蒼髪少女(中身青年)のプレイ記録(旧題:ワタシはワタシたりえるか?) 作:鋼色の銅鐘
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三月一日
二月が逃げるように去って春が来た。
季節も若干変わってきたこともあってか、モンスターもやや穏やかな気質のものが増えてきたらしい。
『アイドルになりませんか?』とか、街中で声を掛ける珍妙な輩も何人か沸いてきているので、やはりこの国は変人が多いのだろう。
ワタシが言えたことじゃあないが。
それでまあ、季節の変わり目ということで色々と思案して、今のところの目標的なモノを考えたのだ。
そして久々に
彼が故郷に戻ったというのは聞いていたが、アムニールからいくらか遠い地にあったのだ。
辺境という程でもないが、絶妙に遠い。
道中のモンスターを無視しても辿り着くまでリアルであと三日はかかるだろうか。
今は適当な場所でログアウト中だが、再ログイン時にはどうなっていることやら。
《アクシデントサークル》が起きなければいいけれど……。
そして話は変わるが、鎖の扱いは例の血のバレンタイン以降かなり上手くなったと思っている。
肉眼で視認できて、ある程度スペースがあって鎖が届くなら拘束出来るようにはなったのだ。
しかしながら相変わらず障害物には弱い。
そう、例えば森林とか市街地とかである。
現在地も森林地帯真っ只中な為に苦労するのが目に見えるけれど、まあなんとかなるだろう。
環境破壊は出来るだけ避けたいが。
……と、時間もそろそろまずい。
本日はここまでにしよう。
明日は何があるのやら。
三月四日
ようやくシルバのいる集落まで辿り着いた。
切り立った崖の真下にある開けた空間(森林に面していた)が集落とは思わんよ普通は。
道中で鎖の新しい使い方に気付けたのが少し時短になったのだろう。
鎖本来の用途よりもフッ◯ショ◯トモドキとかクライミングロープの代わりとかに使えるのはどういうことだと何度も思ったけれど。
これも片側に付いてた角錐がやたら鋭い上にワタシが地面とかに刺すと抜き辛かったのが悪い。
利便性が高いのはいいことだと思うがそれでもなんだか腑に落ちない。
……
久々にシルバと会った訳だが、そりゃまあ驚かれた。
この集落に来た簡単な理由を話すまでもなく、だ。
なんでも『ここの周りはウチの守り竜様……<UBM>が縄張りにしてるんだがどうやってここまで来た』とのこと。
偶然でそれを通り抜けれたとしても、普通の人間はキチンと門番に話を通しておかなければならないらしい。
……その瞬間、面倒になって崖の途中から紐なしバンジージャンプして来たのは間違いだったかなと思ったのだ。
思い返せば地上から何者かに砲撃されていた感覚もあるし。
砲撃の摩擦で発生した静電気を感知出来てなかったら、たまたま近くを飛んでいた【ハーピー】を足場に出来ていなかったら避けれてなかったのかアレ。
ともかく明日はその「守り竜様」に謝りに行きたいが、どうなることやら。
三月五日
件の「守り竜様」に謝罪したいという要望が通ったので、森林の中にあるという巣へ向かい謝罪して来た。
当の守り竜様には快く許して貰ったものの、こちらとしては気が気でない。
異邦の方を間近で見るのは初めてですな、とか言われていたもののそれが真実なら多分『今まで見た異邦の方』は全員守り竜様に遠距離から排除されたということになる。
そして今回撃墜されなかった件に関しては、回避機動を取られると思っていなかったことや単純に射角が足りなかったことが原因らしい。
お陰で終始冷や汗が止まらなかった。
……ちなみに、<UBM>としての名は【砲竜王 ドラグシェル】。推定古代伝説級。
どうやら地竜種のようで、亀に近い姿をしており翼はなかった。四足歩行が移動手段だそうだ。
また、迎撃砲とみられるものが何門も甲羅の上や横に生えており、かなりの広範囲をカバーしている。他にも口から熱線を放てるとか。
話を聞くところ、今シルバたち狼系獣人種の住んでいる集落は【ドラグシェル】の庇護下にあるようで、彼に護って貰う代わりに年老いた彼へ食事を運んだり鱗や砲の手入れをしたりするのが交換条件らしい。
それを聞いて残りの寿命はどのくらいなのだろう、と思えば見透かしたように答えて来た。
……寿命自体は持ってあと十数年、
その割には集落の皆もあまり悲観的ではなく、何事かとまた思えばシルバ達集落の面々から「外界との交流を保っていたからだ」との返事が返ってくる。
