イナズマイレブン!アレスの天秤 半田真一伝説!〜導かれしスカウト達〜   作:ハチミツりんご

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みんなの推しスカウトが見れて楽しい。だけど一人、パンツさんなんですが、確か大会優勝者の方でしたよね?あの人って出したらまずかったりするのかな………?

あ、スカウトキャラはまだまだ募集してます。ポジションとか気にせず『この子が好き!』って感じなので、覗いてって下さい〜


速水真刃

 

 

「………で?なーんでまた俺なんかをスカウトしに来たんだよ?」

 

 

 

風丸を超えるスピードを持つ韋駄天、速水をスカウトするべく陸上部へとやってきた半田と大谷。そんな彼らからスカウトを受けた速水は、顧問に断りを入れてから少し離れた木陰に腰を下ろして話を聞いていた。

 

 

 

 

「………また陸上部から引き抜きですか………しかも速水先輩を………」

 

 

 

何故かジトッとした目を向ける宮坂も一緒だが。そんな後輩に風丸と速水は呆れたような視線を向けるが、半田と大谷が同席しても構わない、という事になりこの場にいるのである。陸上部から引き抜こうとしているんだから、そちら側の人が同席するのは当然、という事らしい。

 

 

 

取り敢えず、速水と宮坂にここにたどり着いた経緯を説明。風丸からセンスのある人物がいると聞き、未だ部員の集まらない自分達に力を貸して欲しい、と頼む。

 

 

 

「………とゆーわけなんだ、頼む!!」

 

 

 

「あれだけ勧誘しててまだ一人も来てないって……サッカー部は勧誘じゃ人が来ない呪いでも掛かってるんですか?」

 

「へーい宮坂、シャラーップ。………まぁ事情は分かった。あんな短いサッカーバトルでセンスあるって言ってもらえるのは素直に嬉しいし、他ならぬ風丸からの推薦だ、力を貸すのはやぶさかじゃない」

 

「!なら……!!」

 

 

 

予想以上に好感触な様子に喜色を浮かべる2人。しかし、速水は若干目を吊り上げながら「だけど」、と言う。

 

 

 

「俺は陸上部だ。有難いことに、今年の全国大会でも十分高い順位を狙えるって言われる程度には期待をかけられてる。……風丸が抜けてからは尚更だ。サッカーに転向した彼の分まで君が、ってな」

 

「っ!」

 

 

 

速水のセリフにピクリと反応したのは、当の風丸。次いで申し訳なさそうな表情に変わり、宮坂から速見へ非難の視線が投げられる。ソレを受けた速水だが、飄々とした態度を崩さずに肩を竦める。

 

 

 

「まっ、こうは言ったが、俺は風丸に文句があるわけじゃない。お前はお前の選択をしたし、俺はそれを肯定してるし応援してる。実際に、日本のトップに立ったんだからな………すげぇぜ、風丸」

 

「……あぁ、ありがとう速水。そして済まない、お前にそんな負担をかけていたなんて……ってぇ!?」

 

 

 

頭を下げようとする風丸に向かい、立ち上がってデコピンを加える。律儀で、かつ不満や不平を内に溜め込みやすい友人に呆れた様子で言葉を告げる。

 

 

 

「何すんだお前!!」

 

「お前なぁ、今気にすんなっつったばっかだろ。別に俺は走んの好きだし、お前が円堂達と活躍してんのは見てて嬉しかったよ。期待されんのもそう悪いもんじゃねぇしな………まぁお前がいなくなって女マネ達の悲鳴が凄かったけど」

 

 

 

ゲンナリとそう告げる速水。

 

風丸がいなくなり、サッカー部へと助っ人が決まった時は「風丸先輩かっこいい〜!」と言われていたが、練習に顔を出さなくなると心配に変わり、正式にサッカー部になると決まった時はまさしく阿鼻叫喚。風丸目当てにマネージャーしている子も少なくなかっただけに、その鎮圧にはかなりの労力を要したようだ。

 

ちなみに宮坂は速水の隣でウンウン頷いているが、速水からしたら「オマエモナー」である。真っ先に風丸の元に行って陸上部に戻るよう交渉したのはどこのどいつだ。

 

