メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

109 / 115
第109話

 ランク戦をラウンド4は続く。

 二宮は北添をターゲットに捉え、辻は立ち止まる。

 

「コレは……」

 

「嘘でしょ、なによこの量は」

 

 そこかしこにトラップが仕掛けられていた。

 特殊工作兵(トラッパー)との戦闘経験がある二宮隊の辻だが、トラッパーの冬島達が仕掛けている罠と度合いが違いすぎる。

 

「こんな事が出来るのは……玉狛だけ」

 

 罠の数が圧倒的なまでに多い。突破する事は出来なくもないが罠のある地帯に入れば最後、遊真と戦闘をしなければならない。

 遊真の相手はマスタークラス(8000点超え)の辻でも難しい。確実に倒す事が出来るという保証は何処にも無い。むしろ負ける可能性の方が高い。

 

「中々にインパクトある蟻地獄地帯を作り上げたなメガネくんは」

 

「いや…………この作戦、マジで1回ぐらいしか使えない。と言うよりは極力使わない方向でなければならないぞ」

 

「ん?待ちの戦法だが悪くはねえだろ」

 

「そうじゃない……玉狛第二の目当ては遠征だ。罠と分かっているところにあえて踏み込む馬鹿は早々に居ないんだぞ」

 

「あ〜ポイントか」

 

 外側をスイッチボックスの罠で埋め尽くし、内側にはワイヤー陣を張る。

 玉狛第二にとって有利なフィールドを作り上げてその上で戦うという一種の答えに至ったのだが、この戦法はデメリットが無いわけでも無い。が、今のところは発現していないので貴虎も出水も深くは語らない。

 

「レーダーに新しく映ったのは玉狛第二ですかね?」

 

 一方その頃現場の東隊。小荒井はレーダーに新しく映った部隊は何処かかと、玉狛第二だと予測する。

 

「玉狛第二がこの時点で現れたって事はなにかあるのか?」

 

 奥寺は修が仕掛けたレーダーに映っては消えてを繰り返した意味を考える。

 オペレーターや指揮官の情報処理能力や指揮を邪魔しようという嫌がらせという手段の1つを取った。

 

「あ、そうか。空閑か。三雲が居るか居ないか揺さぶりをかけて空閑の事を頭から消す……空閑は機動力が高くて隙をついた不意打ちも何回か見てる」

 

 遊真の事を頭から消すために修が妨害をしたのかと小荒井は1つの答えに至る

 

「ならどうして今はレーダーに映っている?1回限りの戦法を使ってきたのか?」

 

「それは……」

 

 その答えに対して東は疑問を投げかける。

 上位陣を相手に1回でも効果がある、1回しか使えないが有効打になる戦術で挑んできたのか?B級上位陣の中には10000点を越える隊員が居る。遊真が確実に倒す事が出来ると言えない可能性もある。なんだったら奥寺と小荒井のコンビネーションは下手なA級隊員やマスタークラスを倒すぐらいには強い。

 

「東さん、誰かは分かりませんがテレポートした痕跡が残っています」

 

「だそうだ……玉狛第二も空閑だけに頼って上に上がる事が出来ないというのは分かっている。なにかしらの新しい戦術の1つや2つ用意している」

 

 東隊のオペレーターの人見が誰かは分からないが急にテレポートした痕跡が残っていることを教える。

 東は何かがあるとだけ伝えて2人がどう考えるのかを見守る。なにかしらの戦術を使ってきている事は予想出来るが、下手な事は言わない。それが今の東隊の方針である。

 

「玉狛第二が今の時点で使える戦術……」

 

 10000点越えと言ってもいい攻撃手に規格外のトリオンを有する狙撃手、後は雑魚の確実に倒す事が出来るメガネ。

 鈴鳴第一の様にエースにおんぶに抱っこ……だと、上では限界があるのだと分かっているのでなにかしらの戦術を使って来ているのだが小荒井は何があるのか浮かばない。

 

「待ち構えてるのだけは確かだ」

 

 浮かばないが何かがあるとだけは分かる。

 

「なら、行くか?」

 

「…………行きます!」

 

「確実に何かが待ち構えているんだぞ?」

 

「でも、行かないとポイントを稼ぐことが出来ないっす。空閑が潜んでいるって言うのはもう分かったんで油断はしません!」

 

