蒼髪少女(中身青年)のプレイ記録(旧題:ワタシはワタシたりえるか?)   作:鋼色の銅鐘

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初投稿です。よろしくおねがいします。


「ネカマが大規模バレするまで」※日記形式、プロローグ
二〇四三年七月十五日〜七月三十一日


二〇四三年七月十五日

 

きょうは面白いものが見つかった。

『Infinite Dendrogram』ーー長いのでデンドロと略して呼称するーーは、VRMMO(創作の中の代物)、とでも言うべき「夢のゲーム」だった。

小学生の頃ぶりに日記を付けようと思い至ったのも、ソレのお陰だろう。

あとは思考入力万歳。

……どうせなら、プレイ日記という()()にしてしまっても良い気がする。

あと、わざわざ自分の個人情報やリアルを書き記すなんてのは恥ずかしい上にセキュリティなにそれという感じだと思うので、記さないでおこう。

ゲーム日記に必要な部分は書くが。

 

まあ、それ以外で今日起きたことを簡潔に記すと「地雷踏んだ(ネカマやっちゃった)」の一点に尽きるんだけれども。

 

……でも楽しかったなあ。

しばらく遊べそうだ。

 

 

七月十六日

 

やればやるほどこれは面白い……と思った。いや。本当に。

自分が興味本位でやらかして、自分の見た目を自分好みの美少女のモノにしていなければ真っ当に遊べたのかもしれない。

ケツ追いかけるタイプのゲームじゃないんだから素直に男性のままで始めれば良かったはずなのに。

 

生理現象(トイレとか)、そしてなにより骨格の違いが辛すぎる。

最初の数時間は歩くだけで体が軋んでいた感覚があったし、慣れていけてなければやめていただろう。

 

リアルに戻って来てもあの奇妙で微妙な感覚が抜けない。

 

……本題に入ろう。

 

まず、あちらの時間で五日目にエンブリオというモノが孵化した。

自分――あちらでは“ワタシ”か。

自分のパーソナルの具現化、ということで案外ワクワクしていたのだけども。

 

いざ孵化してみれば、金と翡翠に彩られた大槌が手元に現れていたと。

銘は【轟天雷槌 トール】。

 

……トール、トールと言えば北欧神話の戦神であり、雷の神ともうたわれるアレである。あと女装が有名なアレ。

ビッグネーム中のビッグネーム、とはいかないがこんな雑で後先考えない自分のエンブリオが相当に知名度の高い神の名を冠するというのも奇妙なものだ。

 

基本性能のステータス補正はおおよそがSTR(筋力)とAGI(素早さ)寄り、他はバランスよく……という感じだろうか。大抵の補正が低いらしい初期形態にバランスもクソもないが。

 

スキルのほうは雷神寄りの側面、といった風に雷関連のスキルがひとつ。

 

超雷霆剛壊(ハイパーサンダーストロングスマッシャー)》とかいう頭の悪いスキル名だが、多分使ってみれば強いのだろう。多分。

 

きょうは一旦ここまでだが、明日はスキルなどの試運転もしてみたい。

ジョブなども考えてみなければ。

 

……ゲームはやはり楽しいな!

 

 

 

七月十七日

 

今後の身の振り方について考えつつ、なんのジョブに就こうかとあちらで丸一日思案してしまったもののなんとかやりたかったタスクはこなせた。

 

その結果だが、まず最初に試運転をしてみたサンダー(略)は「現状ではまだ弱いと思われる」ということが判明した。

 

ジョブ探しの途中で出会った魔法にやたらと詳しい御老人に詳しく聴いてみたところ、『雷に関連したジョブに就かずに雷属性を持った攻撃が使える』ということが相当な利点ではあるらしいが、それでも今の段階では雷属性魔法の使えるジョブに就く方が更に強い雷属性攻撃が使えるとのこと。

 

……まあ、これは今後次第ということだろう。

 

次にジョブ。

ジョブは色々ギルドやらを巡って調べている最中に【壊屋】などをお勧めされたが、正直なところ「敵に殴られるのを待つよりもこちらから殴る方がいい」という考えがあった為「AGIもあり、そこそこ力の強いジョブ」を探したものの……そんなに都合のよいジョブはないぞ、というオチが付いた。

 

なのでおとなしく二職同時に取得してしまうほうがいいのかもしれない、と阿呆なことを考えた結果スタンダードな【戦士】とやや非戦闘寄りの【斥候】を取得。

 

しばらくは【戦士】がメインジョブになるだろうか。

エンブリオ進化の方向性にも寄るけれど、幅を考えていくのが楽しくてたまらないな。

 

そして最後に今後の身の振り方。

 

……正直な話、「自分にとって理想の女性アバター」を作ってしまったのなら「自分にとって理想の女性」を演じるのも良いんじゃあないか、と考えている。

いわゆるロールプレイ、というやつである。

 

だがしかしここで問題になるのがワタシのアバター。つまりは

「リアルと違う性別であること」である。

ネトゲの特性上、「ネカマ/ネナベに極端な嫌悪感を持つ人種」というのは一定層いる。

しかも今のご時世だと、SNSやら掲示板で大々的に叩かれるということもありえてしまうわけで……そういう人種にバッシングされるのは結局みんな幸せにはならないので、出来るだけ避けたい。

なので色々模索していくことになるだろう。

 

まず、歩き方だとか癖が男性のそれであるのはもう致し方ない。矯正すると逆に違和感も出来そうなものだし。

 

ただ、今後女性の友人があちらで出来たとしてもイマドキの女性の話題には付いていけないし、その辺りはうまく人付き合いをしていくしかないか。

 

