スパロボ的イベント圧縮と救済により、ロイエンタール、オーベルシュタイン、ラインハルトなどが元気に生きてます。
スパロボ的クロスオーバーにより『コードギアス』のブリタニアが銀河帝国と同じような規模で在ります。
で、ラインハルトとルルーシュが同じような時期に即位し、無駄だから長期に渡った両国間の戦いを終戦した後の話。
この話に出てくるリリーシャは公式で名前だけ出ていた、ジェレミア卿の妹。
ちらっとどこかに出ていたルルーシュと瓜二つの容姿という設定を膨らませ、実はルルーシュの双子の妹となっています。
他にも書かなきゃいけない設定はあるのですが、衝動を抑えられずに書きました。
誰得と言えば俺得としか(-_-;)
それでもよろしければお目汚しですがどうぞ。
ブリタニアという国がある。
地球時代にイギリスと呼ばれた国が基盤となった大国で、数ある国の中で唯一銀河帝国と同規模の国土と人民を抱えていた。
神聖ブリタニア帝国と銀河帝国との関わりはそのまま戦争の歴史だ。
今に至るまで停戦や休戦はあったが、終戦は一度もなかった。
しかし国家にとって永遠の敵も永遠の味方も存在しないという言葉が示す通り、遂に戦争状態が終わりを迎えた。
それは偶々ルルーシュ新皇帝の即位とローエングラム王朝の成立時期が近かったため、先進的な思想を持つふたりの若き皇帝の話し合いが可能となったためだ。
合意はなされ数百年の長きに渡った戦争は終わった。
課題は山積みだが、両国間の平和は成されたのである。
そんな歴史的出来事から少し時が流れ、舞台は銀河帝国の首都フェザーン。
「オーベルシュタイン夫人が可哀想だ!!」
ビッテンフェルトの大声が酒場に響き、勢いよくテーブルに振り下ろされたジョッキが重い音をたてる。
呑んでいる面子の酔いが大分まわり、話題がループし始めた時だった。
最近の彼らの話題は大体同じで、まずオーベルシュタイン批判が始まり、散々悪口を羅列した後、最終的に『オーベルシュタイン夫人が可哀想だ』と着地する。
ちなみにこの場合悪口を言ったらオーベルシュタインの細君に悪いという意味ではなく、あんな悪口のネタが尽きないような男に嫁いだのが可哀想という意味だ。
「ルルーシュ皇帝も実の妹にひどいことをする!両国の融和の象徴とはいえなんでオーベルシュタインになんぞ嫁がせたのだ!」
そうだそうだと部下の同意が輪唱のごとく飛んだ。
まあ、この意見は別に的外れないちゃもんではなく、むしろ一般見解とすら言える。
何せオーベルシュタイン夫人ことリリーシャは現在二十二歳。
夫であるオーベルシュタインとは15離れている。
親子ほどとまではいかないが、年若い娘からしたらかなりの年の差に感じられることだろう。
さらに相手があの冷徹、厳格なオーベルシュタインだ。
箱入りで蝶よ花よと育てられただろうリリーシャ姫にはなかなかきついのではないだろうか。
彼女が遠く離れたかつての敵国=ブリタニアから銀河帝国に嫁いできた理由は普通に政略結婚だ。
両国の国交が回復した際、互いの国同士で姻戚関係になることが提案された。
古くからある外交手段であるそれは、ふたつの国の長すぎた戦いの歴史から考えれば別段不思議ではない提案だ。
ここまではいいとして、問題は誰と誰が結婚するかだった。
真っ先に考えられるのはどちらかの国の皇帝の親族がどちらかの皇帝に嫁ぐということである。
この場合ラインハルトは既婚なので、独身のルルーシュにアンネローゼが嫁ぐのが一番自然だろう。
だがこの案にはラインハルト自身が猛反対した。
アンネローゼはラインハルトにとって唯一の家族であり、姉であると同時に母のような存在だ。
頻繁に会えないどころか、片道だけでもかなりの日数がかかるブリタニア首都に嫁に行かせるなど出来るはずはない。
