メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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第110話

 

「……っち……」

 

 見たいものは見れたし、部屋に戻ろうとすると二宮隊が待ち構えていた

 インターホンを鳴らしている。1回鳴らしたが反応が無くて十数秒後に鳴らし……ニノさんが聞こえるレベルの舌打ちをしてメンヘラ彼女の如くインターホンを連打している。

 

「その内来るだろうなとは思っていましたが、早いですね」

 

「お前が三雲の兄か」

 

「ええ……なにしに来たのかは大凡の見当は付きますのでとりあえずは中に……出来ればなんですが代表者が1人で聞いてください。この人数を相手にするのは精神的にキます」

 

「……辻、犬飼、氷見」

 

 二宮隊と話し合いはシンプルに疲れる。誰か1人が代表者として出てきて欲しいことを言えばニノさんが代表者として出てくる。

 ニノさんを部屋に通してとりあえずはとお茶の1つでも出そうかと思ったが自前のジンジャーエールを飲んでいる。

 

「それでご要件は?」

 

 一息つくことが出来たので、要件を聞く。万が一が起きた場合が怖いので、念には念を入れる。

 要件を聞いたらニノさんは不機嫌になった。自分がここに来た理由は大凡の見当がついているのに知らないフリをしているのだと思ってるんだろうが、私は余計な事を言わなかったり万が一を想定して聞いているだけに過ぎない。

 

「この女について知っているだろう……知っている事を全て話せ」

 

 鳩原未来の写真を出したニノさん。

 

「……雨取麟児がトリガーを横流ししてもらった人、そう聞いています。ただ、どの様な形で交渉してトリガーを手に入れたか等は聞いてないです。私が知っているのは雨取麟児がトリガーを横流しされた後に私がトリガーを持っている事を知ってそれを売ってくれと言われた。でも、雨取麟児に適合して使えるトリガーは1つも無かった。雨取麟児からは残された妹を代わりに頼むと言われたが私は断った」

 

 私は答えられる範囲で答えを述べる。

 鳩原未来について知っていることは麟児さんがトリガーを横流ししてもらった人……私にトリガーを売ってくれと頼んだ時には既に鳩原未来の買収を済ませている。他の協力者も名前や顔を覚えており前途多難な旅になるが死相はあの段階では見えなかった。

 

「そして密航する馬鹿どもをぶん殴ってボーダーを邪魔した……他の協力者が誰なのかは知っています。でも、どうしてその人達が向こうに行きたかったのか、その辺に関しては興味はあれども聞くに聞けなかった。私は深く関与すればボーダーにトリガーを隠し持っている事をバラすと脅されていた身だ。麟児さんも俺をあえて出すことでボーダーを撹乱しようと企んでいた」

 

 その結果、ボーダーは探すのに手間取った。

 近界民がこちらの世界に来ていたのでなくこちらの世界の住人が妨害していたのだと答えに至らなかった。

 そのことをニノさんに言えばニノさんは強く睨み怒りの電磁波(オーラ)を出している。

 

「他の密航者に関するデータは恐らく貴方達が握っている情報と大差ない、もしかしたらそっちの方が上の可能性も高い。私を我が身可愛さに密航を食い止めなかったクズ野郎だと思いたければ思ってくれても構わない……ただ」

 

「ただ?」

 

「向こうはどういう認識をしていたのか……」

 

「………鳩原は遠征選抜試験に受かった。だが、上層部が遠征行きを認めなかった。雨取麟児が誑かした、それが事実だ」

 

「確かにそうです……でも、地獄への片道切符なのを理解していたのか?そもそもでどうして自分が遠征行きの切符を手に入れられなかったのか……貴方はそれの意味を理解していますか?」

 

「…………なにが言いたい」

 

