メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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第17話

「待ちなさい、それで行くつもりなの?」

 

 クリスマスはかなり楽しくすごし、大晦日には美味しい年越し蕎麦を頂き、除夜の鐘を鳴らす人を決めるくじを当てたり、親戚に挨拶をしたりと楽しい年末と元旦を過ごした。

 今日は1月2日、三ヶ日はまだ終わっておらず終業式に交わした約束を果たすべく早起きしたのだが母さんに止められる。

 

「やっぱり、白はダメだと思う?」

 

「そういう問題じゃないわよ」

 

「兄さん、流石にそれは……三ヶ日だし、着物はどうかな?兄さん、着物が似合うよ」

 

 親類に酔い潰されて眠っている父さんは玄関前にはいない。

 父さんの二日酔い対策のなめこの味噌汁を作っていた母さんと、正月だからって怠けない生真面目な修は私の服装を見て、止める。

 

「着物……着物か……」

 

 これから米屋や三輪達と合流して初詣に行くのだが、誘ってない人達や会ったことの無い人達(原作キャラ)に会う(確定で)。

 別に服装なんてどうでも良い。百錬自得の極みと書かれたトレーナーを着ていき、米屋に爆笑されようが割とどうでも良いのだが、着物となると少し考える。別に好きでもなんでもないが、何故かあるんだよな着物。

 顔が手塚国光なせいか、無駄に似合う。しかし、高確率で成人に間違えられる。老け顔よりも童顔の方が良いと思うのは20歳児に失礼かと靴を脱いで着物に……具体的に言えば、グリーティングカード(2019)で手塚国光が着ていた茶色の着物へと着替える。

 

「あ、これ昨日渡し忘れたお年玉よ。

一部は今回の競艇の代金に回しているけど、使いすぎたらダメよ」

 

「分かってるよ……最悪増やすし」

 

「兄さん、あんまりやり過ぎると脱税の容疑がかけられるんじゃ……」

 

「北海道にふるさと納税はしている。問題ない……冗談だ」

 

「真顔だと、冗談に聞こえないよ!」

 

「全く、誰に似たのかしら」

 

 そういう意味じゃないんだけどと修は冷や汗を流していたので、気持ちを楽にさせるべく冗談だと言ったのに内心ビクビクだ。

 修もどちらかと言えば大爆笑して大きく口を開けて笑ったり、物凄くガッツポーズをして叫ぶ米屋や出水の様な騒がしいのが好きなタイプではないのに、どうして冗談を見抜けないのだろうか?

 

「少なくとも、老け顔は誰の遺伝でも無いのは確かだと思う」

 

「安心しなさい、最低でも残り20年はその顔よ」

 

 老け顔も考えようによっては若く見せる道具になる。

 顔と年齢が最も合わない女性が言うことは深いと感じ、私は家を出て初詣に向かう。因みにだが、既に競艇で賭けといてと今日当たる大穴に○をしている。

 

「新年、あけましておめでとうございます。本年度も、よろしくお願いします」

 

 何時もは蓮乃辺方面だが、今年は三門市方面での初詣。

 道を間違えないかと少し心配だったものの、迷子になることなく待ち合わせの場所についた。だが、着物に着替えていた時間が思ったよりも長かったようで、米屋と出水は先に来ていた。

 遅刻はしていないし、とりあえずは新年の挨拶をするのだが二人は固まっていた。

 

「……着物、変か?」

 

「いや、逆だ逆」

 

 着物の私に対して、出水達は私服。

 明らかに浮いているのは確かなのだが、そこを気にしていない出水と米屋。

 

「なんだろ……オレ、今少しだけ嵐山さんの後ろを歩く佐鳥の気持ちが分かる」

 

「キャーキャー言われている嵐山さんの後ろを歩く佐鳥って、こんなに辛かったのか」

 

 絶望にまみれた表情で俯いて何度か私を見る。

 普段は老け顔を弄られる私も今日ばかりは話は別で、この老け顔のお陰か着物が人一倍似合っているようだ。そのせいか、この二人は私服で来てるオレ等ってなんだろうと落ち込みまくっている。そして佐鳥は本人が知らないところで物凄く同情をされていた。

