メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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第56話

 大規模な侵攻があり、警報が発令。

 私は警報が鳴る時間を当て、米屋達と共に未来を変えた。修も私が動き出すことを知り、ちびレプリカを自宅に向かわせた。一方、その頃、ボーダー本部の管制室は慌ただしかった。

 

『諏訪隊、現着した!近界民を排除する!』

 

『鈴鳴第一、現着!戦闘開始!』

 

『東隊、現着。これより攻撃を開始する』

 

 近界民(トリオン兵)の数は尋常でなく、西、北西、東、南西、南と五ヶ所から市街地に向かおうとしていた。

 西と北西を迅と天羽に任せるように本部長は指示を出し、本日防衛任務中だった部隊を残りの東、南西、南に向かえと指示。その間に移動するトリオン兵を事前に仕掛けていた罠を起動させて足止め。その間に三部隊が到着し、戦闘を開始。

 

「嵐山隊、風間隊、柿崎隊、茶野隊、荒船隊、香取隊もトリオン兵を倒しつつポイントに向かっています。

現在県外スカウトで他の隊員達が不在の草壁隊の緑川隊員は同校に居る加古隊の黒江隊員と共に行動、加古隊に合流した後、米屋隊員と出水隊員の元に向かうそうです」

 

「あんの、バカども!さっさと言わんか!冬島の奴は知らんと言っとるぞ!」

 

 他の隊の動向等についてS村さんが本部長に報告すると鬼怒田さんは青筋を浮かべる。

 他よりも10分だけ行動が早かった三門市立第一高校に通うボーダー隊員達。

 オペレーター以外が固まっている香取隊は即座に動くことができ、現場に向かうことが出来る様になっていたのだが嘘だとバレた。

 

「校内放送が流れた時、冬島は仕事をしておった。

学校の校内放送は独立した機械でハッキングなんぞすることはできん!犯人が居るはずだ!!」

 

 私がした雑な説明は割とあっさりと嘘だと見抜かれる。

 六頴館にも、三門大学にもボーダー隊員の学生や生徒は多数居るのに、それらを無視して最も生徒数の多い三門市立第一高校にだけ連絡をするわけがない。なんだったら普通に警報を鳴らせば良い。

 情報操作やメディアに強い男こと根付がいるのだから、ほんの一ミリでも違和感やズレがあれば一瞬でバレる。

 

「沢村くん、二人は何と?」

 

「協力してくれた人が居ると、それ以上はなにも」

 

 最初は迅と言ったが、迅は嘘だと否定している。何時来るか分かってるなら、スカウトで県外に居る草壁隊を呼び戻したりする。

 じゃあ誰がとなっていると偽冬島(私)登場。喋り方に違和感があったものの、声は瓜二つで冬島と親しい当真や小佐野には一瞬でバレるが、そこまで親しい関係じゃない声を聞いたことある程度の人間ならば騙された。

 そして騙した奴は誰かと二人に問いただすが、協力者が居るとだけで終わらせてそれ以上は答えない。出水と米屋はなんとなくで分かった。まだ、私が隠していることがあることを。

 1ヶ月待てと言ったのが大規模な侵攻に備えてなのだと分かったが、それだったらボーダーに居た方がいい。正確な日付どころか時間すら分かっているのならば、言った方が良い。なのにそうしなかった。それはそうしたらダメなんじゃないのかと、そうすることによりそのなにかが出来なくなるんじゃないのかと考えてクビを覚悟に言わなかった。

 

「避難場所にいる隊員達が今、犯人探しをしています。心当たりがある隊員が多く、向かってるとのこと」

 

「そうか……」

 

 本部長は直ぐに見つかってくれと願う。

 勝手な指示を出したことについての怒りはあるが、出した指示は悪くなかった。

 ノーマルトリガー最強と言われる本部長は近界民の世界の戦争を経験しており、今回の一件は4年半前の大規模侵攻よりも酷いと感じている。

 今のボーダーが出来て4年間、本部長としてやれることはやった。弟子の太刀川はボーダー隊員で1番強い。最初の狙撃手の東は戦術に優れている。弓場は銃の扱いに長けている。二宮はシンプルなトリオン攻撃の揺さぶりが強力だ。

