決戦の日はやって来た。
バクバクと心臓を鳴らしながら、ボーダーのお年玉企画が行われる会場に向けて歩いていく。
今日の為に色々と……頑張っていないな。普通に家で漫画描いてたりしていて、母さんにこの大会に出ると言って、今朝も普通にいってらっしゃいの一言で終わったな。
「お~三雲も来てたのか」
「太刀川さんも来ていたんですか?」
「おぅ、誘われてな」
会場に辿り着き、待ち合わせ場所に向かっていると太刀川さんと鉢合わせする。
誘った覚えは無いから、別のチームに参加をしているのか……何処のチームなんだこの人?
「誰と出るんですか?」
「加古と佐鳥と風間さんと沢村さん」
「どっからツッコミを入れれば良いんですか?」
「いや、オレも出るつもりは無かったんだ。見物客になろうかなって思ってたんだ。
でも、去年、12月のギリギリまでレポート溜め込んだ罰として強制的に出ることになって佐鳥と組まされたと思ったら、レポート手伝ってくれた加古と風間さんが面白いって、出てくれて、そこに優勝商品を知った沢村さんがTDLかUSJのどっちかが欲しいって言ってさ……ま、もし当たったら容赦しないぜ」
聞きたくなかった、そんな理由。
しかし意外な強敵が登場したのかもしれないと考えていると、ふとある疑問が浮かぶ。
「来馬さん達のとこ、5人目は誰なんだ?」
国近先輩曰く来馬隊の面々は出てくる……のだが、来馬隊はオペレーター含めて4人の部隊だ。
この企画は5人でないと出れないもので、その5人組が太刀川さんでないとなると誰になるんだ?生駒さんだろうか?あの人、バラドルとして使える人だから面白いだろうな。
「待ってたよ、君が三雲くんだね。陽介から色々と聞いてるよ」
「どうも、烏丸京介っす」
5人目について考えていると待ち合わせ場所に辿り着く。
そこには米屋と国近先輩は居なかったが、代わりにメガネとモサッとしたイケメンが、宇佐美栞と烏丸京介がいた。
「三雲だ。今日はよろしく頼む」
「うんうん、陽介が言った通り中々の伊達だね~。あ、私は宇佐美栞、陽介のいとこだよ」
「……何故伊達だと?」
「ボーダーメガネ人間協会名誉会長の私に分からないメガネはないよ!」
なにそれ恐ろしい。
それはもう一種のサイドエフェクトなんかじゃないかと思えるものであり、少しの恐怖が私の背筋を凍らせる。
「米屋と国近先輩は?5人居なければ、参加できないんだが」
「ああ、二人なら━━」
「やっべえ、やっべえぞ!」
「うぇ~ん、あんなの無しだよ!」
「敵情視察していて、今、帰ってきました」
「うん、見たら分かる」
物凄く低いテンションでやって来る二人。
これから闘いがはじまると言うのに、テンションが低い。なんだかもう負けた感じのムードを出している。国近先輩に至ってはもう泣きかけている。
「陽介、敵情視察してきたんじゃないの?」
「栞……お前、今日はなにで来たんだ?」
「え、今日?今日はレイジさんに送ってもらったよ?」
「俺も乗せて貰っ……もしかして」
「ヤバイよ、このチーム」
国近先輩は携帯を取りだしてある写真を見せる。
ボーダーの面子の様で、顔は知っているが一度も会ったことないので反応できないな。
「レイジさん、荒船さん、歌川、柿崎さん、緑川……運動神経抜群な人達っすね」
「レイジさん、出場するの!?」
圧倒的なまでの体育会系で構成されているチーム。
頭が残念なのがいるものの全員運動神経抜群で、一番の筋肉である木﨑レイジの出場を知らなかった宇佐美は驚く。
「この面々は……」
「柿崎さんと緑川くん以外、筋肉と知性を兼ね備えた人達だよ……どうしよう?」
「成る程……まぁ、リアルファイトするんじゃないですからそこまで落ち込まないでください。あくまでも私達はゲームです……捨ての大将もありなんですから」
「そうっすね。5人揃いましたし、参加申し込みに行きましょう」
太刀川さん達よりも強そうな敵が現れたが、そんな事で私達の歩みは止まることは無い。
大会の参加を申し込むべく、真剣な表情に変貌した私と京介を先頭に受付に向かうとボーダーの顔である嵐山隊の優秀なキノコこと時枝が受付をしていた。
「京介、意外な面子だね」
「そうか?」
「玉狛で出るのかと思ったら、さっきレイジさんが荒船先輩達を連れてきたし、太刀川さんも風間さん達と出るから……どういう面子なの?」
「時枝、決まっているだろ……遊びとかそういうの一切無しで、本気で勝ちに行く為だけのチームだ。レイジさんが居ないのは色々とキツいが、三雲さんがフォローを入れてくれる」
「え、私が筋肉担当?」
「いや、違うよ。知性的な筋肉担当だよ」
レイジさんが居ないのは思いの外、厳しいのは分かるが何故に、私が知性的な筋肉担当なんだろうか?
