メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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太刀川、堤、二宮、死亡確認


第46話

 クリスマス。

 それはリア充がリア充をする日。迅のサイドエフェクトはオンオフが効くものでなく、問答無用で未来が見える。その為に毎年苦しい思いをしている迅。しかし今年は違うと少しだけ迅は喜ぶ。

 

「すみません。23、24、25日にアルバイトを入れています」

 

 京介、アルバイトが解禁された歳なので迷いなくアルバイト!

 

「悪いが、防衛任務だ」

 

 レイジ、防衛任務!からの一緒に防衛任務入っている諏訪や風間と飲み会

 

「小佐野達と女子だけで集まってクリパが……沢村さんも来るわ」

 

 小南、ガールズパーティ!(一名はガールじゃない!)

 

 とまぁ、馬鹿野郎と言いたくなるなんとも調和を取れていない玉狛第一。

 しかし今年は違うと迅はテンションを上げる。リア充がリア充しまくるキャッキャしている姿を見れないからではなく、自分も楽しむ事が出来る日になったから。今年はメガネくんが、遊真が、千佳ちゃんが居ると喜ぶ迅。

 

「あ、迅さん!」

 

「おはよう、宇佐美」

 

「おはようって、もう皆朝ごはん食べちゃったよ?」

 

「いやほら、朝早く起きてテレビでニュースを見てるボス達と遭遇するとさ……画面越しのインタビュー受ける人の未来が見えるからさ」

 

 純粋に寝坊しただけであり、上手いことを言って宇佐美にカッコつけようとする迅。

 レイジが残していった朝御飯を温めなおして遅めの朝ごはんを食べるのだが、支部がやけに静かなことに気付く。

 

「陽太郎は?」

 

支部長(ボス)と一緒に買い物」

 

「そっか~……んん?」

 

「どうしたの?」

 

「おかしいな……サイドエフェクトがバグったのか、メガネくん達が今日来る未来が何処にもない」

 

「あれ、迅さん聞いてないの?」

 

「?」

 

「修くん達は旅行だよ」

 

「え!?」

 

「日帰りのイルミネーションツアー、三雲くんが、あ、修くんのお兄さんね。

三雲くんが家族へのクリスマスプレゼントとして用意してたんだけど、色々とあっていけなくなって最終的にはキャンセル料が勿体ないから千佳ちゃんと遊真くんと修くんと修くんのお母さんと一緒に行くことになったんだって」

 

 実際のところはなんやかんやという所は嘘であり、遊真へのクリスマスプレゼントとして悪意もなにもない食べ放題ツアーをプレゼントとした貴虎。

 

「嘘、だろ……」

 

 本当に純粋な善意であり、特に悪意の無いものだった。

 しかしクリスマスを楽しみにしていた迅を絶望へ突き落とすには最強の悪意であり、迅は落ち込む。楽しい楽しいクリスマスパーティーは存在しないのだと。

 

「あ、因みに私も今日は家でクリスマスを祝います」

 

「ぐふっ!」

 

 とどめの一撃をさされた迅は横たわる。

 宇佐美はごめんねと謝り去っていき、玉狛支部には陽太郎の相棒であるカピバラ、雷神丸(♀)だけが残っており

 

「クリスマスなのに、甘くない……しょっぱい」

 

 涙を流している迅の上へと乗り掛かる。

 今年もまた、彼はクリぼっちの守護神として君臨する。尚、クリスマス誘うの失敗した人の頂点にはS村さんがいる。

 

「イルミネーション……電灯を見に行くだけでお金を取るのか」

 

「そういうのって、見れば意外と心を踊らせるものが多い」

 

 一方、その頃貴虎はイルミネーションツアーの見送りにいっていた。

 

「貴虎さん、ありがとうございます!」

 

「気にしないでくれ、この前の事もあるし……クリスマスにイルミネーションは良いぞ」

 

「兄さん、本当に良いの?」

 

「構わない。私の方も私の方で予定があるし、思う存分に楽しんでこい。お土産はいらない」

 

「ありがとう、兄さん」

 

