修がボーダーに入隊した。
正確に言えば落ちたらしく、上層部に直談判してもらおうと本部に忍び込もうとした結果、グラサンを掛けた胡散臭い男と出会い、本当ならば落ちてたが裏口で入隊出来た。某実力派無職エリートのお陰で入ることが出来たらしい。
ただまぁ、試験を受けた時期が悪かったのか入隊日は9月らしく、修はそれまで間に成績を落とさない様に勉強に専念する。物凄く真面目なメガネである。
「3000万……」
一方の私だが、修がボーダーに入ることが出来たので通帳を作って貰った。
麟児さんから貰った100万ちょっとを元手に、約2ヶ月頑張った成果が3000万円。一時期、7000万円を越えていて、このままいけば1億いけると調子に乗って確率が低いものを選んで失敗した。
麟児さんが何時ぐらいに此方の世界に戻ってくるか分からないし、下手すれば戻って来ないかもしれないが、少なくとも3000万円じゃ端金も同然だ。
「三雲、ちょっと良いか?」
通帳の数字を眺めながら目標はまだ遠いと学校の教室で考えていると、三輪がやって来た。
なんの用かと聞くまでもない。後少しで期末テストに入るので、その為のノートを借りに来た。
「現代文、数学、英語、化学、世界史、一通りはあるぞ」
机の中からノートを出す。
三輪は自分がやっていない所はどの辺りだろうかとノートをパラ見し、やっていない部分を見つけるとポケットに入れていた付箋を取り出して貼る。
「放課後から夜に掛けて防衛任務なんだ。付箋を貼ってるところだけ、コンビニでコピーして来てくれないか?これの釣りはいらない」
「太っ腹だな」
500円玉を渡してくる三輪。
付箋は10ちょっとだけで、一枚10円のコピーだとすれば物凄く残るぞ。BIGサイズのU.F.O.買えるぐらいには残るぞ。
「お前にはなにかと世話になってる。これぐらいの礼をしないと気が済まない」
「そうか」
「特に陽介のお守りは助かる」
2年では米屋と出水と同じクラスな私は一時のテンションに身を任せてヒャッハーする2人のブレーキ役だ。
元から仲の良い二人で、集まればテンションを上げて騒ぎ出して、止める役の三輪が居ないからと私が止めてる。
「そう言えば、夏休みはどうするつもりなんだ?」
「ゾエさんと合宿免許でバイクの免許を取りに行く予定だ」
「そうか」
もしかするとなにかに誘おうとしたのか?
三輪は夏休みの私の予定を知ると、自分の教室に戻っていった……のだが、今度は熊谷がやって来た。
「今の、三輪くん?」
「防衛任務で休んでだ分のノートのコピーだ。
熊谷も欲しいなら、コピーするぞ。コピー代はちゃんと請求するが」
「私は今回は大丈夫よ。それよりもちょっと相談が」
「?、そう言うのは同性にするものだろう」
告白される未来を潰しても特になにかが変わったわけでもない熊谷と私。
一先ずは相談事に耳を傾けると、携帯のスケジュール張機能を使い7月7日を見せる。
「確か、当真先輩の誕生日だったな。
あの人、色々と残念な所は多いけど狙撃手としてはボーダーで一番の腕前らしいな」
「いや、違うの。当真さんがNo.1狙撃手とか誕生日なのもあってるけど、違うの。実は、この日、茜も誕生日なの」
「かわいそうな日浦」
「それ、どういう意味?」
「特に深い意味は無い」
女が日浦、男が当真先輩を祝う的なノリだろう。
日浦が誕生日なのは分かったが、それと相談事とはなんだと聞いてみると難しそうな顔をした。
「誕生日プレゼント……なににすれば良いと思う?」
「……いや、那須に聞けばいいだろう」
誕生日プレゼントについて悩んでいるという極々ありふれた悩みを私は切り捨てる。