 本部所属のボーダー隊員達は強い……のだが、それは本当に一部だけ。ランク戦という明確なランク付けをしていて、B級の隊員の強さのピンキリが激しいのを知っている。その上、A級の草壁隊(緑川を除く)と片桐隊不在という状況。

 人型の近界民がやって来る可能性もあり、ラッドが偵察目的で来たという話も知っているので一ミリの油断も出来ず、1つでも悪手を打ってはいけない。そんな中で、ボーダー隊員達が騙された嘘の指示は正しかった。

 相手の底が見えないので単独行動禁止、部隊として合流できるか、出来るならば合流地点を決める。出来ないならばA級は2名以上の4名以下のA級混成部隊で出撃、それが無理な隊員は警戒区域付近の市街地に行き、警戒区域付近で一般市民の避難誘導をし、警戒区域を出ようとするトリオン兵排除を指示。

 全員が揃っていて十二分に力を発揮できる部隊が警戒区域内でトリオン兵を排除し、取り零したのを合流できない複数の正隊員が倒す。無難な作戦で、相手の底も見えないので正しい指示だった。

 

「すんませーん、呼ばれて来たんすけど」

 

 誰が指示を出したかは知らないが、少なくとも間違っていない。

 今は起きている事に対応しなければと気を引き締めていると気が緩んだリーゼント、ボーダーのNo.1狙撃手の当真勇がオペレーターである真木理佐に叩き起こされて本部長達の元へと向かわされた。

 

「遅い!」

 

「警報とか色々とあったみたいすけど、寝てました」

 

「結構な大音量なんだがね……」

 

 割と結構な大音量の警報の中、アイマスクをつけて寝ていた当真に呆れる根付。今度から、警報を変えるべきではと考える。

 

「で、なんで隊長じゃなくて俺なんすか?」

 

 冬島隊の隊長こと冬島は三十路手前のおっさんであり、ジョシコーセーが天敵なものの人生経験豊富な大人でエンジニアチーフの一人。管制室に呼び出されるのは普通は冬島なんじゃないかと、狙撃手としての仕事が来たのかと思うが入った途端に違うなと感じた。

 

「当真隊員、冬島隊長と同じ声をしているものを知ってるか?」

 

「城戸司令、いきなりどうしたんすか?」

 

 突然の質問に当真は少し引いてしまう。

 当真と小佐野がいればバレていたであろう校内放送。

 明らかに狙って出水と米屋が第三者を連れてやった。その第三者を割り当てなければならず、それが誰か分かるのは最も冬島の声を聞いていて第一高校に通っている小佐野と当真だけだ。が、今現在、諏訪隊オペ中の小佐野に席を外させるわけにはいかないと彼が呼ばれた。

 

「知らないならそれで構わない。時間がない」

 

「うちの隊長と声が似てるってんなら━━━」

 

『忍田さん、こちら東!

新型トリオン兵と遭遇した。サイズは三メートル級。二足歩行の人型に近い姿をしていて━━』

 

『こちら鈴鳴第一!未知のトリオン兵と遭遇!

村上隊員が戦っていますがバムスターやモールモッドとは段違いの強さで━━』

 

『こちら諏訪隊!

