1月8日、入隊日当日。めでたく正式な入隊をした遊真と千佳。
旧ボーダー隊員を除けば踏んだ場数も経験も圧倒的な遊真はトリオン兵を倒す訓練で歴代最速の記録を叩き出し、、狙撃手の千佳は何処ぞのグラサンが敢えてトリオンに関する情報を送っていなかったのでその事を知らなかった佐鳥がトリオンが豊富であればあるほど威力の増す狙撃銃、アイビスで試し撃ちをさせてしまい本部の壁に穴を開けるという惨事を起こし、現在時の人になりかけている。因みにだが、貴虎はアイビスで穴を開ける光景を撮りに本部が撮れる場所でカメラを手にスタンバっていた。
『伝達系切断、三雲ダウン』
その一方、修は風間に勝負を挑まれた。
A級3位の部隊を率いる隊長で、ボーダーが出来て直ぐに入隊し、暴力でポイント剥奪された1万越えの影浦やつい最近ランク戦に復帰した迅を含めて5本の指に入る攻撃手で個人総合3位の風間。
入隊式の進行役である嵐山は修に戦うべきではないと言うのだが、修が目指すのは遠征。
元から実力がある遊真と、トリオンはボーダーの中でもどころか近界民の世界でも見たことの無いほどにぶっちぎりな千佳。その二人と組み、遠征を目指すのだが少しだけ置いていかれる危機を感じている。
風間は何れは越えなければならない壁だと修は挑んだ……その結果は言うまでもない。
「んだよ、20戦20敗じゃねえか!」
一対一の模擬戦を行うものの、良いところは全くなく惨敗する修。
模擬戦を行う仮想訓練室の機械を操作し、見物をしていた諏訪はつまらなさそうな顔をする。
修達が戦っている仮想訓練室は機械とトリガーを繋げてトリオンを機械で再現し、トリオンを擬似的とはいえ無限に使える。
風間はサブトリガーであるカメレオンを使い透明になり、修に接近。カメレオンを解除し、スコーピオンで斬る。
それを20回も繰り返すだけを見ていれば誰だって飽きる。珍しく風間がB級に絡んでその結果がいじめに近い姿ならば尚更だ。
「あのトリオン兵を見つけただけで成り上がったから経験少ねえのか?」
「多分、それもあると思いますよ」
諏訪の横で同じく模擬戦を観戦している堤も少しだけ飽きていた。
修の兄である貴虎がやたらスペックが高く、修も時の人となったのだからと少しだけ思っていたが、蓋を開ければこの様。風間が物凄く強いから、というのもあるがそれ以前に修が弱すぎた。
「……もういい」
20戦以上も戦ったが、自身に掠り傷の1つもつけることが出来ない修を見て風間は落胆した。
近界民と聞かされていた遊真は凄かった。だが、修は物凄く弱かった。アステロイドの大きさは今まで見たことのない小ささで威力は低く速度は遅い。自分から攻めようとする姿勢はあるもののレイガストはシールドモードで防御から攻撃に転じるまで隙が大きすぎる。
特徴もない。B級下位の中でも酷すぎる弱さ。迅がわざわざ玉狛に入れた理由がよく分からず、少しだけ期待した。
「なぜ、アイツじゃない、なぜお前なんだ」
「!」
貴虎の弟だからと期待した。
風間は貴虎と親しく親交が有るか無いかといえばそこまでなものの、あることだけはハッキリと覚えている。昨年のボーダーのお年玉企画で、凄まじいスペックを発揮した貴虎。生身の肉体で香港のスタントマン無しの大スターの様な動きをし、弓場並の銃の腕を持っている。
進学校組なので詳しくは知らないが、成績優秀で防衛任務で休む隊員の為にノートを用意している米屋や別役のような悲劇を起こす事のないフォローも出来る人間で、それをよく知る出水はあいつ来ねえかなと愚痴っているのを何度か見たことがある。
「アイツはなにをしているんだ」
目の前にいる修は明らかに戦いに向いている人間じゃない。
この場に弟は居るのに兄は居ないことを疑問に持ち、どうしてこいつなんだと比較する風間。