顔見知り程度の仲だから、日浦の趣味とか趣向とかそういうのは一切知らない。出水なら好物の蜜柑とか数ヶ月待ちのお取り寄せコロッケとか送ればいいが、日浦の事を詳しくは知らない。
「最初は玲に便乗しようかなと思ったのだけれど「くまちゃん、今年はなにを買ったかは内緒にしましょう」ってなって」
「日浦の趣味とか趣向に合わせたものを買えば良いんじゃないのか?」
相談するのは良いことだが、私には御門違いの分野だ。
腕時計の様に当たりでもなければハズレでもない物を日浦にも渡すわけにはいかないから、定番中の定番を出してみると少しだけ浮かない顔をする。
「茜の、お兄さんが私と同じクラスで先にプレゼントを……指抜きグローブを買ってたの」
日浦の趣味についてツッコミを入れたら……ダメだろうな。那須隊の隊服があんなんだし、ツッコミを入れるのはダメだ。
「猫カフェの商品券とか、小夜子用意してたし……玲はなにをしてるか分からないし……」
「他にも聞ける奴、居るだろう」
「1年で聞けそうなのは居ないし、2年は無理っぽいし、3年は個性が強すぎて本人が欲しい物を主張しそうで」
ああ、確かにそう言われればそうだな。
防衛任務中の小佐野ぐらいしか、聞けそうなのいないな。国近先輩はゲームが欲しいとか普通に言いそうだし。
「もう面倒だから、七夕だけに短冊を渡してなんでも願いを叶えるで良いんじゃないか?」
「それは本当の最終手段よ」
「お兄ちゃんしか居ないから、1日お姉ちゃんと呼んで良いですかと言われるかもしれないぞ」
「…………他に無いの?」
今、日浦にお姉ちゃんと呼ばれたい熊谷と真剣に選んだプレゼントを渡したい熊谷が戦っていたな。
ぶっちゃけ、短冊が一番面白いもとい喜ばれそうな物だが、他に被らずに日浦に向けた洒落た物といえば……。
「モイストポプリぐらいだな」
「モイス……なにそれ?」
「ざっくりと言えば、花びらを塩漬けにした瓶詰めだ。
約二月ぐらいは匂いのある芳香剤で、匂いが無くなったら風呂に入れればバスソルトになる。誕生日から9月終盤までは暑いから嫌でも汗をかいてしまうから芳香剤で、10月以降は一気に冷え込むから風呂で暖まるのにちょうどいいぞ」
「それよ!」
一つだけ思い当たる物を言えば、それにしたと決める熊谷。
早速、携帯を取り出して何処に売っているのかを確認しているとモイストポプリの作り方が目に入り、気になったのか調べる。
「あ、割と簡単に作れるのね」
「花びらと塩を交互に入れて精油ちょっと入れて、二週間ちょっと放置してかき混ぜれば完成だからな」
「……詳しくない?」
「母の日に母さんに毎年送ってるから、熟知してるぞ。なんだったら、手作りも作ってるぞ」
割と凝り性だから、一度作ると止まらなくなる。
花びらの代金が思ったよりも高いが、割と実用性のあるもので母さんからも好評であり、毎年渡して、喜ばれる。
「ん~……取りあえず、既製品と手作り2つ用意してみるわ。ありがとう」
「手作りするなら7月の花とかアカネとか日を連想させる植物で、果物系はやめておいた方がいいぞ」
アドバイスの礼を言うと熊谷は教室を出ていく。
これで誕生日プレゼントが那須と被っていたら、笑うしかないが、頑張れとしか言えないな。
熊谷も出ていったので小説でも読むかと本屋で売っていたラッコ11号の小説版を取り出すのだが
「三雲さん、ちょっと良いっすか?」
「今度はお前か、京介」
もっさりとしたイケメンこと京介がやって来た。