 

「こっちの初詣に来るのは、はじめてだが……最早、祭りだな」

 

「初詣は祭りだろ?」

 

 神社の境内が大にぎわいをしているのは何処でも見るが、道路を封鎖しないといけないレベルは中々に見ない。

 神社の外にある露店を合計した面積の方が神社よりも大きい。私のサイドエフェクトがそう言っている。それと、初詣は祭りではなく参拝する行事のはず……めでたい日ではあるが。

 

「ん、あれ影浦さんじゃね?」

 

「あ、言われてみれば影浦先輩だ」

 

「ゾエさんとヒカリと……誰かは知らんが、知り合いが居るところを見ると影先輩だな」

 

「絵馬ユズル、確か影浦さんとこのスナイパーだ」

 

「出水、その言い方だと、殺し屋に聞こえる」

 

「三雲、今のお前が言うと洒落にならないからやめてくれ」

 

 それはどういう意味かと小一時間ほど出水と話し合いをしたいが、我慢我慢。

 今は屋台でお好み焼きを焼いている影先輩とヒカリ達を見て心を和ませて熊谷達を待つ。

 しかしまぁ、タオルで頭を巻いている影先輩、影先輩だと分かり辛いな。ギザギザな歯が無いと気付かない人もいそうだ。

 

「米屋、クリスマスとか年末どうだった?」

 

「あ~お年玉無しから半額に変えることに成功したわ。

半分はなんか強制的にお年玉貯金に回されることになっちまったが、諭吉は手に入れた」

 

「それを倍以上に増やす方法があってだな」

 

「マジ!?

お正月だから羽目外し過ぎるなって財布差し押さえくらってんだけど、そんな夢の様な方法が」

 

「おいやめとけよ。

おれ、こういう時にロクな事が起きないの知ってんだぞ」

 

「失礼な……競艇に賭けるだけだ」

 

「まごうことなき、ロクな事じゃねえじゃねえか!」

 

「いやでも、これが当たるんだ。今日、数百倍のオッズの大穴が当たると出ている」

 

 諭吉は賭けていないものの、それが当たれば数十万が一気に手に入る。

 米屋に年始の一回だけの競艇の楽しさとスリリングを教えるのだが、出水はそれはマジでダメな奴だと言って止める。ははーん、さてはお前はカジノ派か。他人に任せるのでなく、自分でしないと気がすまないタイプだな。だが、カジノが出来る様になるのは下手すれば10年以上先だぞ。

 

「クリスマス、ヤバかったぞ。

防衛任務の後にボウリング大会があってよ、そこでデートしてるレイジさんって人に会ったんだけどパーフェクトを達成したんだ」

 

「女性に花を持たせろよ……遅いな」

 

「熊谷達、着物で来るらしいぞ」

 

 クリスマスは年末どうだったの話題は割とあっさりと尽きた。

 私がそこまで話していないから、まだまだ話題は残っているのだがそこは割愛。女性陣が着物で来るし、新年の挨拶回りとかボーダー隊員は忙しそうだ。

 

「なんか何時の間にか影先輩のところでヒカリが手伝ってるな」

 

「影浦さん、こういう場所が苦手だから上手く接客できなくてヒカリが「ったく、しかたねえな。カゲはアタシがいないとなんも出来ないんだから」って言って手伝ってるだけだろ」

 

 いっそのこと影先輩のところに食いに行くかとなり、チラリと見るとなんかヒカリが働いていた。

 その状況について米屋が物凄く分かりやすく尚且つ想像しやすいとても丁寧で適切な説明をしてくれた。本当に、分かりやすく秒で想像できる。

 

「……強面でぶっきらぼう、でも料理の腕は確かな夫とがさつでサバサバしているものの愛想とルックスは良い妻の中々にバランスの取れた夫婦が営んでる」

 