「……分かってますよ、そんな事ぐらい」
その言葉が聞こえた修は自分の弱さを悔やみ、怒りを表す。
「すまない。今のは失言だった」
兄弟だからと比較するのは良くない。
自分がつい呟いた事を詫びるのだが、もう止まらない。
「そう思うのなら、とことん付き合ってください」
貴虎と修は仲が良い。貴虎は修の事が大好きで、自慢の弟だと思っている。修も貴虎の事が大好きで、自慢の兄だと思っている。だからと言って、なにも思っていないわけではない。
修には修の良さがある。母である香澄も、千佳も遊真も貴虎の良さと修の良さの違いをちゃんと分かっている。だが、それでも差はある。蓮乃辺市で一番の中学校を塾にも通わずに合格した兄。対して家庭教師を雇っても、成績トップに立っていない修。学校の成績だけが全てでないのは分かっているが、それでも思うことが、無いわけではない。
「いいだろう」
なんとしてでも倒す。
今の自分ではこんなものかと諦める気持ちを切り替える。
『伝達系切断、三雲ダウン』
だが、気持ちの強さと実力はそこまで繋がらない。そんなものは全くといって関係の無いことだ。
「貴方ね、いい加減に諦めなさいよ!」
更に5敗し、停滞し続けていると木虎が入り修に諦めることを進言する。
「それは出来ないことだ」
「気付いていないの?さっきから風間さんは貴方を斬るときに同じところを斬ってるのよ!これ以上、醜態を晒して惨めな思いをする前に今は諦めて」
「惨めな思いなら、とっくの昔からしてるよ!!」
「なっ……!?」
余りにも惨めな姿に、木虎なりの救いの手を伸ばすが修は拒む。
修を詳しくは知らないがどちらかといえば大人しく礼儀正しい性格な印象を持っていた木虎や時枝はその姿を見て驚く。風間は自分の失言を後悔する。
「木虎、出よう」
「時枝先輩、でも」
「良いから、出るんだよ……ごめんね、木虎がなにも考え無しに言って」
「構いません……事実ですし」
「こう言うのは本当にダメなのは分かってるけど、木虎の言っている事は間違いじゃないよ……今の君じゃ勝てない」
そんな修の姿を見て、なにが原因かを察する時枝は木虎を回収。
時枝は頭を下げて詫び、1つだけアドバイスをして去っていきその光景を見て少しだけ頭が冷える修。冷静になり、どうやって風間に勝つのかを考える。
修のトリガーはメインがレイガスト、スラスター、サブがアステロイド、シールド、バックワームの計5つ。カメレオンをどうにかするにはアステロイドを物凄く細かくし、訓練室に超低速散布すれば良いとなりそうしようとするのだが、止める。
『伝達系切断、三雲ダウン』
「違う、そうじゃない」
「……まだか」
その方法でなら、風間のカメレオンをどうにかすることが出来る。だが、それじゃダメだ。
自身のトリオンが絶望的なのは知っている。その戦法は本番では使えない。訓練室でのみ使える戦法は出来ない。
もっと別の方法がある筈だと必死になって考える修を見て、なにかをしてこようと試行錯誤を繰返しはじめる。
「木虎、後で謝りなよ」
試行錯誤を繰返す修を見て、さっきの一件について叱る時枝
「……分かっていますよ」
修があんな風に言ってくることを思っていなかった木虎。悪いことをしたと反省をしている。
「なにで謝るか分かってるの?」
「貴方では無理と言ったことです」
「違うよ」
「どういうことですか?」
「……色々と勝手に思い込んでたりしたオレ達も悪いんだろうな」
「そうだな」
やたらと優秀で一部の隊員には人の良い貴虎。
修が弟だと知れば、やたらと期待したり出来るイメージを持ったりとした。弟さん、居るなら紹介してくださいよ!と佐鳥は堂々と言った。貴虎は言うとややこしくなるからと言わなかったのがなんとなく分かる。
「程好い距離感って、大事だぞ。時枝」
「大丈夫、物凄く知ってるから」