いわく、外との繋がりを絶たないということは定期的に古い慣習を見直すきっかけが生まれたり新たな住人を受け入れることとなり、自分達が自分達の手で協力し合いコミュニティが団結して明るい未来を目指すようになる。
例え守り竜様がいなくなっても、それは巡り巡って未来へ繋がる無限の樹形図を形作れるということでもあると。
……で、この集落の皆はとても眩しいな、と思って聞いていたのだがシルバ自身の表情はやや硬かった。
理由を聞くと、シルバはその外との繋がりを得る為に外界へ出稼ぎに行っていたのだが、犯罪に巻き込まれて結局戻って来たので肩身が狭いらしい。
五分の一くらいはワタシのせいだな……。
と、考えたあたりで日が暮れて来たのでその日は集落へ戻った。
そしてログアウトしてきて、この日記を書いている。
……つまり眠い。また明日以降、しっかりと書こう。
三月二十五日
結構集落に長居した。
理由としては、外の話をよく聞きたいと住人達にせがまれたのと【ドラグシェル】から「私の砲弾を避ける練習をしてみませんか?」と、とんでもない提案をされたことの二点。
外の話自体は問題なく受け入れられているようで、こちらとしても誇張などせず真摯に話していられるのがありがたい。
……問題は【ドラグシェル】からの提案だった。
無論森林側に向けて砲撃をするなど言語道断、という意見は両者とも一致していた為『崖を取っ掛かりにして、鎖を利用して崖へ向かって放たれる砲撃を一定時間避け続ける』という訓練をこの二十日間……デンドロ内で二ヶ月間受けた。
最後の一週間くらいはいつもと違ってやや小ぶりな砲を弾幕のように撃っていたが気のせいだろうか。
ついでと言わんばかりに熱線も放たれていたのも気のせいだと思いたい。
お陰でこの二ヶ月間で崖の一部にボコボコと小規模クレーターが大量に発生していた。
<UBM>こわい。
崖を拠点にしていた【ハーピー】の大群もワタシが足場にしたり砲撃の餌食になったりで壊滅してるし。
ともあれ、鎖を利用した立体的な機動のコツはおおよそ掴めてきた。
あとは実戦の場があるかどうかくらいだろうか。
……明日はアムニールへ戻る日だ。
今日はもう寝よう。
三月二十六日
いざ集落を出立せん、とログインしてみれば周囲の建物が綺麗に消えていた。
テキパキと支度を整えていく住人たちに何故建物がなくなったのか、と聞けば「アムニールまでついて行く」とのこと。
五十人以上は同行厳しいですよ、と声を掛けたものの意志は固いようで。
……いや、まあひとりぼっちも寂しいので大歓迎なのだが。
【ドラグシェル】はどうなのかと聞けば、
「いずれ来る別れを早めただけ、私はここで終わるのです」
「しかし、私はやはり【竜王】ですから……闘争の果てに終わるのが好みでして」
「いつの日か、アナタかあるいは他の異邦人が挑みに来るのが今から待ち遠しいのです」
――などと、闘争本能を剥き出しにしてくるものだから非常に怖い。
老いた竜種はこれほど恐ろしいものか、と再確認した。
そして正午になろうという頃、集落の面々と共にアムニールへ出立。
夜中のキャンプ設立など、いくらかのトラブルを越えながら旅は地道に進んでいる。
……ワタシがログアウトしている時になにも起こらなければいいのだが。
三月三十一日
見張り番が立っていたりしたお陰か危惧していた事態にはならず、数日間掛けて無事にアムニール近郊へ辿り着いた。
……が、当然のこととして居住区の空きがすぐに取れる訳ではない。
それを承知しての上で集落全員が来ていたのだし。
ともかく暫くは修行場の空きスペースで寝泊まりしてもらうこととなった。
<編纂部>やいつものメンバーも受け入れていたし、多分一定期間は問題ないだろう。
居住区の空きは無いとしても、彼らの居場所の案を早めに何かしら提案できないものか……。
最悪の場合、
五十人以上の衣食住と一人の精神的犠牲では衣食住のほうが重いのである。
気は重いが、それはそれだ。
ともあれ今日はここまで。続きはまた明日にしよう……。
今回もここまで読んで頂きありがとうございました!
鎖のイメージ、作中にもありますがフックなアレだったりクラッチするアレだったりします。
でも多分影響一番受けてるのは某機動装置です。
ワイヤーじゃないのでアレっぽくはなり辛いですが。
鎖って形状、かなり応用範囲が広くてすごいアイテムなんですよねー……。
それではまた次回!