2月9日(日曜日)ランク戦がお休みになるので次のランク戦ラウンド4は2月15日(土曜日)に執り行われる。
約一週間ほど間が開くのだがその間に特訓をしよう……とはなりにくい。なにせ明日から学年末テストが行われる。呑気に特訓なんてしてられない。大学も進級が掛かった試験とかしているんだろうか。
「さて、メンツは揃ったみたいですね」
色々と大事な時期なのだが今日やることと言えば……スポーツである。
那須がよくやっているトリオン体を用いての運動をする事となった……主催していてこんな事を言うのもなんだがよく参加しようとしたな。
「柿崎さん、照屋、巴はまだ分かるんだが……何故に風間さんも参加しているんですか?」
「歌川の代理だ」
スポーツをしてくれる相手を呼んでこいと那須隊に命じた。その結果呼び出されたのは柿崎隊(オペレーターの宇井を除く)の面々と……何故か風間さんがやってきた。何故に風間さんが参加しているのか聞けば本来来る予定だった歌川が16歳組の勉強会に急遽付き合わされる事になったらしい。
「なにやら面白い事をしようとしているな……」
「別に面白くもなんとも無いですよ……志岐」
「は、ははは、はひ」
「人数的に4vs4でやりたい。申し訳無いが得点係になってくれないか」
「わ、わかりかした」
男性に馴れていない男が苦手の志岐は挙動不審になる。
それと同時にホッとしている。今からスポーツを行うので運動能力に自信が無い志岐にとって点数係をするのはある意味ラッキーだったりする。
得点のボードを出して柿崎隊+風間さんと那須隊+私とでチーム分けをする。
「それで、何をするの?」
「見てわからないのか?バスケをするんだ」
現在ボーダーの一室を借りてバスケのコートに作り替えてもらっている。
那須は今から何をするのか聞いてくる。ここまで来てサッカーやテニスをするなんて言う筈がないだろう。
「バスケ……バスケがパワーアップとどう繋がるの?」
「口で説明するのは簡単だが実際にやってみるのは難しい……まぁ、余計な事を考えるな。今回は気楽にバスケを楽しんでくれればそれでいい」
「ふざけないで!私は真剣にやってるのにただ単にバスケをするなんて……今は遊んでいる暇はないわ」
「なら真面目にバスケをやろうとしてくれ……口で説明するのは簡単だが実際にやるのははじめてなんだ。恐らくは出来る筈だ」
バスケとランク戦がどう繋がっているのかパワーアップを果たすのにどう意味をしているのか那須は説明を求める。
口で説明をするのは簡単だがそれが出来ないから実戦形式で教えようとしている……ぶっつけ本番だから難しいがなんとかなるだろう。
「志岐、ジャンプボールを頼む。男女混合だからジャンプボールは女子……熊谷、頼んだぞ」
「ええ……」
極々普通にバスケをする。コレにいったいなんの意味があるのか熊谷は分からずに疑ってしまう。
志岐は女性サイズのバスケットボールを手にし熊谷と照屋は向かい合い、志岐はボールを高く投げた。
「てぃ、TIPOFF!」
「あ!」
「貰いました!」
ジャンプボールの競り合いの結果、熊谷は負けた。
照屋がボールを掴むと柿崎さんにそのままパスをして柿崎さんはドリブルをする。
「さて……先ずはボール奪取といくか」
何をするにしてもボールがなければ話にならない。
柿崎さんと向かい合い頭のスイッチを切り替える。今は真剣にバスケに取り組んでいる……全てはアレの為に。
「っ、風間さ」
「遅い!」
私を抜くのは難しいと判断した柿崎さんは風間さんにパスを出そうとする。
数秒先の未来ならば迅よりも正確に見通す事が出来る絶対の視覚を持っている私にはほんの僅かな
「パスだ!」
巴が日浦の元に向かう。
ドリブルで抜くのが難しいのだから此処はパス一択だと柿崎さんのマークを振り払い日浦にパスをしてもらいボールを受け取った。
「そうはさせん」
「残念だが、既に術中にはまっているぞ」