クラスどころか学年も違う、顔見知りよりちょっと上のレベルの間柄の関係なのに私に会いに来たので、教室が少しだけざわめく。1年で1番のイケメンが来れば、そうなるか。
「ちょっと、頼みたいことがあるんすけどいいすか?」
「ふ~……この季節だからなんとなく分かる。
だからこそ言うが、そういう事は私に頼むんじゃなくて頭が良い奴に頼め」
京介がやって来たわけをなんとなくで理解した。
とりあえず、大前提として私にそれを頼むのは大間違いだ。縦の繋がりも横の繋がりも使わずに私の所に来たので、先ずはと同年代に頭を下げることを提案する。
「無理っす」
「いや、無理じゃないだろう。
確か、進学校の六頴館高校も提携校だろう。そっちに任せた方がいいだろ」
いきなり無理だと言うので、頼めそうなところを出す。
ボーダーの提携校は普通校のここと、進学校の六頴館がある。そっちの方に宇佐美は通っており、他にも歌川や菊地原といった京介と同じ1年で、頭の良い組が通っている。
「そっちの方は佐鳥に任せてるんで、こっちの方を」
「……改めて聞くが、テスト前の勉強だよな?」
「はい、テスト前の勉強です」
間もなく期末テストがあり、そこで赤点を叩き出した者は夏休み返上の補習だ。
防衛任務で公欠するボーダー隊員だからといって、特別扱いはされず赤点を出すことは許されない。テスト前の勉強を同学年でなく一つ上の学年に頼みに来たのは分かる。
「佐鳥……は、まぁ、分かる。
顔見知り程度の仲だが、成績が悪いのはなんとなくで分かるが、その様子だと他にも何名か居るようだな」
「2年程じゃないですけど、成績悪い人と良い人の間が結構酷くて……嵐山隊の綾辻先輩は勉強を見るのはOKと出てまして、宇佐美先輩は怪しいです」
「同年代はダメなのか?と言うよりは、なんで私なんだ?」
「六頴館通ってる組は、ちょっと無理ですね。此処のは……まぁ、無理っすね」
「なに、仲が悪いのか?」
「そんな感じっす」
よくよく考えれば、頭良い奴等は城戸派だったな。
「だからって、私に頼まなくても……あの、アゴヒゲ以外で暇な大学生はいるだろう。
というか、それでテストとかで思い出したんだが、ボーダーでそういうのはどうなっているんだ?フォローの一つも入ってないぞ」
「自主的に勉強すれば進学校のトップだって取れますから、勉強するかしないかの問題だと思いますよ」
「それが出来てないからお前が今こうしてやって来てるんだろう……」
「ぶっちゃけ、オレはそこまで悪くない成績なんで、そう言われましても……」
ボーダーの闇はなにかと深い。
とりあえずは伝えるだけ伝えたので、教える余裕があるならば教えてほしいと京介は教室を出ていった。
「アイツ、私に頼む理由を教えなかったな……」
最後までなんで他の人達を無視して、私に頼むのかが分からなかった。
戦闘以外はなにかとポンコツでアホの子くぎゅうこと小南とか普通に賢いのに、他にも色々といるのに何故私なのかは分からない。
去年のノートは捨てずに取ってあるので、教科書とか教科担当の教師の教え方が極端に変わっていなければどうにかなる。100点を取れと最初から期待せず、50点を取れるように頑張って貰う。
「……結局、受ける感じで進んでるな」
とりあえず今日は無理だと断ろうと考えていると、昼休み終了のチャイムが鳴った。
トイレから戻ってきた出水と米屋を見て、慌てすぎだと思いながら大きなあくびをし、5時間目の授業の用意をし、授業を受ける。もうすぐ期末なので、新しいところを教えるのでなく期末に向けての対策勉強で、この辺が出るぞと午後の授業を受け終えて下駄箱前に行くと京介が居た。
「三雲さん」
