メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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サブタイトル 噂の彼女の正体は?


第107話

 

 2月14日(金曜日)この日がなんの日かと聞かれればそう、男子待望のバレンタインデーである。

 

「おぉ、スゴい事になってるな」

 

 今日でテストが最後だ。米屋は詰め込むだけ詰め込んで貰っているので補習を受けるルートかそれともそのまま進級なのかは分からない。

 本気で占えばどちらの未来に傾くのかが分かるのだが、そこまでしてやる義理と言うものは何処にも無い。学校に登校して下駄箱の前に立つとすぐ近くの1年生の下駄箱にコレでもかとチョコが置いてあった。

 

「三雲さん、袋かなにか持ってないですか?」

 

 チョコの受け取り主は京介だ。流石はもっさりとしたイケメンだと思っていると京介は私の存在に気付く。

 

「テスト期間だからそんなのは持ってきていない……荷物運びなら手伝ってもいいぞ」

 

「いや、そこまでしなくてもいいっすよ……それよりも三雲さんも大変な事になるんじゃないですか?」

 

「いやいや、私はそんなにモテモテじゃないからな」

 

「……そうすか?」

 

 京介や嵐山さんとモテ力は違う……嵐山さんのモテ力は異次元過ぎるからな、度が過ぎるシスコンブラコンだけど。

 京介は私が大量にチョコを貰っていないのを不思議そうにしている。ラブレターは読まずに捨てる、バレンタインデーのチョコは一切食べないと色々とやって好感度がやや下がりなんだ。大体、私みたいな偏屈な人間を好きになる人間は早々にいない。

 

「それにな、京介……どれだけ周りからチョコを貰っててもホントに欲しい人から貰えなきゃ負けも同然なんだ」

 

「……深いッスね」

 

 深いぞ……そして愛は重いぞ。京介はチョコを袋に入れているので手伝う事にし、持ってきていた紙袋に入れた。

 京介は相変わらずのモテ具合……修もこれぐらいモテるメガネだったらいいんだがな。

 

「よぉ、バレンタインデーのチョコは貰えたのか?あ、母親とか従姉妹からのはノーカンな」

 

 教室に向かうと米屋が紙パックのフルーツ牛乳を飲んでいた。

 私が登校してきた事に気付いた米屋は本日の話題であるバレンタインデーのチョコに関して言ってくる。

 

「米屋、バレンタインデーだからって浮かれるな。今日がテスト最終日なんだから油断せずに気を引き締めてだな」

 

「堅えよ。もうちょっと気を楽にしようぜ」

 

「ふぅ……今のところは0個だ」

 

「なんだかんだで悪ノリしてくれるお前大好きだぜ」

 

 男にモテても仕方がない事だがな。

 米屋はチョコレートを貰う事が出来たのかどうか聞いてくるので答える……ついでだからとチョコレートを貰えたかどうか聞いてみる。

 

「月見さん、オペレーターの人からチョコを貰うことが出来るからとりあえずは1個、ああ、栞もくれるから2個になるな」

 

「お前、さっき従姉妹はノーカンと言ってなかったか?」

 

「どっちにしろ1個は貰える事には変わりはない」

 

「……1つ、言っていいか?」

 

「なんだ?」

 

部隊(チーム)を組んでる人は基本的にはオペレーターがいる。オペレーターは女性が主で、部隊(チーム)を組んでるボーダー隊員はオペレーターの人からとりあえずチョコを1つ貰えるんじゃないのか?」

 

「……それもそうだな。オペレーター云々無しでチョコを貰えりゃそれに越したことはねえんだけどよ」

 

「大体米屋、親愛じゃなくて性愛のチョコを貰ったとしてどうするつもりなんだ?」

 

 チョコが欲しいだなんだの言っているが親愛のチョコならまだしも異性としてのチョコを渡されたらどうするんだ?

 

「いや〜……オレにはランク戦って大事なものがあるからな。恋人はまだいいや」

 

 それならばモテたいだのチョコが欲しいだの色々と言ってるんじゃない。

 モテつつもオレにはボーダー一筋だと言う男らしさを見せたいのだろうか?

