「やっと引っかかったか」
6戦目に勝てたことで私は少しだけホッとする。
るろうに剣心で出てくる伸腕の術を真似て今回は白と黒のストライプ模様のトリオン体に換装している。未来が視える迅だが視力そのものが強化されているわけではない。レイガストの長さを少しずつ変動させて距離感をおかしくしていたが自身が切られていると言う未来を視ているのと原理を見抜いているから中々に引っかからない。多少は擦る程度だ。
『
7本目が開始されればレイガストを構えた。
迅はいきなりのエスクードで前方を防いできた……開幕早々にレイガスト投擲をやろうと思っていたが見抜かれていたか。
ならばとバックステップで間合いを開こうとするが後ろにもエスクードで阻まれるのでレイガストをシールドモードに変えシールドを踏み台にして高く飛んだ。狙いはなんだと迅は見上げる。
「
炸裂弾の雨を降らせる。迅はまずいと走り出して炸裂弾の爆破から回避する。
私のトリオン能力ならば炸裂弾の爆発を受けきることは出来ない……予想通りの展開だがこれで迅との間に間合いが開き呼吸を置ける……が一息つく暇は無いのだと色々な手を考えて予測する。
メインにスコーピオン、シールド、炸裂弾、追尾弾、サブにレイガスト、スラスター、追尾弾と手札が7個バレている。近距離中距離戦を前提に戦っているがまだ1つ使っていないトリガーがある。それをどう使うか……タイムアウト権はまだ使わない。
「メロンくんの最後の枠はカメレオンだな」
「っち……幾つか潰してきたか」
最後に入れているのはカメレオンだ。
姿さえ見えなければ迅の未来視も防げるし使い方は色々とあるのだとカメレオンを搭載している……が、迅は当てた。
ということは迅を相手にカメレオンで1本取れたという未来は消え去った可能性が高い。が、カメレオン+なにかでならば迅を倒すことが出来る筈だ。
「……………シンプルな手段でいくか」
こういう言い方は今までが無駄になるがまだ2本取られても問題無い。
心のゆとりでなく心の贅肉、慢心そのものだが1本は負けてもいいと思わないといけない……後で取り返せばいいのだと思うのはいけないこと、実戦で1回負けたけども即座にもう1回復帰は出来ない事だ。カメレオンで姿を透明にすれば迅は姿を透明にする直前に見えていた私の前にエスクードを出現させた。これで1手妨害しつつどういう攻撃が来るのか視て考える時間が数秒生まれる。
自分がどういう風に負けている未来が見えているのかと意識を少しだけ割きながらも警戒をしている。これでどういう風に出てくるのかと1手の時間が生まれるが私は気にしない。
「最初は真っ直ぐストレートだ」
「ぐぅお!?」
カメレオンで姿を隠し奇襲をするという戦法がある。
カメレオンを使っている間は他のトリガーは使えないというデメリットもある。だがそんな事は関係無いとカメレオンで迅の顔面にパンチをした。カメレオンからのボーダーのトリガーを用いての一手と読んでいるがこういう技術もある。怯んでいる迅の腕を掴んで一本背負いをすると同時にカメレオンを解除してスコーピオンのもぐら爪で地面からニョキッとスコーピオンの刃を突き立てて一本背負いで迅を背中から地面に叩きつければ迅はスコーピオンが突き刺さった。
※
「こ、これは見事なまでの一本背負い!カメレオンからの奇襲が来るかと思えば肉弾戦を行ったぞ!」
「カメレオンを使えば姿を消せますが他にトリガーは使えない。だから近付いて攻撃する瞬間に解除して武器を取り出すのが定石だが……顔面に一発殴って怯ませて隙が生まれてからの1本背負いを行うと同時にカメレオンを解除してスコーピオンの
「姿が見えなくて奇襲をしてくる可能性があり迅さんならその奇襲を回避や防御出来るのでそれを逆手に取って堂々と殴りに行きました。スラスターを乗せたレイガストパンチで殴ればダメージになりますがそのままの拳なので少しだけノックバックされてその一瞬の隙をついての一本背負い…………カメレオンで姿を消して奇襲でなく堂々と来ました。姿が見えなければ迅さんは奇襲を受けますね」
7本目は貴虎が奪ったが見事なまでの一連の流れだった。
