メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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第129話

 

「おまたせしました!B級ランク戦中位、昼の部!実況は私、綾辻遥!」

 

「どうもどうも、解説の米屋だ!」

 

 B級ランク戦中位第7試合の昼の部が間もなく開幕する。何時もマイクを片手に頑張っている武富桜子は今回は居ない。

 別の場所で戦っている、そんな感じであり第4試合で上位の部を実況した綾辻遥が再びマイクを取った。解説に関しては米屋が選ばれた。一般教養はアホだが、戦闘IQはかなり高い。伊達にスコーピオンと孤月のマスタークラスではない。

 

「さて、中位昼の部の対戦カードは那須隊、諏訪隊、柿崎隊、香取隊の4部隊!米屋隊員、注目するべき点はありますでしょうか?」

 

「そりゃやっぱアレだろ、三雲の奴だろ」

 

 対戦カードが発表される中でざわめく。

 B級ランク戦が見れるモニターに映し出されるのはランク戦で戦う部隊の隊員、諏訪隊は何時ものメンツだ。柿崎隊も何時ものメンツだ。香取隊も何時ものメンツだ……しかし那須隊だけは違った。那須隊には4人目……三雲貴虎が居た。

 

「……なんで那須隊に?」

 

「三雲の奴が那須を口説いた」

 

「!?」

 

「と、思うじゃん?……まぁ、色々と自分がしなきゃいけない責任を果たすとかどうとか……」

 

 何故に那須隊に貴虎が入っているのかがわからない。

 学校も同じで割と仲がいいのは知っているがそれでも接点が見つからないと詳しい事情を知ってそうな米屋に綾辻が聞けば口説いたと冗談を言われて一瞬だけ嫉妬の炎を燃やすのだが、米屋も米屋で詳細は覚えていない。自分が果たさなきゃいけない責任を果たすため那須隊に入った。ただそれだけである。

 

「ふっざけんなよ!クソがぁ!!!」

 

 さてさて、それぞれの隊室を見て行こう。

 諏訪隊の隊長こと諏訪は荒れるに荒れていた……ニコチンが切れたとかではなく……

 

「迅を相手にタイマンで勝った奴とかA級に居ねえとおかしいのになんでB級なんだよ!!」

 

 貴虎が那須隊に居ることである。

 数日前に繰り広げた三雲貴虎vs迅悠一は世紀の決戦とも言えるもので、実況と解説付きで1から見ていた人達は凄まじかったと語る。

 その場に居なかったものも音声の記録は無いが対戦の記録を確認し、凄まじいとの認識……まぁ、その結果貴虎は数日倒れると言う悲惨な目に遭ったが。迅も丸一日眠っていたとかどうとか。ともかく純粋な実力で迅を相手にボーダーのトリガーでタイマンで勝利した。

 コレは直ぐに話題になった……が、肝心の貴虎は玉狛支部で眠っていた。なのでスカウト云々をしようとか考えている面々も肝心の貴虎の足取りすら追えなかった。

 

「あの記録(ログ)を見ましたけど凄まじかったです……アレで戦闘経験皆無でセンスだけでやってるとかおかしいぐらい」

 

「なんか凄腕の新人が来たって噂があったけど、彼のことですよね」

 

 笹森は迅vs貴虎を見たが理不尽な性能をしていると認識している。

 少し噂になっていた人物は彼なのだと堤は考えるが惜しい、それはヒュースのことである。

 

「マップの選択権が無いのはまだいいが、アレはクソゲー過ぎるだろ……10000ポイント越えたらA級に自動的に昇格するシステムを作れよマジで」

 

「……分が悪い賭けは好きだけど、流石にコレは理不尽過ぎるな……」

 

 クソゲー、圧倒的なまでのクソゲー。

 リスクが高い賭けがどちらかと言えば大好きな堤もコレはクソゲーにも程があると認識している。

 

「……あのクソメガネが……」

 

 今度は香取隊である。珍しく香取がやる気を、と言うか殺意を出している。

 貴虎に対してピンポイントで殺意を抱いている……やる気が無い状態よりはいいけれども……

 

「三雲さんとなにか因縁が?」

 

「……えっと……」

 

 なんか接点でもあったか?と香取隊オペレーターの染井が若村に聞いた。

 自分が知る限りでは三雲との接点らしい接点は無い。何かあるのかと聞けば若村が答えづらそうにしている。

 