「今日は無理だから、明日以降にしてくれ。携帯、持ってるか?」
昼休みの返事を聞きに来たので、今日は無理だと断り、明日以降はいけると伝える。
それを聞くと京介は良かったとホッとし、二階から降りてくる佐鳥達に向かってサムズアップする。
「よ、良かったぁあああ!!」
「佐鳥、五月蝿いよ」
「あ、悪い。
でも、本当によかった。高校の勉強、追い付かなくて危なかったんだよ!三雲さん、ありがとうございます!」
「礼はいらない。と言うよりは、今日はしないぞ。
勉強は教えるが、何処で勉めるとかの場所を押さえたりしておいてくれ」
「はいっ!」
勉強を見てくれると分かると喜ぶ佐鳥。時枝はそんな佐鳥を見て、喜ぶ。
まだテストもなにもしていないのに、この喜び様は大丈夫なのかと見ていると黒い髪の男子生徒が……ボーダーで二人しかいないS級隊員の1人、天羽が通り、佐鳥達を見て首を傾げる。
「なに喜んでんの?」
「頭良い先輩にテスト勉強みてくれることになったんだ。
今までと違って、赤点を取ったら大変だからね……嵐山さん達に迷惑を掛けずにすんだし、夏に遊べる!」
「ふ~ん……」
喜んでいる理由を聞くと私を見る天羽。
出水や米屋と違って友人というわけでもなければ京介や佐鳥の様に顔見知りの後輩というわけでもない全くといって関わりの無いボーダー隊員。普通校に通ってない面々で顔見知りじゃないボーダー隊員(原作キャラ)割と居るなと小荒井奥寺コンビの顔を思い浮かべていると天羽が口を開く。
「あんた、本部じゃ見掛けないけど、何処所属だ?鈴鳴?綿鮎?弓手町?早沼?久摩?それとも玉狛か?」
「あんたじゃない、三雲さんだ。ある程度はタメだったりしてもいいが、もう少し言葉を選んでくれ」
「三雲さんはボーダー隊員じゃないよ。
ボーダー隊員と知り合いが多いけれども、それだけだよ」
初対面の相手にぶっ混んできた天羽。あんたとか何処所属だとか割と気にしないが、いきなりそんな事を言ってくるな。
時枝が補足として私はボーダー隊員じゃない事を天羽に教えると天羽は私の事をジッと見てくる。
「言いたいことがあるなら、ハッキリと言ってくれ。白髪でも見えたのか?」
「天羽、なんか見えんの?」
「……色が忍田さん以上だ」
「はぁ!?」
詳しい事は分からないが、人のオーラかなにかを見ることが出来るサイドエフェクトを持っている天羽。
私の色について語ると佐鳥が思わず声を上げてしまうので、京介が無理矢理口を塞いだ。
「色がなんなのかは知らないが、私はボーダー隊員じゃなくてボーダーが嫌いだ」
「ふ~ん」
天羽は私がボーダー隊員じゃないと分かれば興味を無くし、帰っていった。帰り際に三回ぐらい振り向いてたな。
「ええっ、てか、三雲さんボーダー嫌いなんすか!?」
「ボーダーという組織の在り方が嫌いであって、街を守ってくれる事は感謝してる。
ただまぁ、何でもかんでも秘密にしてたら大事な事を見落としてることもあると……やろうと思えば出来るのに、やってない事に腹がたってるだけだ」
「やろうと思えば出来ること……なんですか、それは?」
「その辺は自分で考えてみろ」
私がボーダー嫌いなのを知らなかったのか、佐鳥と時枝は何故かと聞いてくるが考えてみろ。
ボーダーの人気や知名度はお前達のお陰で維持できているが、それだけで割と見落としてる所はあるぞ。
「まぁ、とにかく勉強は見るから場所の用意はしてくれ。
流石に3人ともなると教えれる範囲に限界があるから、得意科目は自力でどうにか……どうした?」
「三雲さん、3人じゃないんです」
「は?」
佐鳥と時枝と京介が勉強を見てほしいんじゃないのか?