 

「おーっす、おはよう」

 

「おぅ、来たか……チョコは貰えたか?」

 

「テストの後に貰える」

 

 米屋とチョコ云々の話をしていると出水がやって来た。

 やはりなんと言っても話題はバレンタインデーである。チョコを貰う事が出来たのかどうか尋ねてみると出水はサラッと受け流す。

 

「この後に貰えるって?」

 

「柚宇さんが今先輩と一緒にフォンデュショコラ?とか言うのを作ってるんだ。後で部隊の皆で食べようってなっててな」

 

「お〜……今先輩と合作ならめっちゃ美味そうなフォンデュショコラが出てきそうだな」

 

 多分、出水が言っているのはフォンデュショコラじゃなくてフォンダンショコラの事だろう。

 フォンデュショコラならばチョコレートフォンデュの事を表しているからな……チョコレートフォンデュのチョコはカウントしていいのだろうか?

 

「っと、チョコを貰えるのが確定しているからって浮かれるなよ。今日を乗り越えないと進級できないんだから」

 

「分かってるって……で、どの辺だっけ?」

 

「現文の……」

 

 チョコ云々で浮かれている米屋達の意識を現実に戻す。

 米屋に最後の詰め込みをする。この詰め込みが赤点回避の鍵になるからここで手を抜いてはいけない。1時間目の現文のテストのここを押さえておけば問題無いであろうところを教える。

 

「ふぅ〜……や〜……っと、終わった」

 

 2時間、3時間と時間が過ぎて全てのテストを終えた。

 米屋はこれまでの地獄の様な詰め込みからオサラバする事が出来ると両手を上げてバンザイする。

 

「忘れちゃいけないが赤点があれば補習だぞ」

 

 本当にデッドオアライブのギリギリのところを綱渡りしている米屋。

 来年は卒業が掛かっており、ボーダー推薦という謎の枠を使って進学するのならば私は一般入試で別の大学に入るつもりだ。三門大学にボーダー推薦とかで入ればトリガー研究室とかいう謎の部署に配属されると言う噂があるし、私が勉強したい神智学が勉強出来ない。

 

「レポート形式の課題はどうなってるんだ?」

 

 ついでだからと私が居ることで発生したレポート形式の課題について尋ねると米屋はポンッと私の肩に手を置いた。

 

「折角、テストが終わったんだぜ。パーッとやろう、パーッと……餃子の王将奢るぞ」

 

「槍バカ、お前……」

 

 この様子だと全くと言って手を付けていないな。パソコンを使ってもいいタイプのレポートなのでギリギリまで粘るか或いは出水のをコピペしたりするつもりなのだろうか。まぁ、今月と来月頑張れば3年生に進級してレポート形式の課題をしなくてもいいからコレは見捨てても問題無い案件だろう。

 

「悪いが今日は用事がある、遊んでいられない」

 

「あ〜……あんま根を詰めすぎるんじゃねえぞ?」

 

「別にそんな大層な事じゃない……」

 

(メガネくん)も似たような事を言ってた……やっぱり兄弟なんだな」

 

 出水と米屋はテストが終わったのでパーッとしたい。その気持ちが分からないと言えば嘘になるが自分の気持ちを制御出来ないといけない。

 昼飯は何処か外で食べようぜと2人で話し合いをしているのでそれを無視して下駄箱に向かうと熊谷と鉢合わせする。

 

「み、三雲くん!その、コレ……」

 

「……悪いが受け取るつもりは無いぞ」

 

 熊谷はチョコレートを私に差し出してきた。

 去年と似たような状況になっているのでチョコを受け取るつもりは無いと熊谷を横に上履きから靴に履き替える。

 

「那須隊の皆で作ったの。三雲くんにお礼をしたいって」

 

「私は別に礼を言われる為にやっているんじゃない。自分がそうすべきだと思っているからやった事だ」

 

 那須隊からお礼を含めてのチョコだろうが受け取るわけにはいかないんだ。

 自分で撒いた種だから自分で回収している……無視する事が出来なかった私はなんだかんだで甘い人間である。那須隊の皆からなんて聞けば泣く人達が居るだろうが私にも私の事情があるので受け取らない。

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「おぃーっす、チョコくれ」

 

「はいよー!チョコ一丁!」

 

 学年末テストを終えて数時間後。

 昼は豪勢にしようと餃子の王将で飯を食った米屋はチョコを貰いに玉狛支部にやって来た。宇佐美は米屋が来る事を予測していたのでチョコチップクッキーを渡す。

 