大型のトリオン兵を討伐しましたけど、中から小柄の人に近い形のトリオン兵が出てき━━』

 

 当真が答えようとしたその瞬間、真っ先に現場に駆けつけた三部隊から殆ど同時に通信が入った。

 三部隊共に状況が似ていて、話を纏めると大型のトリオン兵の中から小型の未知のトリオン兵が出て来たらしく、ボーダーの中でも指折りの攻撃手である村上が手を焼く強さで、市街地に向かおうとするトリオン兵と違ってボーダー隊員を狙って捕らえようとしている。

 

「……分かった。増援がつくまで上手くしのいでくれ」

 

 そのトリオン兵の名はラービット。捕獲用のトリオン兵であり、同じく捕獲用のトリオン兵であるバムスターと違うところが1つある。民間人ではなくトリガー使いの捕獲を目的として作られており、戦闘用のトリオン兵と比べても段違いに強い。その為にA級でも油断すれば捕まる可能性のある代物で、その事を即座に全隊員に通達。するとレプリカからトリオン兵の名前などが伝えられ、当真以外の面々は感じる。

 まるでこうなると分かっていて迅の様に暗躍をして誘導されていると。A級でも混成部隊で行けとの指示はこの為にあったのではないかと感じる。

 しかしその感覚について議論する余裕は何処にもない。東隊の隊員の小荒井が緊急脱出、諏訪隊の隊長である諏訪が捕らえられる事態が発生。生半可な、それこそランク戦下位で停滞している部隊を下手に送ることは出来ず、かといってA級を送れば何処かが手薄になるという厄介な事態になっていた。

 

「それで、誰が冬島の名を騙った!」

 

「2年の三雲って奴が声そっくりで……確か、玉狛の三雲の兄貴っすよ」

 

「三雲関係で何回騒ぎを起こせば気がすむんだ!?」

 

 ラッドに遊真に千佳の大穴に遊真が緑川ボコったりと、騒ぎがあれば修あり。主人公だもん、仕方ない。

 

「とにかく、そいつを捕まえさせろ!!」

 

『……どうやら限界の様だ』

 

 これ以上、事態の混乱を招くわけにはいかないと部隊が揃っていない隊員に私を捕まえる指示を出したのを見て、レプリカはもう無理だなと感じた。

 

「美味い」

 

 一方の私は避難場所でお昼を楽しむ。

 米屋達を向かわせるのに多少の労力を使うどころかお昼抜きだったため腹が空いているのでお弁当をいただく。

 

「米屋達には申し訳無い……いや、焼肉があったな」

 

 米屋と出水を無理矢理動かしたので、あの二人も昼抜き。

 申し訳ない気持ちになるのだが、あいつらは後で焼肉を奢ったりしてもらうのでそこまで同情する余地は無かった。

 

「いた!」

 

 弁当を食べ終え、一息つくと熊谷がやって来た。

 

「なんで居るんだ?」

 

 一応の指示は出した。合流しろとか無理とか色々と言っていたのに、何故か避難場所にいる熊谷。取りあえずはなんで居るか聞いてみると物凄くしょんぼりとした。

 

「私達の隊、結構厄介なのよ。茜は中学、玲は星倫女学院、私と小夜子は三門第一で合流が……」

 

「多少の時間を掛ければ合流は可能なはずだが?」

 

 少なくとも二時間ぐらいは戦い続けるんだ。合流は出来るはずだろう。

 というよりは京介を迎えに来たレイジさんの車に乗せて貰えば自動的に星倫女学院に行けたんじゃないのか?

 

「茜が通ってるとこ、ボーダー隊員が少ないのよ。

一応居るには居るけど、柿崎隊は今日は防衛任務で居ないから避難誘導とかを優先的にしていて……玲のところも。

もし万が一、玲がやられて緊急脱出して本部に直行して、本部が襲撃されたら、玲は逃げ切れない。そう判断したし、桐絵ちゃんが安心して戦える様にって警戒区域から西方面に出ていこうとするやつに限定してるの」

 

「熊谷は避難場所方面か?」

 

 答える前に答えを言うと頷き悔しがる熊谷。

 今すぐにでも飛び出して行きたそうだが、それは悪手。警戒区域にはラービットが居るので、いけば最後捕まる。だから、万が一に避難場所が襲撃された時の為の警備をして居る……。

 

「それで私になにか用か?」

 

「冬島さんの声を出してたのって、貴虎くんでしょ?」

 

「そうだが、どうした?」

 

「なんでわかったの?」

 

「サイドエフェクトの応用で未来を予測した」

 

「!?」

 

 意外な言葉が出てきたので物凄く驚く熊谷。

 お前も時折ポロっとサイドエフェクトと溢しているのを忘れたのかとツッコミたくなるのだが、ツッコミをせずにどう来るか待つ。だが、特になにも言ってこない。相手が来るまで待機状態なのか言わないのだろうか?