「どうしたんだ?」
成績優秀、ボーダーの顔、イケメン、非の打ち所が無い男、嵐山准。
シスコンorブラコンなのを時枝というか嵐山をよく知る人達は知っており、弟と妹がとても良い子なのは知っている。しかし、それが逆にコンプレックスになったりするのも知っている。嵐山隊の時枝は嫌でも知っている。変に期待したりした事を申し訳ないと思う。
「僕じゃ……」
20戦以上も負け続ければ、今の自分では勝負すら出来ないとなり考える修。
フィールドを生かす戦法……は、出来ない。訓練室はなにもない。ここでは純粋な実力でどうこうしないといけない。相手は手心を加えることも油断も絶対にしない隙を見せない風間。
「……!……」
ならば、今の自分以外の誰かの動きをすれば良い。
弧月で強い人は、師匠である烏丸だ。スコーピオンで強い人は遊真だ。修の使っているのはレイガストで、レイガストで強い人物はレイジなのだがその戦い方を知らない。というか、レイジはレイガスト二刀流だ。
色々と考えて考えて、なにかないかと模索していき一人だけ居た。盾を使った強い人物を。
「……確か、大きさは」
その人物の動きや思考を真似ることを少しだけ躊躇うが、直ぐに躊躇いを投げ捨てる修はレイガストの盾モードを何処まで弄くれるのかを確認する。
「風間さんは……スコーピオンを使っている。スコーピオンを持って使っている」
そして考える。
その人物ならばやりそうなことと、今まで負け続けたことにより得た経験値で風間の攻略を。
一矢報いるもなにも自分のスペックと風間のスペックは大違いで、一個も勝るものはないと改めて自分を見直すのだが、あるものだけは同じじゃないのかと気付く。それと同時に今まで風間は自分をどうやって倒したかを思い出す。
今の自分に出来ること、今の自分のトリガー構成や今の状態でも出来ることを考えた。
今まで負けて覚えたこと、二十数戦も戦って一矢報いることすら出来なかったがそれでも得たものはあった。
これから出来るようにならなければならないこと、今の自分がまともに出来ていないが出来るようにならなければならないことは分かっている。
お手本となる動き、修と似た感じのトリガー構成はいない。先ずはレイガスト一本、自分が思う最もレイガストを使いこなせそうな人物を想像し、その人の思考を読み模倣する。
「なにかを考えたり、レイガストの盾を動かしたりしてますがアレはいったい?」
「俺にもよく分からない。ただ、なにかをしようとするための確認をしている」
なにかをやろうとし、雰囲気が変わる修に気付く見学者一同。
『模擬戦、開始!』
これでダメならば、もう修はなにも出来ない。
最後の戦いがはじまると風間はカメレオンを使い姿を消し、修は待っていたと言わんばかりにアステロイドを出して4×4×4に分割をした
「アステロイド!」
「あ~あ~、なにやってんの?あんなのが風間さんに通じるわけないでしょ。学習能力が無いの、あいつ?」
カメレオンは無敵ではないとアステロイドを撃った。しかし、避けられ奇襲を受けた。
20戦の敗けの中でそれが数回あり、上から見物をしていた菊地原は修を見下して呆れる。その手はもう通用はしない。
「なにをやってるのよ……」
修の撃ったアステロイドは風間にも壁にも当たることはなかった。
「手を変えてきたな、オサム」
「流石に二十数回もやれば誰でも覚えれるが、違うようだな」
その事に呆れる木虎に対し、遊真と鳥丸は関心をしていた。
「さっきとアステロイドの種類が違うね」
「時枝先輩、どういうことですか?」
「アステロイドの分割とか威力、速度、射程の振り分け方を変えてるんだよ」
「三雲くんのサイズなら、大して変わらないのでは?」
「アレは倒すためのアステロイドじゃない……と思う」