「っ!」
日浦からパスを受け取ると読んでいたのか風間さんがスムーズに対処してきた。
俺はドリブルをして動きを誘導し、アンクルブレイクを引き起こして風間さんに尻もちを付かせて風間さんを抜いた。
「ホッ!」
風間さんを抜いたので普通にシュートを決める。
ハズレる事は無いと私のサイドエフェクトが言っているのでゴールに背を向け、ディフェンスの体制に入る。シュートはゴールの中に入っていき、巴がコートの外に出てボールを手にした。
「大分温まってきたな」
時間とか得点とかこの試合は特に制限していない。
パスの先を読む事が出来るのだが風間さんは俺を警戒しており、マークに付いてスティールを狙わせない。
「1本取るぞ!」
普通だ……本当に何処にでもある普通のバスケを俺達はやっている。
風間さんが執拗にマークしてきているので此処は抜かずに那須隊に任せてみようと思ったが柿崎さんがレイアップシュートを決めて今度は私達の番となり熊谷からパスを受け取った……トリオン体とはいえ体は順調に温まっている。那須達もなんでバスケをしているんだという疑問を頭の隅に置き始めている。
「さて……やるか」
ランク戦もバスケも一瞬、刹那の時を生きている。常にリアルタイムで次を予測しないといけない。
俺をマークしている風間さんを抜いてシュート……と見せかけてワンバウンドのパスを那須にした。
「ナイス……?」
那須はパスを受け取るとそのままシュートを決める。
生身の肉体はアレだがトリオン体を用いての運動は中々にセンスがあるなと感心していると那須は違和感を感じている。その違和感こそ俺が今回バスケをしようと言った理由だ。
「熊谷」
ボールを奪い無理をすれば自らで点を取ることが出来るが無理をせずに熊谷にパスをする。
「いいタイミングよ!」
「だろうな」
熊谷はナイスとボールを受け取るとレイアップシュートを決める。
サイドエフェクトと持ち前の器用さで理論上は出来ると思っていたが上手い具合に出来ている。
「……三雲のパスを受けてから動きが良くなっている」
違和感の正体に風間さんは気付いた。
私が投げたパスを受け取ると熊谷達は見事にシュートやドリブルによる突破に成功している。動きが良くなっている。
「……なにかしら。今、最高にノッてるわ……」
「ああ、そうだ。お前達にはノッてもらってる」
「どういう意味なの?」
「俺は完璧なパスを出した。
俺がやったことは黒子のバスケの赤司が出した完璧なパスだ。
数秒先の未来を読み取る超視覚のサイドエフェクトとスケットダンスのボッスン並の器用さが合わされば……なんとか赤司の究極のパスを使う事が出来る。
「ランク戦はフィールドや転送位置、状況によってコンディションが大きく変わる。俺はバスケという種目でだが那須達の持つポテンシャルを90%まで引き出した……完璧なパスは完璧なリズムを刻み完璧なコンディションを引き出し……ゾーンと呼ばれる領域に限りなく近い状態に足を踏み入れる事が出来る」
那須達を一気にパワーアップさせる方法は殆ど無いに等しい。
流石に1日2日で格段とパワーアップをさせる方法や新しい作戦は思い浮かばない……作戦云々に関しては素人も同然だから仕方がない。故に……この完璧なパスを出した。現時点で那須達が出すことが出来る90%の状態を引き出した。
「今、滅茶苦茶ノッているだろう。そのノッている状態がゾーンを除いて引き出すことが出来る最高の状態だ……その感覚をランク戦でも出すことが出来れば格上に対して勝利する事が出来る筈だ」
常に100%の力を発揮する事が出来る人間は早々にいない。
俺はやろうと思えば意図的にゾーンに入る事が出来るのだが普通の人間には無理なものである。故にこの完璧なリズムを刻む事が出来るパスを出してゾーン状態に近い形に叩き込んだ。
「コレが私達が現時点で出すことが出来る最高のコンディション……」