「今年はレイジさんとおばさんと一緒に作ったから自信作だよ」

 

「おぉ!って、おばさんって?」

 

「私のことよ」

 

「……あ、どうも」

 

 チョコチップクッキーを貰って舞い上がる米屋だが友達のお母さんからのチョコだと分かればなんとも言えない顔をしている。

 相変わらず若いけどこの人、40過ぎのおばさんなんだよなと早速米屋はチョコチップクッキーを食べる。市販のよりも美味しいなと頷く。

 

「三雲くんはどうしたの?おばさん、チョコチップクッキーを用意してるんだけど」

 

「それが用事があるからって昼飯も一緒に食ってくれねえんだよ」

 

 フォンダンショコラをいただきに行っている出水はともかく貴虎が来ていない事を若干だが不思議がる宇佐美。

 今日は付き合いが悪いと言っていると玉狛第二の面々がやって来る。

 

「よー、メガネボーイ!」

 

「あ、どうも……今日はどういった御用で?」

 

「バレンタインだからな。チョコを貰いに来たんだ……メガネボーイはチョコを貰う事が出来たか?あ、親チョコはノーカンな」

 

「一応は貰いました」

 

「学校で配ってる奴がいたんだよな」

 

 親愛のチョコだがチョコである事には変わりはない。

 遊真が美味いと市販のチョコレートを頂いていると宇佐美が私からだよと修達にチョコレートをプレゼントする。

 

「バレンタインデー、中々に良い催しだな」

 

「本当はお菓子メーカーがでっち上げたって兄さんが言ってたっけ」

 

「どちらにせよこんな美味しい物が貰えるのは良いことですな」

 

「空閑、貰うのはいいがお返しはちゃんとしないといけないぞ。来月の14日はホワイトデーで返さないといけないんだ」

 

「期待してるわよ」

 

 ホワイトデーは大変だなと修は少しだけ冷や汗をかいた。

 

「チカからはないのか?」

 

「えっと……腕に自信が無いからちょっと変わった物にしようかなって」

 

「ほぅほぅ、変わったものですか」

 

 なんだろうとワクワクしていると千佳は冷蔵庫を開く。

 冷蔵庫のトレーに乗せているチョコをかけたフルーツの盛り合わせを出した。

 

「チョコフォンデュにしようかなって思ったけど、チョコフォンデュの機械が高くて……」

 

「ありがとう、千佳」

 

「フルーツチョコ、ありがたく頂くよ」

 

 チョコに浸されたフルーツを遊真達は頂いた。

 バレンタインデーは甘くて美味しいなと遊真はしみじみ頷いている。

 

「しっかし、三雲の奴はノリが悪いよな。テスト明けなんだからパーッとしてやろうと飯を奢ってやるって言ったのに、付き合い悪いぜ」

 

「仕方がない事ですよ。今日はバレンタインデーなんですから」

 

「バレンタインデーならもうちょっと浮かれるだろう」

 

「いや、ですからバレンタインデーのデートを真剣に楽しもうとしてるんですよ」

 

「……え、ごめん。お前、今なんつったの?」

 

 ピタリと固まる米屋。修から言われた事に対して脳の処理が追いついていない。

 聞き間違いかなにかだと思った米屋はもう一度修になんて言ったのかを聞き返す。

 

「兄さんは今日のデートを楽しもうとしてるんですよ」

 

「……待った!あいつ、彼女居るのか!?」

 

 デートをする相手が居る事に米屋は驚く。米屋だけじゃない、宇佐美も驚いた顔をしている。

 そういえば誰にも言っていないなと思いつつも修は貴虎に彼女が居る事を教える。

 

「なんだよーすけせんぱい、知らなかったのか?」

 

「貴虎さんは彼女が居ますよ?」

 

 貴虎に彼女が居ることを遊真と千佳は普通に知っている。

 もしかして知らないのオレだけなの?となるのだが宇佐美が知らないのを知って少しだけホッとする。

 

「三雲の奴、彼女が居たのかよ……熊谷とか小佐野とかと1年の頃にいい感じの雰囲気を醸し出してたし」

 

「貴虎の彼女は中学の頃からよ」

 

