メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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感想が作者のやる気を起こすのでお待ちしております



第124話

 

「2セット目は6−2で三雲隊員のお兄さんが勝利しました!1セット目よりは早いが合計で50分、中々の長期戦というかインターバルとタイムアウトを挟めばランク戦3回分はしてないか!?」

 

「1本平均5分に見えますが、一瞬で決着がついてる時もありますね。弓場隊の弓場隊員の真似をした……いや、見た感じだと弓場隊員より弾速がありますね」

 

「コレはあくまでも僕の勘なんですが……迅さんの小さめのシールドを確実に割れる威力に設定して残りを弾速に回してますね……1セット目の追尾弾で迅さんのシールドがどれぐらいの強度なのかを確認してる、何度か追尾弾を当てたり炸裂弾を放ったりしてシールドの強度を確かめてたと思いますよ」

 

「なんと……シールドの強度って分かるものなんですか?」

 

「ボーダー隊員が普通に手に入れることが出来るデータにはしっかりとトリオン能力が記載されますからね。それをベースに割れるデータを算出すれば可能です……とはいえ迅のトリオン能力は7と充分なレベル、それを確実に破るにはそれなりに威力に通常弾を割り切らないと」

 

「兄のトリオン能力は二宮さんよりも優れていますので確実に割れる威力にしても速度に回せます」

 

 2セット目は貴虎が綺麗に持っていった。3セット目に入る前の15分間のインターバル、休憩時間がやってきた。

 実況と解説をしている武富、修、東の3人は2セット目のおさらいに入る。

 

「2セット目は銃手(ガンナー)スタイルで迅隊員を見事に撃破しましたが……やはり弓場隊員の真似をしているのが大きかったでしょうか?」

 

「確かに決まり手は通常弾の拳銃が多かったですがそこに至るまでの過程が色々とありましたね。木崎隊員が使うスパイダーと炸裂弾を組み合わせてのブービートラップ、玉狛第二が新たな戦術として作り上げた偽のワイヤー陣形を複数作った。迅隊員は予知がありますので狙撃が効きにくいですが複数のブービートラップのワイヤー陣形を作って狙撃地点で待ち構える。そこに向かうためにはワイヤー陣形の中を潜らなければならない……」

 

「このワイヤー陣形は流行るでしょうか?」

 

「いえ、無理でしょうね。玉狛第二のブービートラップのワイヤー陣形は雨取隊員の規格外のトリオンを設置した威力特化の炸裂弾があるおかげで生きていますので……ただ……三雲隊員のワイヤー、空閑隊員の強さ、雨取隊員のトリオン、この3つを綺麗に足して割って纏めた感じがありますね……コレを単独で考えてるのか、それとも弟の真似をしているのか」

 

「……僕が兄さんの真似をしているのが1番正しいですね。スパイダーもスイッチボックスも兄さんがそれとなくアドバイスをくれたので」

 

 貴虎が行っている行為が修の真似なのかと考えれば修は自分の真似でなく自分が兄の真似をしていると言った。

 武富が兄は昨日入隊したばかりでは?と極々普通の質問をしてくるので兄が色々と裏で暗躍をしているとだけ修は語った。

 

「しかし6−2と1セット目と異なり差をつけての勝利を果たしました。このまま銃手スタイルを取って戦うのでしょうか?」

 

「それは……どうでしょうか……1対1で最強クラスの弓場隊員の真似をしていますが……迅がどう出てくるか」

 

 

『3セット目、試合開始』

 

 15分のインターバルを置いて3セット目が開始した。銃手スタイルのトリガー構成で迅に接戦でなく差をつけての勝利をした。

 銃手スタイルならば迅に勝てる可能性は比較的に高い方だが……比較的に高い方であって全体的に見れば負ける可能性が高い。

 3セット目が開始すれば右のホルスターに仕舞ってある拳銃を抜いて構えると見せかけて右手から左手に向かって投げて速射する……が、読まれていた。迅はグラスホッパーを展開し通常弾を相殺してスコーピオンを持って近づいて来て切り裂いて来ようとするので炸裂弾を出現させる。威力はそれなりで本来の世界線、つまりは原作で修が使っていたように超低速の極小の炸裂弾を撒き散らせば迅は歩みを止める。

 

「エスクード」

 