 

「見つけたぞ、三雲!!」

 

「ここに居たんだね。や~探したよ」

 

「え~っと」

 

「やっぱ大勢で来たら驚くやんな」

 

 待ちの姿勢でいると色々とやって来た。

 

「影さん、北添さんと隠岐と……え~っと」

 

「はじめましてと言った方が良いのかな?タイガース」

 

「え、それ私なの?」

 

 初対面と言えば少し違う、なんとも言い難い関係の男、王子一彰。

 人のことを初っぱなからあだ名呼びするのだが、タイガースはマジでやめてくれ。

 

「すみません、OG3。タトバでお願いします」

 

「タトバ?どうしてかな?」

 

「鷹、虎、飛蝗でタトバです」

 

「成る程。じゃあ、タトバと呼ばせて貰おう」

 

「三雲、このくだり必要なん?」

 

「隠岐、顔見知りじゃない奴等が居るし、やたらと多いから困ってるんだ……ええっと、お前は確か……」

 

「外岡っス」

 

 あ~はいはい、思い出した。弓場さんとこの狙撃手だ。

 突然の押し掛けに若干どころか結構驚くが直ぐに冷静になる。

 

「私になんの用だ?」

 

「用件もなにも、冬島さんの名を騙った奴を捕まえてこいって言われてるんスよ」

 

「私がやったが、なにか文句あるか?」

 

「文句らしい文句は無いよ。

名前を勝手に使うのは良くない事だが、結果的には他よりも早く行動することが出来た……僕達以外はね」

 

 ここに居る面々は、熊谷以外はB級の上位に定着している部隊の隊員。

 実力的にも行ってこいよと思う人(特に影さん)がいるのだが、行っていない。

 

「熊谷には理由は聞いたが、他は……合流出来ないのか?」

 

 今目の前に居るのは合流させるのに一手間掛かる部隊……の、筈だ。

 

「隊長のイコさんだけが結構遠いところにおるんや」

 

 隊員の隠岐、南沢、水上、細井は三門第一高校だが、隊長の生駒だけが大学生の生駒隊。

 

「僕のところは全員がバラバラなんだ」

 

 六頴館中学、六頴館高校、三門第一に大学生と全員バラバラな王子隊。

 

「こっちもそんな感じっス」

 

 大学生二人、高校生一人、中学生一人と王子隊程ではないがややこしい弓場隊

 

「ゾエさんのとこも、大体そんな感じだよ」

 

 中学生のユズルと合流出来ない影浦隊

 

「オメーがあんな指示出さなきゃ、今頃は暴れられたのによ」

 

 っけ!とこの場で待ち受ける事に苛立つ影さん。

 

「……他は、他には似た感じの状況のところはあるのか?」

 

 私が先に動きを封じたもののラービットに諏訪さんが捕まり諏訪(トリオンキューブ)になったらB級は部隊が揃うまで動くなと言う命令が本部長からくる。

 ざっと見た感じ動くことが出来ないのは王子隊、那須隊、影浦隊、弓場隊で……恐らくだが、二宮隊も動けない。高確率でニノさん不在が原因で動けないだろう。

 他に動けない奴等はいないか聞いてみるものの、残りは六潁館に通っている組らしくここには居ないとのこと。

 

「……里見とか雪丸とかが居てくれれば楽だが無い物ねだりは無理か」

 

「二人とも県外にスカウトにいってるから、無理よ」

 

「とりあえず、本部に報告していいかい?」

 