 色々と悩んだ結果、小荒井は玉狛第二の元に向かうことを決める。

 罠が仕掛けられている、相手の得意なフィールドに挑むのは愚策……だが、此処でなにもしないというわけにはいかないのもまた事実である。

 

「分かった。玉狛第二を狙うぞ」

 

 自分ならば止めるが後任育成の東隊である為に小荒井の意志を尊重する東。

 何かが待ち構えている事だけは確かでテレポートした痕跡が残っていることからスイッチボックスが使われていると東は推察する。トラッパーはただでさえ数が少なく、2人とも実戦経験が少ない。急拵えのスイッチボックスなのか今まで潜めていた刃なのか、東はどちらにせよ罠が待ち構えている事を頭の隅に入れて慎重になりつつも2人のサポートに向かう。

 

「玉狛第二は動こうとはしないですね」

 

 一方の実況席、全てが見える中で綾辻は遊真達が移動しない事に気づく。

 

「スパイダーによるワイヤー陣に辺りを埋め尽くすスイッチボックスの罠、コレは完全に待ちの戦術だ」

 

「そうね。自分の得意なバトルフィールドを用意してそこに問答無用で叩き込む……初見じゃ回避するのは難しいかも。スパイダーもスイッチボックスもどっちも使ってる子が少ない希少な物だから」

 

「どうにかするならば遠距離からの攻撃……」

 

「二宮くんがメテオラを搭載してるから、それを使って一掃するのが1番よね……でも、肝心の二宮くんは北添くんを標的にしてるわね。罠が仕掛けられているって分かってるから辻くんも下手に玉狛第二のスパイダーとスイッチボックスの陣営に入る事が出来ないし……あら?」

 

「おおっと!小荒井隊員と奥寺隊員、辻隊員に遭遇した!」

 

 玉狛第二を狙いにやって来た小荒井奥寺のコンビと辻が遭遇する。

 

「三雲じゃない……けど、辻先輩なら!」

 

 レーダー頼りにやって来た結果、鉢合わせした。

 修じゃない事に奥寺は少々戸惑うのだが、1人しか居ないのであるならば2人で協力すれば倒す事が出来る。小荒井と内線を取って倒しに行くことを伝えると2人は動き出す。

 

「これは……マズい」

 

 目の前には自分を確実ではないが倒す事が出来る可能性を秘めている小荒井奥寺コンビ、直ぐ近くにはスイッチボックスで仕掛けられたテレポートの罠の数々。逃げに転じようとすれば確実にスイッチボックスの罠に嵌ってしまう。

 

「っ」

 

 今の自分に出来る最善の手を辻は考える。

 考えた結果、混戦に持ち込む為に奥寺と小荒井から距離を取り……スイッチボックスの罠が仕掛けられている地雷地帯とも言うべき場所に足を踏み入れた。トリオン反応から罠が仕掛けられている事は分かるが具体的にはどんな罠なのかは分からない。地雷の様な攻撃系の罠が仕掛けられている可能性も高い。

 

「アステロイド!」

 

「っ、三雲!!」

 

 混戦の中で現れたのは修だった。

 威力重視のアステロイドを散らしながら3人に目掛けて撃つのだが3人共シールドを展開して修の撃ったアステロイドを防ぎつつ動く。この中で最も弱い修を倒しに向かうのだが、辻も小荒井も奥寺も同じ事を考えており3人共修を狙いに向かったので修は撤退をすると辻は足を止める。これ以上はマズいと小荒井と奥寺に気付かれない様にその場から立ち止まると……罠が作動した。

 

「え!?」

 

 隣に居た筈の奥寺が突如として消えてしまった。

 突然の出来事に驚いた小荒井は一瞬だけ思考が停止してしまい、修はすかさずシールドモードのレイガストをブレードモードに切り替えた

 

「スラスター起動(オン)!」

 

「っ!」

 

 レイガスト専用のオプショントリガーのスラスターを用いて推進力を得たレイガストで斬りかかる……が、小荒井の左腕を持っていく事しか出来なかった。

 

「利き手じゃないなら……」

 

 利き腕じゃないのならばまだ戦えると修の振るうレイガストとぶつかる小荒井。

 トリオン漏出の事と奥寺が急に居なくなった事を考慮すればチンタラと時間を掛けていては負けに繋がってしまう。なんとしてでもと修を倒しに掛かるのだが修はレイガストをシールドモードに切り替えて防戦に徹すると1つの緊急脱出の流れ星が見える