修が撃った今までのアステロイドは、風間に当たることなく訓練室の壁に当たった。
今回のアステロイドは違う。風間が模擬戦開始時に立っている場所で消えた。風間と自身との距離を覚え、自身のアステロイドで飛ばせる射程を見極めて余計な距離まで飛ばさずにし、今まで使っていた余計な距離の分を速度に回すことにした。
「射程を見極めたようだが、ある程度の射手なら誰でも出来ることだ」
その事については一応の関心はするが、そこまでで驚かずにレイガストを構える修の背後へと回り込んだ風間。
なにかをすると思っていたが、変わりは無い。コレが終わればカメレオンを使わずにスコーピオン一本で倒して修の心を折って諦めさせる事を考える。
「シールド!!」
スコーピオンの刃を振るう余裕の風間に反応をした修。
「無駄だ!お前のトリオンではっ、な!?」
修の撃ったアステロイドからトリオンが低いことは見抜いている。
物凄くトリオンが多いわけではないが、それでも修の貧弱なトリオンでのシールドを斬ることは出来るとそのまま斬ろうとするのだが、斬ることは出来なかった。
「はぁ!?なんだそりゃあ!?」
ソレを見ていた諏訪は驚いた。
「成る程、その手があったか!」
ソレを見て嵐山が自分じゃ思い付かないなと首を縦に動かし関心をする。
「風間さんが動揺をしている、今だ!」
ソレを見て、今しかないと烏丸は叫ぶ。
修の出したシールドは風間の手首ほどのとても小さなシールドだった。
シールドは大きさにより強度が変わるもので修の少ないトリオンでもある程度の強度を得ることが出来たが、それでも風間のスコーピオンの斬れ味の方が上だった。
「シールドで動きを、アレならトリオンが少なくても可能だ!」
修が出したシールドは風間のスコーピオンを防ぐものではなく、スコーピオンを持つ風間の動きを妨げるものだった。
どんなに凄い威力を秘めている銃でも引き金を引かなければ意味がない。どんなに凄い切れ味を秘めている刃でも振り切れなければ意味はない。
「オサムは先のことを考えて経験を積んでたみたいですなぁ、キトラさん」
修は何度も何度も風間のスコーピオンに斬られ、風間がスコーピオンを使って自身を倒す際にはスコーピオンを握って斬ってくる事が分かった。スコーピオンは体の何処からでも出すことが出来るが、そうせずに握って斬ってくる。なら、次も握って斬ってくると読んだ。負け続けた事により風間を認識して捉えるところまでは出来た。
負けから得たものを生かした修に笑い、負ける姿を見せる修を止めさせるべきだと烏丸に言った木虎にどやる遊真。
剣や刀で相手を斬るには先ず大前提として腕を振らないといけない。
太刀川も村上も遊真も生駒も烏丸も全員、体を動かして刃を当てている。勿論、風間もだ。ならば、やることはただ1つ。風間の手元付近にシールドを出して、動きの邪魔をする。
スコーピオンの刃なら修のシールドを斬ることは出来る。だが、風間の腕ではシールドを叩き割ることはできない。
「でも、風間さんはスコーピオンを二本持っているよ」
風間の腕付近にシールドを出して攻撃の動作を強制的に止めた。だが、それは片腕だけだった。
もう片方の手は空いており、その手にはスコーピオンが握られている。片方はあらぬ方向に折れているが、もう片方は健在の腕。
修の予想外の一手に動揺したものの、直ぐに冷静になった風間はもう片方のスコーピオンで斬ろうとするのだが、それよりも先に修が動いていた。
「この一瞬が、欲しかったんです!」
「ぅ!?」
修はレイガストを持っていない、なにも持っていない右手で風間の顔を殴る。
予想外の一手から更に予想外の一手を繋ぎ、風間の隙を大きく作った修。これ以上はもうない。この瞬間を逃すわけにはいかないと盾モードのレイガストの形状を先端部分が尖っている様に……兄である貴虎が使うメロンの盾と上下が真逆の形状に変えた。
