イナズマイレブン!アレスの天秤 半田真一伝説!〜導かれしスカウト達〜   作:ハチミツりんご

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皆さんの推しスカウトを見てるだけで懐かしい気持ちになれました。ハチミツりんごです。いやー、使ってた子もいれば初めて知った子もいるしで、やっぱりスカウトキャラはいいですねぇ。まだまだ活動報告で募集していますので、よければご参加下さい。ただただ推しスカウトへの愛を語って頂くだけでもオッケーですので!


最初の加入!はつらつナビゲーターガール!!

 

 

「へぇ〜〜。んで?それ受けたの?」

 

「あぁ、受けたよ。慣れた雷門から離れなくて済むし、親もそれがいいって言ってた」

 

 

 

ズズーっ、と紙パックのジュースを飲んで興味なさげには「そっかー」という友人を見てこめかみがぴくぴく動くのを感じる。自分から聞いてきておいてその態度はなんだコノヤロー、と心の中で愚痴る半田。

 

目の前のこの男、ピンクと水色の縞模様のニット帽を深く被り、何処と無く猫のような雰囲気を醸し出すこの人物こそが、一年時から部活に入っていた半田を差し置いてバルセロナオーブとの試合にも出場した初心者、【松野(まつの) 空介(くうすけ)】である。

 

基礎的な技術でも応用したものでも、瞬きの間に習得してしまう天性の器用者。一つ一つの技術の習得に時間がかかった半田とは真逆であり、仮にも小学生時代からサッカーを続けている彼よりも使用出来る必殺技の数も多い。そんな才者は、ニヤニヤと笑いながら机に頬杖をつく。

 

 

 

「にしても、半田がねぇ。そんな風にお願いされるなんて、めっちゃ期待されてんじゃん」

 

「はぁ?何処がだよ。豪炎寺や鬼道ならともかく、俺が初心者率いて戦える訳ないだろ?それに、円堂が残らず勧誘してるはずだ、今更俺が声掛けて、サッカーやる奴が何人いることやら………」

 

「いけるんじゃない?なんだかんだ言って帝国との試合の時も集まったじゃん。ボクとか影野とか」

 

 

 

松野の言葉通り、あの王者帝国との試合を前にしても、風丸や影野、松野、目金といった面々は集まったのだ。ましてや当時と違い、雷門中はフットボールフロンティアで優勝した実績がある。いくらバルセロナオーブにぼろ負けしたと言っても、勧誘すれば何人かは来そうなものだ。

 

 

 

「まぁ、それはいいとして。お前、結局何処に行くんだ?」

 

「んー…まだ決めかねてる」

 

「へぇ、珍しいな。適当にここ〜とか言いそうなもんなのに」

 

「ボクの事なんだと思ってるのさ……覚えるのは得意だけど、教えるのって苦手なんだよね。ボクって感覚派だからさ」

 

「あぁ、まぁ、ポイな」

 

 

 

松野曰く、何かを習得することに関しては何となくでいけるものの、人に教えるとなるとそうとはいかないらしい。自分と同じ感覚の持ち主なら問題無いが、異なる場合は教えても何故分からないのか分からない、という結果になる様子。教師などには向いていないタイプである。

 

 

 

「まっ、どっちにしても来週には雷門を出るよ。もう何人か決めてるみたいだし、ボクも早めに行きたいし」

 

「そっか……みんな何処に行くんだろうな〜……」

 

「豪炎寺は木戸川に戻るらしいよ?一之瀬と土門は強化委員を断ってアメリカに戻るみたいだし、鬼道は確か…星章学園?だったかな」

 

 

へぇ、と相槌を打ちながら、半田はチームメイトのことを思う。エースストライカーとしてチームを何度も勝利に導いてくれた豪炎寺は、古巣である木戸川清修に戻るようだ。あそこには武方三兄弟という優れたFWがいるというのに、そこに豪炎寺まで加われば間違いなく優勝候補筆頭に躍り出るだろう。

 

もう一人のエースとも言うべき司令塔、鬼道は帝国には戻らずに星章学園という学校に行くようだ。あまり名前を聞かないので、強豪では無いのだろう。そんなところに何故、とも言えるが、逆に考えれば鬼道が一から手がけたチームが新たに誕生する、という事だ。ここも、間違いなく上位に上がってくるだろう。

 

 

 

 

 

「………俺、ほんとにキャプテンなんか出来るのかなぁ……」

 