 遊真、千佳、修がバスへと乗り込む。

 楽しそうに笑う弟や弟の友、未来の義妹を見て心を和ませる貴虎はプレゼントをしてよかったと微笑む。

 

「表情筋、全然動いてないわね」

 

「あんたの遺伝だよ……まぁ、母さんも楽しみなよ」

 

「ええ、楽しませて貰うわ。

この日の為に貴方が誕生日にくれた最新のカメラも使い方を覚えたわ」

 

「上手く千佳と修のツーショットが撮れれば良いが」

 

「大丈夫よ、レプリカも協力してくれるから」

 

「そっか……!?」

 

 千佳と修のイチャイチャ写真が欲しい母からなにやらとてつもない言葉が出てきた。

 これはツッコミをいれるべきなのだろうかと考えたのだがその前に母はバスに乗り込み出発をしていった。

 

「もうあの人に関してはツッコミを入れるのはやめるべきだな」

 

『そうしておいた方が良い。香澄殿は遥か彼方を見ている』

 

「うおっ……って、なんだレプリカか」

 

『私には驚いていても、私のこの姿には驚かないのか?』

 

「お前はトリオン兵だからそれぐらい出来ると思うから驚かない」

 

 何時の間にか自分の隣にいた小さなレプリカ、通称ちびレプリカ。

 万が一になにかあった時の為にと母に頼まれてうみだした個体であり貴虎は知っていたのでそこまで驚かずにいる。

 

『兄殿、香澄殿から言伝を預かっているが……』

 

「一応、聞いておく」

 

『ゴムをしなくても良いのよ?とのこと……ゴムとはいったい』

 

「知らんで良い!そしてなに言ってるんだあのババア!

まだ40過ぎなのに、本当の意味でババアになるつもりか!つーか、相手私とタメだから出来ちゃったはダメだろう!」

 

『最近は授かり婚と言うのよ、とも預かっている。それでゴムとはいったい」

 

「レプリカ、それはインターネットとリンクさせて自分で学習してくれ」

 

 疲れた貴虎は目頭を押さえながらバスターミナルを後にする。

 

『兄殿、何故今日は残ったのだ?』

 

「私、夜に彼女とお笑いのライブを見に行く予定がある。

その前に色々とやる予定があってボーダーの隊員と会うから隠れていてくれ。後、言うなよ」

 

 彼女の事については言うなと釘を刺すものの、修経由で遊真は知ることになると貴虎は知らない。

 貴虎はレプリカを上着のポケットにしまうと家へは帰らずハンバーガー屋に向かうと太刀川と堤がいた。

 

「すみません、待ちましたか?」

 

「いや、全然待ってないよ」

 

「それよりもちゃんと準備は出来ているんだろうな?」

 

「ええ、例の物です」

 

 何時になく真剣な顔の二人は今日この後、ファントムばばあもとい加古の誕生日を祝うことになっており、その祝う生贄を増やす。

 

「焼肉を平らげた私が言うのもなんですが、すみません」

 

「気にすることないよ。むしろ、こっちが君の時間を潰したかもしれないんだから」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

「二宮の事は気にすんなよ……一応は、一応は誘ったんだぞ?」

 

 ある方法を使い、太刀川達は今から二宮をボーダー本部へと連れていく。

 その事とは別の事に罪悪感を抱いているのだがそんな事を気付くはずもなく目が血走る太刀川は二宮の事を思い出す。

二宮を生け贄にする気満々で誘ったのだが、あっさりと断った。その癖、誕生日プレゼントだけはちゃんと用意している。自分だけ安全圏内にいるんじゃねえよと憎悪の炎を燃やす。

 

「……まぁ、そのクリスマスプレゼントです」

 

「お、サンキュー……なんて書いてるんだこれ?ただなんとかまる?」

 

「正露丸ぐらい読めるようになってください。胃薬です」

 

「三雲くん、縁起でもない事はやめないか!」

 

「無理です。二人から、死相が出てます!」

 

「お前、迅みたいに色々とやって未来を変えれないのか!」

 

「私ボーダー隊員じゃないですし仮にボーダー隊員でも相手、加古さんですよね?」

 