「……その、避難訓練の時に色々とあって……まぁ、そうなるようにしてる葉子の方が悪いと言うか三雲の奴が悪いと言うか」

 

 香取葉子、トリオン体を那須隊に対抗しているところがある。

 その上で三浦が香取に対して甘い。まぁ、純粋に好意を抱いているというところがあるのだが……貴虎が「なんか姫プレイしてるみたいだな」とボーダーと学校が協力した避難訓練で言ったのである。

 そういう風に見てもらいたいなどの思いがあり色々と詐称していて三浦にチヤホヤされている。その上で香取葉子は美少女であり周りからチヤホヤされている。ネカマの姫プレイに似ているなと思わず口を滑らせており、その事について軽く殺意を抱いている。

 

「……どうしよう……迅さん相手に勝ったなら葉子ちゃんじゃ……」

 

 香取の才能は凄まじいのは理解しているが、上には上がいる。

 香取の遥か上を行っている迅をタイマンで倒した男、駒としてのスペックがクソ強い香取よりも遥かに上回っている。

 貴虎が色々とトリガーを使いこなした、コロコロとトリガーを変えたのでコレを基準に考えよう!なデータが一切無い。

 三浦は純粋に香取が戦っても負ける。多分自分達がフォローしても負けるんじゃないか……少なくとも貴虎を知っている人ならば、彼にカメレオンが通じない、強化視覚のサイドエフェクトを持っている、奇襲が難しいことも知っている。

 

「コレはヤバいな……」

 

 今のボーダーが出来てから迅とそれなりに付き合いがある柿崎はハッキリと弱音を吐いた。

 相手はあの迅悠一と激闘を繰り広げ、タイマンで倒した。黒トリガーを持つS級じゃなくA級に戻った後も1人で1つの部隊と同格の扱いを受けている迅を相手に勝利した。村上鋼クラスが1人那須隊に入隊したという認識ではいけない。

 

「あの時は迅さんを倒すという事にのみ集中していた単騎での戦いです、連携や地の利を活かせば戦えると思います」

 

「……」

 

 圧倒的なまでの強者が那須隊に入った。

 柿崎隊の照屋が、迅を倒すことに集中していた個人ランク戦とチームでのランク戦は違うもので、真正面から戦わない他のやり方がある、それをすれば貴虎を倒すことが出来る可能性がある……と、フォローをしてくる。

 ただやはり心の何処かで考えてしまう。 トリガーを持って間もないのに、あの迅を本気で倒す為に見たことも無い技を幾つも使い、シーソーゲームを繰り返した。その技の殆どが自分達では真似出来ないものだった。しかも迅が相手だから使えない技もあったらしい。

 

「さてと……市街地Cだな」

 

 さてさて那須隊の隊室、貴虎は占いをして最も高い可能性を予測する。

 今回マップ選択権を持っているのは柿崎隊で……殆どが弾系を持つ。工業地帯での戦いになれば1番厄介なのは誰か?それはリアルタイムで弾道を処理出来る那須だ。狙撃手は日浦のみ、その上で自分という爆弾が出てきた。

 当初のプランを少し崩さないと勝ち目が無いと柿崎は判断し、坂道が多い射線が通りやすい市街地Cを選ぼうとしている……と予測した。

 

「市街地Cって……那須隊(うち)が1番有利じゃない?」

 

「だからだ……俺が厄介な目の上のたんこぶ、そもそもで戦いたくないというのが心境だろう……那須隊の欠点は?」

 

「……玲にかかる負担が大きいこと」

 

エース、点取り、指揮官、隊長……那須隊の欠点はそれら全てを那須がしていることだ。

1人で色々としているので掛かっている負荷が大きい。だがここに貴虎と言う化け物を1人投入する。

戦術なんて一切考えない、村上レベルの奴にただぶつけるだけで勝ち星を拾ってくる、B級にとってはクソでしかない奴が1人……なにが悪いってこの男、サポートもかなり出来る方だ。

 

「それがコレで消える。だからなにかしらを付与する……射線が通りやすい場所、那須や日浦が活躍しやすい場所をあえて作る。そうすれば行動はある程度は制限出来る。日浦単騎、那須単騎、熊谷単騎、私単騎……それが狙いだろう」

 