ブリタニアから皇族の入り婿をとるパターンも提案されたが、姉を政治に絡めたくないと却下されている。
そこまで直球に言われたわけではないが、そのようなことを婉曲に説明されたルルーシュも何か察するところがあったのか、特に反論することなく頷いたという。
ではブリタニアから嫁をもらう場合はどうか。
幸いにというかブリタニアは前皇帝が非常にたくさんの子宝に恵まれたため皇族の人数は豊富だ。
ルルーシュの即位前に起きた内戦で多少人数は減っても、直系だけで三桁はいる。
だが銀河帝国とは違い、女性軍人の人数が半数を占めるブリタニアは女性皇族でも要職についているケースがほとんどだ。
まだ国内が安定していないのに、上の人間がいなくなるのは思わしくない。
そこで白羽の矢がたったのが、現皇帝ルルーシュと双子の妹であり、生まれてすぐに事情があって内密にゴッドバルト辺境伯爵家に引き取られていたリリーシャだった。
彼女は公式では皇族と認められていないため新政府には特にかかわっていないし、義理の兄がいるためゴッドバルト家を継ぐこともない。
血筋は現皇帝に誰よりも近いが、血筋が明かされたのが最近であったため、皇帝本人と関わりが薄い親族だ。
そのような非常に微妙な立場ゆえにブリタニアでも扱いに困っていたらしい。
ここで普通ならば皇帝ラインハルトのところに嫁にくるはずなのだが、ラインハルトが側室をとることを嫌がった。
さらに友好関係を築こうとしている国の姫を側室に迎えるのもいかがなものかという話になり、議論は誰に嫁がせるのが良いかという議題に移行した。
この時点で皇家同士の姻戚関係という案が明らかに破たんしているが、嫁は決定しているため今更白紙に戻せなくなったのだろう。
ブリタニア側から、元帥などの重鎮達の独身者の誰かに嫁ぐのはどうかという案が出されたのだ。
何故最終的選ばれたのがオーベルシュタインなのかは本当にわからない。
ラインハルトは初対面の相手と結婚というのは可哀想だと、終戦記念という名目のパーティーを開いて幹部達とリリーシャの顔合わせをさせている。
会った中で一番彼女が気に入った幹部と話を進めようということになったのだ。
当然ビッテンフェルトも選ばれる可能性はあった。
自分の嫁くらい自分で選びたいが、勅命であるため選ばれた場合断るという選択はない。
もし選ばれたならば、お互い様なのだし出来るだけ優しくしようという気持ちもあった。
そのように色々思うところはある状態でパーティーに出席し、初めてリリーシャ姫と会った。
皇帝ラインハルトも絶世の美貌だが、彼とよく容姿に関して比較されるルルーシュ帝と瓜二つと称させる彼女も勝るとも劣らない。
傾国の美貌とでも言えば良いのだろうか。
艶やかな黒髪は絹糸のように流れ、逆卵型の顔には美しく見えるように計算されたかのごとく大きな紫水晶の瞳や花びらの唇が鎮座している。
さらには輝くように白いきめ細かな肌、ブリタニア人特有のすらりと長い手足に、緩急に富んだ曲線。
宝石を縫いこまれたドレスが添え物にしか見えないほどの美しさだ。
性格は穏やかで、媚を売ってくることもなく、自然な笑顔でビッテンフェルトと話した。
幼い頃から体が弱く、領地から出たことがないどころか、このような公の場に出るのもほとんど初めてで緊張していると言っていた。
こんな純朴で大人しそうな娘が政略に使われるのかとかなり苦く感じ、他のブリタニア人_皇帝も来ていたため一緒にいた皇帝の私兵=ナイトオブラウンズへの態度が硬くなったものだ。
勢いでナイトオブワンであり、リリーシャの義理の兄であるジェレミア・ゴッドバルト卿に皮肉めいたことを言ってしまったのだが、彼は怒るどころか不快に思った様子もなく猛将の言葉を受け止めた。
ゴッドバルト卿は国境ラインに領地を持つ生粋の貴族でかなりの武闘派のはずなのだが、彼自身も男性的に非常に整った顔立ちをしており、腰が低く穏やかな好人物だ。