「太刀川、落ち着くんだ……加古ちゃんは絶対に人の話を聞かないし言うことを聞かない」

 

 正露丸をプレゼントしたことにより一悶着するものの、直ぐに落ち着く三人。

 これはお守りがわりにしておくと懐に堤が入れる。

 

「胃が痛む」

 

 自身の中の罪悪感が増す貴虎。

 この場には呼んではいないが柿崎と来馬も呼ばれている。尚、風間は今年は思い人がいないレイジを優先しており参加はしない。その事を伝えられると更に罪悪感が増していき早いところやることを終わらせて逃げなければとメガネを外す。

 

「来ましたよ」

 

「来たか」

 

 今日、二宮が何処でなにをするのか当てる。

 事前にクリスマスプレゼントを来馬に渡している二宮を当日に捕まえる方法が無く、クリぼっちの守護神である迅はこの時期はくそのやくにもたたず、貴虎に頼る太刀川達。

 早いところこの場から去りたいと滅多なことでは出さない全力を出して二宮が何処にいるのか、何処を歩くのかを占いで叩き出した。

 

「でかした……後は任せろ」

 

 貴虎は持ってきた水筒に入っている飲み物を近くのコンビニで購入した紙コップに2つ注ぐ。

 1つは太刀川が、1つは堤が持ち二宮から見て2人が仲良く談笑している立ち位置を再現。

 

「お前ら、なにをしている?」

 

 今日は加古の誕生日で、巻き込まれたくないが為に逃げている二宮。

 これから死ぬより辛い運命が待ち受けているのに嬉々としている二人を見て疑問に思い声をかける。

 

「確定だ」

 

 声をかけなければ二宮は死ぬ未来には辿り着くことはなかった。

 だが、二宮は声をかけてしまった。好奇心は猫をも殺すというが、二宮は自らの手で首を絞めた。

 

「二宮、ちょうど良いところに」

 

「どうした?」

 

「今、太刀川が色々な人にシンジャエールを配ってるんだ。二宮もどう?」

 

「ジンジャエールか」

 

「唯我のやつが試供品だかなんだかで持ってきたんだけど、ぶっちゃけジンジャエールそんなに飲まねえんだ。

コーラとかお茶とかなら飲むけど……ほら、ドリンクバーでもジンジャエールはあってもミックスに使ったりするぐらいで、そのままで飲まないだろ?流石に今日のに出すのも悪いしさ」

 

「ふん、オレはドリンクバーでもストレートで飲む」

 

「そうか?まぁ、とにかくシンジャエールを味見してくれよ。バカみたいに余ってるから、美味かったらやるよ」

 

 上手く二宮の意識を飲み物へと誘導する太刀川達。

 紙コップを取り出して水筒に入っているシンジャエールを入れると泡がたち、太刀川はそれを二宮へと渡す。

 二宮はシンジャエールをまじまじと見て色鮮やかだなと金の力でA級に入った男が持ってきただけのことはあると感想を述べ、口にする。

 

「……っ、てめえ……」

 

「悪いな、今日は一人でも欲しいんだ」

 

 何処ぞのキングと声は同じだが、飲んだまま立ったまま意識を失い君臨をするわけでもなく倒れた。

 味に気付き意識を失うまで少しだけ間があるのは見事なものだったが、それだけであり太刀川はゲスな笑みを浮かびあげる。

 

「これで、本当によかったんだろうか」

 

「分からねえ……それより、これ本当に飲んで大丈夫なのか?」

 

「太刀川、やめるんだ。加古ちゃんの炒飯を食べる前にそれを飲むんじゃない!」

 

「あの、急いで車に乗せて連れていかなくて良いんですか?」

 

「おう、そうだな。頼んだぞ、堤」

 

 気絶した二宮を太刀川が背負いすぐ近くに止めてある車に向かう一向。

 レッカーされることもなく普通に止まっていた車に二宮を太刀川が乗せるという色々とヤバい絵になっているが緊迫した空気の中では誰かがツッコミを入れることはなく、二宮にシートベルトをする。

 

「私に出来ることはここまでです……どうか、閻魔大王の元に行かないように」

 