そう聞こうとした途端、厄災のオーラが此方に向かって近付いてきた。
「お~い、とっきー、佐鳥、京介、どうだった?」
オーラの正体は真の悪こと別役太一。
こいつは確か米屋よりもちょっと、本当にちょっとだけ上の成績だった……要するにアホだ。
佐鳥達にどうだったかを確かめると問題無いとサムズアップするので、少しだけ頭を抱えて色々と考える……。
「勉強は教える……ただし、別役、テメーはダメだ」
「え、えええええ!?」
「三雲さん、俺と京介は正直教えて貰わなくても赤点回避は余裕です。
俺達はいいんで、佐鳥と太一は見てください……特に太一は中間全部赤点で」
「お願いします。今先輩に怒られたくないんです!!」
別役の参加を拒否すると頭を下げる時枝。自分のことを放置して頼み込む姿勢は良いが、私は別役を見るつもりは無い。
「時枝、なにも私は別役が嫌いだからとかなにかやらかしそうだから嫌いなんじゃない。
別役の場合は赤点を取ってはいけない自分から勉強をしてある程度の成績を出しておかないといけない立場で、人に頼る時点で間違っている」
「?」
「別役、確かお前は外部スカウト組だったな」
「はい!今先輩も村上先輩も外部ですけど」
「だったら、小まめに勉強しろ。
言っちゃあ悪いが、私は外部スカウトが嫌いだ。外部スカウト組が嫌いなんじゃないぞ、外部スカウトが嫌いだ。
防衛任務の都合上、授業を休まないといけないのにそれを補填するのをボーダー自体が余りやっていない。米屋や仁礼という負債を抱えてるにも関わらずだ」
「……あ」
私が言いたいことを察した京介はついさっきの出来事を思い出す。
「お前はボーダーにスカウトされて、入った。
この街に来たのもボーダー隊員として働くためで、親の転勤とかそういうのじゃないだろう。
お前には悪いが、自力でどうにかしろ。お前の赤点は米屋の赤点とはわけが違う。恨むならば、ボーダーを恨め。外部スカウトを恨め。スカウトされる大半の奴等が学生ならその後のアフターケアをしていないのが悪い。去年、出水と三輪に嫌味に聞こえるかの様に何度も言ったのに、特に変化が無い。まぁ、自主的に勉強すれば進学校のトップだって取れるらしいから、勉強するかしないかの問題らしいが」
「……太一、すまん」
さっき言ったことは失策だったと京介は謝るがもう遅い。
私は別役のテスト勉強を見るつもりは無いと、自力でどうにかするか頭が良い先輩にでも頼れと一線を区切り、靴を履き替える。佐鳥が特になにも言ってこないのを見る辺り、自主的な勉強は大事なんだと思っているのと余計な事を言えば、確実に自分にまで被害が被ると思っているな。
「場所とかの用意を頼んだぞ」
本気の涙を流している別役を背に、私は三輪に頼まれたコピーをするべくコンビニへと向かった。
メガネ(兄)「当小説が二乗ほど面白くなるおまけコーナーと言う名の設定とか裏話!!」
顔窓「いや~来ました、来ました!遂に佐鳥の時代がって、なんで顔窓!?」
メガネ(兄)「真面目にやらないなら、時枝と交代するぞ?」
顔窓「す、すいませんでした!
え~本日は、ずっと放置していた
メガネ(兄)「仕事馴れしているな」
顔窓「これでも新人に教えてますから!!」ドヤァ
メガネ(兄)「ぶっちゃけ、東さんだけで充分な気がする。
No.1は感覚派でNo.2は理論派でその上で荒船さん居るからそこまで佐鳥の重要性は……」
顔窓「やめてくださいよ、そういうこと言うの!?
オホン……狙撃手の訓練は平たく言えば、的当て。止まっているもの、動いているもの、動こうとするもの、遠くにあるもの、とにもかくにも当てれないと話にならないから、攻撃手や射手みたいな
メガネ(兄)「まぁ、当てないといけない仕事だからな。
因みにだがC級隊員がBに上がるための条件は……狙撃手同士でやりあうのか?」
顔窓「C級の合同訓練で、上位15%以内を3週間連続でキープすれば昇格します!因みにだけどこのオレ、佐鳥の訓練での成績は4位なんだ」
メガネ(兄)「4位で威張るな!」
顔窓「ふっ、違うんですよ三雲さん。
伝家の宝刀であるツインスナイプを封じた状態で4位を取っている……つまり、ツインスナイプを使えば1位を」
メガネ(兄)「いや、無理だろう。
イーグレット二本でのツインスナイプよりもアイビスとライトニングでのツインスナイプの方が需要あるぞ」
顔窓「うぐぅ!?い、痛いところをついてきますね」
メガネ(兄)「事実だ、事実。それよりも、トリガー構成とかの説明をしないと」
顔窓「おおっと、そうでした!
