メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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第134話

 

『修くん、OKだよ』

 

「……出てこれるか?」

 

 貴虎が撮影をしている一方その頃の玉狛支部、修は仮想訓練室に入っていた。

 宇佐美から問題は無いと言われれば自分自身の胸に手を当て、自分の中に入っている存在に対して声を掛ける。

 自分の中から赤色の玉が出てくる。砂埃1つもない筈のその場所に無数の砂が落ちては固まり……モモタロスが出てきた。

 

「どうやらここなら問題なく動けるみてえだな」

 

「宇佐美先輩、成功しました」

 

 訓練室に居る間限定だがモモタロスは外に出ることが出来た。

 修はモモタロスが無事に外に出れたのだと報告をすればこっちも問題は無いのだと宇佐美から連絡が入り、小南がモモタロスを見た。

 

「ホントに鬼みたいね……」

 

「鬼じゃねえよ!オレはイマジンだ!」

 

「イマジン?……それでホントにするつもりなの?」

 

「はい……モモタロス、僕の中で見ていたからなにをするか分かるよね?」

 

「ったく……女相手はやりづれえってのに。こういうのはカメの野郎が……いや、余計にダメか」

 

 トリガーを起動している修の中に再びモモタロスは入り、(モモタロス)修になった。

 修は体の感覚はしっかりと残っている、ただしモモタロスが勝手に動かす。修はその時の感覚をしっかりと覚える。

 

「んじゃ、お前には悪いがオレは最初から最後までクライマックスなんでな!変身!」

 

「……修の顔と声で言われたら全然しっくりと来ないわね」

 

「いくぜ!いくぜ!いくぜ!」

 

 レイガストを構えて小南に向かって突撃していくM修。

 明らかに自分の知っている修の動きじゃない、動きじゃないのだが直ぐに強いという事は分かった。修が何をしているかと言えば、モモタロスの動きを何とかして身体に染み込ませれないか、そしてモモタロスに意識を奪われなければモモタロスに身体を預けて頭を使う射手の弾道処理に意識を割くことは出来ないのかの実験である。

 

 メインはモモタロス預けに身体を預けて頭を使う、サブにモモタロスの動きを身につける。

 モモタロスは修のトリオン体で出来る最大限の動きをしている、高い剣術と格闘術を持っているのは修もなんとなく察しており、それをレイジの様なガタイの良い奴や緑川や空閑の様に小柄でスピーディーな奴でなく自分の肉体でやってくれている。体格云々の問題をモモタロスは全く関係無い。

 

「どりゃあ!!」

 

「っ……やるじゃない!接続器(コネクター)オン」

 

 双月を相手にレイガストで数回相手にして小南は直ぐに強い相手だと認識した。

 メテオラを使っての勝負はしない、真っ向からの勝負だ双月を一本の巨大な斧に変えた。小南は双月を横薙ぎに振り払えばモモタロスは前進、あえての前進。小南の双月の大きな横薙ぎを前にしてレイガストであえて突っ込めば小南との間合いを詰めることに成功し、小南を斬った。

 

「なぁっ!?」

 

「どうした?こんなもんか?」

 

「こんなもんか?……見せてやるわよ!今のはウォーミングアップよ!」

 

「なら、さっさとしな!オレは最初から最後までクライマックスなんだよ!」

 

 M修に軽く煽られた小南は今から本気を出すという常套句を出した。

 それがハッタリかどうかなんて関係無いのだとM修は笑みを浮かび上げた。そして小南は先に1本を取られた事で心の垢を落とした。弱いメガネは居ない、目の前に居るのは強いメガネだ。双月を2つに分けた。なにもないフィールドだとどうしても機動力を活かしづらいがそこはベテランのパイセン、何処らへんが壁なのかを覚えているので壁キックを噛まして上を取る。

 

「メガネ、なんか考えてんだろ?」

 

『ああ、コレならいける!』

 

 上から攻撃してくる小南パイセンに対して修はレイガストを入れていないメイントリガーのシールドを起動した。

 それは貴虎にしか使えないと思っているシールドで攻撃を防ぐのでなく動きを封じる通称シャッター、発動のタイミングがスゴくシビアな技であり通常時には使えない。今の修はモモタロスに身体を預けている。思考にのみ特化することが出来ており、シールドを小南のお腹に当たる部分の前に発生し小南はブレーキを踏まされた。それを予測していたのかM修の身体も動く。レイガストをナイフぐらいの刃にして狙いを定める。