貴虎が最後に隠し持っていたカメレオンで姿を隠して奇襲……ではなく堂々と殴りに行く。
カメレオンで見えなくなれば相手は後手に回る。普通の人ならばそうだが迅には予知があるので上手く決まればカウンターも出来る。カメレオンで透明化した貴虎はそれを承知なのでカメレオンで見えなくなった迅の顔面を堂々と殴った。それで一瞬の隙を無理矢理生み出して一連の流れに持っていった。
「コレを言うのはアレですけどもくれぐれも他の隊員は真似しないでください……一部の技は兄さんの強化視覚のおかげで成り立ってるところがありますので。特に今の一本背負いまでの流れは兄さんだから出来た芸当で他の人は何百回と練習しないと出来ないです」
「アレは真似出来ないと言うよりも、三雲の奴がとにかく迷いが無い……迅の予知並の的中率の予測をしているからか」
8本目を貴虎と迅が戦う。
貴虎は試合開始と同時にカメレオンで姿を消した。すると迅はエスクードを大量展開し、道を防ぎ道を作る。
エスクードを超えるかエスクードが出ていないところを通るかのどちらかをするのだという揺さぶりをかけるのだが貴虎は今度は攻めてこなかった。迅がカメレオン対策をなにかしらの手でしてくるのだと予測していたのだとエスクード地帯を抜け出した。
トリオンに物を言わせた戦術が出来ない迅はエスクード大量展開はあまり出来ない。エスクードの壁を乗り越えて出たと思えば貴虎が姿を現して追尾弾を撃つのだが迅はシールドで防いだ。二宮の追尾弾フルアタックかと思ったが貴虎には別の狙いがあったのだと手裏剣型のスコーピオンを投擲し、レイガストを構えてシールドチャージを決めてくるので迅は押されるとスコーピオンにくっついていた追尾弾に撃ち抜かれた。
「コレは……」
「追尾弾を沢山放っている中でスコーピオンに追尾弾をくっつけた。遠くに追尾弾をくっつけたスコーピオンを飛ばしてシールドチャージで押していってスコーピオンの近くにまでやってきては仕掛けておいた追尾弾が迅さんを襲った……」
「追尾弾を1度に全てを放つのでなく時間差を持って攻撃した。しかし迅が具体的にどれぐらい後退するのかを予測して秒単位で撃つタイミングを割り切らないといけない……練習か?」
「いえ、持ち前の器用さを使った付け焼き刃とサイドエフェクトによる予測ですね」
「どんだけ器用なんだ!三雲隊員のお兄さん!そしてこれで三雲隊員のお兄さんが5本を奪い、いよいよマッチポイント!後1本を奪えば迅さんから1セットを奪えます!」
「その1本を奪うのが至難の技……」
手札はこれでもうバレた。カメレオン奇襲もなにもかも現段階で持っている手札をすべて曝け出した。
タイムアウト権と言う権利があるのを聞いていない東はここからもう1本どうやって迅から奪うのか?今までの合せ技を用いても迅は一度ハッキリと見た上でサイドエフェクトで予知している。ここからが本番だ。
※
「ふぅ……」
まずいな………………疲れてきた。
迅を相手に色々と技を使いまくっている。初見殺しの技もそれはもう見たの一言で済んでしまうので使う技を慎重に選ばないといけない。あと一歩のところまで来たが、使える技をとことん使った。一手一手のミスも許されない相手に何戦も挑んでは高速で演算している。迅と違ってあくまでも私のは予測に過ぎない。
『セットポイント……試合開始』
試合開始と同時にスコーピオンを投擲した。
迅に向かって一直線に飛んでいくスコーピオンだが迅はそれを予測していたのだとシールドを展開して防ごうとするがシールドを出したなと分かった時点でスコーピオンを消した。
「スラスター起動」
スコーピオンを投げてからシールドを出すまでの間にレイガストの投擲の準備にも入っている。
スラスターの推進力を得たナイフぐらいのブレードサイズのレイガストを投げたのだが地面からエスクードが生えてきたのでそれでいいのだとスコーピオンを再度作り出して走り出す。エスクードに突き刺さったレイガストを回収すれば迅と真正面からの切り合いになるのだが迅は鍔迫り合いにならないように、なっても攻めない様に警戒している。