「成る程……今の限界を越えるのでなく限界ギリギリのコンディションを感覚で味合わせる……普通じゃ出来ない事だな」
「ええ、というわけでチーム交代だ。柿崎さん達にも手伝ってもらったお礼として90%の感覚を味わってください」
「……いいのか?」
「ええ。現段階で引き出すことが出来る最高のコンディションを味わっておけば……なにかと便利です」
そんなこんなでチームを入れ替える。
風間さんと入れ替わる形で柿崎さんのチームに加わると今度は柿崎さん達に完璧なパスを送り柿崎さん達の90%前後のコンディションを引き出した。
「この感覚……悪くはないな」
最後に風間さんも90%の状態を引き出した。
風間さんもはじめての経験なのかハイになっている。この状態を何時でも引き出す事が出来るようになれば上位陣とバチバチにやりあうことが出来る。
「ごめんなさい。疑ってしまって」
当初はなんの為にバスケをやるのか分かっていなかった那須は謝る。
「いや、説明しない俺も悪い……なにせ口で説明するのは簡単だが実際にやるのははじめてな上に高難易度なんだ」
サイドエフェクトが無ければ絶対にすることは出来なかった。
無理ならば別のプランも一応は考えていたのだが、そのプランが考えていただけで済んだのでそれでいい。
柿崎隊の面々も風間さんも中々に味わう事が出来ない貴重な体験をする事が出来たのだとお礼を言い、とりあえずバスケによる特訓は上手く行った。
「最高のコンディションを維持するのは難しい事だが感覚を忘れるな」
バスケを終えて今度はランク戦に移り変わる。
トリオン体に換装し、熊谷と1本勝負をして見事に1本をもぎ取る……
「違う、こうじゃない……もう一本いいかしら?」
「1発で成功させないといけないからダメだ……ミスったか」
90%前後のゾーン状態を除く最高のコンディションを熊谷は味わった。その結果、今出している力があの時の力じゃないと実感する。
ゾーン状態に近い形の90%の状態、なんとしてでももう一度その領域に足を踏み入れないと行けないと思って焦っておりその焦りからか逆にコンディションを悪くしてしまっている。
熊谷はもう一度私との再戦を望むのだが私は基本的には1日1本だ、負ければ次が無いと思ってもらわないといけない。1発で90%のコンディションを叩き出せない熊谷が悪い……が、90%の状態を感覚で掴ませた私にも悪いところがある。もう一度あの状態をと欲張っている……教えるべきではなかったのかもしれない。
「90%の力を出した状態を教える事は出来たが、パワーアップをしたわけじゃない。本来自分が出すことが出来る力を出せるようになっただけだ……故に格上過ぎる相手と戦えば素のスペックや性能差で負ける」
「格上過ぎる相手……村上先輩とかね」
「B級上位陣はマスタークラスは当然の如く居るからな。上に上がっていく以上は避けては通れない道だ……どうする?」
「……私が」
「頑張っている上でこの結果だろう」
那須隊のお荷物にならない様に熊谷は頑張らなければならないのだが頑張っていてこの結果だ。
キツい物言いかもしれないが那須隊は停滞してしまっている。時間を掛ければどうにかなるのだがその時間はもう残されていない。それこそ1日2日でパワーアップを果たさなければならないが流石にそんなに都合のいい方法は存在しない。
「……なにかあるの?」
「あるかないかで言えばあるにはあるが……ポリシーを捨てる覚悟を決めておかなければならないぞ」
どうにかして今期のランク戦、今まで以上の成績を叩き出さなければならない。
B級中位に定着している現状を打破するには……今のところ思いつくだけでは1つしかない。
「ポリシー……」
「最後に決める権利を持っているのは那須、お前だ。ポリシーを捨てるならば確実にボーダー上位に食い込む事が出来る方法を教えてやる」
その方法を選ぶのか選ばないのかは那須次第だ。