 

 

「っとまぁ、俺は陸上部からは風丸の分も含めて期待の星って言われてんだ。………風丸の前でこんなこと言うのはあれだが、ここでお前らの誘いにのってはいそうですかってサッカー部にいくのは、応援してくれてた人達への裏切りに等しいと俺は思ってる。転部するに相応しいだけと理由が無きゃな」

 

 

 

真剣な目を半田に向ける速水。部内でもトップクラスに位置し、速水に勝ったことは無いとはいえ、彼にくらい付ける唯一の選手だった。そんな風丸が陸上部から去ってから、陸上部の、そして関係者の期待は一挙に速水に集まったのだ。一年生ながら良い走りを見せる宮坂にも当然期待は寄せられるが、トップ争いを期待されるのはやはり速水なのだ。

 

 

 

「お前に力を貸したいとは思う。だけど、陸上で期待してくれた人もなるべくなら裏切りたくない。

 

 

ーーー半田、聞かせてくれ。なんでお前は俺をスカウトする?なんでお前はサッカーで優勝したいんだ?それを聞いてから、俺は決める。………頼まれたから、とかは無しな」

 

 

 

 

速水の真剣な目が、半田を射抜く。ここでの返答次第では、速水は入部を断るつもりだった。それでも、風丸の顔を立てるために勧誘の協力や、人数が足りなかった場合の助っ人程度ならば快く引き受けよう、とは思っていたが。

 

 

 

 

 

 

「………うーん………」

 

 

 

ポリポリ、と頬を掻く半田。緊張感のある場面のはずなのに、妙に気の抜けたようなその仕草に大谷と宮坂が怪訝な表情になる。

 

 

 

「………正直、あんまりわかってないんだ」

 

 

「………分かってない?」

 

 

 

あははは……と苦笑して分からない、と言った半田。まさかこんな時にそんなことを言い出すだなんて、速水や宮坂どころか、隣に立つ風丸や大谷にも予想外の事だった。勧誘の場面で真剣な表情の相手に向かい、「分からない」などと抜かす男がどれだけいるのだろうか。

 

 

 

 

「そうなんだよ。雷門中に眠る才能を君の手で開花させて、日本のサッカーを押し上げて欲しい……なんて、統括チェアマンには言われたけど、そんな気はあんまり無くてさ」

 

「なんですかそれ。手抜きって意味ですか?」

 

「宮坂!!」

 

 

 

半田の気の抜けたような物言い、下手しなくても手を抜いていると思われてしまう発言に宮坂が噛みつき、風丸が窘める。しかし半田は、大丈夫だよ、と風丸を止める。

 

 

 

 

「宮坂の言う通りだ。手抜きって思われても仕方ないのかもしれないし、俺自身最初はこんなの出来るわけないと思ってた」

 

 

あえて宮坂の言葉を肯定する半田。諦めたようにも取れるが、目の前の速水には分かった。半田の目には曇りがない。何も、迷っていない目なのだと。

 

でも、と半田が小さく呟いた。

 

 

 

 

「それを言われてからしばらく経ってさ、これはチャンスだなって思うようになったんだ」

 

「チャンス……か?」

 

 

風丸が首を傾げてそう呟く。そう、チャンス、と笑う。

 

 

 

 

「こんな機会でもないとさ、本気で雷門のみんなにーーー円堂や豪炎寺、鬼道や風丸、染岡、マックス達にぶつかれる事なんて無いだろ?」

 

 

 

戦える。かつて肩を並べ、そして置いていかれたあの仲間たちと、真正面から、本気で。いつも一緒に練習していて、あの帝国との練習試合以降はそれの手を抜いたことは一度だってない。だが、練習で戦うのと、フットボールフロンティアで戦うのは、やはり違うのだ。

 

 

そんな半田の思いを見た速水は、目を丸くする。そして、同時に共感する。陸上で速水の種目は100メートル走。そして、傍にいる風丸も陸上部時代は同じく100メートル走。練習で何度も走りあった彼だが、やはり大会で戦う時の、走り合う時の緊張感は、その時しか味わえないもの。半田の気持ちは、速水にはよくわかった。

