「トリオン注入開始、残り100秒でトリオンが満タンになります」
ハイレインが現れるほんの数分前の頃。
貴虎のサクラハリケーンにボーダーが貯蓄したトリオンと千佳のトリオンが注ぎ込まれていく。
「バイク型の船って……いったいどういう構造してるんだ」
トリオンが注入されている様子を見て寺島雷蔵は呟く。
異世界の門を開く機能を宿しているサクラハリケーンだが明らかに船ではない。別の世界に移動するにしてもあまりにも小さな物だ。
いったい誰がなんの為にどうやって作ったのか1人のエンジニアとして気になってしまう。
「まだなのか?」
「後1分程待ってください」
サクラハリケーンに搭乗している忍田本部長。
何時でも発進する事が出来る様にご丁寧にヘルメットまで被っている。この状態で走れないわけではないのだが、門を開く事が出来ないただのバイクである。1秒でも早くこの騒動を終わらせなければならない為に先を急ぐがここで足止めをくらっている。
「ラッドの用意も出来ました」
エンジニアの1人が門を開く準備が出来たという。
レプリカ子機のちびレプリカも直ぐ側に待機しており後はトリオンを注がれるのを待つだけとなった。
「さて、どうするか」
時計の針はそのままで遊真はヴィザと対峙する。
ヴィザを修達の元から引き剥がす事に成功したが問題はここからである。
「いやはや、困りましたね。このままでは雛鳥達を回収することが出来ないではありませんか」
「……あんた、つまんないウソつくね」
「嘘ではないですよ……ここには障害物も生身の人間も居ない……
全力を出して戦うことが出来ると星の杖の機能をフルに使う。
サークルが展開されて無数のブレードがサークル状に乗ってグルリと動くのだがヴィザは直ぐに異変に気付く。星の杖のブレードの上に鉛弾が乗っている事を
「まさか、あの時に」
目くらましの段階で遊真はヴィザの星の杖に三輪のトリガーを経由して
手が早いとヴィザは感心すると新しいサークルを作り出してそのブレードと鉛弾の乗ったブレードを重ねることで鉛を切り落とす
「この程度じゃやっぱ無理か」
鉛弾を使っての妨害行為はいい動きだがヴィザを倒すまでには至らない。遊真はここで考える。どうするべきかを。
色々と手立てはあるのだがヴィザのトリガーは至ってシンプルな強力な黒トリガーで攻略方法が中々に見つからない。なによりもヴィザという使い手自身が脅威であり一手二手フェイクを入れたりしても直ぐに対処されてしまう
『ユーマ、慌てるな。こちらの勝利条件はほぼ満たしている』
「オサムのお兄さんが色々とやってくれてるんだろ……この爺さん、どっからでも出てくる」
今まで積み上げてきたものを行使してもヴィザには届かない。
ヴィザはこのままではトリオンキューブ化したC級達をさらえないと嘘をついている。ヴィザ自体がフェイクで別の目的が、ハイレインが出てくる。ラッドを経由すればヴィザは何処からでも出てくる事が可能だ。足止めでなく撃退を目標としておかなければならない。
『落ち着けユーマ。焦っていては仕損じる……』
「レプリカ、オサム達の方はどうなっている?」
『A級の隊員達が増援にやってきてトリオン兵を一掃……!』
「なにかあったんだな……早いところ倒さないと」
遊真は勝負を仕掛けようとする。そして時計の針は元に戻り、仮面ライダージョーカーに変身した修に視点は切り替わる
「やった、のか?」
兄が使っていた時の様に見様見真似で使い勢いに身を任せ、友人の様に殴り貫いた。
人を殴り飛ばす経験は皆無に等しい修は手応えがあったのかどうか違和感を感じているがそこにはトリオン体が損傷して生身の肉体に戻ったハイレインが立っていた。ハイレインはありえないと言った顔をしている。
