言葉は、あながち間違っている訳では無い。

 

 数多の次元世界を守護する使命を帯びた聖竜族と、侵略する魔族という二人。

 

 彼女達の立場でいうならば、二人は本来、敵同士であった。

 

 しかし、魔族の中にも例外は存在する。セイティーグを初めとした“守護者”達と、協力体制を築く者も僅かながらにいるのだ。

 

 そしてルティシアの知るメイアが仕える主は、魔族の中でもかなり変わり者のようだった。

 

 魔界に帰還したばかりの彼女の主が、今後どのような立場を示すのか。

 

“ここ”からでは魔界の状況は分からないが、二人が“本気”で戦うことになるのかどうかは、その主次第となるだろう。

 

 そして現時点でのルティシアとしては、『はやての家族』であるメーアと戦うつもりは無い。

 

「(弱点があるから、それを克服する努力や工夫が生み出されるのです。魔法に頼る、以外の)」

 

「(……それもまた、道理だな)」

 

 その言葉に、今度はメーアも素直に同意を示した。

 

 かつてのルティシアと同様、正式にはやてに迎え入れられた彼女は、自分が置かれた環境に大きな戸惑いを見せていた。

 

 ヴィータやルティシアに対して挑発的な言葉を使うことが多いが、それも本来の自分を見失わないため。

 

 自分は魔族、相容れない敵なのだからと。

 

 それを理解した上で、二人は家族や知人として応えている。

 

 ヴィータに至っては、いっそのこと見失ってしまえばいい! と本気で思っていたが。

 

 それが出来れば、普段そのよく動く舌でやり込められている相手への、最大の意趣返しになるであろう。

 

 一方で、フェイトやアリシアにとっては、メイアは家族を長く苦しめてきた魔族の同僚。彼女とも戦ったことのある二人にとって、複雑な思いを抱く相手である。

 

 それでもアリシアは持ち前のポジティブさで、フェイトは拠点の“システム”の仲間として、メイアとメーアは別として割り切ることにしていた。

 

「(……いつぞやの痛みは忘れていない。私を助けるためであったとしても)」

 

「(私もあの日のことは忘れません。自分のミスと、大事な人達を傷付けられました)」

 

 二人が戦ったのは二度。

 

 しかし……その度にどちらかが暴走した状態であった。

 

 つまり、二人が本当の意味で戦ったことは無い。

 

 そして、メイアが主やはやてを救うために存在を賭けた策を実行した結果、三度目は無いかと思われた。

 

「(……いつかその時が来たら、存分に試合う。戦いやすい、季節で)」

 

「(稽古試合でしたら、受けて立ちましょう)」

 

 二人の目が、僅かに笑みの形へと。

 

「ルティちゃーん、どうかしたの?」

 

「今、行きます」

 

「メーア。シャマルとヴィータが買い出しに行くそうだが、お前はどうする?」

 

「……私も行く。ヴィータが、また無駄に大量の菓子を買うのを止めないと。むしろ、はやてがいないなら弁当を――」

 

 視線を外した二人は、それぞれの待ち人のもとへ駆け寄った。

 

 

     ※ ※ ※

 

 

 迎えに来たノエルの運転する車に乗り込み、三人は月村家を目指していた。

 

「――アリサちゃん、アリシアちゃん、はやてちゃん達は、すずかちゃんのお家に泊まり込みだったよね?」

 

「うん。パーティーの準備をするんだって、アリシアが張り切ってた」

 

「確か、全員揃ってからという話だったのでは?」

 

 数日前に、学校で話した時はそうでしたよね? と確認するルティシアに、二人も揃って頷く。

 

「はやてがやる気だったらしい」

 

「……あー……はやてちゃん、最近はずっと勉強ばかりしてるってヴィータちゃんが愚痴ってた」

 

「なるほど。今日は、その関係で羽目を外し過ぎているのかもしれませんね」

 

 はやては夏以降、多忙な毎日を送っていた。

 

 魔法に頼らない、麻痺が治った足を動かすためのリハビリに始まり。

 

