「修」
「コレは……DVD?確かコレって前に実写化した漫画のアニメだよね?」
「実写化と同時にアニメ化もしてる物だ」
遠征選抜試験の前の試験について私の口から言えることは少ない。
迅が言うには隊長にしようが隊員にしようが問答無用のぶっちぎりの1位のチームになってしまうからと戦闘試験にのみ参加させられた。ボーダーの現在の戦力の確認をしないといけないのに、まだ戦闘能力しか分かってない私の他の能力を試験しなくていいと思ったが、代わりに日浦が参加しなくていいことに決まった。
まだ上から遠征選抜試験の前の全員で受けるボーダーの現在の主戦力の確認を行うメンバーの選定すら始まっていない。
今の内にやれることをやっておくかと玉狛支部に向かってDVDを渡せば、なんでコレを?と言う疑問を修は持った。
「修、お前達玉狛第二は遠征試験を受ける資格を手に入れた。だが、分かっていると思うがお前のスペックはB級上位にすら相応しくない」
「うん、分かっているよ」
「だがあくまでもそれは戦闘能力に限った話だ。ただ単純に戦闘能力が強い者だけを乗せても冒険は出来ない。優れた分析能力や交渉技術、物怖じしない精神力……戦闘能力以外にも色々な所で採点される。戦闘の方を捨てろとは言わない。だが、お前が選抜試験に合格するには戦闘能力以外で役立つことをアピールする。上はそこも採点をする……玉狛第二でこのDVDを一度見ろ。それが私が今のお前に出来る最大限のフォローだ」
修は実力的にはB級下位のレベルだ。
仮面ライダージョーカーになればある程度は戦える。ジョーカーとして戦い続ければハイドープになればパワーアップするだろうが、それは黒トリガーの性能に頼っていて基本的な戦闘能力が足りなくなってしまう。特に仮面ライダージョーカーは感情1つで全てを乗り切るとんでもない性能を秘めているジョーカーメモリで変身している仮面ライダーだからな。
千佳ちゃんの様なトリオン怪獣で、トリオンに物を言わせた戦術をしてはいけないとは言わない。
トリオン能力やサイドエフェクトはガチャ、才能だ。だがその才能に怠けて本来は覚えなければならない技術を無視する。
ボーダーの何度も戦えるシステムを利用し、自分の何がダメでなにをどうしないといけないかの欠点を見抜いて少しずつ強くなる。
修には遊真の事もあるから時間が残されていない。ガイアメモリで遊真の体を治せなくはないが、遊真の体にかかる負荷が大きい。
「この話を見て、少しだけ頭に叩き込んでおけ……コレはしっかりと役立つ筈だ」
私はそう言うとバイクに乗って玉狛支部から本部に戻る。
修は中に入っているDVD……宇宙兄弟の宇宙飛行士選抜試験の1つである閉鎖空間での試験の話が入っているDVDを見つめた。
※
「と言うわけで、僕達は今からコレを見ようと思うんだ」
貴虎が去っていった十数分後に玉狛支部の面々が集まっていた。
修は貴虎から貰った宇宙兄弟のDVDを見せて、コレを見ていたら役に立つという話をした。
「まったく……あの子は修に甘いんだから」
宇宙兄弟のDVDを見た香澄は呆れている。
貴虎が持ってきたDVD、宇宙兄弟の内容について大まかに知っている。その内容は玉狛第二にとって役立つ物だと即座に見抜き、貴虎に修に力を貸すなと釘を差してはいるが、それでもお兄ちゃんだから弟には甘くて力を貸していると気付いた。
「それにはなんの映像が入っているんだ?」
「コレは確か……宇宙飛行士の話だったよ」
DVDを見て映像が保存されている物なのは分かったが、なんの映像が保存されているかはヒュースは知らない。
千佳がぼんやりとだが覚えている宇宙兄弟の話を言えば遊真は首を傾げた。
「なんでそんなもんをオサムのお兄さんは渡してきたんだ?」
「メロンくん、やっぱ反則だな」
宇宙飛行士の話が入っているDVDを持ってきたのがよくわかっていない遊真。
迅がこれから起こりうる未来を視た。貴虎は答えが分かっているから1%でも可能性を上げる為に宇宙兄弟のDVDを持ってきた。100話全部でなく、宇宙飛行士選抜試験の閉鎖空間の試験の話をだ。
それを見るのか見ないのかで玉狛第二の遠征の未来が大きく変わる。
悪い方向ではない、むしろ良い方向に向かっている。遠征選抜試験の前の主戦力の能力確認の話は迅は上から聞かされている。予知を含めて大まかな内容を何となくで見えている。それを直接的に言うかどうかは悩んでいたが、貴虎は間接的なアドバイスを送ってきた。
直接的なアドバイスでなくアニメという凄く分かりやすい物でアドバイスを送ってきた。
「ヒュース、僕は玉狛第二のお荷物か?」