「それは」

 

「オレの勝ちで確定だ」

 

 エスクードで私を無理矢理弾き出そうとするのだが私はバックステップを取って回避しようと思えば弾かれた。

 エスクードを出すのと同時に背後にグラスホッパーを出現させて迅のもとに飛んで向かい迅はスコーピオンで私を斬り裂いた。

 

「……………タイムアウト!!」

 

 1本目を奪われたのでこれ以上はこの銃手スタイルで迅とやり合うのは厳しいと感じた。

 即座にタイムアウト権を行使してブースから出て行きトリガー開発室に向かいトリオン体を解除した。

 

「お、おい、大丈夫なのか!?」

 

「……ああ、ただのストレスからくるものですよ」

 

 トリオン体から生身の肉体に戻れば滝のように汗を流している私を見て冬島さんは心配をする。

 迅を相手にするのは洒落にならない程にキツい。本来ならばそこで勝てている手も幾つか存在していた。だがそれを迅は潰しに来た。

 既に見ているの一言で対処する……普通の人なら対処するにまで至れないが流石はボーダーでトップを争うレベルの男、即興での対応も出来る。

 

「このトリガー構成で迅を相手にするのか」

 

「ええ……このセットはコレで勝ちに行きます」

 

 冬島さんにトリガー構成を弄ってもらえばこれでいくのかと考える。

 迅を相手に自由度が高い武器で戦うのは難しいだろうがこうしないと迅には勝てない。視えているの一言で全てが対処される。

 冬島さんにトリガーチップの交換をしてもらい再びトリオン体に換装し深呼吸をする。迅を相手にして私に掛かる負荷がとてつもない。5セットマッチと言ったが3セットマッチにしてほしいと言いたいと後悔するぐらいに厳しい。

 

『0−1……試合開始』

 

 3セット目の2本目が開始した。それと同時にカメレオンを使って姿を隠した。

 背後からの奇襲が来るのだと迅は予知して綺麗に回れ右で後ろを振り向いたがそこには私は居ない。

 迅のサイドエフェクトでは見えないものは見えない……だったらカメレオンが有効だ……故に1手を何時入れるか入れないかの揺さぶりをかける。何時背後から奇襲されるのか分からない状況にして背後からの奇襲を意識させる。実際に私は背後に回り込んでいる。

 このソロランク戦はトリオンが擬似的に無限でトリオンを実際に消費しているわけじゃないから。

 

「前か!」

 

 背後に回り込んでの奇襲の未来を幾つか見せた後に前から堂々と攻めに行く。

 普通の人ならば反応出来ないが未来を視ていたの一言で反応して対応をすることが出来るのだと迅は透明になって視えなくなっている私を斬り裂いた。

 

「……仕込みは出来たか」

 

 1本だけの勝負に拘り技を極限にまで磨く方針の私らしくない次に繋げる仕込みをした。

 あんまりいいやり方ではないがこうでもしないと迅に勝つことが出来ない。スコーピオンの創設者は化け物だ。

 

『0−2……3本目開始』

 

 3本目が開始すればカメレオンを発動し透明になる。

 迅はどう出てくるのかと意識を予知に向けたのでその瞬間に姿を現してスコーピオンを投擲した。

 迅はスコーピオンが投げられたと分かればシールドでの防御に移行する

 

「っ!」

 

「未来を視たければ視ればいい……それで攻略法を考えればいい……だが、私はその未来を塗り替える」

 

 投げたスコーピオンが途中で消えた。

 シールドに突き刺さって攻撃を防ぐことが普通ならば出来た筈だろうが私はスコーピオンを空中で消して新しく作成し迅のもとにまで届ける。影浦先輩考案のスコーピオンを2本くっつけたマンティスならば迅に届くと迅を突き刺した。

 

 

「スコーピオンを投げると迅が反応する。投げられたスコーピオンをシールドで防ぐのか回避するのか分からないがそのスコーピオンを消して新しいスコーピオンを作り出して、2本のスコーピオンをくっつけるマンティスで迅を仕留めましたね」

 

「コレは…………兄さんのみが出来る後出しの権利!」

 

「後出しの権利……なんですかそれは?」

 

「もう1本か2本を見れば分かります」

 