 みんなと同じ学校に通うための勉強や、魔導師(はやて曰く「騎士のみんなに倣って、魔導騎士や!」)としての鍛練。

 

 過去に夜天の書(=闇の書)が引き起こした事件に関連する、クロノやリンディ達への協力。

 

 それと、何故か帝王学。

 

 グレアムを通じて彼の使い魔である姉妹や、どういう縁かは分からないがアシェラを家庭教師に招いている。

 

 それに毎日の家事もこなしながらの、クロノも心配に思うほどの分刻みのスケジュール。

 

 いきなり濃縮された時間を過ごし始めたはやてに、友人や家族の誰もが心配した。

 

 その度に、「今が“ちょっと”大変なだけで、後は楽になるから」と、はやては死にそうな顔で語る。

 

「大丈夫かな……はやてちゃん」

 

「うん。あれだけ一気に詰め込むのは、身体の負担も大きいのに」

 

「そうだよね。秘訣があるから大丈夫と言ってたけど……ぜんぜんそうは見えないし。みんなが知らないだけで、他にも何かしていそう」

 

 そして二人はグリンと首を動かすと、窓の外の雪景色を見ている人物に。

 

「「話を、きちんと聞いてる? ルティ(ちゃん)」」

 

 いきなり話が自分に向けられたことに、ルティシアは不思議そうにしていた。

 

「え、私もですか? 気を付けていますので、見て心配になるようなことにはなっていないと思いますが」

 

「ルティちゃんは、今はもうそんなことはしていないしね!」

 

「そうですね。今はこの季節ですし――」

 

「“今”は?」

 

「あ……」

 

 笑顔のなのはにつられて話すルティシアだったが、それが鎌かけであったことに気付いた。

 

「気を付けているのは、内容? それとも、気付かれない方に?」

 

「き……な、内容です」

 

 フェイトからの静かな問いかけに、僅かに視線を逸らす。

 

 それを見た二人は確信する。

 

 内容では無く、隠し方を上手くしたのだと。

 

「なのは」

 

「なに、フェイトちゃん」

 

「私は、パーティーの後に家に帰るから」

 

「プレシアさんやリニスさんが帰ってくるんだよね? 大丈夫、きちんとしておくから」

 

「何をですか…………」

 

 真顔で話す不吉極まりない二人の会話に、ルティシアは悪寒を感じていた。

 

(剣技や体術、闘気法の基本の他に聖闘士の方の鍛練も取り入れただけなのですが……)

 

 ルティシアが指導を受けている“黄金聖闘士達の基本”のため、それが既に普通とずれていることには気が付いていない。

 

「昨夜は大変な賑わいでした。皆さんもいらっしゃれば良かったのですが」

 

 後ろの微笑ましいやりとりに笑いながら、ノエルがミラー越しに三人に話しかける。

 

「すみません。ネコ達に埋もれながら眠るのは、遠慮させて下さい」

 

 横から迫る不穏な空気を振り払うかのように、ルティシアが反応する。

 

「それは残念ですね。そろそろ、見えてきますよ」

 

「見える……ですか?」

 

 ノエルの言葉に顔を見合わせた三人は、シートベルトで固定された身体を動かし、見えてきたソレを捉えた。

 

 月村家の玄関脇にそびえ立つ、大きなクリスマスツリー。

 

「わー……!」

 

「すごい」

 

 十メートルに近いソレには様々なクリスマスらしい飾り付けがされており、鮮やかなイルミネーションも施されている。

 

「あれ? 何かおかしくありませんか?」

 

 それに近付くにつれ、ルティシアがソレに違和感を感じ始めた。

 

 車を降りて近くでそれを見れば、二人もソレが何か違うことに気が付いた。

 

 何よりも、甲冑を着たようなたくましい足。

 

 色合いは変わってはいるが――。

 

「ら、ラミエル……?」

 

 アリシアが扱うデバイスによって呼び出される狙撃型天使と、目の前のソレは非常によく似ていた。

 

 いつもの水色から、脚部は茶色、それより上は濃緑に変えられている。

 

 色だけでは無い。ツリーらしく、外見もかなり弄られていた。

 

