魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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※ 旅館編は(略)
 
 
旅先だとテンションが上がりやすく、なぜか急に変わったことを始めることってありませんか?

(注)作者のことではありません
 
 
 



その84 旅館――蠢動

 

 

「――そして、話を聞いて恐怖で震える彼女に言いました。『そんなに怖がってちゃダメだよ。教わったでしょ? 恐怖は相手を強くして、自分を弱くするだけだって』」

 

 暗闇に閉ざされた部屋の中。近くにあるはずの壁や襖、障子すらも見えない中で、輪になって座っている少女達の顔を、光量を抑えた淡い魔力の明かりが照らし出していた。

 

 その中で一人。声音を低く落とし、いつも以上に抑揚なく淡々と喋っているのは、ルティシアだ。

 

 話の内容自体はそれほど恐怖を感じるものではないが、逆にその無表情に話す様の方が雰囲気に一役買っている。

 

 ちなみに、少女達がなぜこんなことをしているかと言えば、入浴と食事を終えて少しばかりの時間が経った頃……

 

「怪談しましょ!」

 

 と、突然アリサが言い始めたからである。

 

“怪談”そのものを知らないテスタロッサ姉妹は聞き役に徹しているが、トップを切ったすずかの語りに、二人の顔からはみるみる血の気が引いていくこととなった。

 

 もっとも、すずかの語りが余りにも迫真のモノだったために、二人以外のルティシアを除くメンバーの顔色も似たようなものであったが。

 

 話の後、みんなの表情が強張っている中で一人平然としていた彼女に、アリサが「あんた、やっぱりどこかおかしいでしょ!?」とツッコム場面も。

 

 しかし、それに対するルティシアの答えは、

 

「悪意ある幽霊は、ただのモンスターでは?」

 

 と、やはりズレたものだった。

 

 その後も、身振り手振りを交えるアリサ、“期待通りに”すずかに負けず劣らずな話を持ち出してきたはやてが続く。

 

 そして、もともとそういった話のストックを持たないなのはは、魔導師になった時のことを語った。怪談とは違う恐怖体験として、アラケスのことも含め内容には若干の脚色がされている。

 

 そのなのはの後がルティシア……なのだが、すずかやはやてとは違う意味で、彼女は一番警戒されていた。

 

 真面目なようで少しズレている彼女のこと、何をしでかすか分からなかったからである。

 

 怪談というものを“きちんと正確に”理解しているのかという根本的な問題もある中で、彼女が語り始めたのは故郷における姉妹の話だった。

 

 主な登場人物は二人。はやて以外のメンバーとは以前に少しだけ面識のある者達で、ルティシアの双子だというレティシアと、末妹のローレシア。

 

 当時の状況から、前者はやたらと肌を露出している姿を、後者はやたらと怠そうな黒っぽい女の子というイメージを持たれてしまっている。

 

 今回ルティシアが話しているのは、そんな二人の間で起きた話のようだ。

 

「『知識だけあってもダメだと思うよ。実戦はやっぱり勝手が違うから。それにしても、本当にローラは怖がりなんだね。それだと、いざという時にせっかく覚えた知識も役に立たないかもしれないよ?』と、レティとしては忠告のつもりだったのでしょう」

 

 なのはと同じく、彼女の話も怪談ではなく体験談の類いではあるが、みんな興味津々といった様子で話を聞いていた。

 

 なにしろ、ルティシアがなのはとフェイト以外にあちらでの話をするのは、正体を打ち明けたことを除くとこれが初めてである。

 

 全く見知らぬ世界の、なおかつ“あの”ルティシアの姉妹の話。興味を持つなという方が難しいというもの。

 

 アリサやすずかにとってはミッドチルダも同様のはずなのだが、こちらについてはいくらか身近な存在であった。魔法という技術はあっても、フェイトやアリシアが自分達と変わらないということもあるが、何より誰かさんが撮影したミッドチルダの写真もあるからだ。

 

 そして、セイティーグについては断片的に知っているなのは達にとっても、今回の内容は今までに聞いたことがないものだった。

 

 よく話をするのは訓練風景だが、彼女の師である長姉のことは時折それに出てくるものの、他にも存在するという姉妹達の話は一切出てこないのである。

 

 ルティシア曰く、「それぞれで行う修行内容が違うから」

 

 騒動の発端は、ひたすら魔術書を読み続けるだけのローレシアに、ふとレティシアが興味を持ったことからだった。

 