 何が起きたのか東が解説をすれば修は気付く。

 強化視覚のサイドエフェクトを持つ貴虎のみが使える必殺技、後出しの権利をここで行使してきたと。

 どういう意味なのか分からない武富や観戦者達は気になっているのだがまだ詳しいことは言えないのだと修は意味が分かるのだと4本目が開始される。4本目は開始と同時に貴虎がカメレオンで姿を消した。ここで迅は何処に居るのかを探す素振りを一切見せずにスコーピオン二本を手にして進み見えない筈の貴虎を切り裂こうとしたが貴虎が迅の振りかぶる腕にシールドを展開して攻撃を防ぐともう片方にセットしてあるスコーピオンを投擲する。ここで迅には幾つかの未来が見える。

 

 スコーピオンが突き刺さり負ける。

 

 シールドでスコーピオンを防ぐ。

 

 スコーピオンを体を動かして回避する。

 

 3つの未来が待ち構えている。視えている未来の中で最も多いのは体を動かしてスコーピオンを回避する未来だと迅は攻撃を回避したと思えば貴虎が迅の動作を妨害するシールドを消しスコーピオンを伸ばして投げたスコーピオンにくっつけてマンティスを作り上げ機動を変えて迅を斬り裂いた。

 

「コレは……………まさか…………」

 

「ええ……………見てから決めています」

 

「見てから決めている?」

 

 5本目の勝負が始まった。今度はカメレオンで姿を隠さずスコーピオン二刀流で戦う。迅もそれに合わせて戦う。

 さっきのような奇策が出てこないのかと見守っていると迅は鍔迫り合いになり重心移動を見抜かれて鍔迫り合いに負けて切り裂かれた。

 

「あの〜後出しの権利とは?」

 

 さっきと同じ展開にならなかったので武富は後出しの権利について聞いた。

 後出しの権利と言われても後に出している感じがない。どの辺が後出しなのかが分からなかった。

 

「その名の通り後出ししてるんですよ……皆さん、仮に自分に命中するスコーピオンが投げられた場合どういう風に対応をしますか?」

 

「それは回避するかシールドで防ぐかスコーピオンで弾くかですよね?」

 

「はい。この3つの対応方法ですが……兄さんはどれにするのかを見切っているんです。1本のスコーピオンを投げると同時にもう1本のスコーピオンをくっつけられる間合いにまで近付ける。普通の人なら最初に投げたスコーピオンに3つの方法で対応します。シールドで防ぐのならば投げたスコーピオンを消してマンティスを作り出して突き刺す、スコーピオンで弾こうとするのならば弾いたスコーピオンをくっつけてマンティスにして切り裂く、回避するならば投げたスコーピオンを消してもぐら爪(モールクロー)マンティスで回避先に攻撃を当てる……この3パターンを相手が動いてから判断しているんです」

 

「って、それってほんの一瞬の判断力が問われるものじゃないですか!?3つのうちのどれかを選ばないといけないですし見切る目を持ってないと……」

 

「行動に出るのを見切る目を兄は持っているんです。数手先の未来ならば迅さんの方が確実な未来が見えます。ですが1手の1秒先の未来からの行動に関しては兄さんのほうが上だと……兄さんは動体視力等にも優れていますのでなにが出てくるのか見えるのでそこから次の1手、揺さぶりの1手から打つ次の2手目に関して兄さんは好きな様に選べるんです」

 

「ぶっ壊れすぎでしょう!お兄さんのサイドエフェクト!!」

 

 未来を予測し素早い動きを見切る優れた動体視力を持つ貴虎にのみ許された権利、後出しの権利。

 

「飛んできたのを弾いたら弾いたスコーピオンがくっついてマンティス、シールドで防げばシールドに当たる前にスコーピオンを消して事前に伸ばしていたスコーピオンを延長してマンティス、回避すればもぐら爪マンティス…………それの3つは本来は運頼りだが貴虎の奴は相手の行動を見切ってから……迅を相手に真っ向から予知を潰しに来たか……」

 

「秀次、回避する方法は思い浮かぶか?」

 

 貴虎の後出しの権利についてヤバいなと感じる米屋。

 三輪に何か対応方法はないのかを聞いた。

 