1000000歩譲っても、今日この場には絶対に来ないと占いで出た実力派エリート担当じゃないんだろうか?
「それに、全員揃っても無駄だ……小南先輩、こういう場所じゃ猫被るから本領発揮出来ない」
「まぁ、確かにそうか。
これ参加シートで一試合ごとに、先鋒とか次鋒とかを決めるから名前だけで良いよ」
「えっと……三雲さん、下の名前はなんすか?」
「いや、私が書いておく」
小南パイセン、来ないのか。
猫被っている、清楚系くぎゅうが一瞬でも見れると期待していた私は愚か者だったのかと参加メンバーの名前を書いていき、マゼンタ色の箱を取り出す。
「トーナメントなんで、何処と戦うのか決めるくじです。一枚引いてください」
「おっし、ここはオレが」
「米屋、それは私に引かせてくれないか?」
くじ引きだと分かると意気込み、箱に手を入れようとする米屋の腕を掴んで止める。
悪いとは思ってはいる。お前のことだからラッキーを引き当てるかもしれないが、ここは私に任せてほしい。
「わーったよ……良いの引いてくれよ」
「任せろ」
駄々をこねることなく、あっさりと譲ってくれる米屋。
本気を出すべくメガネをメガネケースにしまい、マゼンタ色の箱に腕を入れて腕を凝視する。くじ引きでこのサイトエフェクトを使ったことは何度もあるが、箱の中に入っているのを当てるのははじめてだ。
しかし、なんの変哲もない普通の箱に入っている普通の紙の中に入っている当たりを見抜くのは余裕、余りにも余裕なことだ。
「なんか三雲さん、福本作品に出てくる顔になってませんか?」
「気のせいだよ~」
ガサゴソと箱の中を動かし、箱から溢れる電磁波が物凄く揺れる。
とりあえずは箱の中にある一つの紙を掴んでみると、電磁波が固定される。ココ同様、微量の電磁波を独自の感覚で色や形をイメージ出来る私はその電磁波を見て、これは一番の当たりだなと手を引いた。
「Cだ」
「Cですね……来馬隊の人達とバトルします」
「うっそだろ、いきなりかよ!!」
試合もなにもはじまっていないのに、いきなりの来馬隊かよと落ち込む米屋。
だが、私のサイドエフェクトがこれが一番最高の相手であり確実に勝てる相手だと出てる。
「米屋先輩、落ち込むには早すぎますよ」
「いやだって、来馬隊はヤバいだろ。
来馬さんは頭いいし、今さん華道とか色々と出来るし、村上さん運動神経抜群だし、太一いるし」
別役の扱いが雑すぎるだろう。
だが、それで通じるのがボーダークオリティーの様で三人とも納得していた。
とりあえずは村上さんで一敗、太一のところで一勝するのを前提に残りの3試合をどう回すか考えないといけないのだが、国近先輩が挙手する。
「来馬隊は4人だよね、5人目って誰なの?」
「え~っと……弓場さんですね」
「……マジ?」
「はい、何故か弓場さんと一緒でした」
時枝は国近先輩の質問にサラッと答えてくれたが、余りにも意外すぎる人物が5人目にいた。
弓場、と言えばNo.1銃手の里見の師匠であり銃手として
「弓場さんも居るってことは、射的とかそういうの絶対に負けるのかよ……三雲ぉ!!」
「五月蝿いぞ、米屋。
弓場という人がどんな人なのかは知らないが、銃の扱いが上手いと言うならば私が相手をしよう」
いきなりの優勝候補じゃねえかと叫ぶ米屋。
この大会はビームピストルとか使った射撃系の競技もあるらしく、本物の拳銃と違ってビームピストルはボーダーの銃と同じく、向けた銃口通りに対象を撃ち抜くことが出来る。そうなるとボーダーでもトップレベルの銃の腕を持つ弓場さんは射撃競技に於いては最強に近い。
そうなると村上さんとの勝負を捨てて、残りの4試合で確実に勝ちにいく捨ての大将が出来ない。弓場さんがいる為に1試合負けても他が頑張って逆転するということが出来なくなった。
弓場さんに勝たなければならなくなった。弓場さんを相手に射撃競技で勝負した場合、この面子で勝てるのは私だけだ。
「三雲くん、弓場さんに勝てるの?」
「勝てるのじゃない、勝ちに行くんだ。さぁ、お前達油断せずにいくぞ」
弓場との射撃戦は負け試合と言いたげな宇佐美にキメ顔でそう言い、受付を後にし試合開始直前まで待つ。
幸いにも私達の前にレイジさんをはじめとする筋肉男《ますらお》のチームが戦ってくれて、どんな感じで試合が進行するのか、なんとなくの流れが分かった。
『さぁ、続きまして第二試合。
先程と同じく、ボーダー外部非公開の玉狛支部から参戦!烏丸京介率いるCチーム!!』
「別に俺が率いているわけじゃないんすけどね」
「絵面的に京介が率いていた方がいいって根付さんが判断して、言わせてんだろ」