 2人の内のどちらかと想像する米屋だが母は違うと言う。

 貴虎に彼女が出来たのは中学の頃でありボーダーの隊員とは一切無関係である。

 

「三雲の奴を口説き落としたって相当だぞ……どんな彼女なんだ?」

 

「ただいまー」

 

 話題は当然と言えば当然なのだが貴虎に切り替わる。

 チョコを貰えてハッピーとか浮かれていたのが嘘になるぐらいに真剣な顔で貴虎の彼女について聞いてくる。すると小南が学校から玉狛支部に直帰してくる。

 

「米屋じゃない。チョコを貰いに来たの?全く、仕方がないわね」

 

「んなの今はどうだっていいんだよ!三雲の奴に彼女が居たんだよ」

 

「な、なんですって!?」

 

 修はこの時、デートに行ったと言ったのは間違いだったと気付く。

 口が軽そうな米屋と騙されてうっかり喋りそうな小南に兄である貴虎に彼女が居ることを知られてしまえばもう遅いのである。

 

「ど、どんな人なの?」

 

 案の定と言うべきか、小南は貴虎の彼女がどんな人物なのか尋ねてくる。

 修は言っていい事なのだろうかと考える。こういう感じの悪ノリに近い展開を貴虎は恐れてなにも伝えていない。

 

「どんな人……人ね……綺麗系の女性よ。才色兼美でどうして貴虎を選んだのか謎なぐらいにしっかりとした子よ」

 

「彼女とか居なさそうな雰囲気を醸し出してるのに意外としっかり、いえ、ちゃっかりとしてるのね」

 

 母からどんな女性なのか聞くと意外そうな顔をしている。

 何処となく小南もソワソワしている。ボーダーの女性隊員はアマゾネスの巣窟みたいなものだが、やっぱり心は乙女である。恋愛に関して初心なところもあり、恋話には敏感である。

 

「どんな容姿なんだ?」

 

「……雪みたいで綺麗な人?」

 

「いや、そういう抽象的な感じじゃなくて写真とかないのか?」

 

 抽象的な形で貴虎の彼女について修は答える。

 しかし米屋はそんな抽象的なものでなく具体的な容姿について尋ねる。写真の1枚でも無いのかと聞けば修は普段遣いのケータイを取り出して何処かに画像があったかなと探す。

 

「あ、ありました」

 

「見せて!」「見せろ!」

 

「あっ!?」

 

 なんとか貴虎の彼女の写真を見つける事が出来たのだが小南と米屋が詰め寄る。すると修は手を滑らせてしまい足元に携帯を落としてしまう。

 麟児からの大事なメールがある携帯なので壊すわけにはいかないと直ぐに拾うと小南と米屋は修を間に挟んで携帯を覗き込む。

 

「すみません。今の衝撃で画像が見れなくなってしまいました」

 

「そんな事あるのか!?」

 

「他の写真も全滅です……修理に出したら直るかな」

 

「いい機会だからスマホにしなさいよ。コレからガラケーは使い物にならないわよ」

 

 大事な思い出もいいけども機能性も大事な事であると母は言う。修の携帯はともかく貴虎の彼女に関する写真を見ることが出来ない。

 貴虎の彼女がどんな女性なのか、ここまで来たら顔を知りたいのが思春期真っ只中な小南と米屋である。

 

「どういう感じに出会ったの?」

 

 顔写真が無理ならばと馴れ初めについて尋ねる。

 一方的な告白かそれともラブラブな波動を出しているのか、他人の事だからか逆に物凄く気になってしまう。しかしそれがいけなかった。世の中には触れてはいけない禁断の部分もあり、修や千佳は困った顔をしている。

 

「……覚悟は出来てるの?」

 

「え?」

 

「あの娘の過去は重いわ。貴虎に依存しても当然なぐらいには重いのよ。貴虎の彼女がどんな人物なのか気になるのは勝手だけれどそういう悪ノリで聞いていい領域と聞いたらダメ、触れない事自体が正しい事だってあるのよ」

 

 母は知っている。あの日、戦極ドライバーと共に彼女を連れ帰って来たのを。

 そこから大恋愛とストーキングに発展する色々と重たい話があるのを。小南達も聞いちゃいけない事を聞いているんじゃないのかと思わず考えてしまう。実際のところは色々とあって重たい女になってしまうのだが、それを聞く勇気が大事なのである。