「ああ、逝ってくるよ」

 

 二宮を乗せた車は走り出す。

 加古の誕生日を祝うべく、加古の誕生日に呪われるべく男達はボーダー本部へと向かった。

 

『兄殿、あれは拉致ではないのか?』

 

「それを言ったらおしまいだ。

さて、正露丸を読めない大学生も行ったし、遊びにいかなければ」

 

 やるべき事はやったと、既にやらかしているとボーダー本部に背を向ける貴虎。

 自分の使命は果たしたのだとそれ以上は深くは関与せずに彼女の元へと向かいお笑いのライブを見に他県まで向かう。

 

「……ここは」

 

「おはようございます。二宮さん」

 

「お前は……黒江か」

 

 それから少し時間が経過し、数時間後。

 意識を失っていた二宮は目覚めると見知らぬ部屋におり、今年入った隊員で最も優秀と言える最年少のA級黒江双葉に声をかけられて状況を理解する。

 

「太刀川と堤は何処だ?いや、それよりもオレのトリガーは何処だ?」

 

 そして殺意を抱く。

 例えポイントを奪われようともこの二人は殺ると持っていた筈のトリガーが無いことに気付いた二宮は双葉に聞くのだが双葉はその質問には答えなかった。

 

「皆さんはあそこで話し合っています」

 

「……ッチ……」

 

 トリガーの場所を絶対に教えることはない。

 そう悟った二宮は文句の一つでも言ってやろうと立ち上がるのだが足枷がつけられていることに気付く。

 

「おい、なんだこれは?」

 

「……皆さんから聞きましたよ?

毎年加古さんの誕生日にプレゼントを直接渡さずにいるのを。一度ぐらいはちゃんと渡すつもりはないんですか?」

 

 キッと13歳児に睨まれる二宮。臆することも心が傷付くこともないのだが、それに関しては二宮が悪い。

 鍵は持っているが逃げられると困るからと鉄枷をつけた状態で動けと言われ、渋々そのまま遊んでいる太刀川の元に向かう。

 

「お~起きたか」

 

「起きたじゃない……貴様、なんのつもりだ!」

 

「はっはっはーなんのつもりって、お前そりゃあ決まってる……死にたくねえんだよ!!」

 

「君は毎回逃げている……一度ぐらいは痛い目に遇っても良いじゃないか!!」

 

 心からの叫びをあげる太刀川と堤。

 なんの迷いもなく生け贄にする言葉は二宮をより苛立たせて思わず手が出るのだが来馬と柿崎に止められる。

 

「まぁまぁ、落ち着いて。

二宮くん、無理矢理連れてきたことは悪いけど……折角だから加古ちゃんの誕生日を祝おうよ」

 

「太刀川さん、堤さん、大人げないですよ。そんなに怖いんですか?」

 

 (二宮が)ギスギスとした空気が流れている。

 これは別の意味でまずいのでは?と双葉は遠目で見ていると、本日の主役(魔王)である加古が5人の前に立つ。

 

「あら、目覚めたのね」

 

「いいや、まだ目は覚めない。お前が居るのは悪夢だ」

 

「だったら、年柄年中悪夢を見ているのね。精神安定剤でも常備したら?」

 

 向かい合って早々に毒を吐きあう加古と二宮。

 双葉はどちらかと言えば嫌いな木虎と自分もこういう感じかとなるが、自身が一方的だなと直ぐに違うと首を振る。

 

「とにかくこれを外せ」

 

「え~外したら逃げるでしょ?」

 

「当たり前だ。こんな所に居ていられない」

 

「酷いわね、同期の誕生日を祝おうと言う優しさは無いの?そんなんだから、勘違いをされたり周りから堅いとか天然とか言われるのよ」

 

「オレは堅くも天然でも勘違いでもない。

そんなに誕生日を祝ってほしかったら、今すぐに焼肉を奢って厄落としをしてやる」

 

「私は疫病神?捨てる神あれば拾う神もいるのよ?」

 