声に関しては、管理AI……チェシャにざっくり調整をしてもらったり自分で微調整したりと色々して理想の声を作れたかな、と思っているので問題はないはず。

むしろ修正の必要があるのは喋り方、だ。

 

ワタシがワタシで在りたいなら、自分はワタシに成る必要があるのだ。

 

……本日はここまで。また明日ゆっくりと遊ぼう。

 

 

七月三十日

 

リアルで二週間、あちらで一ヶ月以上を過ごしてなんとなくわかったこと。

 

・喋りはたまにボロが出るがもうほぼ問題ない

・それでも激昂すると言葉が崩れたり癖が顕著に出る為外部のイメージがまずい

・サンダー(略)は案外攻撃範囲が広いので範囲狩りがしやすい

ほか、何十と色々な事項が見つかって来ている。

 

……そしてもっとも重要な事項としては、『ティアンは生きている』ということだろう。

 

彼らは単なるNPCではなく、意思を持ち、自由に動き、人生を持ち、未来へ歩く者たちだ。

 

それに気付けたのは僥倖だろう。

あのきっかけが無ければ、気付くこともなかったとも思うし……。

 

あと、なんだかんだでフレンドがふたり出来て、ティアンの友人もひとり出来た。

他にも拠点であるアムニールに滞在するティアンとも交流が持てるようになってきたのは良いことだろう。

 

ではまず、<マスター>のフィオネ。

彼女は見た目やジョブだけでもエルフを目指したいとのことで、今は【狩人】だそうだ。

弓が元々上手いのはリアルで弓道をやっているからだとか。

一点を射ることも、移動する的を射ることもこなせるのは流石としか言いようがない。

エンブリオが弓型になっているのも、彼女の才能故なんだろうか……。

 

もう一人はアリメラ。

フィオネのリアル友人とのことで、名家の生まれなのか高貴な雰囲気を纏っている。

独自の美学……のようなものがあるらしく、いわゆる「単発高火力主義」らしい。

エンブリオもそれを表すかのようなものとなっていて、フィニッシャーとして非常に有効なタイプだろう。

だからこそ強力な魔法を使いたい、ということで今は【魔術師】とのこと。

 

そしてティアンのシルバ。

直近で知り合った数少ない男性である。

物静かな人物だと最初は思っていたが、どうやらヤケクソになると吹っ切れてしまうタチらしく自分個人としては親近感を抱かざるを得ない。

その一方でまわりの観察にも長けているようで、範囲攻撃にワタシ達を巻き込まないよう立ち回るのが上手かった。

上級職を【翆風術師】と【上位付与術師】で二職分埋めており、おそらくワタシが今まであちらで出会った中で最強の実力者だろう。

 

紆余曲折あって騙されて四人で亜竜(とかなんとか言っていたはず)を相手にする羽目になった時は前衛の負担がワタシひとりだったから死ぬかと思ったが、即興でバラバラなチームワークでもなんとか出来て本当に良かった。

 

そんな風に色々あったからなのかどうかは判断のしようがないが、【トール】が目出度く第二形態に進化した。

 

そのおかげでサンダー(略)の攻撃範囲がやや広がり、なおかつ威力も上がった……のは嬉しいことだが、更に嬉しいことがある。

 

そう、パッシブスキルがひとつ増えた。

《静電知覚》と銘打たれていて、なにやらこれはなかなか有用ではないかと思う。

自分らしくはないと思うが、あの激闘を思うとこれが新たに発現したのは非常に有用だろう。

……問題は感知力が敏感すぎてうまく扱わないとかなり厳しそうなことだが。

 

そうして着実に戦力が増強出来ている一方で合計レベルの方は現在は59、【戦士】がカンストして今は【斥候】のレベリング中……となる。

が、しばらく戦闘はこりごりだ。

亜竜との戦闘がかなり辛かったのでしばらく休養に努めよう。

 

さて、書きたいことはおおよそ書けただろうし本日はここまでにしよう。

明日は何があるだろうか……?

 

 

七月三十一日

 

この一ヶ月程はレベリングであまりアムニールに寄れなかったものの、久々に隅々まで散策して三日間潰した。

 

その結果判明した事実だが……大多数の<マスター>は基本的にティアンを『一定の反応しかしないNPC』や『単なる壁』だと思って動く為、ティアン側の常識というものを悪い意味で軽々しく踏み越えていく。

 

非常に嘆かわしいことだ、とは<アムニール警邏隊>所属のティアン【白氷術師】ウォギム殿の言。

 

また、これに関連してちょっとした騒動が起きた訳だが……ウォギム殿とワタシともうひとり、その場に居合わせた<マスター>の【剣士】あまね嬢の口八丁でもってどうにか話し合いで収められたのは実に平和的解決だったと思う。

 

……一つの騒動を平和に解決出来ても、今後も続くだろう<マスター>の常識問題はどうにもしがたいものがある。

 

このあたりはもうインターネットに話題を放流して、時間とともに増えるだろう良識ある<マスター>たちの協力も募っていくしかないだろうか。

 

そうなるとワタシのあちらでの活動がどうなるかはわからないが、祭り上げられるだとかそういう事態は勘弁して貰いたい。

誰か適当にカリスマのある人物をリーダーに据える方がいいと思う。

 

……さて、本日はここまで。

今日は色々と対応に追われたが、明日はゆっくりと遊んでいこう。




色々と主人公の情報やスキルなどの具体的なデータが薄いのは意図的にやっています。
また、主人公の一人称が「自分」ですがリアルは「俺」であり、デンドロ内では「ワタシ」です。
日記で一人称を「俺」にするやつおるか?と考えた結果のこの文体だよ。

ではではまた次回。
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