「……通信機貸してください」

 

 私が言ったということがバレている。その事で本部がなにかと慌ただしいのならば、此処等が潮時だ。

 王子さんが通信で使っている通信機を借り、本部と通信を取って貰うのだが

 

『君が』

 

「あ、すみません、レプリカでお願いします」

 

 本部長と会話をするつもりは特には無い。

 私と会話をして居る暇があるならば、指揮を取って最高の未来を勝ち取れる様にしてくれ。

 

『通信を少し切り替えた……兄殿、申し訳無いが兄殿が私やユーマについて知っている事を伝えさせて貰った』

 

 レプリカに通信が替わると、謝られた。

 

「構わない」

 

 もうバレて良いところまで来ている。

 むしろ、面倒な話を省いてくれたからありがたい。残された時間は後僅かなので説明に時間を使いたくない。

 

『色々と話はレプリカから』

 

「本部長さんは極力意識を私に向けずに指揮に集中してください。今の状況では余り仕事が無さそうな外務とか営業とかメディア方面担当の人に話した方が効率が良いです」

 

『わ、私かね!?』

 

「あんたこの状況じゃ1番暇だろう」

 

 指揮取ってる本部長を補佐するS村さん。色々な機械を作動させている鬼怒田さん。最終的な決定権を持つ司令。そしてメディア対策室室長の根付さん……どう見ても後処理担当で現場を担当しないのはあんただけだ。

 

『根付メディア対策室長は戦いが終わった後に活動する。言いたいことがあるならば、私が聞こう』

 

 根付さんを働かせようとしたが予想外の人物が出てきた。

 城戸司令がわざわざ耳を傾けてくれるとは嬉しい限りだ。

 

「先に言っておくが、勝手に動かしたことについては反省していないぞ」

 

 何時もなら警報鳴ってから避難して点呼取って全員の安否確認に十数分以上掛かる。

 それが鳴ってから2分半で終わり、各部隊がどうすればいいのか即座に動き出せる様にしたのだから反省も後悔もしていない。

 

『何故、近界民が襲来することが分かった?』

 

 その件についてはああだこうだ言わない城戸司令。

 優先順位が分かっているのか、どうして迅ですら分からなかった近界民の襲来が分かったかを聞いてきた。

 

「サイドエフェクト」

 

 後、知識として知っていた。

 サイドエフェクトが今日来るって言ってたのに加えて原作知識です。

 

「因みにだが太刀川さん、出水、当真さん、里見、佐鳥、時枝、綾辻、三輪、米屋、雪丸、京介、宇佐美、影浦さん、北添さん、隠岐、村上さん、別役、堤さん、小佐野、日佐人、熊谷、日浦、那須……後、誰だっけな……まぁ、とにかく、今言った人達は最低でも一回は私にサイドエフェクトとポロっと呟いてたぞ」

 

『オールスターじゃないか!?』

 

 視力の話をすれば本当に面白いぐらいにポロっと溢してくれる。

 溢さなかったのは風間さんぐらいじゃないか?A級は加古隊と風間隊以外は誰かが一度はポロってるな。

 

「まぁ、とにかく出水や修達の不祥事については目を瞑っててください。

私がサイドエフェクトを持ってることを風間さんと加古さんも知ってますし……裁くとなるとABオールスターになりますよ」

 

 そうなると殆どがB級降格とか色々とややこしいことになる。

 通信機越しで頭を抱えている根付さんの声が聞こえるので、この件に関してはもう触れない様にしている。

 

「不祥事案件はもう流して……なんかご用ですか?」

 

『今は襲撃の対応をする……君のサイドエフェクトではなにが見える?』

 

「なにも見えないけど?」

 

『どういうことだ?』

 

「出水とか米屋も言ってたが、私は未来を視るなんて器用な真似は出来ない。やってるのは予測だ」

 

 あくまでも占いという名の予測をしているだけだ。グラサンと違ってハズレるときはハズレるんだ。

 