 ああ言えばこういいこういえばああいう二人。

 柿崎と来馬はあたふたするのだが二人はそういう感じの関係性なのを知っているので太刀川達は特になにも言わない。敷いて言うならば、二宮、焼肉屋に連行しろと思っているぐらいだ。

 

「焼肉も良いけど、もう今日は決まっているわ。

数日前から仕込みや準備をしているのだから、今さら変更なんて無理」

 

「数日前、だと……」

 

 決して自分は料理上手ではないし普段から料理をするタイプでもない。しかし炒飯ぐらいならば簡単に作れる。

 それはこの場にいる柿崎や堤も同じで、炒飯なんてパパっと出来るもの。変わり種のチャーハンなら数時間は掛かるかもしれないが、数日前からの仕込みとなるとおかしい。いったいこれから自分はなにを食わされるのかと少し引いてしまう二宮に柿崎は肩に手を置いた。

 

「美味しい炒飯は、美味しいらしいですよ」

 

 そう語る彼の目は死んでいた。

 加古の誕生日を祝う純粋な気持ちはあるのだが、これから起きる出来事を想像し覚悟を決めた。19歳組随一の苦労人である彼は自分がハズレを引くものだと何処か決めつけていた。

 

「あ、そうそう。引く順番はローテーションじゃなくて来馬→柿崎→俺→堤→二宮だからな」

 

「待て、引く順番?」

 

 昨年の悪夢を反省したのか、箱を引く順番を二宮が寝ている間に勝手に決めていた太刀川。

 どういうことだと説明を聞くと二宮は殺気を太刀川に向けるのだが、そんなものよりも炒飯が怖いので怯えずにいる。

 

「あの今回はそんな物を使いませんよ?」

 

「なん、だと……」

 

 二宮を犠牲にしてでも生き残ろうとする男達の計画は双葉の一言により消え去る。

 先程から一切見えないがなにかをしている加古。そしてなにもしらない双葉。それはつまり

 

「もう作るメニューが決まっているだと……」

 

 くじもなにもなし。運要素しかないDEAD OR ALIVE GAMEのはじまりである。

 

「は~い、お待たせ」

 

 いったいどんな物を食べさせられるのかと怯えていると大皿を両手に持った加古がやって来る。

 

  まさか、複数の炒飯を作って全てを混ぜ混んだミックスチャーハンなのか!?

 

 当たりすらもハズレにする最終兵器を作ってきたぞこの女!と叫びたくなる(来馬以外)のだがそれを抑えて先ずは具材だと皿を見る一同。

 

「これは……」

 

「皆さん、今年は炒飯じゃなくてコロッケですよ?」

 

 皿の上には色とりどりのカオスな炒飯、ではなく三角形の綺麗な揚げ物が、コロッケが沢山乗っていた。

 

「今年は炒飯じゃないんだね」

 

「ええ、今年はちょっと別な風にしてみようと思ったの。

それにこの人数だと一人一人に振る舞うと確実に誰かが食べれない時間が出来て苦しいでしょ?」

 

 ※空腹の苦しみが幸福な時があります

 

 炒飯が来る、炒飯が来てしまうと怯えていた一部の男はまさかのコロッケが登場するとは思ってもおらず呆気に取られてしまった。

 

「そうか。コロッケだから数日前に仕込んだのか」

 

 呆気に取られてしまったが直ぐに意識を現実に戻す太刀川は好物のコロッケが出てきたのかよっしゃとテンションを少しだけ上げた太刀川は加古特性のコロッケを手にする。

 コロッケは結構手間の掛かる料理。蒸かしたり茹でたりしたジャガイモを潰して味付けしながら炒めた玉ねぎと挽き肉を混ぜてコロッケの型にして冷やす。その冷やすをしないと揚げた際にコロッケが崩れてしまう。

 肉じゃがコロッケやカレーコロッケ等の変わり種のコロッケは更に仕込みに手間が掛かると太刀川は納得してコロッケを口にしようとするのだが手が止まる。何故か止まってしまう。

 

 なんで、コロッケなのに綺麗な三角なんだ?