 

「奥寺」

 

『玉狛の空閑が落としたみたいだよ……レーダーの性能を高めてみたんだけど、その辺りスイッチボックスの罠だらけよ!』

 

「スイッチボックス!?」

 

 人見から情報を貰った小荒井は驚く。

 スイッチボックスを使ってくるだなんて予想する事は出来なかった。相手の戦術のレベルを想定して自分達も戦術を使うと東から色々と言われていたのだが、その想定を玉狛第二は軽く上回った。

 

「東隊も気付いた……が、既に詰みに近いな」

 

 スイッチボックスの罠を見つけるためにレーダーの性能が高められたとモニターに映し出される。

 風間は奥寺は既に倒されて小荒井は腕を一本やられてスイッチボックスの罠地帯に居る。

 

「修の奴、そっち系の道を選ぶか……まぁ、そっちの方が今はいいか」

 

「そっち系?」

 

「相手を倒さない倒せない代わりにしぶとく粘り強く生き残る戦い方だ。修のスペックではB級上位陣を相手に勝ち星をもぎ取れる可能性は殆ど無い。ぶっ倒すのに時間が掛かる生き汚さを見せてくれる」

 

「なるほど……メガネくんは倒してくれって言ってるみたいに弱い駒だけど、逆にそれを利用して時間稼ぎに使うのか」

 

「だが……そろそろ限界だな」

 

 小荒井を相手に修は粘ろうとするが徐々に徐々にレイガストにヒビが入る。

 このままでは小荒井に倒されるのも時間の問題……そう思っていると修は撃ち抜かれた。

 

「おおっと、コレは絵馬隊員のイーグレット!!」

 

 玉狛第二の出現前から姿を潜め、玉狛第二が現れたので狙いやすい位置に向かっていた絵馬ユズルが修を撃った。

 小荒井を相手に防戦一方で、レイガストにヒビが入っていたので上手く撃ち抜く事が出来て絵馬の、影浦隊のポイントに入る。

 

「ゾエさん、空閑先輩が居るところに向かってメテオラを撃てる?空閑先輩が居るところ罠だらけだよ」

 

「カゲがやられたのもそのせいか……」

 

 遊真が居る場所が遊真達にとって得意なフィールドで罠だらけだと気付く絵馬。

 仕掛けられている罠は一掃するしかないとメテオラを装備している北添に適当なメテオラを撃たせる

 

『おいおい、当たってねえじゃねえか!』

 

「空閑くんに当てるのは難しいっしょ。それよりも罠はどうなの?」

 

「壊すことには成功したよ」

 

 玉狛第二にとって有利なフィールドを北添のメテオラで破壊する事が出来た。

 コレで狙いやすくなったのだが既に近距離戦を担当する隊長の影浦は落とされてしまっている。ここからどう動くか、影浦がいるのならば影浦を遊真にぶつける事が出来るが既に影浦はいない。

 

「よっしゃ、罠がぶっ壊れた!」

 

 一方の小荒井は北添がぶっ放したメテオラのお陰で罠が破壊された事を喜ぶ。

 ワイヤー陣という罠があった事には気付いていないのだが一先ずはこれでどうにかする事が出来る……そう思った瞬間、辻が襲い掛かってきた。

 

「おおっと!三つ巴になった!!」

 

 辻の攻撃に驚きつつも対処していると今度は遊真が姿を現した。

 

「ここに来ての三つ巴、手負いの小荒井隊員はやや不利といったところ」

 

「……」

 

 此処で風間は思う。

 遊真がバッグワームを装備して奇襲を仕掛ける事も出来たのにどうして仕掛けなかったのかを。なにか裏があるのかと深読みする。

 ここで千佳の大砲を撃つという手段もあったのに撃とうとしない。まさか撃つことが出来ないのかと風間の脳裏には鳩原が過る。

 

「確かに小荒井くんが不利だわ……小荒井くんだけだとね」

 

 2人に狙われる小荒井は先程の修の様に防戦に入る。

 修と違いレイガストを持っておらず片腕のみとなっているのでシールドで防戦で、時間の経過と共にボロが出る……のだが、加古は知っている。

 

「っ!?」

 

「最初の狙撃手(スナイパー)の東さんは2人のサポートに入っているわ」

 