「……まっ、陰ながら応援しておくよ。ボクも教える立場になるんだし、その気持ちは分かるし………でもボクって器用だから、案外教えられたりして」

 

「お前、さっきと言ってること逆じゃん……」

 

 

 

 

呆れたように呟きながらも、一抹の寂しさを感じる半田。こうやって松野、そして雷門メンバーとバカやっていられるのもあと少し。同じ日本国内にいるし、二度と会えない訳では無い。それでも、会いに行くのは難しくなるだろうし、今まで日常として当たり前にあったものが無くなるのは些か悲しいものがある。

 

高校も全員が同じ学校に進学するわけは無いので、もしかしたらもうこのメンバーで一緒にサッカーがやれるのも、最後になるかもしれない。そんなことを独り想う半田であった。

 

 

 

 

 

「おいマックス!!いるか?」

 

「ん?」

 

 

 

そんな彼の考えを振り払うように響いてきた声。二人揃ってドアの方を振り向くと、そこにいたのはピンク色の坊主頭をした強面の男。だが怖がることは無い、あぁ見えて気のいい男であり、努力でのし上がってきたチームの点取り屋。半田と同じ一年生からサッカー部に所属しているFW、【染岡(そめおか) 竜吾(りゅうご)】、その人である。

 

 

 

「なんだ、染岡じゃん」

 

「なんだとはなんだ、てめぇ」

 

「別に何もないよ。それで?どうしたのさ」

 

「おう、お前もまだ派遣先決めてなかったよな?今から決めてない連中集めて相談会でもしようって宍戸が言い出してな」

 

 

 

話によると、派遣先といってもどこにしたらいいのか分からない宍戸が、決めてない全員で話し合えばいいんじゃないか、と言い出して声を掛けたらしい。

 

雷門の魂を伝えるのが主たる目的、と言っても、宍戸や少林、栗松といった1年生たちは無名校にいってもあのバルセロナオーブに通用するだけの選手を育てられる自信が無いのだ。かといって名門校を選択しても、自分が派遣先のメンバーについていけるか心配、という結論に至るらしい。

 

だからこそ、複数人で話し合えばより良い結果を得られると踏んだ。言い換えれば、みんなと同じ選択をしておけば安心感があるから、という事でもある。赤信号、みんなで渡れば怖くない、という事だ。

 

 

 

「つーわけだ。半田、マックス借りるぜ」

 

「お、おう……」

 

 

 

派遣先を決めてないメンバー。つまり、自動的に雷門に残ることが決まっている半田はそこには入っていない。鬼道や豪炎寺もいないのだろうが、自ら進む先を決定した彼らとは違い、自分はこの雷門に残る。今まで一緒だっただけに、なんだか疎外感というか、自分だけがそこにいないような感覚を覚える。

 

 

 

「………オラッ」

 

「ぶっ!?」

 

 

 

そんな半田に気がついたのか、それとも彼自身の面倒見のいい性格ゆえか。染岡は半田の額に軽くゲンコツをぶつける。染岡からしたら力を込めたつもりも無かったのだろうが、予想外の一撃により情けない声を漏らす半田。

 

 

 

「ってぇ!!何すんだよ!!」

 

「なーに暗い顔してんだよ。俺たちの中で、唯一雷門に残るお前がそんなんでどうすんだ」

 

 

 

呆れた顔でそんなことを言う染岡。影の差した顔をしていた半田が心配だったのだろう。しかし半田としては1人置いていかれてる気がしたから、なんて口が裂けても言いたくなかったので、「別にいいだろ!」と口にして、身体を椅子の背もたれに預ける。

 

 

 

 

「………なぁ半田。お前が何思ってんのかは知らねぇけどよ」

 

 

 

そんな彼の様子を見て、染岡はさらに言葉を続ける。何処と無く、いつもより優しい雰囲気のする染岡。強化委員に反対していた彼だが、それを見るだけで前に進んでいるのが半田には何となく理解出来た。

 

 

 

「お前、わざわざサッカー協会の人から雷門に残ってくれって頼まれたんだろ?それってすげぇ事じゃねぇか」

 

「……だけどさ、俺はお前や円堂みたいに凄くないんだ。自信が無いんだよ………」

 

「バッカだなお前」

 

 

 

ため息をついてほんとにバカだな、という染岡に対して怒りを感じる。人の気も知らないで好き勝手いいやがって、と。しかし、その怒りは直ぐに霧散することになる。

 

染岡は左右の手で半田の両肩をがっちりと掴む。そして彼の目をしっかりと見据えて、話し始める。

 

 

 