 影浦隊の様に個人の力が圧倒的に強い!が売りではない。かと言ってとても考えて行動しているわけではない。

 現状強い駒は那須1人、那須は射手だから銃撃戦が厄介、しかし銃撃戦は数に物を言わせればいい。アマトリチャーナの様な理不尽を除けば数の利で倒せる。貴虎が加わっても連携は売りには出来ない。貴虎の手札は不明だが那須と貴虎の2枚看板であることは確か。ならば、あえて有利なフィールドにし、全員を単騎で動かせるようにする。タイマンならば勝てないが連携や地の利を活かす。

 

「このフィールドでいけるんですか?」

 

「可能だ」

 

 日浦がこの日の為に練習していた技を使えるか聞く。あの技はフィールドの設定次第では使えない。

 数分後に柿崎隊は市街地Cを選んだ……貴虎の占い通りになったので貴虎の占いは反則だなと感じる。

 

「今回こっちが有利なのは三雲くんが居ること……最初に成功したら、私とくまちゃんが合流する。三雲くんが何処に誰が居るのかを確認して鉢合わせしないように」

 

「私は玲に近付けさせないようにサポート……」

 

「私は三雲さんの爆弾を1つずつ破壊ですね……」

 

 那須が熊谷が日浦が自分がすべきことを言う。

 スタートしてからのほんの十数秒、全員が盤面を理解しこれからの動きを考えるそこが勝負だ。

 

 

『B級ランク戦開始』

 

 

「さぁ、最初の転送位置はやや香取隊が有利、那須隊はバラバラ、後は普通と言ったとこ…………え!?」

 

 B級ランク戦が開始しブザー音が鳴り響く。

 香取隊がやや近くに居て固まっているという状況で那須隊は逆にバラバラ……諏訪隊と柿崎隊は合流も可能、バラバラに動くのも可能と程良い転送位置だ。まずは誰がどんな風に動くのか!と言う感じ……ランク戦では極々普通の事であるが、貴虎が直ぐに動いた。

 グラスホッパーを使い空中を飛んだ。アイビスを構え……香取を撃ち抜いた。

 

「マジで成功しやがった!!」

 

 なにをするのかを知っていたが普通に無理だろうと思っているところがあった米屋は笑った。ウッソだろおい!と。

 試合が開始して直ぐに那須隊に1ポイント入った。それと同時にざわめいてなにがあったのか?と観客達は困惑している。

 

「いや〜ヤベえなアレは……香取はバッグワーム着てるし……クソだな」

 

「あの……なにが?」

 

「転送位置とかの状況整理するほんの一瞬の隙を突いてのグラスホッパーで飛んでアイビスで撃ち抜いた」

 

「……え……そ、そんな事が出来るの?……」

 

 転送位置とかどういう風に動くかの状況整理をするほんの一瞬、その一瞬を利用して貴虎は飛んだ。

 アイビスを構え撃ち抜いた……精密動作のサイドエフェクトを持っているとある人物ですら不可能な事を平然と成し遂げた。

 みんなのお姉さん!みたいな対応をしていた綾辻も思わず普通の状態に戻っており、ありえないと言いたげな顔をしている。

 

「え、え……え!?」

 

 香取隊の隊室、香取は固まっていた。

 なにが起きたのかが全くと言って分からない。何時もの様にランク戦が開始し、何処に転送されたか何処に向かうか等を確認する。ボーダーでランク戦をしているのならば誰しもが通る道だ。それなのにも関わらず気付けば自分の隊室に居た。

 

「な、なにが……」

 

「……アイビスで撃ち抜かれたわ……」

 

 なにが起きているのかさっぱりで染井に説明を求める。

 染井は香取がアイビスで撃ち抜かれたのだと言えば嘘でしょ!?と驚いた。

 

「…………状況整理をするほんの一瞬の間を……」

 

 バッグワームをつけていないのでどういうことになったかは分かる。

 グラスホッパーを使って地の利を得た。アイビスを構えて……射線に入った香取を撃ち抜いた。

 説明をすれば簡単だ。だが、コレをほんの十数秒の間に成し遂げた。盤面を理解する前にやった。色々な事を考えていたが、染井はありえないと現実を受け入れるのに数秒かかった。

 

「おい、なにがあった!?」

 

『那須隊にポイントが入った!』

 

「まだ開始10秒ぐらいだぞ!?」

 

 いきなり緊急脱出の流星が見えた。諏訪はどういう事だと聞けば那須隊にポイントが入ったと小佐野から連絡が入る。

 試合が開始して十数秒、盤面の整理がある中で貴虎は容易く撃ち抜いた。試合開始早々に落ちる奴は見る時はあるがコレは歴代最速だ。

 