「直接的な戦闘力としては話にならん」
「ちょっと、言葉を選びなさいよ!」
修はヒュースに自分が玉狛第二のお荷物かを聞いた。
ヒュースは一切の迷いなく、戦闘力では話にならないと言った。小南パイセンは言葉を選べと怒っているが、言葉を選べなので戦闘力が低いのは認めている。
「勘違いするな。戦闘力が低いのであって、戦闘能力は低くはない……」
「む?なにがちがうんだ?」
「1対1の戦闘になった際にはオサムは役立たない。だが多数での戦闘になった時にはオサムは戦闘で相手を倒す以外の何かしらの働きをすると言うことだ」
ヒュースは修の戦闘力は低いと見ているが、戦闘能力はあると見ている。
意味が少し分かっていない陽太郎に軽く説明をすれば修は玉狛支部のDVDプレイヤーに宇宙兄弟のDVDを入れた。
「普通、こういうのって1話からじゃないのか?」
「2年ぐらいやってたアニメだから1話から見ている時間が無いわよ」
宇宙兄弟のDVDは1話からじゃなかった。
烏丸が少し気になったが、ゆりが1話から見ている時間が無いと言った。取りあえずはと再生をすれば主人公の南波六太が宇宙飛行士選抜試験を受けていて、閉鎖空間での試験を受ける話だった。
何故ここからなのか?と言う疑問を抱きつつも宇宙兄弟を見た。
真っ白な閉鎖空間で2週間程過ごしていく。限られた食料、与えられた細かな課題、そしてアクシデントを起こさなければならないグリーンカード……
「なるほどな」
遊真は何故貴虎がこの部分だけ持ってきたのかを宇宙兄弟を見ていく内に納得をした。
ヒュースも宇宙兄弟のこの部分だけを持ってきたのかを納得した。
『兄殿は教材を渡しに来たのだな』
「教材……遠征選抜試験に必要な物か」
『そうだ。遠征は優れた戦闘能力を持った人間だけを乗せて成し遂げる事は出来ない。判断能力等も試されている。B級1位になったとはいえ、まだまだ玉狛第二は戦闘面は荒く足りない要素が多い。特にオサムは……兄殿はオサムに戦闘力以外のアピールする場面が来るのと、こういうことが起きる可能性があると予習をさせてくれたのだろう』
宇宙兄弟の宇宙飛行士選抜試験の閉鎖空間での試験内容を見てレプリカも納得した。
修は遠征選抜試験に必要な物や起こり得る展開等が宇宙兄弟を通じてなんとなくで読めた。
「……ありがとう、兄さん。少しでも力をつけるよ」
修は戦闘力ではB級1位には相応しくない。それは自分自身が嫌になるほど分かっている。貴虎程の戦闘力は無い。
1%でも可能性を上げようと宇宙兄弟の宇宙飛行士選抜試験の話を頭と心にたたき込んだ。
※
「よぅ、待ってたぞ」
「……なんですかこのダメな大人の集まり的なのは」
本部に戻った貴虎は東に呼び出された。
何事かと思って呼び出された所に向かえば太刀川、東、唐沢、諏訪が麻雀卓を囲んでいた。麻雀卓の上には麻雀牌があったのでなんだと聞いてみた。
「なに、ちょっとね……君も既に聞かされているが、ボーダーの主戦力がどれほどの物なのかを測る為の試験を行う」
「聞いてますけど、営業とか外務担当の唐沢さんがなんで」
「まぁ、一言で言えば賭け麻雀だよ」
試験の話をすればなんで唐沢が居るんだと聞いた。唐沢はスゴくざっくりと賭け麻雀である事を伝えた。
貴虎はなにやってんだこいつら、と同時に麻雀卓には座っていないが真っ白になっている諏訪を見つめた。
「金はマズいっすよ」
「いやいや、金は賭けてないよ……賭けているのは肉さ」
「肉?」
「試験は閉鎖空間で行って食事が限られていてね。試験が終わったのならば豪勢に焼き肉と言いたいんだが、流石に人数が人数だけに店を貸し切りにするのも難しいからボーダーですることにしたんだ。内容は勿論、焼肉だ」
「……その肉の代金はボーダーで出してくださいよ」
「いやぁ、最近肉屋直営の高品質な肉が置いているスーパーが三門市にも来たが人数が人数だけに結構な額になるのでね……野菜や米なんかの代金は出すが肉の代金は、隊員から巻き上げようと」
金を賭けているのはまずいと貴虎は指摘するが、金ではなく試験の打ち上げの焼肉の肉代を賭けていると答えた。
それぐらいはボーダーで出せよとハッキリと貴虎は言ったのだが、人数が人数だけに結構な額になるので予算を出し惜しみした。そして麻雀が出来る奴から肉の代金を巻き上げようと言う魂胆である。
「主任さんよ、出すものは出してもらおうじゃねえか」
「私はまだまともに給料を貰っていないんだが……と言うか麻雀のルールが」
「なに、簡単だ」
麻雀なんて簡単だと言うおじさんほど、麻雀のルールを詳しく教えてくれない者は居ない。