 先述のように、姉妹ひとりひとり修行内容は異なっている。そのため、“他者の修行内容には、求められた時以外は干渉しない”という暗黙の決まりがあり、レティシアもそれは充分理解している。

 

『歳が近く、忙しくて最近はなかなか時間が合わなかった三人。それがたまたま揃い、久しぶりのお喋りの話題に』と、恐らくはその程度のつもりだったのだろう。

 

 やがてレティシアは、日がな一日ベッドに寝転がって本を読むだけというローレシアのために、自分が知る色々な話を始めた。

 

 運動どころかベッドの上からすら動く気配のない彼女が、興味を持って自主的に行動することを狙って。

 

 ローレシアが師事しているエリシアを引き合いに、研究と旅好きは両立出来ることを巧みに話した。

 

 途中まではレティシアの狙い通りに話が進み、ローレシアも少しずつだが興味を示していく。

 

 問題が起きたのは、戦闘行為を含む危険な目にあった話を始めた時だった。

 

 久しぶりに三人で過ごす時間ということもあって、レティシアも少し気持ちが高ぶっていたのだろう。少しばかり大げさな表現を用いて話し、この時のローレシアが極度の怖がりだったことが重なった結果――。

 

「自分達の使命と……なによりローラのために、やんわりとたしなめようとしたレティが伸ばした手を、ローラは珍しく乱暴に振り払いました。そして一言」

 

 ルティシアはそこで言葉を切ると、やや間を置いてから再び口を開いた。

 

「『ゆるさない』」

 

 まるで地の底から聞こえる呻き声のように。

 

 ビクリ。――ここまで普通に聞いていた少女達の身体が、それを耳にすると大きく跳ねた。

 

「え?」と、小さく驚きの声を上げるレティシアに、ローレシアはもう一度「ゆるさない」と告げる。

 

 ルティシアとレティシアの前には、底冷えする目付きをしたローレシアの姿があった。

 

 結果的に怖がらせてしまったことか、それとも忠告の件か。何が彼女をそこまで激怒させたのかは、今となっては分からない。

 

 確実なのは……怒る少女がその日の夜、レティシアを城の外に呼び出したということ。

 

 ――そして。

 

 不意にルティシアが沈黙すると、静かな部屋にゴクリと誰かの唾を飲みこむ音が大きく響いた。

 

「そ、それでそのあと、どう……なったの?」

 

 すずか達の話を聞いていた時のようにフェイトと寄り添いながら、意を決してなのはが訊ねる。

 

 だが、ルティシアはその問いにはすぐには答えず、逆に彼女は感情のこもらない目で一同をゆっくりと見渡した。

 

 全く感情が浮かんでいない彼女の顔が、淡くぼんやりとした光のせいでより不気味さを醸し出している。

 

 語り始めた当初とは真逆に、今や完全に腰が引けてしまっている少女達に向かって、ルティシアは静かな口調で続きを口にした。

 

「翌朝、ローラの部屋を訪ねた私が見たものは、いつもと変わらない彼女と……隅で膝を抱えるレティの姿でした」

 

「悪夢怖い、幻影怖い、なんだかよく分からないモノ怖い……」と、ブツブツ言い続ける双子の姿を目にして。

 

 いつも通りベッドに横になった姿勢で本を読みながら、ローレシアは部屋に入ってきたルティシアに、スッキリした顔を向けた。

 

『レティが言うことも正しい。百聞は一見にしかず。百見は一考に、百考は一行に、そして百行は一果にしかず。だから、レティには私の成果を見てもらった。ジッックリと』

 

 喋るのも面倒だと、ルティシアの頭の中に直接思念による『声』が届く。

 

「その時からですね、ローラが怖がりではなくなったのは。その代わり、それからしばらくの間、レティが一人で眠れなくもなりましたが」

 

「以上です」と、ルティシアが小さく頭を下げる。

 

 無表情のままにも見えるその顔に、温かな感情が戻ってきているのが少女達には分かった。

 

 あちらこちらから、ホッと息をつく声が聞こえてくる。

 

「いったい何したのよ、その子は……」

 

 動悸が早くなっている胸を押さえながら、それでも平然を装うアリサ。

 

 それへの答えは、「分かりません」であった。

 

「私も聞いてはみたのですが、二人とも教えてくれなかったのです」

 

「ん? あんたも一緒に居たんじゃないの?」

 

「そういえば、ルティシアちゃんは翌朝に訪ねたらって言ってたような」

 