 怒っている電磁波が少しだけ収まった……が怒っているのは分かる。

 ニノさんは遠征行きの切符を手に入れたがボーダーがそれを無効にした。その事に関してニノさんは不満を抱いていた。仏頂面で傲慢に近い性格があり天然ボケをかますが仲間思いなところはちゃんとあるわけで、鳩原さんを遠征に行かせたいという思いはあっただろう。だからこそ、意味を理解しているのか?私はそこを疑問に抱いている。

 

「鳩原さんは人が撃てないから遠征部隊から落とされた……この事に関しては妥当な判断だった。ただまぁ、上層部もそういう事を言わないのも悪いと言うべきか」

 

「鳩原が落ちたのが妥当だと……確かに奴は人は撃てない。だが、それ以外を除けば充分に戦える。もし戦うことが出来ない云々を言い出すのならばオペレーターが居る時点で同じだ。オペレーターが1人分多くても二宮隊(うち)は問題無く戦えていた」

 

「はぁ……………それが限界ですか?」

 

「なに?」

 

 鳩原未来が人を撃てないから落とされたのは妥当な判断との意見に対してそれならばオペレーターはどうなんだという。

 確かに戦うことも出来るオペレーターは居ない。途中からオペレーターに転向した系の女性は割と多いのだが私はそこまでしか考えに至れていないのに呆れている。この人ならばもう少し情報等から色々と推察することが出来るのだと思っていたんだがな。

 

「……言いたいことがあるならばハッキリと言え」

 

「まず、その鳩原さんは何故遠征に行きたいんですか?太刀川さんの様に強い相手とバトルしたい?風間さんの様にボーダーを成長させたり色々と良い未来に繋がるために?」

 

「最初の侵攻で拐われた弟を助ける為だ。その為にボーダーに入隊した」

 

「でも、人は撃てない…………私の弟が所属している玉狛支部は近界民(ネイバー)に関して友好的な派閥です。だからまぁ、向こうに関してそこそこ私も知っていますが…………思想は異なるかもしれないですけども、私がボーダー上層部ならば落とします」

 

「人が撃てないからか?…………それならば何故」

 

特殊工作兵(トラッパー)やオペレーターは何故許されるとか言い出すんですけど…………何れはぶち当たる壁について考えたりしてますか?」

 

「ぶち当たる壁?」

 

 他のポジションの奴の中には直接的に敵を撃ったり斬ったりしないのに、何故遠征を認められると言おうとするニノさん。

 私はその手の議論をしたいのではなく、私個人の意見ともしかしたら上層部はこう考えていた、つまりは何れはぶち当たる壁について聞いてみる。何れはぶち当たる壁についてニノさんは分かっていない。

 

「鳩原さんの家族が拐われた。だから、連れて帰りたいと思っている。別にこういう考えの隊員は沢山いる。鳩原さんもその例に漏れないです……それをする為には4年半前に襲ってきた国を見つけないといけない。だが、未だに見つけられていない。俺の情報が確かならば近界民の世界はこちらの世界の地球と星座の関係に近い。特定の時期にだけ星と言う名の国が近付いて来たりして襲撃をしている。もしかしたらボーダーは知っているけども隠している説もあったりしますが、そこは今すべき話じゃない……ニノさん、仮に鳩原さんの遠征を認められて近界民の何処かの国に行った際になにを見せられると思いますか?」

 

「…………」

 

「戦争を見せられる……俺の情報が確かならば向こうの世界は資源を求めての戦争を色々な国が行っている。こちらの世界は搾取するのに都合のいい世界だった。ただでさえトリオン体の肉体を撃てないのに人がホントに殺される姿を鳩原さんに見せることが出来ますか?」

 

 コレは原作の話の内容から出した1つの結論だ。

 遊真の話が確かならば向こうの世界は資源を求めての戦争を多く行っている。トリオンと言う安定して作ることが出来ないエネルギーが不足している問題を多く抱えている。

 

「まぁ、ここまではまだいいですよ……ボーダー側が4年半前に襲ってきた国を特定した。どうします?」

 

「どうするもなにも、その国に遠征に行くに決まっているだろう」

 