『ならば、君はどう予測する?』

 

「私に聞いてどうすんだ?そこを頑張るのがあんた達の役目だろう。

今、前線で戦ってる佐鳥達よりも段違いに強いのに椅子に座っているのは楽したい為か?違うだろう。ボーダー隊員の殆どが二十歳未満なんだぞ、頑張れよ……負ける条件と勝つ条件を、ありとあらゆる事を考えて今の状況から察するに非常に面倒だ」

 

 私のサイドエフェクトを迅と同じものだと思ったようだが、それは違う。

 城戸司令にそう否定したものの、なにか無いかと意見を求めてくる。敵かどうかすら分からないが、使えるかもしれない駒は使おうとする即決の判断は凄いが、それを聞いたらなんの為に椅子に座っているんだか分からなくなる。現場に出て戦えと言いたい。しかしまぁ、四の五の言ってられないので言うべき事をとっとと言う。

 

「相手がなにをしに来たかが問題だ。

何時もならば出水のところ、熊谷のところ、村上さんのところ、小佐野のところ、里見のところと約5部隊を3交代制で回して仕事してる。

それだけで余裕で倒せる量しか来ないが、今回は違う。今回は全員、それこそ県外スカウトに行っている里見達が今すぐに来ることが出来るなら来て欲しいと思うレベルの案件で……まぁ、とにかくヤバいな」

 

『それはこちらの方でも理解している』

 

「取りあえず自分達が負ける条件とかこうなったら危険だと言う状況を幾つか想定して現状と照らし合わせる……本部に影浦さんとか向かわせるのが良いんじゃないんでしょうか?」

 

「なんでオレなんだよ?」

 

「影さんが手の空いてる人で1番強いからに決まってるでしょう。司令さん、近界民がなにしに来たか分からないので、色々と考えました。

例によって人を拐う為に来たりしたのならば、ただの数の暴力で終わるだけ。トリオン兵を倒せる隊員が多く居るから、無駄だとなにかしてくると仮説をたてます。で……アレだ。相手にとって利益になるのを幾つか思い浮かべた。その仮説の大半が本部に侵入しないといけない」

 

 普段はこんな事には使わない頭を使い、必死になって説明をする。

 

「近界民が人間を一人一人拉致するぐらいなら、植民地の1つでも作って養殖したりした方が効率が良い。

武力による戦争は大将の首を取れば終わるらしいので、司令をはじめとする上層部を皆殺しにすればいいとし、その為には本部襲撃が必須、先ずは戦力を分散させてから超強力な駒を出して本部を襲撃……ところでそっちは大丈夫なのか?」

 

『こちらの心配は無用だ。続けたまえ』

 

「二つ目に特定の人物を誘拐。

近界民にとって価値のある人物を誘拐する……つまり鬼怒田さんが誘拐される可能性がある」

 

『わ、ワシ!?』

 

 別に驚くことでもなんでもない事だ。

 根付さんはこの世界だから必要な存在で、唐沢さんは……まぁ、微妙なところ。本部長は強くて指揮能力も高いが、近界民の世界には探せば何人か同じぐらいの人は見つかる。

 だが、鬼怒田さんは別だ!

 

「鬼怒田さんが拐われれば、緊急脱出機能に門誘導装置、他にもボーダーの訓練装置とかの細かな情報が近界民に知られる。そうなると緊急脱出不可装置とか門誘導無効化装置とかそう言うのを作られて……ボーダーがある三門市をガン無視して神戸とか横浜とかの人口密度の高い政令指定都市に襲撃して……そこを拠点に日本を植民地にするかも」

 

「いやいやいや、考えすぎやろ」

 

 ボーダーで1番なくてはならない人は同率一位で二人居る。一人は迅、もう一人は鬼怒田さんだ。

 鬼怒田さんと迅の二人がいなければボーダーという組織は上手く回らなかっただろう。

 

「他にも緊急脱出した後の生身を狙えば良かろうなのだとかありますが、聞きますか?」

 