 

「必殺!オレの必殺技ボーダーバージョン!パート2!」

 

 レイガストの投擲、お腹にシールドが当てられた結果、ひっくり返る小南パイセンの背中に向かってレイガストが当たった。

 新たなる必殺技の炸裂で小南は貫かれたが……燃えていた。最近は空閑が新しい友達とかランク戦に忙しくてパイセンは割と暇だったりする。燃えるような相手が来たのだと。修の内心はヒヤヒヤ、モモタロスはかかってこいよと暴れられることを楽しんでいる。

 

「嘘よ……ありえないわ……」

 

「っへ、オレにかかればお前なんて朝飯前なんだよ」

 

 5本取って2本引き分けて3本負けた。10本勝負で小南パイセンはM修に対して敗北した。

 基本的には初見殺し系の技を使っていたのでそりゃ勝てないわな……クソゲーメガネであるがパイセンは現実を受け入れられない。

 

「どうだメガネ?オレの動きは覚えたか?」

 

『まだ……ホントに僕の身体で動いてるって感じがしないよ』

 

「オレにかかれば貧弱メガネも最強だ……オレが戦えば大体はそれで解決すんだ。それをわざわざ特訓に付き合ってんだから約束の物を渡してもらおうじゃねえか!」

 

「え、約束?……っちょ、ちょっと!あんた兄貴のトリガーと同じでやっぱりヤバいものなの!?」

 

 モモタロスだけで戦えば大体は済むところを修は更に強くしようとした。

 モモタロスは訓練に付き合う為の代価はしっかりと頂くのだとM修の時点で笑みを浮かび上げ修の中から出た。またしてもなにも聞かされてないパイセンは貴虎のトリガーが出てきたものだからロクでもないものだと慌てており修は生身に戻り……たまにスーパーで見かける一番デカいサイズのプッチンプリンを出した。

 

「おぉ!夢にまで見たプリン!」

 

「……こんなのでいいのか?」

 

 400円ぐらいする一番デカいサイズのプッチンプリンを出せばモモタロスは喜んだ。

 何処からかスプーンを取り出してプッチンプリンをプッチンとし、カラメルソースがかかっている側をてっぺんにして食べる。

 望んだものが食べれるのだとプッチンプリンを喜びながら噛み締めるのだが、こんなのでいいのか?と修は疑問に思った。しかしモモタロスはそれでいいのである。

 

「こいつプリン好きなのね……」

 

「コイツじゃねえ、モモタロスだ」

 

「モモタロス?……変わった名前ね」

 

「テメエだって小南(こみなみ)だか小南(こなん)だかよく分からない名前してんだろ?」

 

「たまにそれで呼ばれるから意外と気にしてるのよ!?」

 

 如何にもな赤鬼の見た目、桃太郎を彷彿とさせるモモタロスと言う名前、いったいなんなのだとパイセンは疑問だらけだ。

 貴虎辺りに聞けばまたロクでもないものが待ち構えている。貴虎のトリガーから出てくる物は基本的にはロクでもない物だとパイセンの中では認識されている。基本的には死ぬか化け物になるのかのどちらかなクソみたいなトリガーなので是非もなし。

 

「で、結局あんたなんなの?」

 

「オレはイマジンだ」

 

「イマジンってタイプのトリオン兵?」

 

「違うな、お前等風に言えば未来人だ」

 

「…………はぁ?あんた、なにを言い出すかと思えば未来人って、どんな風になれば人間がこんな風になるのよ!!」

 

「過去に行くには精神体だけじゃねえと無理なんだよ、そこから契約者を探し……オレ達の未来に辿り着かせる」

 

「……どういうこと?」

 

「パラソルナンチャラとかで違う時間に行こうとする、オレ達が居る時間とは違う時間の流れに向かっている。そいつが良いことか悪いことかは知らねえが時の運行を妨げる奴を倒すのがオレの仕事だ」

 

「パラソルナンチャラ……パラレルワールドのことか?」

 

「時の運行を妨げるって、そんな奴居るの?迅でさえ未来を視れるのがやっとよ?」

 