 疑問を口にするアリサの後に、すずかが記憶を辿りながら言う。

 

 ルティシアは小さく一つ頷き、

 

「私は夜間鍛練に行っていましたので」

 

「そんな話の後で、なんで訓練に行けるのよ……あんたは」

 

 呆れたようにアリサが言うと、「変ですか?」と竜の少女は不思議そうな顔をした。

 

「訓練……鍛練だっけ? もしかして、夜の間ずっとやってたの? よく倒れないわね」

 

「もちろんずっとです。それに今の自分には無理なことでも、その自分を超えることで出来るようになるのは楽しいですしね。それまでは無茶だと思われやすいですが」

 

「まぁ、ルティシアちゃんらしいっていえば、ルティシアちゃんらしいけどな」

 

 はやての言葉に、なのはとフェイト、それにアリシアも「うんうん」と頷いている。ルティシアの言い分については、なのはとフェイトに少し思うことがあるようだが。

 

 ルティシアの話が一区切りついたところで、彼女が灯していた〈明かり〉の魔法が消えた。

 

 何も見えない闇の中、部屋の中は『シン……』と静まりかえる。

 

 そんな時、突如現れた火の玉を目の当たりにした少女達の口から、一斉に絹を裂くような悲鳴が飛び出した。

 

「こうでしたか?」

 

「……って、なにしてんのよ、あんたはーーっ!?」

 

 何かを思い出すかのように言うルティシアに、アリサは思わず敷いていた座蒲団を思い切り投げつける。

 

 もちろん引火しないように炎を避けて。

 

 避けずに顔面で座蒲団を受け止めた少女は、その姿勢のままである人物を指で差した。

 

 みんながその先を視線で辿ると、

 

「そういえば、貸した本にそんなことが書いとったような」

 

「またはやての仕業か!!」

 

 ポン! と手を叩く姿に向かって、こちらにも座蒲団が飛ぶ。

 

「突然現れた火の玉……それを見たのはある夏の日の朝でした……」

 

「なにシレッと語りに入ってるの、すずか!」

 

「すずかちゃーん! 止めて! 止めてーっ!?」

 

「うう……怪談がミッドに無くて良かった」

 

「な、なのはぁ~」

 

 

 

 

「ったく……驚かせやがって」

 

 悲鳴が上がった際、咄嗟に構えたアイゼンを戻したヴィータは、元通り部屋の端に座り直した。

 

「……ヴィータ? 膝が笑っているような」

 

「き、気のせいに決まってるだろ」

 

 やはり隣に座っている人物に、つっけんどんな物言いで返す。その声は少し上ずっていたが、相手はあえて指摘をしなかった。

 

 怪談には加わっていないものの、ヴィータとメーアはずっとここで話を聞いていたのである。

 

「……それは失礼した。特になんてことのない話だしね」

 

「ま、まあな」

 

「……勇猛果敢な騎士ヴィータに怖いものなんかないし」

 

「お、おう」

 

 それきり二人が沈黙すると、歓声の中ですずかが再び語り始める。

 

 メーアがはやて達の方に聞こえないよう、ごくごく小さな声で呟いた。

 

「(……ところで、最初に比べると距離が近いことについて)」

 

「(お前は本っ当に性格が悪いな!)」

 

「(……何を今さら。魔界で性格の良い魔族を探す方が至難。イイ性格なら多いけど)」

 

「(いるな。横に)」

 

「(……ありがとう)」

 

「(誉めてねぇよ!)」

 

 

     ※ ※ ※

 

 

「や……やっと終わった」

 

 アリシアが震える手を伸ばし、横に置いてあった懐中電灯のような機械のスイッチを入れる。

 

 

 すると部屋の中の闇が消え去り、電灯の灯りが戻ると同時に隣の部屋からの談笑が聞こえ始めた。

 

 光の代わりに、一定空間を闇に閉ざすという懐中電灯型デバイス。オマケで外への消音効果付き。

 

(こういう時にはうってつけのデバイスだけど、まさか使うことになるとは思わなかった。あれ? そういえば、これって誰に貰ったんだっけ?)