 

 

 

 

 

「だからさ、俺はアイツらと戦いたい。そんでもって、フットボールフロンティアで優勝して、日本代表になりたいんだ。

 

 

ーーーその時に俺は、かつての仲間に負けないくらい、いや、超えるくらい最高の仲間を集めたい」

 

 

 

静かに、真っ直ぐ速水の目を見てそう言う半田は、ゆっくり、ゆっくりと右手を彼に差し出す。

 

 

 

 

「………風丸から紹介されて、お前の走りを見てから、もちろん戦力としてもお前が欲しい。だけど、それ以上に。

 

 

お前、良い奴なんだよな。後輩からあれだけ慕われてるのを見ればよく分かるよ。今話してても、急な誘いなのに話を聞いて、こっちに任せてくれてる時点で、お前は間違いなく、良い奴なんだ。

 

 

 

俺は、そんなお前と、一緒にサッカーやりたいって思った」

 

 

 

 

嘘偽りない半田の本心。風丸から推薦されている時点である程度は信頼していたが、実際に見て、半田が感じたことをそっくりそのまま伝えた、ただそれだけ。

 

 

 

ただ、それだけの事だがーーー

 

 

 

 

 

 

「速水。

 

 

 

 

 

 

俺と、サッカーやろうぜ!」

 

 

 

 

 

ーーー心を、動かした。

 

 

 

 

 

「………はァァァァァ〜〜〜………」

 

 

 

深々とため息をつく速水。ガシガシを頭を掻く彼を見て、半田は慌てたようにワタワタと手を動かす。

 

 

 

「いっ!?いやいや!!お前の陸上への思いと応援してくれてる人へと感謝はすげぇと思ってるよ!!だけど、おれと、サッカーしてくれたらなぁ、なんて………」

 

「………お前、そこまでやったら最後まで貫き通せよ………ったく、とんだ殺し文句だぜ………」

 

 

 

いきなりなよっとした雰囲気に変わった半田に呆れながらも、速水は笑う。自分の思っていた以上に、いつの間にか乗せられていたようだ。

 

 

 

「ほらよ」

 

「………へ?」

 

 

差し出されていた手を、速水は握る。半田は最初こそポケッとした顔をしていたものの、その手の示す意を理解すると、隣の大谷と並んでぱあっと表情が明るくなる。

 

 

 

「えっ、おまっ、これっ、は、速水!!」

 

 

「んだよその言い方。お前が誘ったんだろ?ーーーまっ、陸上の方の人たちにゃ後で謝るけど、きっと大丈夫だろ………速水真刃はサッカーに転向して正解だったって思わせりゃいいんだからな」

 

 

 

 

そう言って肩を竦める速水は、半田と大谷に向けてニッ、と笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、ゆーわけだ!!改めまして、男、速水真刃!!本日付けで、陸上部からサッカー部に転部だ!!これからよろしく頼むぜ、『()()()()()』!!」

 

 

 

 

 

ガチリとはまる、運命の歯車。今ここに、新生雷門中の3人目。蒼き疾風の好敵手であり、音すら置き去りにする雷光の如き煌めきが、半田の用意した船に乗り込んだ。

 

 

未だボロ船であり、人数すら足りないが。それでも彼らは、確かに一歩、前へ出た。速水真刃という、新たなる仲間を乗せて。

 

 

 

 

 

「ちょちょちょっ!?それでいいんですか速水先輩ィ!?」

 

 

「あん?だってなぁ、生半可な気持ちだったら手伝うだけに留めようかとも思ったが、あんな言われ方されて断ったら男が廃るだろ。それにほら、俺の風丸の分の期待を背負ってくれる新しいスターなら、ここに居るじゃねぇの?」

 

 

「へ?………でぇぇぇぇ!?僕ですかァ!?」

 

 

 

 

ガシッと肩を組んで宮坂にニヤニヤと笑いかける速水。いきなりそんなことを言われて無理無理無理無理!!!と高速で首を横に振る宮坂だったが、案外いけないわけではない。一年生ながら風丸にも認められ、速水にも食らいつけるほどのスピードを持っている彼ならば、これからの鍛え方しだいでは充分にスターになれる可能性を秘めた男だ。