「やめろ!!新年早々、とんでもない事を言うんじゃねえ!!若干、想像しちまったじゃねえか!今のところ野郎しかいない、おれ達の年始が凄く辛いものじゃねえか!!」

 

「「と、思うじゃん?」」

 

 影先輩か尊い存在に見える中、段々と惨めになっていく出水。

 確かにキャッキャウフフと影先輩とヒカリはお好み焼きを売ったり、接客している。黙っていれば美人のヒカリとワイルド系の男性としてみればクールでカッコいい影先輩の組み合わせは中々である。

 だが、それとこれとは別である。惨めな気持ちになっているのは出水だけで、私と米屋はそこまでであると携帯を取り出す。

 

「栞経由で何人かと会ってんだよ、オレは」

 

「私は可愛い年下の女の子(弟の幼馴染み(意味深))がいて近所のイケメンお兄さんだ」

 

「ざけんなよ……特に三雲!

お前、頼れる近所のお兄さんポジを持っているのかよ。どう見てもおじさんだろ」

 

「諦メロン……来たか」

 

 私は千佳の、米屋はいとこ(宇佐美栞)の写真を見せつけて出水を絶望へと落とすと主役がやって来た。

 着物姿がとても似合い見るものの心を虜にする那須、熊谷、日浦、小佐野……がナンパとかされない為に囲む様に守っている三輪、那須のいとこで三輪と同じ部隊のたけのこ王子こと奈良坂、着物姿の太刀川(さんはいらん)、そして無駄に男前で高性能……しかし、身長が160cm以下の男、否、漢の風間さんがいた。

 

「……あ~……」

 

「風間さんも来たんすか?」

 

「なにか問題でもあるのか?」

 

「いや、意外だなって。

おれ、太刀川さんが来るのはなんとなく分かってたんですけど、風間さんは諏訪さん辺りと行くんじゃないかと思ってて」

 

「諏訪なら、昨日一気に羽目を外してて潰れている。新年早々とはいえ、はしゃぎ過ぎだ」

 

 なんと言えば良いのか、物凄く凄い絵面になっている。

 太刀川でも奈良坂でも三輪でもなく、風間さんが先頭に立って那須達を導いておりどう反応すれば良いのかが分からない。出水や米屋にとっては日常茶飯事の様で、風間さんが来たことに驚いているだけで、来た理由を聞いて。

 

「お前が三雲か。

米屋や出水、それに太刀川から色々と聞いている。風間蒼也だ」

 

「三雲です……」

 

「そう固くなるな。

確かに、目上の初対面の相手だがある程度は緩くても構わんぞ」

 

「あ、はい」

 

 背丈さえあれば完璧な男だ、この人は。

 予想外の人物の遭遇した為に固まるのだが、直ぐに冷静になり何時も通りになるのだがそういえば今回が初対面な奴はもう一人と奈良坂を見る。

 

「奈良坂だ……米屋が、なにかとすまない」

 

「三雲だ……ボーダーの偉い人にそういう感じの部署作らないか提案してくれ」

 

 出会って早々に謝られたのは予想外だが、一言だけは言わせてもらう。

 本当にボーダーにそういう感じの部署を作っておかなければ何時か大変な事になってしまう。遥か未来は見れないが、少なくともその未来が確定している気がする。

 

「三輪、太刀川さん、新年あけましておめでとうございます。本年度もよろしくお願いいたします」

 

「ああ、よろしく」

 

「お前、貫禄半端ねえな」

 

 初対面の人への挨拶を終えたので、次は顔見知りの野郎に新年の挨拶をする。

 何時も通りの私服の三輪は友人としてよろしくと返事してくれるのだが、太刀川さんは私を見て笑う。

 

「那須、熊谷、日浦、小佐野。

あけましておめでとうございます。今年もよろしく頼む……それと、似合っているぞ、着物姿」

 

「三雲くん、皆まとめて褒めるの?」

 

「どうしろと言うんだ?」

 

「そこは一人一人褒めないとダメですよ!」

 

「おい、あいついきなり囲まれたぞ。出水、どうする?処す?処す?」

 