「マンティスの範囲は大体20メートルだ。その間合いから離れれば回避は出来る。グラスホッパーで翔べば回避は可能だ……だが、迅は攻撃手、仮にマンティスを影浦先輩レベルで使いこなすことが出来ても近付いてスコーピオンで戦うというスタイルを取らないといけない。間合いは開けない。それ以外の戦いじゃ絶対に貴虎に勝つことが出来ないし付け焼き刃でどうにかなる相手じゃない」

 

 約20メートルの範囲から出ていけばいい。

 それだけでこの後出しの権利を回避することは出来るのだが攻撃手の間合いである至近距離での戦闘でそれは不可能だ。

 迅の予知した未来を塗り潰す、未来を見てから書き換える後出しの権利という他の隊員が絶対に真似出来ないこんな技を隠し持っていたのかと三輪は驚いた。

 

『兄殿があそこまでやるとは……』

 

「ありゃヤバいな」

 

 一方の遊真とレプリカも貴虎の後出しの権利について驚いていた。

 本来ならば運要素が絡むようなところを貴虎は超人的な視力で、サイドエフェクトで見切った。

 どれにするのかの読み合いの段階になれば迅には無数の未来が見える。その中から確率が高いものを迅は選ぶことが出来るがそこから動き出した後に攻撃を入れ替える。迅が勝てると視えた未来を塗り変えた。

 

「……ジンさんも直ぐに対応してる。間合いを開かせないように接近戦に持ち込んでる……けど……」

 

 貴虎を相手に鍔迫り合いを、押し合いで制するのは難しい。重心を見抜く目を持っている貴虎に対して鍔迫り合いになれば負ける。

 サブトリガーで対応しようにも迅が使えるのはエスクード、グラスホッパー、シールド。ここでタイムアウトの権利を使ってトリガーを入れ替えたとしても残っているのはカメレオンとテレポーターで残りは弾系のトリガーを貴虎の様に上手く使いこなせるかと聞かれれば無理である。

 攻撃手として剣戟を繰り返さないが攻撃手としての間合い……それはソロランク戦の試合が開始すると同時に開かれる間合いだ。開始と同時にスコーピオン投擲の後出しの権利を発動しようとする。早急に逃げようとするのならばカメレオンで見えなくなる。

 

「……………大丈夫かしら?」

 

『なにか心配事でもあるのかね?』

 

「見てから入れ替えたり色々とやってるけども即決即断が出来ないといけない技ばかりよ……迅くんじゃなければ通じていたって言える技も幾つかあるし逆に迅くんが貴虎の真似をしている。斬るんじゃなくて引くスコーピオンがいい一例だけど……体にかかる負荷が相当なものよ」

 

『む……確か兄殿のサイドエフェクトは視覚を強化するものだが強化の方向性が普通とは違っていたのだな』

 

「ええ……動体視力とか色の判別とかは当然の様に強化されているけれど、あの子は本来普通の人には見えない光や電磁波なんかが見えるの。あの子が言うには炭火焼肉で肉を焼けば遠赤外線で肉が焼かれてるのがよくわかるらしいもので人から出ている電磁波なんかを見て占いに応用する……それは確実に当たると言ってもいい占い……9割の可能性で当たるもの………だからこそなのよ……」

 

「なにが?」

 

「貴方達の目から見て迅くんは強い?それとも弱い?向こう基準でよ」

 

 貴虎と迅が激闘を繰り広げる中で母こと香澄は心配をしていた。

 なにが心配なのか分からないのだが香澄が迅はこっちの世界だけでなく近界(ネイバーフッド)基準で強いのかを聞けば遊真は即答する。

 

「ジンさんと実際に戦ってるわけじゃないけども、向こう基準でも滅茶苦茶強い。トリガーが同じ条件だったら勝つのは凄く難しい」

 

「……そんな迅くんを相手になにか知らないけど賭けをしている。負ければいざボーダーと敵対した時にボーダーを倒す術を失う……アレでも重圧には強い方だけども今回は常人じゃなくて予知能力者が相手…………貴虎の思考力や情報処理能力には限界があるわ。このセットを勝つことは出来ても次のセットは落とすわよ。それも大きな差をつけられて」

 

 母である香澄の予感は的中した。

 6−3で3セット目は貴虎が勝利した。だが4セット目、貴虎が徐々に徐々に限界に達していき……1−6で4セット目を奪われた。

特別演習

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