 

「どんな人なのかしら……修、兄貴に連絡取れないの?」

 

「取ることは出来ますけど、ボーダーに対していい顔をしないので会うことは不可能です」

 

 貴虎以上にボーダーに対して色々と思うことがある貴虎の彼女。色々と重たい女だ。

 絶世の美女である事には変わりはないのだがそれに関してはさておき、どうにかして貴虎の彼女に会ってみたいと言う欲求を満たしたい。

 

「修、兄貴に連絡取ることが出来るでしょ!今何処に居るのか割り出す事は出来ないの?」

 

「多分、蓮乃辺市へ映画を見に行っていると思いますよ。映画を見に行く時には決まって」

 

 ベラベラと語ってしまう修。

 何処に貴虎が居るのか分かっていればやることは唯一つだと小南と米屋は頷いて玉狛支部を後にする。

 

「あのっ、ホントにそういうのは良くないと思いますよ!」

 

「一目だけ見るだけなんだから別にいいでしょう」

 

「そうそう。別にちょっかい掛けるわけじゃねえんだからよ」

 

 修も小南と米屋を追い掛けて蓮乃辺市に向かう。

 この辺りで言う映画館といえばここしかないと大型のショッピングモールにつくと早速映画館に向かう……のだが貴虎の姿は何処にも見当たらない。

 

「修、なんの映画を見に行くって言ってたの?」

 

「映画を見に行くとしか聞いていませんので、なんの映画なのかは……」

 

「こうなったら最終手段だ。三雲の奴に電話をするぞ!」

 

 貴虎に電話をしたらそれこそ厄介な事だと逃げられるんじゃないんだろうか?

 修はそう考えたのだが、それ以上言っても米屋は止まりそうにないので電話をかけるのだが貴虎は出てこない。

 

「映画上映中ですから、携帯の電源を切ってると思います」

 

「そこは普通、マナーモードじゃないの……なんだか大いなる意志が三雲の彼女に会わせない様にしてるみたいね」

 

「今上映中の映画はっと……ああ、くそ。最低でも1時間は上映してる」

 

「1時間も……ちょっとその辺のコインゲームが出来るゲーセンで時間潰して来ようかしら」

 

 既にチケットは完売しており、映画館の中に入ることはできない。

 小南はどうやって1時間を潰すのかを考えていると警報音が鳴り響く

 

「なに?なに?今度はいったいなにが起きたってのよ!」

 

「火事でも起きたっていうのか!?」

 

 何事かと警報音が鳴り響き周りにいる一同とざわめく。

 警報音の正体は実は迷惑系You Tuber的なのが警報音が鳴るベルを押しただけで火事とか何処かが崩れたといった災害の様な事は起きてはいない。が、その事にまだ気付いていないので一同は避難する。

 

「あ、兄さんだ!」

 

「え、どこどこ?」

 

「あそこにいますよ」

 

「あそこって……ダメだ、人混みが多すぎて見えねえ!」

 

 警報音が鳴り響くのでそれに従い避難をする修達。

 映画館内から多くの観客達が出ていく中で修は貴虎と貴虎の彼女を見つけるのだが小南と米屋は何処に2人が居るのかが見当たらない。

 

「くそ、迷惑系You Tuberめ……」

 

 警報音の正体は迷惑系You Tuberで火事とか一切起きていなかった。

 米屋達は貴虎を完全に見失ってしまった。

 

「折角だし、なにか食べましょう」

 

 完全に見失い何処にいるのか分からないので半ば諦めモードに入る小南。

 折角大型のショッピングモールにやってきたのならばなにか食べて帰ろうかと考えてこのショッピングモールでしか売ってないアイスクリーム屋に向かうと貴虎を発見する。

 

「いたぁ!!」

 

「ばっ、声が大きいぞ!」

 

 見失った貴虎を発見した小南は貴虎を指差す。

 幸いにも貴虎は小南達の存在に気付いていないのだがここで米屋があることに気付く。

 

「あいつ、1人だな」

 

 貴虎は1人でアイスクリーム屋に並んでいる。

 彼女は一緒なんじゃないのかと思っているとフードコートの座席に修は視線を向ける

 

「あ、居ましたよ」

 

「え、どこどこ?」

 