「スラスター、ON!!」
トリオンを噴出し、推進力を増すレイガスト専用のオプショントリガーを起動。
スラスターの推進力に身を任せ、鋭くしたレイガストの盾の先端部分で風間刺してレイガストを手放し、そのまま風間は大きく後退をした。
「どう……だ……」
やれることはやった。
先端部分を鋭利にした盾は確かに風間を刺した。だが、貫くことは出来なかった。
『トリオン漏出過多、風間ダウン』
相手を斬った感覚はない。完璧に貫くことは出来なかった。だが、勝利をした。腹から煙を出している風間は負けた。
「勝った、のか?」
「ああ、お前の勝ちだ」
勝つための奇策をした為か、イマイチ実感が持つことは出来ない。
修は勝った風間は負けた。この事実は変わりなく、風間は負けを認めた。
「出るぞ」
「はい」
勝利をした修は全てを出し尽くしており、もうないと感じた風間は修と共に出る。
「やったな、オサム!」
「……」
「勝った実感がないのか?」
「アレは、勝ちじゃないよ」
頭が冷えて一矢報いることはできて冷静になった修はあの勝利は勝利じゃないと喜ばない。
「勝ちは勝ちだろう?」
「三雲、最後のは中々だったぞ」
修の言うことがイマイチ分からず、かといって嘘を言っているわけでもない。
どういうことだと疑問を持っていると風間が声をかける。
「確かお前は玉狛の所属だったな。レイジから教わったのか?」
「教わった?」
「レイガストのスラスターを利用したパンチだ……違うのか?」
「修は俺の弟子です」
隊長だしレイガストだし、玉狛だしと推測するの風間だが違う。
木崎レイジは千佳の師匠であり修の師匠は烏丸であり、少しだけ驚いたものの納得をする。
「そうか……お前の弟子か。最後のアレらはお前の入れ知恵か?」
「いえ、教えたのはトリオン分割とかの基礎中の基礎だけです。後は全部、アイツのアイデアで」
「違います」
烏丸が教えたのは本当に基礎中の基礎だけで、本当にこれといった戦術は教えていない。というよりは、烏丸は弧月と銃を使う万能手、教えれることに限界がある。だから、全て修が考えた。そう思っているが違う。
「レイジからパンチを教わったのか?」
「いえ、教わってません……ただ、真似をしてみようと思っただけです」
「真似だと?」
3つの攻撃手トリガーで最も不人気なレイガスト。
強い使い手は居るものの、制作者の考えとは全く違うやり方でしていたり改造していたりと参考にならなかったりする。ボーダーが出来て直ぐに入隊した風間は色々な隊員の顔を知っているがあんな感じの戦い方をする隊員に心当たりは全くない。
「風間さんに勝てなくて、最初はアステロイドの弾速を落として散弾にしようと思いましたが、僕のトリオン量だと実戦では使えなさそうな方法だったので止めて、どうすればと色々と冷静に考えました。今の自分に出来ることを、今までの敗けで分かったことを、これから出来ないといけないことを」
「それがアレか?」
「いえ、それだと中途半端でした。
風間さんはとても強く、1つ1つ比較して何処か隙がないか、対等に渡り合えるかと色々と考えて全てに置いて出来ないと思っていたんですが、1つだけ使えそうなものがありまして」
「それがシールドか」
「少し、違います。シールド、と言うよりはシールドを出したりする速度とかが同じじゃないかと思ったんです」
修と千佳と遊真。
三人がアステロイド(拳銃)を撃てば威力は大きく変わる。三人が弧月を持てば斬れ味も変わる。三人がシールドを出せば、シールドの強度も変わる。トリオン量によって同じトリガーでも出せる出力は変わる。遊真からそう教わった。それは間違いないのだが、あることに疑問を持った。出したりする速度は同じなのだろうかと?