 白色のアイビスを持った東が辻を撃ち抜いた。

 混戦に持ち込めば敵の数が増えるだけでなく相手を撃ち抜く隙も大きく生まれる。東は辻を撃ち抜いた。

 

「玉狛第二は雨取隊員、空閑隊員、東隊は東さんに小荒井隊員、影浦隊は絵馬隊員に北添隊員、二宮隊は二宮隊員のみとなりました」

 

 何処の部隊も1人は落とされている。

 混戦が続く中で動いたのは遊真vs小荒井だった。東が狙撃の射程範囲内に居ると分かった以上は下手にグラスホッパーを踏んで飛んで移動する事は出来ない……が、小荒井は虫の息に近い

 

「チカ、イケるか?」

 

「うん。何時でも撃てるよ」

 

 なんとしてでもポイントを多く稼ぎたい玉狛第二は小荒井を倒しに行く。

 手負いの小荒井に攻めるがグラスホッパー等は使わない。1本のスコーピオンのみで戦い如何にも東を警戒していると見せる。

 

「くそっ」

 

 東さんが居るのが分かっているから何時でもシールドを出せる様にしている。小荒井はそう思っていた。

 修に左腕をモガれたので右手でだけで戦わなければならないのだが、遊真は余力を残して戦っている事に気付く。分かっている事だが遊真はマスタークラスのラインを既に超えているし手負いじゃなくても倒せない可能性も秘めている。遊真の余力を残した姿に小荒井は少しだけ苛立つが、冷静さは保っている。

 

「っ!?」

 

 が、それでもその狙撃を防ぐ事は出来なかった。

 黒色の弾が飛んできたと思えばシールドを出して咄嗟に防ぐのだが黒色の弾はシールドを素通りして小荒井に命中すると小荒井は鉛弾をくらっていた。

 

「ナイス、チカ」

 

「くっそ……」

 

 何が起きたのか少しだけ分からないが自分が倒された事は分かった小荒井は悔しがりながらも緊急脱出をする。

 隊室のベッドの上に転送された小荒井は悔しい気持ちを一旦置いておいて直ぐにオペレーターの人見の元に向かう

 

「東さん、鉛弾(レッドパレット)です。狙撃で鉛弾が撃たれました!」

 

 小荒井は今の時点で分かる情報を伝える。

 

「コレは……黒いライトニング、ですか?」

 

「みたいね」

 

「……雨取を生かした戦法を見つけてきたな」

 

 手負いの小荒井を普通にライトニングで撃ち抜けばよかったんじゃないか?と風間は考えたが言わないでおく。

 千佳は人を撃つことが出来ない、そう思っている……実際のところは撃つことが出来るには出来るのだが今のところ覚悟が出来ていないので割と怪しいところ。

 

「おいおい、黒いライトニングって聞いてねえぞ!」

 

「言ってないからな……修、ミスったな。時間を掛ければ小荒井を倒せると言うのに千佳に黒いライトニングを撃たせて……ここまで点数を稼いだのならば、無理にガッツカなくても……は無理か」

 

 黒いライトニングはまだ隠し玉として持っていた方が良かったのにここで出した事に関して文句を言う貴虎。

 遠征を目指している以上は1ポイントでも多く取りたい玉狛第二的には確実にポイントを取った方がいいので黒いライトニングを披露した。

 

「かげうら先輩にいぬかい先輩、おくでら先輩にこあらい先輩……しおりちゃん、後誰が残ってる?」

 

『二宮隊は二宮さんが、東隊は東さんが……後は分からないけど影浦隊の絵馬くんと北添さんが残ってると思うよ』

 

「オサム、どうする?」

 

 既に自分達にとって得意なバトルフィールドは破壊された。

 スパイダー+スイッチボックスの蟻地獄からスイッチボックスの地雷地帯にフィールドを変える事は出来なくもないが、修という撒き餌が居ない上にメテオラ使いが残っている。

 

「雨取ちゃん、やっと出てきたね」

 

 黒いライトニングを使った為にバッグワームを解除した千佳。

 北添はレーダーを頼りにメテオラをぶっ放すのだが、一部のメテオラが空中で破壊される。

 

「嘘、狙撃!?」

 

 千佳の近くに東が潜んでいた。その為に爆撃を回避しようとした東がライトニングで飛んでくるメテオラ目掛けて狙撃で破壊した。

 これはまずいと思っていると東が動いた。イーグレットを出現させてメテオラを撃ってきた北添目掛けて狙撃した

 