 

 コロッケ好きで色々なコロッケを食べてきた太刀川は疑問を持つ。コロッケといえばこう、小判みたいな平べったい楕円形なのが定番で、メンチカツみたいに分厚い円形もあるのを知っているが三角なのはおかしい。

 ちょっと作るのに失敗して変な形になったわけじゃない。加古は明らかに狙って三角形のコロッケにした。何故わざわざそんな事をするんだ?

 太刀川は今まで食べてきたコロッケを思い出す。

 かぼちゃコロッケ、さつまいもコロッケ、肉じゃがコロッケ、カニクリームコロッケ、焼きそばコロッケ、チーズコロッケ、牛肉コロッケ、すき焼きコロッケ、他にもご当地や良いとこのコロッケなど数々のコロッケが頭に浮かび

 

「まずい、全員口をつけるな!」

 

 答えを導き出した。

 

「……」

 

「手遅れだったか……」

 

 だが、既に時遅し。

 柿崎はコロッケを口にしており白目を向いていた。

 

「実は、少し前に炒飯作りに息詰まっていたの。

美味しい炒飯を作ろうにもワンパターン化してきてしまってこのままだとまずいと思って相談にいったの」

 

「そ、相談って誰に相談を?」

 

「出水くんのお友達の三雲くんよ。

去年、双葉が1月に入隊する事を占いで当てたからどうにかしてスランプを抜け出せないのか聞きに行ったの。」

 

 相談相手の名前を聞いて、堤は一瞬で理解できた。

 少し前まで一緒にいた男がどうして申し訳なさそうな顔をしていたのか、どうしてクリスマスプレゼントとして正露丸をプレゼントしたのかを。

 

「そ、それでどうなったんだ?」

 

 なんとなく察している太刀川は恐る恐る続きを聞く。

 

「そういう占いは出来ないって言われたのよ。

あくまでも未来を占うだけで、どうすればそうなるかなんて分からないし、そもそも今年は占いをしていないって。

けど、それでもどうにかならないか聞いたらその時に彼が読んでいる本を渡してくれたのよ」

 

 加古はその時、貴虎が読んでいた本を……クッキングパパの11巻を取り出す。

 

「この本に乗ってる料理でも作ってみればと言われてね……」

 

 クッキングパパは料理漫画。家庭でも出来る料理漫画で毎話ごとに料理のレシピが載っている料理のレシピ本としても使えなくはない一粒で二度美味しい漫画。

 加古はページを捲り続けて、ある話のレシピが載っているところで手を止める。

 

「この巻におにぎりコロッケって料理のレシピが載ってたの

これを見てピンと来たのよ……ただただ、炒飯を作るんじゃなくて炒飯を作り、それをライスコロッケにしてみようって」

 

 どうかしら?と微笑む加古に戦慄する太刀川、堤。

 どうして貴虎が申し訳なさそうにしているのか、それは加古が炒飯でなくライスコロッケを作ってくるのを知っていたから。具材とかそういうのが既に決まっていて尚且つ何が入っているのか見た目で見抜くことが出来ないライスコロッケを作れば良いんじゃないかとアドバイスをしてしまったからだと分かる。

 

「沢山、用意したから食べてね」

 

 その日、来馬と双葉と遅れてきた加古隊の喜多川と小早川以外は死んだ。




柿崎

バナナ&ナタデココ&飲むヨーグルトのライスコロッケ(死亡)

来馬

サンマのバターライスコロッケ(当たり) ビーフシチューライスコロッケ(当たり) チーズインハンバーグライスコロッケ(当たり) 桃屋の瓶詰めミックスライスコロッケ(当たり)

太刀川

とろろ昆布ライスコロッケ(当たり) ホームランバットのココアライスコロッケ(アウト)



マーブルチョコと砕いたうまい棒で味付けしたライスコロッケ(死亡)目覚めてからのゼリービーンズのフリスクライスコロッケ(堤は二度死ぬ)

二宮

大学芋ときんぴらごぼうのライスコロッケ(普通) タコのチリソースライスコロッケ(当たり) 蜂の子と熊肉のライスコロッケ(死亡)


かなり醜い争いが発生した。
それはそうとアニメ続編が来るぞ、ヒャッホイ!

ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯

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