「その国に辿り着いた…………なにをする?貴方はその秀でたトリオン能力に物を言わせてメテオラで市街地を焼き払いますか?」

 

「…………」

 

「ボーダー側が4年半前に襲ってきた国を特定してそこに辿り着くまでの航路を導き出したとして、そこからどうする?貴方のトリオンでメテオラで市街地を焼き払う?それじゃあ近界民とやってる事は同じだ……だからと言って拐った人達を返せと言っても意味は無い…………結論だけ言えば何処かの段階で話し合いでなく武力を行使しなきゃいけない。時と場合によってはホントに人を殺さないといけない……貴方は人を殺せますか?鳩原さんに対して人を殺せと言えますか?鳩原さんにお前は人を殺さなくていい、でも俺達が人を殺すのは仕方がないことだと言えますか?」

 

 4年半前に襲ってきた国を特定した場合は何処かの段階でその国と戦争をしなければならない。

 ボーダー側はトリオン兵をあまり作っておらず、優秀なトリガー使いが多いからある程度はどうにかなる……なんて考えは甘いだろう。

 何処かの段階で誰かが武力行使しなければならない。鳩原さんはそれが出来ない人で……場合によっては人を殺さなきゃいけない。

 風間隊がエネドラの死体を見て動揺せずに死体に発信機があるんじゃないかと探してる感じから死体を見るのは馴れてるのが予測出来る。

 

「…………その国に対して交渉して」

 

「ボーダーには近界民憎しな派閥が多い。その憎しみは正当な物だ。話し合いで解決する、和平や不可侵条約の道を辿り連れ去られた人達を返してもらう……政治的な話ならばそこが妥当な判断ではあるがそれは三輪に対して復讐をするなと言っているも同然の事だ」

 

「!」

 

「貴方は嘗て三輪と一緒の部隊だった。だったら、三輪の近界民に対する憎悪を知っている。そしてそれは正当な物だと判断を下している。そんな三輪に和平や不可侵条約の道を辿り連れ去られた人達を返して貰うから姉さんの敵討ちは諦めてくれ…………貴方はそれを言えますか?」

 

 ボーダーの中には近界民に対する憎悪を原動力に動いている人もいる。

 その憎悪を利用しているのにも関わらず、いざその時が来たら自分達の方が鉾を納めて仲良くしましょう、互いに不可侵条約を結びましょう?そんなの誰もが納得することが出来ない答えだ。

 

「近界民と仲良くしような派閥の玉狛支部目線でも4年半前に襲ってきた国は敵だと認定している筈でしょう。近界民に対する憎悪を原動力に成り上がった人を、三輪を貴方は知っている。まぁ、近界民だから殺す思想は行き過ぎだと思うが平和な日本に軍事的な侵攻をしてきたのだけは事実です……向こうの世界に遠征する上では人間を殺す殺さない問題が、暴力で物事を解決しなければいけない事が何れはぶち当たる、鳩原さんはそうなった場合はどうするか?少なくともトリオンで出来た体を撃てないのならば話にならない…………因みにですが私は4年半前に襲ってきた国を特定出来て航路が出来たのならばその国の重役とその重役の血を継いでいる人達と実行部隊を一人残らず一族全員を皆殺しにします。生まれて間もない赤ん坊だろうが迷いなく生まれたことが罪だと言って殺して……日本というかボーダーの植民地の1つにしてほしいと願ってます」

 

 何れはぶち当たるその時が来た場合、貴方は平穏なハトを望めるのか?それとも過激なタカを望むのか?