 

 イタズラ用だと貰った記憶はあるのに、誰からなのかは思い出せなかった。

 

(ま、いっか。そのうち思いだせるはず~)

 

 そして精も根も尽き果てたとばかりに、一斉に崩れ落ちる少女達(マイナス一名)。

 

「まさか、すずかちゃんが話し続けるとは思わんかったわ」

 

「というより、予想できないわよ……」

 

 並んで横たわるはやてとアリサの横では、意識が遠のいているフェイトを介抱するなのはの姿があった。

 

「もう二十一時を過ぎていますね」

 

 その方が雰囲気があるからと、ずっと維持していた炎を消したルティシアが、壁にかかっている柱時計を見上げて言う。

 

「すずかちゃん、一人でどれだけ喋ってたんだろう」

 

 なのはも疲れた様子で時計を見つめる。

 

 食後しばらくはお喋りに興じていて、怪談を始めたのは十九時の半ばを回った辺りだったはず。

 

 一人一人それなりの時間で語っていた気がするが、終わってみるとずっとすずかだった感じもある。

 

「では、姉さん。ちょっと行ってきます」

 

「ふぇ? こんな時間にどこ行くの?」

 

 聞きはするものの、なんとなく彼女からの答えは分かっていた。

 

 立ち上がり、手首のリストバンドを確かめ始めた妹の浴衣を、とりあえずなのはは片手で掴む。

 

 最近は鳴りを潜めていたが、彼女が唐突なのは今に始まったことではない。そのため、なのはの対応も慣れたものだった。

 

 既に上がったのか、外の雨音は聞こえてこない。

 

「せっかくなので、夜間鍛練に行こうかと」

 

「何がせっかくなの?」

 

「話をしたら懐かしくなりましたので、久しぶりに汗を流そうかと」

 

 予想通りの答えが返ってくる。

 

 セイティーグにいた頃は一日――夜通しの鍛練もしていたルティシアだが、なのは達と生活するようになってから夜のは行わないようにしていた。

 

 一緒に休んでいて、抜け出せなくて行けなかったと言うべきなのかもしれないが。

 

 懐かしい話に刺激を受けたようだ。

 

「汗ならさっき温泉で流したよね?」

 

「良い表現です」

 

「えへへー……って、誤魔化されないから!?」

 

 ほめられたなのはは、思わず手を放しそうになってしまう。しっかりと掴み直した。

 

「今日だけでもいけませんか?」

 

「うーん…………」

 

 ルティシアの一人で鍛練というのは、無茶なことを平然とやりそうな彼女のこと、なのはとしては却下したいところである。

 

 しかし、昔が懐かしくなってという気持ちも身に覚えがあった。

 

 なんの気なしに、以前に遊んでいたゲームや本を見つけてしまった時の心境に近い。

 

 ルティシアが本気で行こうとするなら、浴衣を脱げばいい話である。

 

 彼女は浴衣の類いや履きなれない物を大の苦手としているため、鍛練に行くなら確実に着替えるからだ。

 

 なのはの方も、掴むというよりは摘まんでいるのに近い。

 

 つまり、簡単に行けるのにそれをしないということは、ルティシアも懐かしさの方が強いのであろう。

 

 なにより、極端な話だと転移魔法もあるのだから。

 

 どうしようかと悩むなのはは、介抱していたフェイトの意識が戻りつつあるのに気付き――あることを思い付いた。

 

 なのはが、“三人で行くなら”という条件を告げようとした時だった。

 

「じゃあ、いよいよメインイベントの時間よ!」

 

 立ち直ったアリサの手には、地図のようなモノが握られていた。

 

「メインイベント? アリサちゃん、それは?」

 

「まだ何かあるの……?」

 

 訝しげななのはに、フェイトは明らかに警戒している。

 

 はやてやすずかも不思議そうに顔を見合わせる中、不敵に笑うアリサ……とアリシア。

 

「ジャジャーン! きもだめし~~」

 

 テレビの某青タヌ……猫型ロボットの口調で、アリシアも同じ物を浴衣の襟口から取り出して見せた。

 

 このためだけに、ずっと入れていたらしい。

 

「この旅館の恒例イベントよ! まあ、多分すずかの話よりはマシでしょ」

 

 本当ならこの肝試し前の軽い怪談のつもりだったのだが、すっかりあちらにお株を奪われた感ではある。

 

「や、やめとこうよ、アリサちゃん」

 

 三人で鍛練に行こうとした矢先の、肝試しという不吉過ぎるモノは避けたいなのはであったが、アリサは首を横に振った。

 

「なに言ってるのよ、なのは。せっかくだから楽しまないと。それとも、怖いのかしら?」

 

 挑戦的に言うと、なのはは一瞬躊躇するも、

 

「こ、怖くなんかないよ」

 