「雷蔵さんが見たら喜ぶだろうな。レイガストを使いこなしてる」
「多分だが本人の想定外の使い方だ……武器の自由度はスコーピオンの方が上……そろそろ遊ぶのは終わりだろう?」
迅と何度も戦っていると迅が遊んでいる事に気付く。
正確に言えばまだ全てを出していない、スコーピオンと言う武器は自由度が高い。ただ軽いのでなく自由度が高い武器で使用者次第で幾らでも化ける。純粋な剣術で勝てないから迅はスコーピオンを作ったと聞いている。
迅が見せたスコーピオンならではの技術は体内でスコーピオンを伸ばし二刀流をしてみせた時のみ。まだまだ隠し持っている技はある。
「このセットを落とす……なんて考えならば軽蔑するぞ」
「まさか……メロンくんを本気で潰すって決めている。メロンくんに1セット譲るだなんて馬鹿な真似はしない……エスクード」
5セットマッチ戦なので2セットは落としてもいい……ゲームならばそうだろう。
だが迅は私を強者だと認めているので1セットでも譲れば確実に負けるのだと見えておりそろそろ本腰を入れて来る。
エスクードで間合いが開かれた。いや、エスクードで背後も防がれた。そうするつもりだと思っていると迅は走りながらスコーピオンを投げてきたので回避したら足が動かなくなった。もぐら爪で私の足を封じたのだと思えば迅は投げたスコーピオンを消して新しくスコーピオンを作り直して私を斬った。
「……手が付けられないか」
未来のビジョンが見える予知+自由度が高い武器、頭で分かっていた事だが中々に厳しい。
5−4だがまだ余裕がある……だなんて思えるほどに心に贅肉は無い。
「タイムアウト!」
『了解』
ここでこのセットを奪わなければならない。
タイムアウトだと言えば迅は了承しソロランク戦のブースを出れば……人集りが出来ていた。
修達は勿論のこと風間さん達などボーダーの中でも精鋭の人達や主戦力の人達、そうでない野次馬が出てきた。
「あの、まだ試合が」
「この試合前にタイムアウト権を行使した!1セットにつき1回のタイムアウトが取れる。タイムアウトをすれば1回だけトリガー構成を弄くれる。この事に関しては迅も承諾してくれている……少し席を外すからおさらいでもしておくんだ!」
「そうなんですか!失礼しました!」
実況のオペレーターこと武富がまだ試合が残っているんじゃないのかと言うのでタイムアウトを取った事を伝えた。
試合の途中でトリガー構成を変える、それはルールとしてありなのかと思わせないように迅が承諾しているといっておく。が、ザワついている。途中でトリガー構成を弄っても問題無いのかと……玉狛第二の蟻地獄の様な戦術ならば絶対炸裂弾必須な感じだがそれはトリガー枠に空きがある人のものだろう。
「迅を相手にバチバチにやってるな……それでどうするんだ?」
「レイガストとスラスターを抜いてスコーピオンとグラスホッパーで」
「了解」
トリガー開発室に向かいトリガーチップの交換に入る。
冬島さんが私が迅とバチバチにやりあっているなと私がなにを選んでもいいようにトリガーチップを用意してくれている。
欲しいのはスコーピオンとグラスホッパー、本当ならば3セット目までとっておこうと思ったが最後の1本を手に入れるのに使う。
「メロンくん、騒ぎが段々と大きくなってるけど大丈夫?」
「実況と解説のことか?それは……玉狛第二にとって何かと有利になるだろう?」
何時の間にか実況と解説がついている。解説は東さんと修がやってくれているという中々に贅沢なものだ。
騒ぎが大きくなっているが問題は無い。私のことを徹底的に解析されればそっちの方が有利だ。特に次のランク戦で無双する玉狛第二のヒュースの無双をこっちの方で上書き出来る。
「メロンくんの目的が終わった後だ……色々と大変な目に遭うよ」
「構うものか……さぁ、続きをやるぞ」
『セットポイント、5−4……試合開始』
このセットはなにが何でも奪う。
試合が開始すると迅はスコーピオンの二刀流で攻めてくるのだがよく見ればスコーピオンを1本伸ばし二刀流にして戦っている。
