イナズマイレブン!アレスの天秤 半田真一伝説!〜導かれしスカウト達〜   作:ハチミツりんご

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はい、性懲りも無く新作出しました。初めての方は初めまして、ハチミツりんごです。

更新は遅くなるかもしれませんが、半田活躍させたいのとスカウトキャラ出したい欲で書き始めました。活動報告で推しスカウトの募集してますので、顔出してくれれば嬉しいです


始まりの時

 

 

 

「呼び出してしまって済まないね」

 

「い、いえ………」

 

 

 

 

灰色に近い髪に、前髪を片側だけ伸ばした独特な髪型の大柄な男性が話し掛ける。それに萎縮したように対応するのは、大柄な男性の目の前のソファに腰を掛ける一人の少年。素朴な雰囲気をした、よく言えば取っ付きやすく、悪くいえば地味な男子生徒だ。身を包んでいるのは、今年のフットボールフロンティアで優勝を成し遂げた、あの雷門中の制服。

 

 

それもそのハズ。この少年は、優勝を成し遂げた雷門中サッカー部ーーー通称『イナズマイレブン』の一人。バランス型のMF、【半田(はんだ) 真一(しんいち)】その人だ。

 

 

 

そんな半田は、自身の通う雷門中の応接室に通されていた。先程まではこの目の前の男ーーーサッカー協会統括チェアマンである【(とどろき) 伝次郎(でんじろう)】に呼び出された他の雷門中の面々も一緒に居たが、彼らが退室した後、自分だけ残されたのだ。

 

 

 

「あのー……俺に何の用ですか?円堂や豪炎寺なら分かるけど、わざわざ俺を呼び止める必要なんて………」

 

 

 

半田としては、ここで呼び止められたのがキャプテンであり原動力であったGK、円堂や、エースストライカーであり自分たちが変わる切っ掛けを生み出した豪炎寺ならば理解出来た。しかし、こう言ってはなんだが半田はただのサッカー部員。染岡と共に1年生から所属していたとはいえ、円堂と違いやる気があった訳でもない。わざわざ統括チェアマンである轟が呼び止める程の実力がある訳でもないし、何故1人だけ呼ばれたのかも疑問だった。

 

 

 

 

「その点だが……君は、あの試合をどう思った?」

 

「っ!」

 

 

 

あの試合。轟が言ったのは、数日前に行われたスペインとの親善試合。フットボールフロンティア優勝校である雷門中と、スペインのクラブチームであるバルセロナオーブとの真剣勝負の事だ。

 

 

 

「先程、円堂くん達がいる時も言ったが……私はあの試合から、日本の潜在能力の高さを見せることが出来たと思っている。同時に、今のままでは世界の足元にも及んでいないという事実もね」

 

「……はい。それは俺も分かってます」

 

 

 

バルセロナオーブとの親善試合。結果は、目も当てられないほどの惨敗だ。誰も太刀打ち出来ず、円堂がシュートを止めることも、豪炎寺が点を取ることも出来なかった。そんな中、半田は試合に出ることすら出来ていなかった。MFとして出場したのは、1年生の少林寺と、同じ2年生でも途中加入の鬼道に一ノ瀬。そしてつい最近まで初心者だった松野の4人だ。

 

 

 

「あの試合………バルセロナオーブとの親善試合で、俺は見ていることしか出来ませんでした。みんなが必死で戦っている中、俺は何も出来なかった………!!試合に出ても、鬼道や一ノ瀬が勝てないんじゃ、俺が出来ることなんて何も無いって思ってしまった……!!」

 

 

 

やる気が無かったとはいえ、半田は一年の頃からサッカー部に所属していた選手だ。そんな彼は、信頼する仲間たちとはいえ、後輩や初心者、そして途中加入したメンバーにレギュラーを奪われ、そしてそれを受け入れている自分に対して、一種の嫌悪感を抱いていた。同じ初期部員である、円堂と染岡はフットボールフロンティアでも活躍し、テレビでも取り上げられるほどの活躍をしていたのもそれに拍車をかけている。

 

 

要は、悔しいのだ。負けることに納得した自分が、情けなくて。同級生達において行かれているように感じてしまったのだ。

 

 

 

「ただ、やっぱりサッカー強化委員の話は、まだ飲み込めていません。……こうはいったけどアイツらはほんとにいいヤツらなんです。俺はやっぱり、アイツらと競い合って、レギュラーになってーーーそして雷門中のみんなと、もう一回日本一になってから、世界と戦いたいんです」

 

 