しかしここには麻雀については熟知している面々も居るので基本的なのを丁寧に教えれば貴虎はなんとなくで覚えた。
「まぁ、取りあえずは1回やるから見とけ」
諏訪はそう言うと麻雀が始まった。
諏訪、唐沢、太刀川、東の順で配牌をしていく。最初の配を諏訪は手に取った。諏訪はなにを出すのかを考え……
「うし、先ずは様子見だな」
中の配を出した。
「「「ロン!」」」
「え?」
中の配を出して先ずは様子見としたが、唐沢達はアガリだとロンと叫んだ。
「大三元!」
東は大三元だった。
「四暗刻単騎!」
太刀川は四暗刻単騎だった。
「国士無双!」
唐沢は国士無双だった。
3人のアガリを見て諏訪は顔を真っ青にした。唐沢は1枚のメモ帳を取り出して諏訪が購入しなければいけない肉のグラム数を書いた。大規模侵攻とガロプラの戦功がパーになる額だ。
「身包み剥がされた……主任、俺はもうダメみたいだ。敵を討ってくれ」
「いや、私が勝ったとしても諏訪さんの負け分は無くなりませんよ?」
「こんなトリプル役満なんざありえるか!こいつら絶対に仕込んでやがる!お前のサイドエフェクトはギャンブルにも使えるって噂だ。見せてくれよ!お前のサイドエフェクトを!」
諏訪は敗北を受け入れたが敵を討ってくれと貴虎に頼んだ。
貴虎のサイドエフェクトならばそういうことは出来るには出来るのだが……他の3人は肉の代金を出すまいと死ぬ気で戦っている。それを見た貴虎は主任の自分が出ないのはいけないなと諏訪の代わりに麻雀卓に座った。雀牌をかき混ぜる。4人は注視している。
「お前のサイドエフェクト、お手並み拝見といこうじゃないか」
「初心者だからな。考える時間はやるよ」
東と太刀川はそう言ったが警戒心を強めている。
貴虎からの配牌で始まり貴虎は配を手に取った……そして無言を貫いた。
「どうした?」
「確かコレはロンじゃなくてツモだったか?」
貴虎は麻雀牌を倒した。
貴虎の麻雀であがるのが特に難しい九蓮宝燈を、一番最初の配牌で行う所謂天和を行った。
「はぁ!?九蓮宝燈の天和だと!?」
「天和ですら白いカラスに遭遇するぐらいの確率なのに、九蓮宝燈だなんて……やったなお前」
「生憎だが、私にそういう勝負を挑みたいというのならば腹は括れ」
九蓮宝燈の天和と言うあまりにもありえない物を叩き出したので太刀川は驚いた。
東は確率的にありえないと見て貴虎がイカサマをしたのだと見抜いた。貴虎はイカサマをしたとは言わないが、そういう勝負ならばと眼鏡を外した。貴虎の天和で終わったので再び配を混ぜる。入念に混ぜ終えた。
唯一の外野である諏訪は貴虎の動きを観察していた。
配を並べて二段にする際に……貴虎は二段目の配を一段目の配に乗せる際にわざと完璧に乗せなかった。少しズレて乗せた。そしてそれを親指でなぞりながり正しい位置にした。一見、麻雀初心者だから麻雀配を正しく乗せられなかったという物に見えるが、違う。麻雀配の端っこを盲牌で見抜いた。上山のツモを見抜いた。
流石に初手天和九蓮宝燈は疑われると言うか普通にイカサマだが二連続は無い。
公式な大会では無いしバレなきゃイカサマはセーフ。唯一の外野の諏訪は貴虎の配牌を見て悪くはないなと思っていると貴虎は動く。
山を動かして不要牌と必要な山牌をこっそり入れ替えるキャタピラと呼ばれるイカサマをコンマ5秒でやり遂げる。
諏訪は熟練の動きすぎんだろと思ったがツッコミを入れない。
「え〜っと、
「麻雀じゃ
唐沢が西を捨てた。
貴虎は自分の配と見比べながら動く。左手に不要配を隠し持ち、太刀川が捨てた四萬の配と入れ替えた。コレもまた目にも止まらぬ早業。
「唐沢さん、ロンです」
「……なっ!?」
「四暗刻単騎でしたね」
貴虎は目にも止まらない速さでキャタピラ等のイカサマを行った。
気づいた頃にはイカサマば終わっていて、四暗刻単騎で唐沢を追い詰める。
「うわ〜えっぐ……」
ギャンブルに強いサイドエフェクトなのは聞いていたが、イカサマが出来るのは知らなかった。
一瞬の内に見せた数々のイカサマを見た諏訪はあまりにも華麗であまりにも巧妙でコイツはギャンブルの初心者か?博打の才能ありまくりじゃねえかと思った。
特別演習
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審査する側(上層部)
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審査する側(A級と)
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試験に参加する側