三人同時にトリガーを起動すれば、トリオン豊富な千佳が一瞬で換装し最もトリオンが乏しい修が数十秒掛かるなんてことはない。修はシールドを出したりする速度は同じじゃないかと目をつけた……のだが
「そしてそこで終わったんです。僕の考えだと、僕のやり方だと」
速度は同じじゃないかと思ったがそこで終わる。
結局のところはシールドはシールドだとそれを攻めにする方法が浮かばなかった。
「次に、今の僕だと風間さんに一矢報いることが出来ないと分かっていました。だから、今の僕じゃないのを別の誰かの動きを真似てみようと思ったんですが……兄さんが浮かびました」
「待て、お前の兄はボーダーの隊員でもなんでもないはずだ」
「それでもです。兄さんならどうするか色々と考えました。
兄さんならシールドで相手の攻撃を防ぐのではなく、攻撃を妨害する事に使ったり、空中に浮かせて踏み台にしたり、階段みたいに使ったりと色々とするなと、空いている右手を使って殴るなと……レイガストの斬れ味は弧月とスコーピオンと比べても悪くて重いので、斬る武器じゃなくて殴打する武器として、鋭利にして使いそうだなと」
「……それを考える時点でお前の考えじゃないのか?」
「兄さんと同じことをやっても直ぐに差が生まれます。考えたのは兄さんが使って100%の力を出せます。
シールドで腕を動けなくする技は初見なのもありましたし、仮想訓練室で二十回以上も斬られたから風間さんのはなんとか出来ましたが、これがあると知ったので次はないです」
兄ならばそうするというのがよく分かるから出来ただけなので、あくまでもそれっぽくしただけだ。
兄ならばレイガストを殴打する武器として使う。先端部分が鋭利な盾を使っているところをみたことがある。盾で殴っているのをみたことがある。あくまでも兄がやっていることを模倣しただけだ。
「兄さんと比べられて、怒ってしまって、頭を冷やして自分じゃない兄さんの動きを選んで勝ったのならばそれはもう僕の勝ちじゃないです。兄さんの勝ちです」
今の自分じゃない別の誰かで勝ってもそれは勝利じゃないと修は自分の力で勝てなかった事を強く悔やむ。
兄の代わりにボーダーに入ったんじゃない。自分の意思で入った。自分がしたいとすべきことだからと入った。
「これからは、僕のやり方で強くならないと」
兄の動きじゃないと発想じゃないと勝てない自分は未熟だと改めて遠征までの道のりを遠く感じた。
「……お前は自分の弱さを知っている。トリオンも身体能力も低く素質もないことを」
「え?」
「だから、なにが出来て出来ないのかがよく分かっている。
発想と相手がなにをするか考える頭を持っている……知恵と工夫を使う戦い方は嫌いじゃない」
そんな修の姿勢を見て、風間は修の強さを認めた。
「すまなかった、オレの発言はお前を傷付けた」
そしてもう一度、改まって貴虎じゃないことを残念がった事を謝る。
「いえ、僕の方こそカッとなってしまって……僕自身、焦ってたんだと思います」
修はそれはもう終わったことだと水に流す。
トリオン怪獣の千佳、既に物凄く強い遊真、トリガーを隠し持っている貴虎と修の周りには物凄いのが多すぎて焦っていたと風間との戦いで何処かスッキリした様な顔になっていた。
メガネ(兄)「当小説が二乗ほど面白くなるおまけコーナーと言う名の設定とか裏話!!」
メガネ(弟)「久々だね、このコーナーも」
メガネ(兄)「まぁ、そんなに語る要素無いからな。と言っても、今回はあるが」
メガネ(弟)「今回は本編で登場したシールドを使った技、名前は?」
メガネ(兄)「かなり高度な技だからな。取りあえず、シャッター(仮名)でいこうシャッター(仮名)は、弧月を使う攻撃手に対して成功すれば最強ともいえる超高難易度の技。その方法は至ってシンプル、ブレードを振るおうとする腕の先に小さなシールドを置いて腕をぶつけさせて動けなくする、以上」
メガネ(弟)「それ、だけなんだよね……」
メガネ(兄)「技の内容事態はシンプルだ。
弧月は出し入れ自由でもなんでもない刀に近いトリガーだから弧月を振るう腕の動きを見極めてシールドを出し、動かしてる腕にタイミングよくシールドを出せば、そのまま腕をガキンとぶつけて弧月をちゃんと振ることが出来ずに弧月の攻撃を不発に出来る弧月使いに対しての最強の妨害防御技だ」
メガネ(弟)「タイミングよくか、上手くできるかな。風間さんの時は体で覚えたみたいなものだし……」