「いや、それよりも面白いもんを思い浮かべたぞ」

 

 三輪達への挨拶を終えて、次は女性陣。

 しかし、まとめて褒めたので日浦が両頬を膨らませてプンプンと怒ってしまった(可愛い)。これ一人一人、何処がどう似合っているのか言わなければならない展開が来てしまったのかと思ったら出水から救いの手(毒手)が差し伸べられる。

 

「着物なんて早々に着るもんじゃねえし、何枚か写真に納めようぜ」

 

「嫌だ、断る。私は写真、絶対に撮られたくない」

 

 ロクでもない事を考えていそうな出水だが、写真を撮るのならば如何なる理由であろうとも断る。

 サイドエフェクトが原因とかそういうのじゃなくて、単純にカメラを向けられるのが嫌いだ。フラッシュでチカチカするとか、そういうのはない。トリコのココの能力という名のサイドエフェクトだからか、今さらカメラの発光がキツいとかは無い。

 

「太刀川さんと一緒に並んで撮ってみろって」

 

「お前、最初からそれが狙いか」

 

「視界から風間さんを消しても、違和感……いや、太刀川さんの方が幼く見える」

 

「そういうのは毎年やっているからもういい!!それよりも、お参りに行くぞ!」

 

 これ以上はこの顔で弄られるのはごめんだ。

 若干怒りながらも私は前へと進み、賽銭箱がある場所に向かおうとするのだが風間さんが袖を掴む。

 

「三雲……それは大人だと周囲から見られているんだ、恥ずかしいことでもコンプレックスでもなんでもない。

むしろ、若く見られる方がコンプレックスになる時も多い。老け顔はこれから先もその顔で程よくキープ出来て実年齢よりも若いですねで済むが、童顔はそうはいかん」

 

 深い、風間さんが言うことによって深みが増している。

 新年早々に初対面の人へフォローを入れられて、なんだか言いようがない気持ちになり今年は厄年かなにかかと全員で足並みを揃えて賽銭箱にお金(私は100円)を入れて、お参り。

 これから起きる大規模侵攻とかは自力でどうにかしなければならず、学校関連もそれなりに上手く行っている……あれ、なにを願えば良いんだ?強くてニューゲームをしていて、お金には困っていない。背丈とか恋の悩みとかもない。修と千佳が早くイチャつく関係になれと毎年願っているが、今年はどうあがいても無理っぽいし、なにを願えば良いんだ?

 

「三雲、どうしたの?」

 

「いや、なにを願えば良いのか改めて思い浮かばなくてな……小佐野はなにを願ったんだ?」

 

「え!?……そ、そう言うのは言ったら叶わなくなるから教えないよ」

 

「そうか」

 

「なんだなんだ、愛しいあの人とのでヴぁ!?」

 

「太刀川、少し黙れ。

三雲、大きな願いは自分の力で叶えるものだ。こういう時は細やかな願いを願えばいい」

 

「そうですか……じゃあ、コンビニで貰える小さい方のストローにも曲げれる機能をつけてくださいにしておくか」

 

 余計な事を言う太刀川さんに蹴りを入れる風間さんから助言を貰えたので、細やかな願いを願った。

 頼むから曲げる機能をつけてください。大きいサイズのやつの曲げる機能は地味に便利で小さいのにも欲しいんだ。

 改めて願い事を願い終えると、次はおみくじだとくじを引きに行こうとするのだがなにかを思い出した太刀川さんに肩を掴まれる。

 

「生ハムメロンの炒飯くさや汁仕立てとくさやとフリスクの炒飯、ゴマだれ仕立てってどう思う?」

 

「なに言ってんだ、あんた?」

 

「イチゴジャムの焼肉とアーモンド炒飯を今年は食わせたい奴がいるんだ、協力してくれ」

 

「嫌です」

 

 これもまた面倒な事になると私は回避する。

 というよりは、なんだその絶妙なまでに微妙な味になる不味いとハッキリ言えない中途半端な炒飯は。アーモンドとイチゴジャムって、そこそこ美味しいぞ。炒飯だと思わずに食えば、案外食べれそうだ(大博打)。