だがしかし、チームメイトを信頼しているのも事実。彼らと共に再び日本一になり、世界に行きたいのも半田の本心だ。だからこそ、強化委員としてバラバラになるのでは無く、同じチームで、一番近くで切磋琢磨し合いたいのが半田の気持ちだ。

 

 

そんな半田を見た轟は、少し目を瞑り、考えてから半田に話し掛ける。

 

 

 

 

「………半田君は、強化委員には反対かね?」

 

「………本心を言えば、反対です。俺はアイツらとサッカーしたいし、それに人にサッカーを教える自信もありません。ただでさえ、みんなから遅れてるんだ。この一年は、自分のパワーアップに使いたい……そう思ってます」

 

 

「ふむ………半田君。何故我々、サッカー協会が、君たち雷門中を強化委員に指定したのか、分かるかね?」

 

「へ?そりゃ、俺達がフットボールフロンティア優勝校だからですよね?」

 

 

 

轟から尋ねられた事に、半田は思ったことを答える。フットボールフロンティアであの世宇子中を倒した、そんな自分たちの力を他の選手達にも継がせる事で日本全体のパワーアップさせる。これが自分たちを派遣する目的だろうと。しかし、轟はその答えに首を振る。

 

 

 

「それは違う。確かに技術面も教えては欲しいが、我々が真に求めているのはそこではない。ーーーこう言っては悪いが、仮にそれならば、強化委員として派遣するのは君たちの中の一部の選手だけだ。円堂君に豪炎寺君、鬼道君、一ノ瀬君に土門君………それに、壁山君くらいか」

 

「……俺達、雷門の他のメンバーじゃ、技術面は力不足だと?」

 

「そうは言っていない。が、技術面のみを重視して強化委員を選ぶならばもっと適任がいる。それこそ、あの帝国学園の選手達ーーーエースストライカーである寺門君や参謀の佐久間君。ドリブルとブロック両面に優れた五条君に、キング・オブ・ゴールキーパーとも呼ばれる源田君………彼らの方が、技術面においてはより優れた指導が出来るだろう」

 

 

 

轟からそう言われて、半田は押し黙ってしまう。それを聞いて、確かにと思ってしまった。帝国学園は二度戦ったが、どう考えても熟練度や年季といった面では彼らの方が一枚も二枚も上手だ。あの鬼道有人と共に戦ってきた名門の実力は伊達でない。それをよく知っていた。

 

 

 

「………だが、私は君たちを強化委員に決定した。その理由は分かるかね?」

 

「………いえ、分かりません」

 

 

 

技術面でないなら、何を教えればいいのか。半田は検討がつかず、分からないと答えた。そんな彼を目をじっと見つめながら、轟は口を開く。

 

 

 

 

「………心だよ」

 

「心?」

 

「そう、君たち雷門の魂だ。君たちはどんな試合だろうと、決して諦めなかった。どんなに劣勢だろうと諦めず、もがき続けて最後には勝利してきた!!それを見た私は確信したのだ、日本を強くするために真に必要なのは、君達なのだと!!!」

 

 

 

ドンッ!!と机を叩かんばかりに熱く語る轟。今、世界的にサッカーレベルの低い日本が戦えるようになるために最も必要なのは技術面よりも心ーーー熱い雷門魂こそ必要なのだと、轟は確信していた。

 

 

 

 

「そんな君たちにこそ、日本を強くするために協力して貰いたい。………大切な仲間と離れることになるのは、本当に申し訳ないと思っている。我々大人が不甲斐ないから、君たちに頼ることになっているその事実が情けない。しかし、それでも私は世界と対等に戦える日本を作り上げたいのだ。……協力、してくれないかね」

 

「ちょっ!?や、やめてくださいよ!!頭上げてください!!」

 

 

 

このとおり、と頭を下げる轟。自分よりも遥かに大人が、しかも偉い立場にいる人間から頭を下げられる経験なんてない半田は慌てた様子で頭を上げるように言う。

 

 

 

 

「えっと、その………まだ完全には飲み込めてませんけど、前向きに考えてみます。雷門の魂を教えるのなら、俺にも出来そうだ」

 

「そうか、やってくれるか……ありがとう、半田君」

 

「確定したわけじゃないですけどね。……それで、なんで俺を呼んだんですか?わざやざこんな話をするために?」

 

「いや、これとは別件だよ。君が強化委員の話を前向きに考えてくれているのなら、話も進めやすい」

 

「はぁ……?」

 

 

 

 

次はなんの話だろう、と首を傾げる半田。そんな彼に、轟は笑いかけながら話を続ける。

 

 

 

「実は雷門中サッカー部の子達に、指導が上手いのは誰か、と聞いていてね。事前にうちの職員がそんな話をしてきただろう?」

 