自分達の番が来て、入場すると紹介してくれる実況の嵐山さん。
京介が率いているわけでもなんでもない、どちらかと言えば私が率いている形なのだがそっちの方が見映えが良いのか、そういうことにされた。別に誰がリーダーとかそういう感じじゃないから気にはしないが、嵐山さんが少しだけ申し訳なさそうにしている。
「誰がチームの柱なのか、リーダーなのかは深く気にするな」
「そうだね……弓場さん、三雲くんをめっちゃ睨んでるよ」
「あ、今ちゃんにあいつ誰なんだって耳打ちしてる」
向かい合う来馬隊+弓場と私達。
この中で明らかに浮いている私に色々と視線が向きがちで、弓場さんは会ったことの無い私のことを知っている知っている今さんに私について聞いている……が、マトモな情報は出てこないだろう。
成績が良くて、サイドエフェクトを持っていて、米屋達と仲が良くて、占いが物凄く当たる。それぐらいの情報しか出てこない。
「お久しぶりですね、来馬さん。覚えてますか?」
「三雲くんだね、ちゃんと覚えているよ」
向こうが色々とやっている間に私も色々とやらせてもらう。
来馬さんの前に出て、お久しぶりですと胡散臭い笑顔を出して挨拶をすると仏の様なスマイルで返事をしてくれた。余りにも仏の様なスマイルだったので、これからすることに少しだけ罪悪感を覚えるのだが、それはそれと割りきった。
「でしたら、私の占いも覚えていますか?その後、当たりましたか?」
「あ……うん、覚えているよ」
「……当たりましたか?」
「当たっ……たよ」
「そうですか。
来馬隊の皆さんが御元気でしたので、なにか危険な目にあわなかったのかと思いましたが……今日は珍しく全力を出すのでよろしくお願いしますね」
「うん、こちらこそよろしく」
汚ならしい笑みを浮かべながら、ピュアな来馬さんと握手を交わす。
「米屋先輩、三雲さんは」
「来馬さん揺さぶってんな。
来馬隊の主柱はあの人だから、少し揺さぶるだけでも効果覿面だって分かってて変なことを言いやがった」
なにを当たり前の事を言っているんだろうか?
試合なんてのは、始まりを告げる合図がなる前から始まっている。こういう場で、相手を煽ってプレッシャーを掛けたりするのは常套句だ。勝つのは氷帝、負けるの青学でお馴染みの氷帝コールもある意味そういうものだ。
「では、此方が今回の5試合です。5分以内に先鋒、次鋒、中堅、副将、大将を決めてください」
軽い紹介等が終わると、時枝からオーダー表を渡される。
オーダー表には名前の記入欄に加えて、競技の名前が書かれていた。
【先鋒 パーフェクトクエスチョン】
「え~と、これクイズ系だから私が出るね」
パーフェクトクエスチョンは解答者を交互に変えるクイズバトル。
正解した人が相手に出題する問題のジャンルを選択してぶつける、全ての問題を完璧に答えられるかどうかの幅広い知識が必要になるクイズ、出場者は宇佐美。
【次鋒 エンドレスフラッグ】
「なんか先鋒と比べて圧倒的なまでに地味っすね」
「こういうの得意だから私が出るね」
エンドレスフラッグのルールは簡単に言えば旗揚げ。
互いに向かい合ってする旗揚げで、相手が旗を上げるのか下げるのかそのままにするのかを指示し、言われた相手だけが動かすというターン制バトルなのだが、恐ろしく地味な絵面な競技。どの旗を動かすか最初は15秒間で言えるらしく、最終的には5秒以内に指示出さないとダメで、ドボンもあるらしい。
物凄く体を動かす系でなく、ただの旗揚げなので国近先輩が挙手する。
【中堅 ギャング★スター】
「ビームピストルを使った射撃戦か……これは私が出よう」
廃ビル(点検済み)内でビームピストルを使い、戦う至ってシンプルな銃撃戦。
確実に弓場さんが出てくる競技で、私以外が出場したら確実に負けてしまう競技。
「なんでよりによって中堅戦が射撃なんだよ。
弓場さん、近距離に近い中距離での
「安心しろ……私はどちらかと言えばマトモじゃない人間だ」
「うん、それは知ってる」
「そうか……」
「落ち込んでる暇はありませんよ、三雲さん。
中堅戦なんで1勝1敗、2勝0敗、0勝2敗のどれかになってると思いますんで、確実に勝ってくださいよ」
米屋の言葉に少しだけショックを受けながらも、中堅までの代表を決めて残りの副将、大将も一気にオーダーを決める。
「これがオーダーです」
「ぼく達の方も決まったよ」
オーダー表を来馬さんと同時に時枝に渡す。
時枝は記入漏れがないか確認した後、実況席にいる嵐山さんへ持っていく、オーダーが周りの観客に発表する。
『オーダーが決まりました!