「凄くないだと?馬鹿言え、お前の実力は俺が保証してやる。他のメンバーより、一年長く円堂やお前とサッカーしてた俺がだ。

 

 

ーーーそれに、豪炎寺や鬼道も言ってただろ。離れていても、俺たちはここで繋がってんだ。いつまでも仲間なんだよ」

 

 

 

だから自信ねぇとか言ってんじゃねぇよ、と笑いながらドンッ!!と彼の胸を叩く。その後、じゃあな、と言って染岡は教室から去っていく。松野も後ろからそれを見ており、愉快そうに笑いながら半田へとヒラヒラ手を振って後を追って行った。

 

 

 

 

「………俺が保証する、か………サンキュ、染岡」

 

 

 

1人だけ置いていかれるような、離れ離れになるような気持ちを抱いていた半田。しかし、同じ時に入部した染岡からそう激励され、同時に面と向かって『仲間』だと言われたことにより、その気持ちも和らいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、青春だねぇ!」

 

 

「うおっ!?」

 

 

 

そんな時。唐突に後ろから聞こえてきた声に驚いた半田はビクリと身体を揺らし、そのまま体重を預けていた椅子ごと後ろに倒れ込み、盛大に音を立てる。

 

 

 

「ってぇ!??」

 

「うわぁ!!だ、大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫………って、大谷さん?」

 

 

 

地面にぶつけた後頭部をさすりながら声を掛けてきた人物を見上げると、そこにいたのは、茶色いセミロングをした女子生徒。同じクラスであり、半田も何度も話したことのあるハツラツ女子、【大谷(おおたに) つくし】だ。クラスの元気印、顔見知りも多い。半田的には2年生版音無、という印象であった。

 

 

 

 

「ほんとに大丈夫?怪我してない?」

 

「いや、大丈夫……ててて………」

 

「ゴメンね、ちょっと驚かそうと思って……」

 

 

 

申し訳無さそうにする大谷。半田は同学年の女子にそんな表情をされてなお文句を言うような男ではない。気にするな、と言いながら立ち上がり、椅子を立てて再び席に着く。

 

 

 

 

「っと………にしても、なんか用?後ろから話しかけて来るなんて珍しいけど」

 

 

 

大谷と話す機会は同じクラス故に結構ある。だが彼女と仲がいいか、と聞かれれば微妙であり、せいぜいがよく話すクラスメイト止まりだろう。彼女が仲がいいのは、サッカー部のマネージャーを務める木野辺りだ。そんな彼女がからかうような言い方で話しかけてくるのは珍しい。

 

 

 

「そうそう!半田君、雷門に残るんでしょ?」

 

 

「そうだけど、それがどうした?」

 

「雷門に残るってことは、また新しく雷門で部員探すんでしょ?………マネージャー、欲しくない?」

 

「?そりゃ、木野も雷門も音無も別の学校に行くから、マネージャーは欲しいに決まって………って、もしかして!?」

 

 

 

にまり、と笑う大谷。現状、木野は円堂の派遣先に、音無は鬼道の派遣先に同行することが確定しており、雷門に関しては海外のチームの情報を集めるため、各国を飛び回り情報収集の旅に出る事となった。その為、今の雷門中にはマネージャーはいない。そして、大谷の表情を見た半田は彼女の提案を察した。

 

 

 

 

「ふっふっふ……ジャーン!!」

 

 

 

意味深に笑いながら大谷が取り出したのは、サッカー部への入部届け。それを手に持ちながら、大谷はビシっ!と敬礼する。

 

 

 

「不肖、大谷つくし!雷門サッカー部に、マネージャーとして入部させて頂きます!!……なーんてね!」

 

「マジで!?入部してくれんのかよ!!」

 

「うん!木野ちゃんから相談されててね!新生雷門サッカー部の為に、力を貸すよ!これからよろしくね、半田君!」

 

 

まさかのところから、まさかの加入。半田率いる新生雷門サッカー部、最初のメンバーはマネージャーの大谷だ。初心者だらけになるであろうサッカー部故に、彼女がいてくれればより練習に集中出来るというものだ。

 

 

 

「こちらこそ!!よろしく、大谷さん!!」

 

「呼び捨てで大丈夫だよ。さん、ってなんだか他人行儀だし!」

 

「そっか……なら、よろしくな、大谷!」

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

こうして歩み始めた、新しい雷門中。これが翌年のフットボールフロンティアで、旋風を巻き起こす半田真一と、仲間達の第一歩であったーーーー。

 


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