 太刀川さんを無視し、おみくじを引き終えた後、神社を出て影先輩達がいる出店の屋台のエリアに行こうとするのだが那須が止めてくる。

 

「この人数で遊んだら混雑するし、皆行きたいものもバラバラよ」

 

「そうですね!奈良坂先輩の言うとおり、ここはグループ分けしましょう!!」

 

「日浦、それ次の台詞だ」

 

「え、あ……すみません」

 

 この人数で一ヶ所に固まっても、周りの迷惑になったりする。

 行きたい店とかそういうのも違うし、最もらしいことなのだが先走った日浦がミスを犯してしまう。

 

「……玲の言うとおりだ。

俺、出水、三輪、米屋、風間さん、太刀川さん、三雲さ……玲、熊谷、小佐野、茜、合計11人だ。

仮に全員が一斉に影浦さんのところでお好み焼きを買った場合だと11枚を一気に焼いてもらわなければならない。それだとなにかと時間がかかるから幾つかのグループに分かれよう」

 

 待て、奈良坂。

 どうして太刀川さんの次に私の名前を言った際にさんをつけかけた?

 

「……奈良坂先輩の言うとおり、ここはグループ分けしましょう!!」

 

「よし、じゃあ行くか!!」

 

「え、ちょっとまだグループ分けをしてないわよ!?」

 

「私達以外、一瞬で走り去ったな……」

 

 日浦のミスを上手くフォローすることなく、雑に扱う奈良坂。

 空気を読んだのか脅されたのかはわからないが、太刀川さんの一言で私と熊谷と小佐野以外が一斉に走り出して人混みの中へと消えていった。

 

「……米屋達、絶対に口裏を合わせてるよね」

 

「私、聞いてない……」

 

 それはもう見事過ぎるまでの早さで人混みへと消えていった。

 何処に居るのか探そうと思えば、探せる。というか、那須は病弱じゃなかったのだろうか?この日の為に生命力を振り絞って来たのだろうか?もしかしてトリオン体……なわけないか。

 追いかけたら舌打ちをされる未来が待ち受けていることをなんとなくで察していると、携帯で那須達と連絡を取ろうとしている熊谷が顔を真っ赤にしている。

 

「私達、三人で行こっか」

 

「……あれ、なんかおかしいぞ」

 

 良い感じのムードを作ってあげようと熊谷にも私にも小佐野にも迷惑なこの行為。

 突然の事にどうしようも無いとバッサリと諦めた小佐野はこの状況を楽しもうとするのだが、おかしい。

 

「集合場所あるから、遊んだらそこに来てって……追いかける?」

 

「普通に遊ぶ」

 

「なにからする?輪投げとか色々とあるみたいだから、退屈はしないっぽいよ」

 

 三輪がこんな事をするのは予想外だった。だがしかし。してしまったものは仕方あるまいと気持ちを切り替える。

 小佐野が着物の袖を掴みクイクイっとして、ここからでも普通に見える輪投げの屋台を指差した。サラッと距離を近付けてくるんだな。

 

「……熊谷、追いかけるなら位置は教えるが、最終的に集合場所で捕まえる事が出来るんだから無駄な時間を浪費するだけだぞ」

 

「……」

 

「……お前達、袖を掴むのはやめてくれないか?」

 

 心拍数が物凄く上昇し、脳波などがとんでもない事になっている熊谷と小佐野。

 私の手ではなく着物の袖を握って斜め後ろを歩くのだが、二人とも視線どころか顔も合わせてくれない。

 

「変に緊張するな。こういう感じの状況は漫画あるある……だが、女性二人と男性一人はおかしいと思うんだ」

 

「「……」」

 

 お前はどうしてそんな空気の読めない事を言うんだ?