「!?」

 

二宮(ニノ)さん!?」

 

 イーグレットの弾は北添に当たる事は無かった。

 二宮がシールドを展開して防いだ。

 

「貪欲」

 

 その光景を見て、加古は笑っていた。

 

「俺の(ポイント)だ」

 

「ですよねー」

 

 自分が倒す相手だから守った。ここまで得点無しだった二宮隊は北添を倒すことで1ポイント獲得する。

 北添は二宮のアステロイドに貫かれるが倒されるのが分かっているので死ぬの前提で最後の悪足掻きとも言えるメテオラを数発東達が居る方向に向けて放った。

 

「シールド!」

 

「おぉっと!!」

 

 北添のメテオラによる爆撃が遊真達を襲う。

 千佳は直ぐ様シールドを展開して防ぎ遊真もシールドを2枚展開して防ぐが少しだけダメージをくらう……が、致命傷にはならなかった。

 

「……これ以上は無理か……」

 

 なんとかして点を多く取っておきたい玉狛第二だが此処で無理だと修は判断を下す。

 残っているのは東と二宮の探すのも難しければ落とすのも難しい2人に加えて絵馬も居る

 

「千佳、空閑、下手に動くな。多分東さんも二宮さんも絵馬も時間内に見つけ出す事は出来ない」

 

 兄ならば、何処に隠れているのかいとも簡単に見つけ出す事が出来るのだが自分は兄では無いので出来ない事だ。

 修は取り敢えずは上出来だとポイントを見つめる。

 

「先程までの嵐の様な戦いから一転、誰も動かなくなりましたね」

 

「ええ、試合はもう終わりよ。東さんは撤退モードで二宮くんはそれに気付いてい絵馬くんも空閑くん達も見つける事が出来ないから攻めてこないわ」

 

 誰一人まともに攻めようとしない状態が成り立った。

 見ている側としては退屈かもしれないが、全部隊妥当な判断をしている。

 

「このままですと時間がアレなので総評を先にしましょう」

 

「そうね……玉狛第二が面白い事をしていたわね、狙撃手にスイッチボックスを持たせるなんて普通は出来ない事をしていたわ」

 

「三雲が撒き餌になり点を取りに来た隊員を罠に近付けて強制テレポート、空閑がスパイダーで出来たワイヤー陣のテレポート先にいて自分が最も戦いやすいフィールドで迎え撃つ……悪くはない戦法だ……ただ幾つか欠点はある」

 

「と、言いますと?」

 

「そこを考えるのが全隊員の宿題だ。自分で考えてみろ」

 

「あら、厳しい……最後の黒いライトニングにも驚かされたわね。雨取ちゃんの能力をフルに発揮してる、そんな感じだったわ」

 

「他の部隊が真似をすることは?」

 

「不可能だな。規格外のトリオンを持つ雨取だからこそスイッチボックスを持った上での狙撃手が出来る。スパイダーによるワイヤー陣も空閑の様な小回りの効く機動力が高い隊員が居てこそはじめて生きる」

 

 だから決して真似はせずに自分に合うスタイルを見つけろと風間は釘を刺す

 

「結局、撃たなかったな」

 

「撃てないという印象を与えるのならばこれでいい……ランク戦はまだまだ続くんだ。上位陣相手に格差をつけての勝利は難しい……一先ずは良くやった……なんて言ったら甘やかしそうだな」

 

 千佳が最後まで人を撃たなかった事を気にする出水。

 これでまた千佳は人を撃つことが出来ないというイメージを与える事が出来たのでそれはそれでいいことだ。ランク戦まだ続くのでここで千佳が人を撃つことが出来ると判明すれば色々と対策をされたりするだろう。

 

二宮隊
影浦隊
東隊
玉狛第二

 

「玉狛第二の勝利です。快進撃が止まらない玉狛第二!本日の試合が全て終了し暫定順位が変動!玉狛第二は5位にランクアップ!東隊は9位にダウン。二宮隊、影浦隊は変わらず。東隊の代わりに上位に食い込んだのは鈴鳴第一……今後が期待されます」




千佳の今回のトリガー構成

MAINTRIGGRESUBTRIGGRE
スイッチボックスエスクード
ライトニングシールド
アイビス鉛弾
ハウンドバッグワーム


ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。