今まで散々『野蛮なスズメバチ』(彼らが戦艦による戦闘ではなくKMFを用いた戦術を得意と し、戦闘員がひとりでも艦内や基地内に侵入してくると被害が甚大となったため)と悪罵を浴びせた相手の代表がまさかこんな優し気な男だとは知らなかった。
このような男が、今まで何千隻もの銀河帝国の戦艦を鹵獲、もしくは沈めてきたのか。
内心で驚いていたが、彼の針金を限界まで引き絞ったような体を見て、納得もした。
飾るために鍛えられたものではないことがすぐにわかったからだ。
「ビッテンフェルト提督はお優しいのですね。ついこの前まで殺し合いをしていた国の姫のことをそこまでご心配いただけるとは思いませんでした」
微笑む顔は裏表なく好意に満ち、思わずビッテンフェルトも笑い返してしまったほどだ。
なんとなく気安さを感じた銀河帝国の猛将は、その後もジェレミアと話をした。
あまりに盛り上がり過ぎて、気付けば会話に加わってくる提督たちが何人もいたくらいだ。
「あの子・・いえ、リリーシャ様には幸せになってほしいのです」
会話の中でふと祈るように呟かれた言葉には、血の繋がらぬ妹への愛情が溢れていた。
なら政略結婚などさせるなと言ってやりたいが、そうはいかない事情もあるのだろう。
その時、会話の輪に加わっていたロイエンタールが視線を逸らしたが見えた。
薄々察してはいたが、この男はパーティーが始まってからずっとリリーシャの視界に入らないように動き続けている。
今だって彼女からは顔が見えないような角度を確保していた。
普段のビッテンフェルトならばもっと堂々とすべきだと主張するだろうが、今回は何も言う気がなかった。
漁食家として名高い智将の気遣いだと判断したからだ。
結婚後に浮気をする男だとは思わないが、異国から嫁いで夫に色目を使う女がいっぱいいるのを見せられるのは可哀想だろう。
単純にひとりの女に縛られたくないだけかもしれないが、それをここで言ったらとんでもないことになることくらいは予想が出来た。
その後も楽しく話をしていると会場がざわめいた。
皆の視線が注目する先にはリリーシャがおり、彼女はひとりの男とダンスを踊っている。
その相手がオーベルシュタインだ。
「ああ。オーベルシュタイン軍務尚書ですね。・・・・彼が婿になるのかな」
さらっと呟かれた言葉に周囲の人間がぎょっとした顔でブリタニアの騎士筆頭を見た。
見つめられた青年は気にした様子もなく、柔らかな笑みを絶やさない。
「大変優秀な方と聞いています。真面目そうですし、品がある方ですね」
「ゴッドバルト卿。知り合ったばかりの卿にこんなことを言うのもどうかと思うが、止めた方が良い。というよりあのオーベルシュタインがどんな男か知らないのか?」
「さすがに存じてますよ。有名な方ですし。ですが、最終的にはラインハルト帝の御配慮でリリーシャ様がお決めになりますので」
ジェレミアの笑顔は絶えない。
その間も軍務尚書と異国の姫は優雅に踊り続けている。
リリーシャが小声で何やら話しかけ、オーベルシュタインもそれに応じているようだった。
「・・・妹君を説得した方が良いぞ?」
不思議なことに容姿で釣り合いが取れないということはないようだが、他にも問題が山積みだ。
主にオーベルシュタインの性格の問題で山積みだ。
ビッテンフェルトも含む話が聞こえていた周囲の人間が一斉にオーベルシュタインの問題点を列挙したが、ゴッドバルト卿は苦笑するだけで動こうとはしない。
それは他のナイトオブラウンズやルルーシュ皇帝も同じようで、徹底した傍観の構えだ。
姫の義兄は鍛えられた首を傾げ、穏やかに提案した。
「そんなにリリーシャ様を心配してくださるのでしたら、婿に立候補していただけませんか?」
言われて姫を救おうと話しかけに行った勇者達が多数いたが、姫当人のやんわりとしたお断りに敗走してきた。