「え?……あぁそういえばそんな話しましたね」

 

「それで、君たち全員に聞いたところ、やはり指導が上手いのは豪炎寺君と鬼道君、という話になったんだ」

 

 

それを聞いた半田は、まぁ確かにあの二人だろうなと納得する。何度教えを乞うても分かりやすく、半田自身世話になることが多かったからだ。

 

 

 

 

「だが、もう1人。全員の口から出てきた人物がいる」

 

 

「もう1人?……一ノ瀬じゃないんですか?」

 

「確かに一ノ瀬君も何度も名前が上がったが、全員では無かった。ーーー君なんだよ、半田君」

 

「…………俺が?」

 

 

 

信じられない、とでもいいたげに呟く半田。鬼道や豪炎寺なら分かるが、自分がそこで出てくるとは思ってもみなかった為だ。轟はそれを見ながらも、その通りだ、と言って話をさらに続けていく。

 

 

 

 

「鬼道君や豪炎寺君が言っていたよ。君は、人のことを思える人間だ、と」

 

「人の、事を……?」

 

 

 

その通り、と頷く。鬼道と豪炎寺、指導の上手い二人が揃ってそう言ったのだ。彼ら以外にも、雷門中のメンバー全員が半田の指導を分かりやすい、と言う結果が出ている。

 

 

半田は、飛び抜けた実力者ではない。シュート、ドリブル、ブロック……どれもとっても突出したものはなく、逆に苦手とするものも特にない。総合すればそこそこだが、各分野で高い評価を得ることは出来ないーーー中途半端な選手、と言われることもある。

 

 

 

しかし、そのバランスの良さこそ、半田の長所でもある。バランスがいいということは、どの分野においても一定以上の指導が出来るということ。しかも半田は才能でこれをこなせるのではなく、努力して地道に培ってきたものだ。経験ゆえに指導も分かりやすくなる。

 

 

そして鬼道と豪炎寺が言った、人のことを思えるというものーーー確かに、彼は円堂の様に誰かを純真に支え続けることも、鬼道のように観察して的確に指示を出すことも、豪炎寺のように圧倒的な信頼で言葉無くとも引っ張っていくことも、染岡のように愚直に進み続けることもやってきた訳では無い。

 

しかし、半田はそういった飛び抜けた何かを持っていないからこそ、他者の気持ちに寄り添えるのだ。等身大の自分で、相手のことを考えて理解出来る。それを真っ直ぐ伝えられることが、半田の長所にして、利点なのだ。雷門の面々は、それを何となく理解していたからこそ、彼を推薦した。

 

 

 

 

「そんな君に、頼みがある」

 

「頼み、ですか?」

 

「あぁ。実はサッカー協会は、君たち雷門中について事前に調べていたんだ。そしたら、色々と面白いデータが出てきてね」

 

 

 

そう言いながら、轟はとある資料を取り出し、半田の前に置く。それを手に取り眺める半田に向けてさらに話を続けて行った。

 

 

 

「この雷門中………君たち以外に、サッカー部の生徒はいないんだったね?」

 

「へ?はい、そうですけど」

 

「しかし、この学校に通う一部の生徒の身体能力データがとても興味深いものでね。ーーー端的に言えば、君たちと同等か、それ以上の生徒が一定数いる」

 

 

「………え?そ、それって……!!」

 

「あぁ。サッカー未経験ながら、君たちのように戦える可能性を秘めた選手が何人もいる、という事だ。気になってほかの学校も調べたが、ここまで可能性のある生徒数が多い学校は他にない」

 

 

 

轟の話によれば、雷門中にはまだ隠れた才能が眠っている、ということ。それこそ、これから鍛えれば日本が世界に誇る選手になれるーーーそんな逸材達がいる可能性が、雷門中にはあるのだ。

 

 

 

 

「だからこそ、頼みたい。チームメイト達からもっとも指導に向いていると評される君の力を、この雷門の可能性に使って欲しい」

 

 

 

 

だからこそ、轟は半田に頼んだ。鬼道や豪炎寺よりも、さらに初心者達の指導に向いている彼だからこそ。

 

 

 

 

 

 

ーーー本来なら有り得ないはずの展開。通常ならば彼は他のメンバーのように、他校に強化委員として派遣されるはずだった。しかし、ここでは違う。

 

 

 

 

これは、雷門の一選手、半田真一と、《可能性の欠片(スカウトキャラ)》達によるーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半田君。君はキャプテンとして、この可能性ある選手達をスカウトし、新生雷門中を率いて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーもう1つの、《イナズマイレブン》。


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