 少なくとも遠征は何処かの段階で武力行使しなきゃいけず、その際の戦力としてカウント出来ない奴は不要な存在だ。何処かの段階で武力行使しなきゃいけない、それを避ける方法は何処にも存在していない。そんな事が出来たのならば最初から向こうの世界がこちらの世界に対して何かしらの和平や同盟の提案のコンタクトや幕末のペリーの黒船来航みたいにトリガーという力を見せつけて自分達にとって有利に事が運ぶ交渉の1つや2つしている筈だ。

 

「武力行使は何処かの段階で絶対に必要で、場合によっては人を殺さなきゃいけない。自分以外の仲間が人を殺すのを容認しろと言えるのならば、それを受け入れてくれると思っているのならば遠征に連れて行かなかった事をどうぞ責めてください」

 

 私がそう言えばニノさんから出ている怒りの電磁波(オーラ)が弱まっていく。

 三輪の憎しみは正当だから復讐に関してはそれでいいと思っている。弟を助けたいと言う鳩原さんの思いに応えたいと思っている。

 1番の最適解は当時と現段階の国の上層部や重役を、実行部隊を一族含めて皆殺しにして国を乗っ取る。もしくは国を形成している(マザー)トリガーを破壊する。その国の人達全員に死んでくれと言い殺す。

 向こうの世界に国が幾つ存在しているのか一切わからないならば(マザー)トリガーを1個ずつ破壊するよりも何処かの国を占拠し植民地化し表向きには友好的な近界民が和平を結びに来たのだと世間を騙すのが1番だろう。

 

「ボーダーの大人は漫画に出てくる大人と違って無能じゃない、有能な大人です……メディア対策室が上手い具合に異世界からの侵略者と戦っていると言う設定にしてますが言い方を変えれば異世界からの軍事的な侵攻を受けていると言う事にもなる。この前の大規模侵攻でボーダーに居たら危険だと認識した人も居てボーダーをやめた、やめさせた、三門市から出ていく、そういう人もいる。鳩原さんもその口じゃないんですか?」

 

「…………邪魔をした…………」

 

「いえ…………ですが、何れはぶち当たる壁があってそれがなにか?それだけは理解してください」

 

 ニノさんから怒りの電磁波が消えどうすればいいのかという悩みの電磁波が見える。

 私の言う当時襲ってきた近界民を皆殺しにする。その上で拐われた人を返してもらうのが妥当な所だろうが、ニノさんは鳩原さんに人を撃てない狙撃手なんて使い物にならない!と突っぱねずに平然と受け入れて自身の部隊に入れている。だから、人を殺すことを撃つことを強要する事は出来ないししたくはないだろう。しかし逆に弟分と言うか三輪の存在も認知している。三輪の近界民に対する憎悪は正当な物だと認識をしていて復讐に関してああだこうだ言わない。

 ボーダー上層部の真意は不明だが人が撃てない以上は自衛の手段が無いのと同じだと言って鳩原さんを落とした。鳩原さんを人殺しにさせたくないのか鳩原さんは人殺しになる覚悟が無いのか、何処かの段階で人として壊れていく可能性は大きい。

 この問題は何れは修達にもぶつかる問題だ。三輪の復讐の共犯者になると約束を交わしたので修や千佳に嫌われる可能性があったとしても、三輪の復讐は成し遂げるつもりだ。

 

「追い詰めたのはニノさんかボーダー上層部か人が撃てないのに戦おうとした自分か…………」

 

 剣や銃を手に取れる、使用できる権利は手に入れたが行使しなければならない義務は無かった。

 鳩原さんは自らの意思で銃を手に取った。そして人が撃てなかった。ならば潔く諦める……ボーダーの中には諦めてエンジニア、諦めてオペレーターが割と居る。草壁隊の草壁、エンジニアチーフの雷蔵さんがその例だろう。だが、鳩原さんはそれが出来なかった。色々な思いがあるだろうが、その結果が密航で越えてはいけない線を越えてしまっている。

 俺も越えてはならない線を越えてしまった……後戻りしたいか、そんな思いは僅かだけある……でも、時計の針は巻き戻せない。巻き戻しちゃいけない。例え巻き戻しても同じ時間を刻むわけじゃない。だから前に進むしかない、進める道を増やすしかない。

 

「世界を蝕む悪意……世界を蝕もうとする理…………私の手には知恵の実は無い。だが、やれることだけはやるか」

ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯
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