そして戦局は覆らぬまま、婿選びパーティーは終わったのである。
その後オーベルシュタインがラインハルトから『彼女がお前が良いと言ったから結婚しろ(要約)』と命ぜられ頷き、結婚する運びとなった。
本人達は嫌がった豪奢な結婚式の後、オーベルシュタイン夫人となったリリーシャは本当によく頑張っていると思う。
仕事場と家の循環くらいしかしない夫に弁当(ブリタニアの文化らしいランチボックスの中身を妻が作って持たせる文化)を持たせたり、時折夫の仕事場に差し入れをしたり。
特に夜会で遊ぶこともなく、浪費することもなく、家の外を歩いていても散歩や買い物程度。
ミュラーの話ではオーベルシュタインと一緒に犬の散歩をしているのが目撃したらしいが、新婚旅行にも行ってない夫婦の外出がそれだけというのは酷過ぎる。
そのような憐れな異国の姫に邪心を抱き、ストレートに浮気に誘ってくる輩もかなり多いと聞いた。
幸いまだ何も起きていないが、ただでさえ夫が恨まれまくっているためいずれ彼女が辛い目に遭うだろうことは容易に想像がつく。
だがオーベルシュタインは夫人に護衛などはつけておらず、自身も今までと生活も変えていない。
わざわざ異国からお前なんぞのところに嫁にきてくれたのだから、ちゃんと守ってやれ!大切にしろ!と、他元帥達も再三言っているのだが、オーベルシュタインは変わらない。
常に職務を優先し、夫人は蔑ろだ。
フェルナー准将の話では夫人は気丈にも気にしていないと笑っていたそうだが、それがまた周囲のオーベルシュタイン憎しを上げている。
散々夫人への同情とオーベルシュタインへの苛立ちをあげつらった後、いい時間になったため部下の勧めもありビッテンフェルトは多少おぼつかない足取りで酒場を出た。
部下達が自動運転の地上車や徒歩で帰宅していくのを見送り自身も車に乗ろうとしたところ、ふと視線をやった離れた場所で意外な人物を見た。
艶やかな黒髪に紫水晶の瞳の華人。
先程散々話題に上がっていたオーベルシュタイン夫人がいた。
ひとりではない。
10人ほどの男に囲まれ、怯えたような顔をしている。
その細腕が無理矢理引かれて、路地裏に連れ込まれた。
酔いが一瞬で醒め、ビッテンフェルトは慌ててそちらに走る。
オーベルシュタインのことは大嫌いだが、夫人に罪はない。
それ以前に女性が暴行されるのを見過ごすなど男として出来るはずはない。
銀河帝国きっての猛将はあっという間に距離をつめ、路地裏に飛び込み、一瞬固まった。
「・・え?」
思わず間の抜けた声が出る。
その反応も仕方のないことだろう。
彼の目に飛び込んできたのは、オーベルシュタイン夫人が素手で悪漢共を殴り倒している雄姿だったのだから。
「たまたま近くにいらしたビッテンフェルト様が助けてくださらなかったら・・・どうなっていたか」
オーベルシュタイン夫人は涙ながらにそう語り、呼ばれた憲兵隊の隊員達は心底同情していた。
しきりに夫人を気遣い、彼女の窮地を救ったビッテンフェルトを褒めたたえる。
しかし当のビッテンフェルトは微妙に顔を引き攣らせ、曖昧な回答を繰り返すしかなかった。
助けに入ったのは事実なのだが、彼自身は何もしていない。
呆然としている間に、夫人は全員を徒手空拳で片づけ、
「申し訳ございませんが、憲兵隊を呼んでいただけますか?」
と返り血に汚れた顔で笑いかけてきたのだ。
その迫力に気圧されて、言われるままに呼ぶと、夫人は通報を受けた憲兵隊員達に男達に襲われそうになったところをビッテンフェルトが助けたと証言した。
ここで夫人がひとりで倒しましたとも言いづらく、とりあえず頷けば、勝手に憲兵隊と夫人が英雄譚を作っていく。
夫人は体が弱いのではなかったのか?
政治にも軍にも関わったことがない深窓の令嬢ではなかったのか?