 次にはこう言っていた。

 

 負けず嫌いな自分に、すぐさま内心で後悔することになったが。

 

「この地図に示されたコースで行くんだけど、コレは二枚しか無いわ。だから、二チームに分かれましょ。最初のチームが出た後に、時間差で出発よ」

 

「じゃあ、四:三やね」

 

「そうね。ジャンケンで決めましょ」

 

 ヴィータかメーアを加えようかとも思ったはやてだが、〈思念通話〉で確認した当の本人達からは辞退の申し出があった。

 

 さらに笑顔のアリシアが挙手すると、

 

「それで、きもだめしってなに?」

 

 そしてもう一人、

 

「いってらっしゃい」

 

 

     ※ ※ ※

 

 

 人の気配が感じられない旅館の廊下に、懐中電灯の光が真っ直ぐ伸びている。

 

「あんたね、アレで抜けられると思ったわけ?」

 

「もしかしたら、くらいには」

 

「ゼロよ、ゼ・ロ!」

 

 キッパリと断言され、ルティシアは仕方なく手に持った地図に視線を落とす。

 

「うう~……さっきの話の後だと、旅館もけっこう怖いよね」

 

 浴衣姿のルティシアをしっかりと抱き締めながら、アリシアは落ち着きなく周囲に視線を走らせていた。

 

 アリサもそれには不安そうな表情を見せるが、勢いよく首を振って気持ちを奮い立たせる。

 

「アリシア、そこはポジティブに考えましょ」

 

「どうやって?」

 

 アリサは自信満々に胸を張った。

 

「あっちにはすずかとはやてがいるのよ? つまり、なのはとフェイトよりもあたし達の方がマシよ!」

 

「なるほど!」

 

 肝試しをしながら延々と怪談を聞かされる。

 

 なのはとフェイトに悪いとは思うが、確かにそれよりは良かった。

 

「それより、二人とも少し離れてくれませんか?」

 

「イヤ!」

 

「もうちょっと……部屋に帰るまで」

 

 より歩きづらくなってしまい、ルティシアはため息をついた。

 

「やはりメーアか、ヴィータさんを巻き込めば良かったです」

 

「メーアの方は難しいんじゃない? あんたよりも口が達者みたいだし」

 

『……魔族の私が参加すると、もっと変で怪しいモノが寄ってくるけど』

 

 見た目と違って年上らしいヴィータと違い、はやての家で同居している訳ありの子というメーアは、はやて曰くそのように語って辞退したという。

 

「羨ましい話です」

 

「あのね……。あんたの場合は怖いとかじゃないんだろうけど、もっと協調性を身に付けなさい!」

 

 もう一度ため息をついた少女は、足元を気にしながら順路を進んでいく。

 

「ねえねえ……早く終わらせようよ」

 

「賛成です」

 

「どうせなら、後から来るなのは達を驚かせるってのは、どう?」

 

「私は早く終わらせたいのですが……」

 

「ちょっとは協力しましょうとか言いなさいよ!」

 

 ふとすると不安になる心を奮起させようと、少女達は賑やかに歩みを進めていき――やがてその背中は闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 少女達が出発した部屋では、留守居役の二人が帰還を待っていた。

 

 ヴィータは相棒(アイゼン)の手入れをしながら、メーアは顔だけを外に向けて景色を眺めている。

 

「……退屈」

 

「お前も行けばいいじゃねぇか」

 

「……どうして私が、肝試しなどというものに参加しないといけないのか」

 

「アタシだって静かに待ってんだぞ。ブツブツ言ってないで、お前もジッと待ってろ」

 

 時々振っては調子を確かめたりしつつ、ヴィータは隣の人物と軽口を叩く。

 

 二人が話をやめると、静寂が部屋に落ちた。

 

「にしても、静かすぎねぇか?」

 

「……山奥なんてこんなもの」

 

「そんなもんか」

 

「……いつもの調子を取り戻したね」

 

「フン! アタシはずっと普通だ! あんなのなんとも思ってねぇ!」

 

「……それなら、一つ話がある」

 

「ん?」

 

「……魔界の我らが領土の近くに、屍沼という場所があって」

 

「お前は本っっ当に性格が悪いな!?」

 

 

――そんなやりとりをしている時だった。

 

――入口の襖が音もなく開いたのは。

 

――そして部屋の中に誰かが飛び込むと同時に、悲鳴が上がった……。

 

 

 

 サア、ハジメヨウ。

 

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