 

 服の袖を放した熊谷と小佐野はそう言わんばかりの絶対零度の眼差しを私に向けてくるが、私は決して悪くない。

 小佐野も熊谷もどっちも選んでいないし選ばないし、選ぶわけないし、今年は余りラブをくり広げている暇は無いんだ……大学、何処に行くとかの進路が決まってないんだよ、これが。

 

「こういう場所はスリが多い、お正月だからといって油断せずに行くぞ」

 

 私のくだらないようで意外と重要な一言により、ムードなんかはすべて消え去り友人と一緒に遊びに来た感じの雰囲気となり出店は楽しめた。

 

「えっと、三雲くん……その手にあるのは?」

 

「型抜きと輪投げと射的の景品……気をつけろ、那須。

ここのおみくじ、ゲームとかの当たりは全くと言って入っていない」

 

「いや~スゴかったよ、三雲。

型抜きで10000円ぐらい成功して、誰も手に入れることが出来ない景品を手に入れてた」

 

 久々に転生特典が、ボッスンと岸辺露伴を合わせた感じの器用さが発揮されて根刮ぎ景品を頂いた。冬休み明けは影先輩経由でブラックリストに登録された事を教えられた。




メガネ(弟)「当小説が二乗ほど面白くなるおまけコーナーと言う名の設定とか裏話……あれ、どうしたの兄さん?」

メガネ(兄)「いや、今回のコーナーが凄くダルくなった。今回は、私のトリガー構成(仮)を紹介する」

メガネ(弟)「えっと……確か、兄さんは文字通り全部が使いこなせるんだよね?
弧月もレイガストもスコーピオンの攻撃手(アタッカー)のトリガーとか、アステロイドやメテオラなんかの射手(シューター)系のトリガーも全部、10000ポイントレベルで」

メガネ(兄)「全部使えるが、8つの枠に全てのトリガーは入れられない。
レイジさんの倍近くのトリオン量があるから、レイジさんと同じ枠が物凄く多いトリガーを使えば良いかもしれないが、全部入れれば良いというものでもない……まぁ、物凄くざっくりと言えば、もし◯◯隊に入っていたらどういうトリガー構成にするか的なのIFだ、IF」

メガネ(弟)「成る程……因みに何処の隊に?」

メガネ(兄)「今回は太刀川隊だ……分かっていると思うが、お前の隊に入ることは無い。たらればのもしもの話でも絶対にしない……すまない」

メガネ(弟)「別に謝らなくても良いよ。兄さんや空閑におんぶにだっこでA級にいっても、意味がないから」

メガネ(兄)「そうか……本当は色々と力を貸したいし、答えを教えてやりたいが母さんになにかと口止めされてるんだ」

メガネ(弟)「母さんは、僕達の事をよくわかっているね」

メガネ(兄)「母さんだからな……じゃあ、今回は太刀川隊ということで紹介するぞ~」


三雲■■(太刀川隊の場合)



ポジション (ネオ)完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)


メイントリガー

MAIN TRIGGER

スイッチボックス
シールド
ライトニング
エスクード

SUB TRIGGER

バックワーム
アイビス
グラスホッパー
唯我自爆スイッチ(試作)

トリオン 19(?)
攻撃 8
防御・支援 17
機動 8
技術 16
射程 9
指揮 8
特殊戦術 11


TOTAL 96



メガネ(弟)「待って、兄さん」

メガネ(兄)「修、お前の言いたいことは分かる。
確かに全てのスナイパーが装備しているイーグレットを私は装備していない。アイビス付けてないけど、ライトニングとイーグレットはある。ライトニング無いけどアイビスとイーグレットはあるというスナイパーは何名かいるが、私はイーグレットを抜いてアイビスとライトニングで戦う」

メガネ(弟)「そっちじゃなくて唯我先輩の自爆スイッチって」

メガネ(兄)「だが、私は太刀川隊にいるの前提での構成だ。
太刀川さんは総合一位の攻撃手、出水はランクは不明だが圧倒的トリオン量と射手としての絶対の技術を持ちどちらも、頭一つ抜けて強いどころのレベルじゃない、多対一で攻めて味方の誰か一人落ちるぐらいを想定しなければならない。
ここは、油断している相手を撃ち抜くスナイパーとして活躍するのでなく油断しているとそこそこの邪魔をしてくる、倒すのでなくお前と同じく妨害や支援に特化したスタイルでいこうと思っているんだ」