 

 

 

 

「あー、そだ半田!!これ以上陸上部からは引き抜かない方がいいぜ」

 

「え?なんでだ?」

 

「なんでって……当然でしょう?風丸さんと速水先輩、うちの主力二人を引き抜かれたのに、これ以上引き抜かれたらたまったもんじゃないですよ!!一年の中には、まだサッカー部恨んでるやつ結構いますからね?」

 

「げっ、マジかよ!!」

 

「速水君経由で紹介してもらえれは一気に部員獲得行けるかな〜と思ったのに〜………」

 

 

 

 

速水と宮坂からの忠告に顔を歪める半田と大谷。速水を経由して陸上部の面々をスカウトすれば、一気に試合ができるほど集まるのではないかと思っただけにショックも大きい。………まぁひとつの部からそれだけ引き抜かれればたまったものでは無いのだが。顧問も動き始めるだろう。

 

 

 

 

 

「なんだ、俺以外に候補いないのか?」

 

「ゔっ………声掛けてんだけど、誰も来なくてさ……」

 

「はぁ〜、お前らほんとに苦労してんな………あっ」

 

 

 

 

どんよりとした雰囲気を出す2人に哀れみを篭もった目を向ける速水だったが、いきなりポンッと手を叩く。そして半田達に、渡りに船な提案を投げた。

 

 

 

 

「んじゃ俺の知り合いに声掛けてみるか?運動神経なら抜群だし、頭良いから力になってくれると思うぜ?入部するかは本人次第だが………」

 

「ほんとに!?」

 

「マジかよ、頼む速水!!」

 

 

 

 

またまた頭を下げて頼み込む2人ーーーコイツら頼んでばっかだなとは言わないで欲しい。彼らだって必死なのだ。なりふりなんて構ってられないのである。

 

 

そんな彼らに「任しとけ、聞いとくぜー」と言って了承する速水。そして、その日は一旦解散。半田と大谷は、陸上グラウンドを後にしたーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………っと、まずは顧問の先生に頭下げて、転部届け書いて……あー、親にも言わなきゃか。なぁ風丸、よけりゃサッカーの参考になる動画とか送ってくんね?夜にでも確認するわ」

 

「あぁ、それくらいお安い御用だ。……済まないな速水、なんだか押し付けたみたいで」

 

「はぁ?だから言ってんだろ、お前は自分の意思で決めて、俺はそれを尊重した!!今回も、俺がアイツについて行きたいと思ったから決めたんだよ。風丸にゃ関係ないこった」

 

 

 

2人が去った後、そんな会話をする速水と風丸。未だに申し訳なさそうにしている友人の生真面目さを好ましくは思いつつも、どこかで溜め込まないか心配な速水だったが、今ここで言っても変わらないだろう。

 

 

 

 

「っと、そういやお前はいつ転校するんだ?確か、帝国だろ?」

 

「早ければ来週には向こうに行くさ。今から勉強について行けるか、不安だよ……」

 

「あの帝国だもんなぁ……俺じゃ絶対無理だわ。………あっ、そうだ。アイツに連絡取っとかねぇと」

 

「アイツって、さっき言ってた協力してくれそうな知り合いのことか?」

 

「あぁ、一年の時同じクラスでな。良い奴だぜ、目付きは悪いが子供好きで、よく小さい子達に囲まれてんだ」

 

 

 

目つきが悪いのに子供に好かれる、つまり根っからの善人なのだろうと推測する風丸。それならば半田達にも問題ないだろうな、などと親のようなことを考える彼なぞ露知らず、速水は目的の相手へ電話を掛ける。数回のコールの後、通話が接続。携帯越しに友人の声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

『……もしもし?速水か?』

 

「よう!今大丈夫か?」

 

『?あぁ、問題ないが……どうかしたか?』

 

「いや、お前にちょっと頼みがあってさ………一緒に、サッカーやらないか?

 

 

 

 

 

 

 

ーーー『冷泉』」

 

 

 

 

 


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