「この世界じゃな」

 

「……向こうの世界にもタイムマシン的なのはないわよ?」

 

「ちげえよ、オレはこことは違う時間の流れで戦っていた。この世界じゃ時の運行をどうこう出来る奴は数えるぐらいだが、こことは違う時間の世界ではイマジンは居てオレはそいつらと戦ってた」

 

「……待ってくれ、じゃあモモタロスはホントは」

 

「安心しろ、ここに居るオレはその時間のオレじゃない、その時間のオレに似ているオレだ……ホントなら良太郎以外とはあんまやりたくねえが、メガネ、テメエは気に入ってんだぜ?割とフィットするからな!」

 

 モモタロスはホントはやらないといけない事があるんじゃないのか?となるがここに居る自分は違う自分なのは認識している。

 野上良太郎以外とはあまり一緒に戦いたくない、野上良太郎と最後まで戦い抜くという契約を破りたくないと内心思っているのだがそれはそれとして修は気に入っている。

 

「そういうの、修の兄貴は知ってるの?」

 

「んな細かいことはオレは知らねえよ」

 

 貴虎は迅以上に色々なことを知っているが、特に語っていない。語れば語るほどにロクでもない物ばかりであり、何時自分のトリガーで死ぬかどうか分からないデットラインを常に歩いている。モモタロスは貴虎については知らない、貴虎が何処からか何処まで知っているかは分からない。

 

「あいつ、この際だから知ってること全部吐かせようかしら……ん?」

 

「どうしました?」

 

「時間をどうこうする事が出来る奴、居るの?」

 

 モモタロスがポロリと零した時間を操ることが出来る奴が数える程度だが存在している。

 時間の概念を操るトリガーなんて聞いたことがない、と言いたいのだがパイセンは1つだけ思い当たる事がある。

 

「オレの嗅覚を舐めるなよ、メガネのお袋さんとメガネ兄貴とあの女は時間を操れる」

 

「おばさんが時間を止めれるのは知ってるし、修の兄貴ならまだ納得出来るけど……あの女って誰よ?」

 

 時間を止めることが出来るクロノスに変身した香澄を見ているので時間を操るトリガーは納得が一応はいくものだ。

 そしてそれを手に入れて使いたいのだが使うに使えず隠し事を叩けば叩くほどにヤバいものが出てくる貴虎も一応は納得が行く。

 しかし、ここに来て全くと言って知らない人物が出てきた。あの女と言われてもパイセンはピンと来ない。

 

『うわ、っちょ!!』

 

「宇佐美先輩?」

 

 あの女が誰なのかを聞こうとすれば急に部屋に通信が入った。

 なにかに慌てているかの様な声であり、なにかが起きているのだと修は疑問に思っていると

 

『グルゥオウ』

 

 犬の鳴き声が入った。

 

「い、犬!?犬は勘弁してくれ!!」

 

 犬の鳴き声が入ったことで慌てるモモタロス、光の球に切り替わったと思えば修……ではなく、小南パイセンの中に入った。

 慌てているので修でなく小南の中に入った。突然の出来事である為に修は小南パイセンが大丈夫かどうか聞こうとした。

 

「桃の字、相変わらず犬が苦手やな」

 

「……小南、先輩?」

 

「修、なんや宇佐美が大変な事になっとるみたいやから見に行かんと!」

 

 明らかに風貌が違う小南パイセン、中に入ったのはモモタロスの筈なのにモモタロスとは別の存在が入っているんじゃないのかと疑う。しかし、宇佐美がなにか大変な事になっている可能性があるのでそっちも確認しないといけないのだと仮想訓練室を一旦出てオペレーターのデスクトップで色々と周辺機器の操作をしている宇佐美のもとに向かった。

 

「宇佐美先輩、大丈夫ですか?」

 

「あ、うん……」

 

「なんかあったみたいやけど、なにがあったんや?」

 

「え、小南?」

 

 椅子から転げ落ちている宇佐美が居たので大丈夫かを聞けば大丈夫と怪我が無いことをアピールする。

 しかしさっき慌てていた声を出していたのでなにかがあったのだと思ったので小南の中の人が声をかければ宇佐美は小南だけど小南じゃない!と直ぐに察した。

 