先鋒、パーフェクトクエスチョン! 今vs宇佐美!次鋒、エンドレスフラッグ! 太一vs国近!中堅、ギャング★スター! 弓場vs三雲!副将 フラッシュザウルス! 村上vs米屋!大将、ロシアンバルーン! 来馬vs烏丸!』
「まぁ……順当なオーダーか」
互いのオーダーを発表し、対戦相手が判明した。
頭を使う系の競技は頭が良い人が、体を使う競技は運動神経抜群な人達が出場している。
「よ~し、勝ちにいこうか」
「頼んだぜ、栞!」
先ずは第一試合、パーフェクトクエスチョン。
確実に勝たなければならない場面でなく、勝っておけば心にゆとりを持てる場面。宇佐美に掛かるプレッシャーは割と大きいのだが、本人はそこまで焦ったりしていない。
「今先輩、お願いしますよ!」
「相手は栞……かなり厳しい戦いになるけれど、勝ってみせるわ。太一、あなたも勝って弓場さんに繋げてストレートで終わらせるわよ」
「勿論すよ!とっておきの作戦で、国近先輩を倒してみせます!」
「エンドレスフラッグって、結局のところ旗揚げなのだけれど……ここで勝たないと」
逆に今先輩は次鋒の太一がなにかやらかさないか、心配で少しだけ焦っていた。
「……第一試合、このあとすぐ」
『生駒、これテレビじゃないからCMを振らなくていいぞ』
どっから出てきた、あの人。
メガネ(兄)「当小説が二乗ほど面白くなるおまけコーナーと言う名の設定とか裏話!」
弾バカ「……」
メガネ(兄)「どうした出水?」
弾バカ「おれ、この話に全くといって登場してない。
設定的に言えば、お前等が楽しんでいる裏で三輪とか二宮さん達と一緒に防衛任務に出てる。米屋達が出てるの、一切知らないからな……出たかった!!」
メガネ(兄)「じゃあ、三輪とか二ノさんと一緒に」
弾バカ「絶対に無理なの分かってんだろ!!
三輪と二宮さん、こういう感じの企画に出てくれるわけねえだろ!犬飼先輩しか出てくれねえよ!」
メガネ(兄)「仮に出たとしても、気まずいギスギスとした空気になるな」
弾バカ「笑うな!」
メガネ(兄)「すまんすまん。
今回は勝つためのメンバー構成でいっているから、呼ばなかったんだ。嫌いだから省いたとかそんなのじゃない」
弾バカ「余計に質悪いわ!
確かにトリガーが無かったら、A級3バカ最弱かもしれないけど!運動能力、一番低いけど!勉強は一番上だからな!!」
メガネ(兄)「でも、今先輩は普通校に通うボーダー隊員の女性で一番頭が良いぞ?村上さんも成績めっさ良いぞ?」
弾バカ「っぐ……」
メガネ(兄)「悪いな、出水。定員は5人なんだ。
……そう落ち込まないでくれ。戦っている間、おまけコーナーはお前と一緒だ。修とかぼんくらエリートとか米屋はこっちに来ないぞ」
弾バカ「もうちょっとカッコいい場をくれよ……トリガー関係じゃないと、おれ活躍出来なさそうじゃん」
メガネ(兄)「どうしろというんだ?」
弾バカ「そこはほら……お前がボーダーに入って、おれが師匠になる感じで」
メガネ(兄)「私、既に変化弾の弾道を64発までなら弄くれるし……サイドエフェクトを利用した必殺技もあるし、既に米屋とかぶっ倒せるぐらいの腕あるし……」
弾バカ「お前、本当になんなの?」
メガネ(兄)「オレ、Tueeeeeなメガネのお兄さん」
弾バカ「っぐ……次回もお楽しみに!!」
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