「じゃじゃーん! どうどう!? ラミエル・クリスマスバージョン!」

 

 近くの茂みから飛び出してきた、フェイトに良く似た小柄な人物がそう言って胸を張る。

 

「本当に、アリシアちゃんのラミエルだったんだ」

 

「細かい部分まで、良く似せていますね」

 

 感心したように見上げるなのは達の横で、フェイトは姉に疑問を問いかけた。

 

「アリシア。これ、どうしたの?」

 

「リニスが忙しそうだったからマリーさんとエスロさんに相談したら、二人がノリノリでやってくれた!」

 

「泣くよ、リニス……」

 

「えー……そっかな? しばらくこのままにしておこうと思ったんだけど」

 

「姿を隠す機能があるとは言っても、狙撃役が目立ってどうす……って、アリシア!? 顔、真っ青」

 

 呆れて姉を見るフェイトの目が、驚きに大きく見開かれた。

 

 その声に反応したなのは達も、アリシアの様子に同じ反応を見せる。

 

 アリシアの肌からは血の気が引き、歯はカチカチ……と小刻みに音を立てていた。

 

「ちょっと、みんなの驚く顔が見たくて十五分くらいここに」

 

 そう言って、雪の積もった茂みを指す。

 

「アリシア。お願い、もっとよく考えて」

 

「バリアジャケット、纏っとけば良かったね。どうやってみんなの前に飛び出すかしか、考えて無かった」

 

「そこじゃなくて、もっと根本的に――」

 

 アリシアをルティシアの側に寄せて、フェイトは必死で姉に語り続ける。

 

「フェイトちゃんも大変そうだね……」

 

「そうですね……」

 

 こんこんと姉に言って聞かせている親友を見つめ、一人は心の底から、一人は棚に上げて、姉妹は言葉を交わした。

 

「あ~……あったかい」と蕩けた顔で言っている少女が、どれほど話を聴いていたかは不明であったが。

 

 案内された屋敷内。パーティー会場となった室内もまた、かなりの力の入れようである。

 

 飾り付けはもちろんのこと。部屋の中央の長テーブルの上にも、ケーキや豪奢な料理が所狭しと並んで置かれている。

 

「なのはちゃん、ルティシアちゃん。いらっしゃい」

 

 疲れた様子を隠しきれないすずかが、部屋に入ってきた友人達を出迎えた。

 

 それだけで、昨日からの様子が分かる。

 

 テンションが高いアリサと、自らの足で立てるようになったはやても満面の笑みであった。

 

「えと、すずかちゃん、大丈夫?」

 

「ありがとう、なのはちゃん。後はお願いね」

 

「え、何を……すずかちゃん? すずかちゃん、しっかり!」

 

「ちょっとばかり、気合いを入れすぎてしもたかな? みんな、しっかり食べてな!」

 

「いえ、はやて、これは作り過ぎでしょう……。ノエルさんとファリンさんが加わっても食べきれるかどうか」

 

「そう言うあんたは、マフラーくらい外したらどう? 寒くないようにしてあるでしょう」

 

「そうですね。……フェイト、外しても良いでしょうか?」

 

「うん……って、私に聴くの?」

 

「巻いてくれたのはフェイトですしね」

 

「あんたね……気の遣い方が、やっぱりどこか変でしょ!」

 

「相変わらず、どっかずれとるなぁ……ルティシアちゃん」

 

「あ。魔力の実が切れたから、ラミエルも消えちゃった」

 

「アリシア。あれはルティのだから、使いすぎたら駄目だよ?」

 

「あ、アリサちゃん。そっちのジュースを」

 

「はい、なのは……ルティシアとアリシア! チョコは後に――」

 

 開かれたままだった扉が閉じられるが、賑やかに騒ぐ声はまだ聞こえてくる。

 

 一年前のクリスマス。

 

 あの日の願いは、あの時よりも大勢で――より良い形で叶えられた。

 

 イベントだらけで色々なことがあった、長いようで短くも感じる一年。

 

『せーの……メリークリスマス!!』

 

 その声だけは、扉越しにもはっきりと。

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