狙撃手用の狙撃銃のトリガーは3つあります。一つは、イーグレット。威力B、射程S、弾速A、速射C、軽さCの凡庸性高い狙撃銃で、狙撃手のポジションの人……三雲さん以外は全員が使ってて、佐鳥もなにかとお世話になってる銃です。
イーグレットの特徴はトリオン量が多ければ多いほど射程が伸びる、欠点らしい欠点がない狙撃銃……三雲さんは使わない時もあるんすよね」
メガネ(兄)「イーグレットは凡庸性が高いが、特出した強味が無い。
自分で狙撃して点を取る時には必需品だが、そうでない時は特に必要は無い。あれは自力で点を叩き出す為に必要な物で、太刀川隊みたいにエース級が揃いまくってるチームにはいらない」
顔窓「成る程、成る程。確かに点を取る時は高確率でイーグレットの時が多いすね」
メガネ(兄)「狙撃銃を使って遠距離での狙撃は極々普通の事で、普通のイーグレットは適しているがそれだけ。尖った性能が無いのが弱点だな」
顔窓「イーグレットはこの辺にして、次はライトニング。
威力C、射程B、弾速SS、速射B、軽さBでトリオン量によって弾速が上がる速度重視の狙撃銃!イーグレットと違って、装備していない狙撃手は居るけども、撃ちながら移動出来る便利な代物!」
メガネ(兄)「長所ばかりを褒めるな、短所も出さないと」
顔窓「短所は威力と射程の低さ!
射程に関しては狙撃出来る射程なんすけど、威力の方がトリオン量が少ない人のシールドでも割とあっさりと防げる。
弾速と速射でフォロー出来るには出来るけど、そうするぐらいならイーグレットで撃ち抜いた方が良いから、妨害したりするのに使うものすね」
メガネ(兄)「狙撃手が銃を向けている、それだけで充分な効果があるから使えるな」
顔窓「けどまぁ、ライトニングのマスタークラスを見たこと無いですけど!」
メガネ(兄)「牽制用の狙撃銃だから、ポイントは関係ない。次は3つ目だ」
顔窓「3つ目はアイビス。
威力SS、射程A、 弾速B、速射D、軽さDの威力特化の狙撃銃。トリオン量が多ければ多いほど、威力が増す……ホント、多ければ、多いほど」
メガネ(兄)「千佳のこと、トラウマになってないか?」
顔窓「千佳ちゃんが、壁に穴を開けた時に終わったって……B級降格か、嵐山隊クビを覚悟してたんすよ!」
メガネ(兄)「それに関しては何処ぞのグラサンについて恨め。
事前に申告しておけば、佐鳥もアイビスを千佳に持たせる事はなかったんだから」
顔窓「鬼怒田さんからチョップの一撃ですんでよかった……」
メガネ(兄)「落ちろ、実力派エリートの株」
顔窓「三雲さん、迅さんの事は嫌いなんすね……。
アイビスは威力重視で遠くから壁越しで壁ごと相手を撃ち抜いたり出来て、ライトニングと違って対戦相手を牽制するんじゃなくて、建物の破壊や隠れている人を炙り出したりと色々とフィールドを破壊したりする戦法とかに使ったり……威力特化の狙撃銃なんで、対人よりも対大型近界民に使われる機会が多いかな?」
メガネ(兄)「3つだけで、なんか専用のとかは無いのか?」
顔窓「一応、オプショントリガーの鉛弾と組み合わせることが可能だけどトリオンの都合上、千佳ちゃんしか出来る子がいません!」
メガネ(兄)「ほうほう……トリガー構成はどうなってる?」
顔窓「メインとサブでシールド一枚ずつとバックワーム。
そこにイーグレットは確定で、それだけの人も居れば、メイントリガーにイーグレット、ライトニング、アイビス、ガン積みの人も、使いこなせないからとライトニング入れてない人も居れば、アイビスを入れてない人も居る感じですね」
メガネ(兄)「とりあえずで入れている感があるな」
顔窓「イーグレットが得意でライトニング苦手とかそういうのじゃなく、状況に応じて使い分ける感じですからね。因みに佐鳥はメインにもサブにもイーグレットを二丁入れて、2つ同時のツインスナイプを」
メガネ(兄)「テスト前勉強に勤しむ京介達。楽しい夏休みを迎えるべく、必死になって勉強をするのだが、そもそもお前達に予定はあるのか?と疑問を持った貴虎に不幸が襲いかかる!次回、ワールドトリガー!【引きこもりたい夏休み】に、トリガー、オン!!」
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