「ほら、あそこに」

 

「だから何処に居るのよ!」

 

 修は無事に彼女を見つけ出す事が出来たのだが小南はまだ認識していない。

 顔すらまともに知らないのだから無理もないのだが、ここで米屋は名案を閃く。

 

「三雲の奴がアイス買ってくるなら三雲を着けとけば分かる筈だ」

 

「あ、それもそうね」

 

 貴虎を見張っていれば何れは貴虎の彼女に会うことが出来るともっともらしい答えを出す。

 幸いにも貴虎が並んでいるのはアイスクリームの店、選べば商品があっさりと出てくる。映画館で1時間待たなければならない事を考えればアイスクリーム屋でアイスを買う時間ぐらいどうという事も無い。数分後、貴虎はアイスクリーム屋でアイスを2つ購入する。

 

「っく、絶妙に影になって見えないわね」

 

 貴虎を認識することはなんとか出来るものの、貴虎の彼女が他のお客と重なって絶妙に見る事が出来ない。

 貴虎にちょっかいをかければ最後、厄介な未来が待ち構えているので下手に近付く事は出来ない……がなんとかして彼女を見たい2人は日頃トリオン体で鍛えた隠密行動で気配を消しながら貴虎に近付こうとするのだがベビーカーと軽く接触してしまう。

 

「ううぅ、ぁああああ!!」

 

「ああ、やっと眠ったのに!」

 

「す、すんません!!」

 

 ベビーカーと接触したショックでベビーカーの上で眠っていた赤ん坊が目覚めて泣き出す。

 母親と思わしき人物はガラガラを取り出して鳴らすのだが中々に泣き止もうとはしない。

 

「ほ、ほ〜ら、カチューシャを取ったらイケメンだぞ〜」

 

「それ効果あるの?ベロベロバーでしょ、普通は」

 

 カチューシャを外してイケメソになる米屋。

 なんとかして泣いている赤ちゃんを泣き止ませると良かったと2人はホッとして、貴虎に接近をしようとするのだが既に貴虎は居なくなっていた。

 

「2人が赤ん坊を泣き止ませてる間に移動しましたよ」

 

「メガネボーイ、分かってるなら追い掛けてくれよ!」

 

「何処に行ったの!?」

 

「あの……ホントにこういうこと良くないと思いますよ」

 

「だって気になるじゃない。彼奴が選んだ彼女がどんな奴なのか!」

 

 悪ノリで顔を見せろと言ってくる小南達を良くないことだと指摘する修だが気になってしまうものは仕方が無い事だ。

 なんとかして顔の1つでも拝んでやろうと修が最後に見た貴虎の情報を元に探すと貴虎を発見するのだが突風が吹き荒れる。

 

「なんなの!アイツの彼女を私達に会わせない大いなる意志でも存在しているの!」

 

「くそ、吹き荒れるゴミが絶妙な位置で三雲達が見えねえ!」

 

 突風に負けじと立ち向かう小南と米屋。

 すると1台の黒塗りのベンツが目の前に止まる。

 

「おぅ、やっと見つけたぞ」

 

「へ?」

 

 如何にもヤクザ風な男が黒塗りのベンツから降りてきたと思えば小南と米屋と修を囲む。

 なんなのと思っていると三人はグルグル巻きにされて黒塗りのベンツの中に叩き込まれる。

 

「ボス、例の3人組を……え、人違い?」

 

「ムー!ムー!」

 

 私達になんの用事なのよと叫ぶ小南。

 ジロリとヤクザ風な男に睨まれても動じることはせずに口につけられたガムテープは剥がされた。

 

「すまねえな。人違いだ……詫びと言ってはなんだが受け取りな」

 

 ヤクザ風な男から2万円ずつもらう修達。

 一体何だと言うんだと言いたかったがベンツから追い出されるとベンツはさっさと去っていった

 

「いったい、どんな奴なんだ三雲の彼女って……」

 

「もう諦めましょう……会うなって言ってるのよ……」

 

 結局米屋と小南は貴虎の彼女を一目も見る事が出来ずに終わった。

 尚、この後貴虎は彼女とともにお好み焼き屋【かげうら】に向かいたまたま店の手伝いをしていた影浦と遭遇するのだが、既に諦めてしまった2人には関係のない話である。




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ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯
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