『縦の移動があるからグラスホッパー+アイビスだと思うけど……どうする?』

 

「バッグワームは?」

 

『してないよ……どうするの?』

 

「……他の動きは?」

 

 貴虎がバッグワームを着ていないのは幸いだと諏訪は内心ホッとした。

 今、諏訪の中で貴虎が大きな存在から理不尽にも程があるという認識に変わった。何処に貴虎が居るのかが分かる、それだけでも充分過ぎる……下手に突っ込めば負ける。

 

「三雲の奴はガン無視だ……なにか動きがあれば教えてくれ」

 

 情けない話だが、貴虎には勝てない。

 混戦に持ち込みたいが開幕ぶっぱという恐ろしいことをした。

 

「なにがあった!?」

 

『那須隊に1ポイント、三雲さんに』

 

「なっ……開始して十数秒だぞ!?」

 

 柿崎も香取の緊急脱出の流星を見た。

 開始して十数秒で倒した……転送位置が悪かったのかを聞けば、縦の動きがありアイビスで撃ち抜いたのだと知らされる。

 今まで多くのランク戦を経験したが開始十数秒の間にこんな事をするだなんて!?と自分の想像力を遥かに上回る事をした。

 

『どうしますか?』

 

「……何時も通りって言いたいが……」

 

 何時も通りに合流をしてから堅実な攻めをしたい。ただ……貴虎があまりにも予想外の事をした。

 柿崎はオペレーターの宇井に貴虎の位置を聞いた。物凄い速さで貴虎は動いている。縦の動きがあった事からグラスホッパーを積んでいてそれを使って高速移動をしている……ただ、誰かに近付いているかと聞かれればNOだ。

 

「三雲の奴は……撒き餌か?」

 

 高速で動いて無理に混戦状態を作り出そうとしているのか?

 貴虎を追いかけていけば那須隊と鉢合わせする可能性もある。あえて、他の部隊と遭わせる可能性もある。

 自らを撒き餌にし盤面を無理矢理に作り出す……ただでさえ相手は理不尽な強さをしている。

 

「何時も通り合流だ……ただ、1人ずつの合流だ。全員がバッグワームを起動、俺が最初にバッグワームを消す。虎太郎と合流したら虎太郎がバッグワームを消す、全員が一度に同じ場所に向かわない、それぞれが中継点に向かってくれ」

 

 オペレーターの処理能力に圧力を掛ける。どれだけの効果があるかは分からないが少しでもあるならば試すしかない。

 

「諏訪隊は三雲隊員から離れていますね……」

 

「純粋に三雲の奴がクソ強えからな……倒せる可能性を持ってるの香取ぐらいだけど、香取は開幕で落ちたから相手にしたくねえ感じか」

 

「柿崎隊は合流で……香取隊は……」

 

「……エースが売りのチームは痛いだろうな」

 

 柿崎隊はオペレーターに圧力をかける動きをする。

 香取隊はどうすればいいのかが分からない状況、エースの香取が開幕ぶっぱで倒されてしまった。

 エースが売りのチームでアレをされちゃもうなす術が無い……理不尽の押し付け合いのA級で戦っている米屋だが、あの理不尽はなるべく味わいたくないと思った。

 

「…………おいおいおいおい、マジか!マジなのか!!」

 

「三雲隊員、グラスホッパーで飛びながら口を動かしています……ま、まさか」

 

「誰が何処に居るのかどういう風に動いているのか上から見てるな」

 

 近付かない位置で見える範囲で動いているのをオペレーターの志岐に言う。

 B級隊員は思った……クソゲーじゃなくて死にゲーじゃないのか?と。

 

「炸裂弾の設置は終わったぞ」

 

『玲と合流したわ』

 

『狙撃地点に辿り着きました』

 

『じゃあ、いきましょう』

 

 貴虎はフィールドを高速で移動し、炸裂弾の置き弾を置いた。威力に極振りした炸裂弾をフィールドのそこかしこに仕掛けた。

 日浦は貴虎が設置している炸裂弾を撃ち抜くことが可能な狙撃地点に辿り着いた。那須と熊谷は合流した。那須隊にとって戦いやすいフィールドは作られた。

特別演習

  • 審査する側(上層部)
  • 審査する側(A級と)
  • 試験に参加する側
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