那須に今のところ思いつく那須隊を上位に食い込ませる方法を告げると那須は真剣に悩んだ。実行に移すのは簡単だろうがポリシーに反する。ガールズチームという制約を付けているかどうかは別だがな。
「……少し考えさせて」
「時間はたっぷりとは言わないがまだ残っている。慎重に話し合って決めてくれ」
那須に今のところ思いつく方法を教えると那須は少しだけ考える素振りを見せる。
これ以上ここに居ても仕方がない事なのでこの場を後にし、トリガー構成を変えようとトリガー開発室に向かおうとしていると遊真と修のコンビと顔を合わせる。
「また随分と珍しいところで会ったな」
ソロランク戦を行う事が出来るブースで鉢合わせする機会はあったがこんなところで会うのは奇遇としか言えない。
「オサムのおにいさんも呼び出されたのか?」
「いや、私はトリガー構成を弄りにやってきた……呼び出されたという事はボーダー上層部のことか?」
「開発室に来いって呼び出されてるんだけど……」
「そうか」
恐らくだがエネドラッドの件で呼び出されたのだろう。
エネドラッドの事に関して深く関わらなくてもなにも問題無いので無視してトリガー構成を弄る。
貴虎がトリガー構成を弄っている間にエネドラッドと修達は遭遇した。
エネドラッドからアフトクラトルの母トリガーの寿命が来ているとの説明があったその日の夜のこと。
「修くん、千佳ちゃん、お客さんが来てるよ」
「お客さん?」
玉狛支部に帰った修達だがお客が来ている事を宇佐美から告げられる。
自分達にお客だなんて誰なんだろうと首を傾げているととりあえず会ってみようとなり、支部のリビングに向かえばB級1位の部隊、二宮隊の隊長にして個人総合2位射手として1位の男、二宮が座っていた。
「座れよ、三雲」
「あ、はい……」
自分達になんの用事なんだろうかと気になっていると椅子に座ってくれと言われる。
椅子に座ると二宮は一枚の写真を取り出した。
「この女の名前は鳩原未来……元うちの狙撃手だ……雨取麟児と言えば分かるだろう?」
二宮は語る。鳩原がトリガーを横流しして一般人に渡したのを。
鳩原が晒されたと思っておりその候補として千佳の兄である雨取麟児についてなにか知っていないのか尋ねる。
「その一件なら僕の兄が深く関わっています」
「……なに?」
「僕の兄は当時、向こうの世界に向かおうとした麟児さんを説得しようとして失敗に終わりました。麟児さん達を見送ったと言ってます」
「お前の兄はなんと言っている!?」
「あ、あの……その件に関しては僕も詳しい事は知らないです」
あくまでも麟児を含めた数名の人間が向こうの世界に勝手に行くのを手伝った事を知っているだけで何処の誰かはしらない。なんだったら鳩原未来の情報を知ったのはつい先程である。
「お前の兄とアポは取れるか?」
「取れるとは思いますけど……教えるつもりはないです。僕等が遠征に向かう際には色々と教えてくれるんですが……」
「お前達が遠征だと?それこそ絵に描いた餅だな。本気で遠征部隊を目指したければそこの白チビを何処かのA級の部隊に入れろ。人が撃てない狙撃手に戦術を多少齧った雑魚がチームメイトだと中位停滞が関の山だ」
手掛かりを手に入れたのでこの場にはもう用事は無いと席を立ち二宮は去っていった。
聞きたい事は互いに色々とあったのだがそれこそ遠征に選ばれなければ絵に描いた餅も同然だ。
「オサムのおにいさん、なんにも教えてくれないんだな」
「時が来たら教えてくれる……今の僕達が情報を知ったとしても、余計な重圧になってしまう」
むしろ情報を手に入れる為に頑張ろうとモチベーションを高める。
「……人が撃てない……」
千佳はボソリと呟く。自身が人を撃つことが出来ないというのを見抜かれてしまっている。
上に行く為にはどうすればいいのか……千佳は答えを知る為に動いた。
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