『もういい。本部が狙われる可能性が大きいのは分かった』

 

 私の言っていることは一応はありえることで、ボーダーにとって大打撃になることだ。

 迅というチートが居るので、その未来がありえるかはある程度は分かるのだがどれもこれもそれは無いと否定しきる事は出来ない。

 

「今すぐにでも本部内で一人でも中近距離で戦える人を用意してスタンバってないと死人が出る」

 

 本部には司令や本部長、太刀川さんが居るものの、その人達が即座に戦えるかと言われれば怪しい。

 本部長と司令は戦えるが指揮の方を優先しなければならず、太刀川さんは何処かのフォローに向かわされる。

 

「戦う用じゃなくて良いからトリガーを起動して変身して襲撃して来た相手の攻撃とか瓦礫を一回受けれる準備と周りを気にせずに暴れ回れる場所を選出。そこまでのルートを用意……え~と、後なんだ?」

 

『本部内防衛隊員の選出、近界民との戦闘場所を決めて誘導するルートの確保、エンジニアやフリーのオペレーターは護身用のトリガーを起動、護身用のトリガーを持っていない者は訓練用のトリガーを代用させる』

 

 指揮とか指示はやったことない。

 そのせいか色々なボロが段々と出てきたのだが、それを城戸司令は埋めてくれた。

 近界民と戦闘する場所についてはなにも問題なく、訓練用や護身用のトリガーは直ぐに行き届くらしく残す問題は1つ。

 

「カゲが行くなら、ゾエさんも行こうか?」

 

 誰が本部内防衛をするかだ。

 

『……本部内の防衛は弓場隊員にしてもらう』

 

「あァ!!なんでオレじゃねえんだ!?」

 

 本部内の防衛をする隊員を選出した司令。選出された隊員はこの場には居ない弓場さんであり、影さんは自分でないことにキレる。

 

「なんで?」

 

 影浦さんは近・中距離の戦闘が可能で桁違いに強く、機動力も高い。サイドエフェクトで混戦にも強く初見殺しも中々に出来ない。

 

『本部内に入り込んでくる敵がモールモッドの様な日頃ボーダー隊員が相手にしているトリオン兵ならば基地周辺の罠や本部待機の隊員だけで対処は可能だ。

現在、新型のトリオン兵が出現した。風間隊や複数の部隊が応戦中だが、装甲が厚く剣による一撃で切り崩す事は出来ない。本部に襲撃してくる敵は新型のトリオン兵以上と仮定し、現在部隊で交戦していない隊員で本部内の戦闘に最も適しているのは弓場隊員だ。

ボーダー本部で戦闘をしても問題の無い場所に誘導しながら戦わなければならず、付かず離れずの一定の距離を保ち威力の高い弾で戦う弓場隊員ならばそれが可能だ。更に言えば本部内にある一本道の様な狭い単調な道では、影浦隊員の型に填まらない機動力を生かせない。何より、影浦隊員の戦い方は誘導には向いていない』

 

 影さんがダメで弓場さんが選ばれる理由を聞いて、なにか反論をしようとするのだが浮かばない。

 弓場さんが一定の距離を保ち、高威力の弾丸を撃ち込む。それで倒せれば良し倒せなければ距離を保ち、誘導。問題ないどころか、良いことづくめだ。

 

『君には色々と聞きたい事がある。この侵攻の後始末を終えた後に本部へと来て貰う』

 

 特になにも言わないでいると爆音が通信機越しに響き、通信が切れる。

 

「人を利用するだけ利用して用済みになればぶちぎりやがって……」

 

 優秀なボーダーの大人がいるから素人は不必要なのか通信を切った。

 まぁ、これ以上素人の私にああだこうだ言われて動いたりすることはしないだろうがムカつく。私は通信機を王子さんに返し━━

 

「そろそろ動くか」

 

『スカル!』

 

 スカルのガイアメモリとロストドライバーを取り出した。

ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯
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