メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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第1話

「沢目中学出身、三雲です。よろしくお願いします」

 

 今日から二度目の高校生。

 とはいえ、通う高校に知り合いはいない。

 家が市と市の境目にあって小学校は隣の蓮乃辺市、中学校は今いる三門市に通うことになっていたのだが、中学受験したので蓮乃辺市の中学校に通っていた。

 

「はい、次」

 

 そして高校は三門市立第一高等学校に、普通校を受験した。

 進学校である六穎館高等学校でもよかったが、受験戦争に参加して常に満点で絵に描いた様に良い人になり良い会社に就職!なんてのをする為に勉強しているんじゃないので三門市立第一高等学校にした。

 決して受験戦争に敗北したからワンランク下の高校に行ったとかそういう感じのアレじゃない。人生を楽しみたいんだ、私は。

 

「三輪秀次です、よろしくお願いします」

 

 自分の自己紹介を終えると、今度は後ろの席の男性が立ち上がり挨拶する。

 周りはあれがあの三輪秀次とかカッコいいとかいう視線を向けているが三輪は気にせずに席に座り、次の番号の生徒が挨拶をする。特に変な奴とかDQNはクラスにはおらず、至って真面目そうなのの集まりだ。

 今日は入学式と軽い説明だけで教科書配布とかそういう細々したのは明日からで来週から弁当が必要になるなど、何処の高校でもありそうな説明を教師から受け、その日は終わる。

 

「三雲くん、三輪くん、この後みんなでカラオケに行くけどどうかな?」

 

「悪いが、この後、防衛任務がある」

 

「そっかー、三雲くんは?」

 

「私はカラオケは一人派だから、パスで」

 

 初日なので皆で交流をと陽キャっぽい人が言うが、パスする。

 カラオケに行って、変なパリピのノリに付き合わされるのは嫌だし、一人カラオケの方がいい。ネカフェのカラオケとか良い文明だぞ。

 断り方がアレだったのか若干引かれるも無理に誘ってくることはなく、他にも部活動に入る予定の生徒とか五月蝿いの苦手な奴等は断り10名ぐらいのグループでカラオケに向かう。

 私も家に帰ろうと自転車置き場に向かおうとするのだが、三輪がテクテクと歩いて帰ろうとするのを見て、立ち止まる。

 

「防衛任務があるんじゃなかったのか?」

 

「……カラオケとかああいう雰囲気のグループはどうにも苦手なんだ」

 

「ああ、それはよく分かる。パリピとかタピるとかインスタ蝿とか私もよく分からんし、どうも苦手だ」

 

「タピる?インスタ蝿?」

 

「一部のブームのこと、分からないなら忘れていい」

 

 ああいう一過性の周りに迷惑をかける系のブームとか、リズム感だけでネタが面白くないお笑い芸人とかなにが面白いのか楽しいのかよく分からない。枯れてる方なんだろうか?いやでも、ブームは飽きてしまうからブームなんだし、枯れてはいない。

 

「防衛任務と嘘をついてよかったのか?」

 

「どちらにせよ、今日は本部に行くつもり……初対面の人間になにを言っているんだ、俺は」

 

「部外者だから、近くないから話せることも世の中には沢山ある。SNSで拡散とかそういうのはしない」

 

「そうか……じゃあ、また明日」

 

「ああ、また明日」

 

 なんとも言えない距離感がある私と三輪。

 校門前で分かれると自転車に乗って私は家へと帰る。帰って、とっととグータラしていたい。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい。早かったわね」

 

「何処もそんなものだよ。

帰る途中も、別の高校の制服を着ている一年達が多かったし……あ、来週からちゃんとした授業で弁当がはじまるって」

 

「分かったわ」

 

 家に帰り、無駄に若々しい母に今日あった出来事を簡潔に話す。

 友達と遊んでくるとかそういうのをしなさいよと真顔で毒を吐かれるが、カラオケは基本的に一人で行く。映画も一人で行く。そういう人種なんだよ、母さん。

 

「そう言えば、部活動はどうするの?」

 

「入らない……学校の部活動は、色々と面倒。

部活動を優先して下手に成績を落とすのもアレだし……体育会系の部活動、朝練+週7日って話らしいし」

 

「ブラックね。でも、そうでもしないと市立がお金を掛けている全寮制の高校には勝てないんじゃないかしら?」

 

「確かに練習は嘘をつかないって言うけど、効率とかもある。

ただでさえ地球温暖化がどうのこうので毎年暑くなって熱中症患者が増えてるんだ。ここぞという時に無茶をさせるのも大事だけど、ここぞという時に休ませることも知らない化石的なのはNG」

 

 今の時代、努力するのは当たり前のこと。

 才能とかも大事だが、環境とか引き際も大事。猪突猛進よりも程よく引ける人間じゃないといけないと思う。逃げるのはダメとかそういうのを刷り込んだ末に退職代行とか生まれたし。

 

「あ、兄さんおかえり」

 

「ただいま、修」

 

「高校、どうだった?」

 

「普通、じゃないな。

ボーダーの隊員、しかも凄い有名な奴が後ろの席だったよ……なんというか貫禄があった」

 