なにが狙いなのか考えている場合じゃないとスコーピオンを投擲すれば迅は手裏剣型のスコーピオンを投擲してきた。先に投げたのは私で迅の投擲はハズレると私のサイドエフェクトが言っている。更には私のスコーピオンは命中するが、迅のスコーピオンに捌かれる。ならばと投げたスコーピオンを消してスコーピオンを伸ばそうとするが迅が詰め寄ってきた。
「惜しいな、オレじゃなきゃ勝ててたよ」
投げると同時に詰め寄ってきた。
これはもう無理だと迅にスコーピオンで切り裂かれて……5−5に持ち込まれた。スコーピオンの後出しの権利を使おうと思ったが読まれていた。後出しする前に先の先で潰された。ここからはタイブレーク……先に2本連続で勝った方が勝ちだ
『試合開始』
「とう!」
迅はスコーピオンを投げてきたが当たらない。
コレに意識を割かなくてもいいのだと迅を見つめようとすれば地面からエスクードが生えて空中に浮かされた。
「貰ったよ」
「させるか!」
迅はジャンプして斬りかかろうとするがその前にと体の下にグラスホッパーを展開して飛んだ。
ぐるりぐるりと回転していて感覚がおかしくなるのだと思ったが直ぐに気持ちを無の状態に切り替える。慌てていたら倒すものも倒せない、先に勝負を貰うのはこちらだとスコーピオンで斬りかかるが迅は受け止めたのでもう1本のスコーピオンで突きを入れれば迅は回避するがそれと同時に片方のスコーピオンを消して頭部にシールドを展開し首刈りスコーピオンを回避しようとする。それが読まれていたのならばと思っているとお腹に衝撃が走りノックバックし、バランスを一瞬だけ崩して迅はスコーピオンで切り裂いた。
「……真似られたか」
ダメージを与えることは出来なくても、怯ませたりする事は出来る。
徒手空拳による戦闘は不要に見えているが意外と大事だ。第三の手として存在しているのだから。迅は私のお腹を殴って私から1手奪った。いや、バランスを無理矢理崩してきた。
『セットポイント……5−6……試合開始』
「
試合開始と同時に炸裂弾を放つ。威力重視でなく速度重視で爆発により土砂煙を巻き上げるのが目的だ。
メテオラはメインのトリガーにセットしてあるので爆発をすると同時にカメレオンで透明になり煙の中に紛れ込む。
「とう!」
「っ!」
「甘いよ、メロンくん!バトルフィールドを活かすのも大事なんだ」
上手い具合に迅に接近しようとすれば迅は水道管を破壊した。
なんだと思えば水が噴出して私に水がかかる。これでカメレオンの透明化は通じないのだとカメレオンを解除した。エスクードが左右から生えてきても問題は無いように警戒心を強める。
「コレならどうだ!」
手裏剣型のスコーピオンを投擲して迅の近くにまで飛ばしグラスホッパーを迅の周りに展開すると乱反射スコーピオンが巻き起こるかのように見えたのだが直ぐにグラスホッパーもスコーピオンも消えて私は迅との間合いを詰めて鍔迫り合いに持ち込んだ。
スコーピオンでも弧月でもレイガストでも蜘蛛の毒を使うことが出来るのだと迅の重心を読み切って押し合いをしようとするのだが押しきれない。迅が重心にフェイクを入れているのでなく押し切ろうとしていない。
「メロンくん……このセットはオレの勝ちだ」
「それはどうかな?」
「っ!?」
スコーピオンを交差させて☓印の状態で拮抗している。
このままいけばと迅は勝つための未来を見ているのだがまだこの状況下でマンティスが残っている。
遊真が地面に突き刺さったスコーピオンを
「まだだ!」
「っ!」
「メロンくん……タイムアウトでトリガー構成を変えたのは君だけじゃない……グラスホッパーを追加した。この時の為に!」
スコーピオンの刃が迅に届く瞬間にグラスホッパーが展開された。
グラスホッパーに触れてしまったことで弾かれて腕が動き大きな隙が産まれて迅はスコーピオンで斬り裂いた。
「危なかった……………メロンくんがタイムアウト権を使わなかったらこのセットは奪われていた……」
1セット目は迅に5−7で負けて奪われた
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