「桃の字、犬にビビってもうて引っ込んでもうたからな。代わりに俺が出たんや」

 

「え〜っと……修くんの中に入っていたモモタロス?じゃないよね?」

 

「俺はキンタロスや……俺はさておいて、なにがあったんや?」

 

「それが……えっと……アレ、なんだっけ。知ってるんだけど思い出せない、犬は犬なんだけど犬じゃない犬が入ってきて」

 

 キンタロスが憑依した小南、K小南が宇佐美になにが起きたのかを聞けば犬が入ってきたことを教える。

 ただの犬じゃない犬が入ってきた、宇佐美はアレは知っている犬だけども名称が思い出せない。アレの名前を言えば分かるのだが、アレの名前ってなんだっけ?な状態に入っており上手く言葉にして表せない。

 

「アレやアレや言われても、犬は犬やろが?」

 

「そうなんだけどそうじゃなくて……ヤバい完全に名前を思い出せない……」

 

「宇佐美先輩、キーボードの上になにかありますよ?」

 

「え、ホント?」

 

 正式名称が思い出すに思い出せない宇佐美、なにがどう違うのかを聞く前にキーボードの上に一枚の紙が置かれていた。

 さっきまでこんな物は無かったのに、ここにあるという事はさっきの犬が置いていったのだと置かれている紙を拾った。

 

「【余計な詮索はしないでほしい】…………どういうこと?」

 

 1枚の紙に書かれていたのは余計な詮索をしないでほしい、ただそれだけだ。

 余計な詮索をするなと言われていたが、具体的にはなにが余計な詮索なのかが分からない。

 

「……さっきの話を聞いてた?…………犬……そういうことか」

 

「修くん、なにか分かったの?」

 

「はい……踏み入れちゃいけないところまで詮索していたみたいです」

 

 余計な詮索がなんなのかと考え先ほどまでしていた会話から振り返る。

 小南があの女が誰なのかについて聞こうとしたので……踏み入れてはいけない詮索してはいけない事をしているのだと警告に来た。

 

「キンタロス、モモタロスが言おうとしていた事は言ったらダメだよ」

 

「なんでや?桃の字の鼻が確かなら、時の運行をどうこう出来るやっちゃで?」

 

「そういう危ない要素が色々とあるから深く追求しちゃダメなんだ」

 

 深く干渉する思いやりや優しさもあればあえて関わらない関係性もある。

 今回の一件は基本的には向こう側からアクションを起こさない限りは関わってこない関係性であり、モモタロスがあのまま会話を続けていたら余計な事が色々と発覚していた可能性が高い。

 

「ほんなら、特訓再開やで修!今度は俺が小南の身体使ったるわ!」

 

 犬がなんなのか分かったが、触れてはいけない部分だった。特訓再開だと今度はK小南が相手、K小南はトリガーを手にした。

 

「ええか、修。強さにも色々とレベルがある。俺の強さは泣けるでぇ……変身!」

 

「……さっきの感覚を忘れるな……」

 

 モモタロスが中に入って小南を相手に勝っているのを身体に文字通り叩き込んだ。

 小南の体を借りたキンタロスを相手に修はさっきの感覚を忘れちゃいけないとレイガストを構えてアステロイドを出現させる。

 アステロイドをK小南に向かって飛ばすがK小南はシールドを展開する。修は単騎の場合で戦う場合は色々と工夫をしないといけない、そうじゃないと同格の相手ですらまともに相手にならない。アステロイドで攻めたのは間違いだと言わんばかりにK小南がジャンプし双月を振り下ろす。

 

「ダイナミックチョップ!」

 

「っ!」

 

「桃の字の動きはそないな動きやあらへんやろ……修、お前の身体で出来たことや。せやったらお前でも出来る筈や」

 

 双月を振り下ろして修は真っ二つにされるが仮想訓練室なので直ぐに復活する。

 K小南はモモタロスの動きじゃない動きをしている、モモタロスが憑依した動きは修にも可能な筈だと言う。

 今、修がやっているのは単騎で強くなる特訓だ。勿論、隊長としての務めは忘れていない。勝てる戦術は考えているのだが単騎になれば弱い、それは嫌でも思い知っている。先ほどまではモモタロスが動いてくれていたが、モモタロスが出ていけばK小南を相手に手も足も出ない状況だった。

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