メガネ(兄)「うん、まぁ、そこが問題だな。
動き回る相手の動きを完全に見極めて腕を振り下ろす先は何処か瞬時に見極めて小さなシールドを出して動きを止めるのがシャッター(仮名)の難しいところ。余りにも早く出しすぎれば、腕を動かす位置を変えて素通り出来るし、遅すぎれば斬られる」
メガネ(弟)「これって、攻撃手全員に効くの?」
メガネ(兄)「弧月使いに関しては最強の防御妨害技、スコーピオン使いにはちょっと怪しく、レイガストには破られる技だ」
メガネ(弟)「スコーピオン、はまだ分かるけどレイガストもなんだね」
メガネ(兄)「スコーピオンは何処でも出し入れ自由だから、腕がぶつかってミスっても瞬時に足から出すとか刃を伸ばして届かせるとか色々と出来る。まぁ、基本的に通じるけど、それをされた時の対処法も無いわけじゃないといった感じで……レイガストはシールドを叩き割る。いや、もう本当にスラスターの推進力が恐ろしい。スラスターで加速すれば腕折れながらでも攻撃できるって恐ろしい」
メガネ(弟)「圧倒的なまでの物理攻撃なんだ……」
メガネ(兄)「だが、この技は極めればすごく便利だ。
なんか緑川が『迅さんの方がお前より凄いんだ!』って言ってきて挑んできてピンボールをしてきてグラスホッパーを出す場所にちょっと向きを変えたシールド配置したら見事なまでにシールドが足に刺さったりとか、双葉が韋駄天を使おうとした瞬間に目の前に出したら、そのまま顔面から突っ込んだり、盛大なまでに転んだりと色々と応用が効く技……タイミングさえ合えばだが」
メガネ(弟)「酷い……」
メガネ(兄)「ワイヤー+鉛弾+エスクードとかいう妨害特化の部隊を率いるお前が言っていいことではない。
とにかく、ボーダーのシールドはまだまだ可能性が残されている。空中で固定させて階段みたいに使ったりとか色々と出来る……すごく難しい技だけど」
メガネ(弟)「サイドエフェクトで視力が凄い兄さん以外に使いこなせる人が居るのかな?」
メガネ(兄)「はじめて合う近界民相手ならトリオンにものを言わせて巨大なシールドで動きを封じることができる千佳が、身内同士のランク戦限定だったら何名かは扱えそうな技術……あ、実力派エリートは使えない技術だ」
シャッター(仮名)
主に攻撃手に対して使うシールドを使った防御妨害技。
ブレードを振る腕の動きを見極め、腕を振った先を割り出し、小さいシールドを腕を振る前に出して腕にぶつけさせる。
力強く振った腕をシールドにぶつけるので突然の出来事に驚いたり、腕を折ったりする
弧月使いにとっては最悪な技で、弧月一本の攻撃手には最強の◎
スコーピオンにも効くが、そこからの対処法がスコーピオンにはあるので相性は普通の△
レイガストはスラスターのゴリ押しで腕がもげようがシールドを破壊する恐れがある相性最悪な×
グラスホッパーの上に出してグラスホッパーを封じる、グラスホッパーで跳んでる奴の頭上に出して無理矢理落とす、走ってくる隊員の足元や頭があるところに出してぶつけると色々と応用方法がある。
原理とか理論とかは物凄く簡単だが、空間認識能力とか洞察力とか判断力とかが必要で情報を用意できる身内同士で競うランク戦では使えるが初見の相手(主に近界民)にはそこまで使えない。
メガネ(弟)「スゴいのかスゴくないのかイマイチよく分からないや、これ」
ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)
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てれびくん、ハイパーバトルDVD
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予算振り分け大運動会
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切り抜けろ、学期末テストと特別課題
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劇団ボーダー
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特に意味のなかった性転換
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黄金の果実争奪杯