もう何がなんだかわからない。
情報の整理が出来ず内心で頭を抱えていると、不意に周囲の空気が緊張する。
見ればそこには軍務尚書がフェルナー准将を伴って立っていた。
どうやら連絡を受けて、仕事場から直接きたらしい。
双方軍服のままだ。
「あなた!!」
見慣れた痩身が確認出来た瞬間、夫人が心底安堵したように声を上げ、夫に抱き付く。
その薄い胸でしゃくりあげる夫人を受け止めた後、オーベルシュタインはいつも通りの無表情でビッテンフェルトを見やった。
「・・・妻が世話になったと聞いた」
「・・・・・・ああ」
全く何もしていないがひとまず頷く。
「礼を言う」
平坦過ぎて欠片も心が感じられない礼の言葉が流れた。
普段ならそれに盛大に噛みつくところだが、夫人が再度大袈裟なまでに礼を言って来たので、出かけた言葉を飲み込んだ。
「日を改めてお礼に伺います。本日はこれで」
再び丁寧に頭を下げてから、夫人は夫の細腕に自身のそれを絡ませる。
オーベルシュタインは抵抗はしない。
いつもどおり背筋を伸ばしたまま、夫人を伴って去って行く。
それに続くフェルナーが一瞬何か含む笑みを浮かべたのが見えた。
ビッテンフェルトは直感的に奴は事情を知っていると思ったが、問いただす前に三人は夜の闇に消えていた。
「憲兵隊から連絡があった時は何事かと思いましたよ」
地上車に乗り込み、完全に人目がなくなってからフェルナーが笑い交じりに呟いた。
まだ何も詳細な説明はなされていないが、そこにあるのは事情を全て知った共犯者の笑みだ。
「ごめんなさい。まさかビッテンフェルト提督が近くにいると思わなくて」
そう笑うオーベルシュタイン夫人=リリーシャは先程までの涙は完全に消えている。
笑みにしても、他の彼女を知っていると思っている人間達には見せない不敵なものだ。
だがすぐにそれは気づかわし気なものに変わり、隣の夫に向けられる。
「お仕事中だったのでしょう?邪魔をして申し訳ございませんでした」
「・・・構わない。あの場をすぐに治めるならば出向いた方が効率が良い」
「もういい加減ばらしても良い気がします。そもそも代々武官の家系で育ったのにおしとやかというのにも無理があるような」
夫の平坦な声に、リリーシャは小さな頭を傾げ、何やら考えるような仕草をとる。
ブリタニアの国是は『弱肉強食』。
現皇帝によって見直されつつあるものだが、建国当時から続くそれは容易には変わらない。
その中でも国境ラインに領地を持ち、外敵からの攻撃に真っ先にさらされる場所で育った彼女は今まで戦場で生きてきた。
KMFとの付き合いはブラジャーよりも長い。
海賊などを相手に毎週のようにやってきた白兵戦と銃撃戦の力量は、ブリタニア内でも指折りだ。
そんな生粋の武闘派の彼女が、智で皇帝を支えるオーベルシュタインに惚れたのだから、面白いものである。
「そうでもない。君の国と違い、ここでは女性が前線に出ることはまずない。大人しくしていた方が自然だ」
「・・・・でもこのままだと貴方が余計なやっかみを受け続けますよ?か弱い妻に護衛もつけない酷い夫だと」
リリーシャとしても中途半端な護衛は邪魔なので助かってはいるが、夫がそのことで批判されるのは聞いていて楽しいものではない。
実際はリリーシャが非常に優れた戦士であることを加味した上での判断だ。
もしオーベルシュタインにとってこの妻が縁もゆかりもないただの敵だったとしても、暗殺してこいと命ぜられたらおそらく断るに違いない。
彼は出来ないことを出来るとはけして言わないからだ。
妻の心配にオーベルシュタインはいつも通り淡々と答える。
「嫌われるのは構わん」
「そうおっしゃると思っていました。・・・貴方は本当にお強いですね。・・わかりました。これまで通りか弱く振舞います。明日にでもビッテンフェルト提督を口止めしませんと。彼の性格上言い広めることはないでしょうが、納得させておかないと面倒なことになりそうですので。そうですね・・。『夫にはか弱い女だと思われたいんです』とか言っておきましょうか」
「君に一任しよう。結果報告を待っている」
「はい、あなた」
色気はないが、仲睦まじい夫婦の会話である。
このやりとりを聞いていたフェルナーは思わず吹き出してしまった。
最初彼らの結婚の話が出た時はどうなることかと思っていたが、この夫妻は存外気が合う。
しっかりとお互いを尊重している。
「”どんな鍋にも合う蓋がある”とはよく言ったものだ」
そんな楽し気な感想は、続いている夫婦の会話の中に溶けていった。