 二階の自分の部屋に行こうとすると、私が帰って来たことに気づいた今はまだだが色々と凄くなる弟こと修が顔を出す。

 ボーダーの隊員がクラスメイトで雰囲気が違っていた。言うことはこれぐらいしかないものの、本当に貫禄があるぞ。隈取りがパンダにしか見えなかった。

 ボーダーについて言うとなんとも言えない顔をする修。余計な事を言ってしまったなと少し反省し、自分の部屋に戻って、ジャージへと着替えて昼御飯を食べ、花粉症対策にマスクをつけてランニングに出る。

 三門市には立ち入り禁止区域があるので、蓮乃辺市方面を5km、往復で10km走り家に帰ると腕立て伏せと腹筋100回、やっていることはワンパンマンのサイタマそのものだが、私は禿げていない。

 

「残された時間は一年半か」

 

 今更だが私は転生者である。そうでしょうなと言われればそうだが、とにもかくにも私は転生者だ。

 ワールドトリガーの主人公の一人である三雲修の二つ歳が上の兄に生まれた。そのせいか両親の年齢が+二歳になって四十過ぎているが、見た目は相変わらずなので特に問題ない。強いて言うなら、四十過ぎだろうと言うツッコミで色々と飛んでくるぐらいだ。本当にバイオレンスな母さんであり、正月に悪乗りで若作りの秘訣を聞いた時は死にかけた。

 

「……うん、無理だな」

 

 原作開始までは約一年半ある。

 原作と深く関わっていく原作前の出来事は来年に起きる。どうにかしよう!なんて思っても、どうせいと言うんだ。

 転生特典も基本的に変なものばかりで、一応トリガーということになっている戦う武器も持っている。だが、それだけで凄い発明品作れるとかそんなんじゃない。

 

「余計な事を考えずに、時が来るのを待つか」

 

 今更、なにを考えているんだと頭を振って頭の中から原作について消す。

 私というイレギュラーもいる、更にはここは既に物語でなく現実なのに三輪秀次に会ったから余計な事を考えてしまった。

 ゲームをやろうとしていたが、余計な事を考えてしまいやる気を無くしてしまったので代わりにスケッチブックを取り出して、漫画を描いていく。

 

「これこの前の続きじゃないの?」

 

「!?」

 

 漫画を描くのに夢中で母さんが部屋に入ってきてる事に気付かなかった。

 母さんはスケッチブックに描いてある漫画をジッと見つめており、何処か不満そうにしている。って―――

 

「読んだのか?」

 

「ええ、中々に面白かったわよ。

体格に力、足の速さと肉体的に恵まれた性格がちょっと酷い主人公が学校と自身の知名度を上げる為に色々なスポーツの大会に出るっていうの。王道的なスポコンとは色々と違ってて読み応えがあったわ」

 

「や、やメロぉお!!」

 

 なにが悲しくて誰にも見せるつもりの無いスケッチブックの漫画を見られなければならないんだ!

 確かに色々とセコい事をしてきたが、母親に痛い妄想を見られるほどの罰を受けるほどじゃないだろう。私がなにをしたと言うんだ。嫌なことから逃げる努力をしまくったけども、そこまでのものじゃない。

 

「大丈夫よ。貴方の漫画、困ったらエッチな描写をするとかそういうの無いじゃない」

 

「息子の黒歴史を語らないで、お願いだから。そしてなにをしに来たの!?」

 

「そうだったわ……入学したから夕飯なにが良い?なんでも良いはやめて。外食でもなんでも良いわよ?」

 

 言っていることが矛盾している様に見えて、矛盾していない母さん。

 凄いなーこの人は、眉一つ動かさずに夕飯を普通に聞きながら人のスケッチブックを読んでる。

 ジャンプラブコメみたいにヒロイン増えていったり色々な出来事が起きるけども、主人公は既に彼女持ちで彼女とのみイチャつくキッパリ泥沼ラブコメを描いてるから、読まないでくれないか?

 

「焼肉で」

 

「じゃあ、寿寿苑ね。銀行にお金を下ろしに行かないと」

 

 母さんはそう言うと部屋を出ていった。

 私は今夜は焼肉だと喜びたかったが喜べない。あの人、何事もなくスッと人のスケッチブック何冊か持っていった。弟が買ってきた少年漫画を借りるぐらいのノリで持っていった。

 スケットダンスのボッスンとスタンドの事を知ってテンションが上がりに上がりまくっている岸辺露伴を足した感じの手先の器用さと文字とか絵を描く速度が速いという地味な転生特典だが物凄く便利だが……黒歴史ができた。

 

「今度、金庫買おう」

 

 母親に見られたくないものを見られたので、涙が出た。

 前世と今生を合わせれば二十歳はとっくの昔に過ぎているおっさんだろう、大人らしくカッコいいところを見せろとか大人らしくしろとか言われても無理。涙しか出なかった。そして直ぐに金庫をノートパソコンでポチって買った。




メガネ(兄)

使い勝手が良いのか悪いのかよく分からない転生特典を持って転生した転生者。
主人公の一人である三雲修の兄に転生し、そこそこ不真面目に生きている。弟である三雲修は時折とんでもない事を仕出かしたりはするものの、よくできた人なので兄としての面目とかあるのかのと顔が手塚国光なので二十歳超えていると思われることを割と悩んでいる。五月蝿いのとか苦手で一人の時間とかが好きである。

ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯
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