メガネ(弟)「兄さんのその考えは間違いじゃないと思うよ。それで、この自爆スイッチって」

メガネ(兄)「基本的に罠を張り巡らせたり、エスクードで道を封鎖したり色々と嫌がらせをし。
私、トリオン量はカナダ人より多いからバックワームで近づいてからスイッチボックスで自身の周りに罠仕掛けてからのエスクードで道閉鎖して罠あるとこに誘導とか出来る。住居密集地帯で、エスクードで道を閉鎖して狭かったり目立ったりする変なルートを通らせている時にライトニングで狙撃とか、グラスホッパーで滅茶苦茶跳んで、相手の真上にいってからの落下する僅かな時間を利用してアイビス+ライトニングでのツインスナイプとか、いざというときに一人でも戦えたりするぞ」

メガネ(弟)「兄さん、話をそらそうとしてない?」

メガネ(兄)「……自爆スイッチについて聞いてくるだろ?」

メガネ(弟)「誰だって、目がつくよ。唯我先輩の自爆スイッチってなに?」

メガネ(兄)「向上心もなく太刀川さんと出水におんぶにだっこなワガママ坊っちゃんの唯我を自爆させるスイッチ。A級の権限を使い、私が注文し、メテオラになにかと精通している寺島雷蔵さんが作成したもの。
緊急脱出に必要なトリオン以外のトリオン体を含むトリオン全てをメテオラ的な爆弾に変えて爆破するスイッチで、唯我がある程度のトリオンを残して生きている時にしか使えないスイッチだ。使うと同時に唯我は緊急脱出する。
トリオン効率とか一切無視して唯我の緊急脱出以外のトリオン全てを一度に使うので、ニノさんのシールド(小さな一枚)ならば破壊できる……ネタにしか見えないんだが、割と強い。唯我を落とそうとする攻撃手(生駒さんを除く)は、爆破する唯我から逃れることもできず、シールド貼っても無駄で確実に沈めれるからカメレオンで姿を隠している風間隊の前で爆発させるだけで全滅とかもある。唯我が爆発すると分かっている事により中遠距離系の人が唯我を沈めに行くが、そこに出水を配置すればニノさんと弓場さんと里見以外ならば負傷しながらでも倒せるし、スナイパーは私が撃つ前に狙撃位置逆探知して沈めれる。私の特殊戦術が11なのは唯我自爆スイッチのお陰だ」

メガネ(弟)「自爆スイッチについて、唯我先輩は……」

メガネ(兄)「滅茶苦茶駄々を捏ねて、人権侵害とか弁護士挟むとか抗議するとか言っている……そもそもで中学生、高校生、大学生を異世界からの侵略者と戦わせる組織にコンプライアンスなんて無いと言い返した。
太刀川さんも国近先輩も出水もお前が役に立つ時が来たんだぞと自爆スイッチについて喜んでいるし、風間隊を一気に全滅させた事を自慢してる……ポイントとか全て私に入る仕組みになっているが」

メガネ(弟)「ひどい……」

メガネ(兄)「太刀川隊に私が加入した場合は圧倒的強さで近中距離を戦う太刀川さんと出水をエスクードやスイッチボックスでサポートし、二人を狙うスナイパーを逆に撃ち落としたりする。ポジションやサイドエフェクト的に文字通り現場に立って指示をするいざというときは自分も戦って点数を取れる指揮官に近い。勝負の鍵を握るのは唯我自爆スイッチだ!!」

メガネ(弟)「近中遠、全ての距離が完璧で尚且つ特殊戦術にも優れた部隊……」

メガネ(兄)「因みにだが、トリオン量のところの(?)については特に気にするな……?の理由は教えることは出来ないから」

メガネ(弟)「次回もお楽しみに!」

ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯

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