攻撃が当たるだけで即死に近い状態の【卵の冠】が全くと言って効果が発揮しなかった。生身の肉体がそういう感じの見た目の生物に変身しているので効かないのは当然である
「メガネ先輩、そいつを取り押さえましょう!」
状況がイマイチ理解できていない中で夏目は叫び、修の意識は現実に戻る。
生身になったハイレインを取り押さえる事で王手を掛けようとするのだがここで修の装備していたロストドライバーに電流が走り火花が散る
「ぐぅ、あぁ!?」
修の肉体に謎の衝撃が走る。仮面ライダージョーカーに変身していた修は元の人間の肉体に変貌してしまう。
壊れかけだったロストドライバーは限界を迎えて遂には壊れてしまい修の変身が解けてしまった。
「……っ……まさかこれほどとは思いもしなかった」
相討ちに終わったとハイレインは認識して素直に負けを認めた。
それもこれもメロンを身に纏ったメガネのせいであり、もっと別の作戦があった筈だろうと思考を張り巡らせていると、花びらの形の門が開きそこから忍田本部長が飛び出してきた。
「忍田本部長、どうしてここに!?」
「作戦が成功した!後1分で敵の船は帰還する」
「なんだと!?」
サクラハリケーンで門を潜り、ハイレイン達が乗ってきた遠征艇に乗り込みちびレプリカを用いて遠征艇にハッキングを仕掛けた。
この大規模な侵攻を終わらせる為の詰みの一手を相手にくらわせる事が出来たと修に報告するとハイレインは声を上げる。それと同時に門が開いてミラが現れる。
「申し訳ありません、遠征艇を襲撃され船を操作されました!」
「帰還を止める事は出来ないのか!?」
「ロックが掛かってこちらの操作を受け付けません。早く帰還を」
「ヒュースは当初の予定通りにいくぞ……覚えておけ、メロンの剣士」
ハイレインは急いでミラの開けた門を潜っていく。
ハイレインが通るとミラの開けた門は閉じてこことは別のところで戦っているヴィザの元に門が開き、ヴィザを回収する
「終わった、んですか?」
敵の船が元いた世界に帰還していった。今まで危機的な状況に追い詰められていただけありイマイチ実感が湧かない。忍田本部長は修の両肩に手を置いて頷く
「守りきったんだ」
今回襲ってきた神々の国であるアフトクラトルからボーダーは三門市を守りきった。
複数の黒トリガーや未知の新型トリオン兵を相手にボーダーは戦い抜き、見事に防衛を果たした……多少の犠牲があるかないかで言えばあったのだが。
「三雲くん、後で君のそのトリガーについて色々と話を」
「修は無関係だ」
修の持っているトリガーについて話し合いをしようとするのだが、その前に斬月に変身した貴虎がやってきた。
貴虎はサクラハリケーンに触れるとロックビークル状態に形状を変化させ、自身のロックシードのホルダーにセットする。
「兄さん……」
「情けない話だな。4年半じっくりと時間を掛けた結果がこのザマか。遊真達が居なければどうなっていた事やら」
貴虎は忍田本部長をあざ笑う。今回の一件で死者は出ていないが無関係な一般人の怪我人を出してしまっている。
街に防衛線を張っているのでこのレベルの大規模な侵攻を一般市民に被害が及ばない様にしろというのが無茶な話。だからこそ貴虎はあざ笑い、変身を解除する。
「……先ずは一言お礼を言わせて」
「そんなものはいらない……私は何処ぞの馬鹿が弟を撒き餌にしようとしていたからそれをどうにかしに来ただけだ」
頭を下げようとする忍田本部長だが貴虎は素直に礼は受け取らない。
あくまで今回戦ったのは修をあえて危険な目に合わせる事で最善の未来へ向かわせようとしたバカこと迅をどうこうしようとしただけである。そうかと忍田本部長は頭を下げるのをやめた。
「君はどうしてトリガーを持っているんだ?」
「4年前のあの日、今のボーダーの本部がある場所に色々と用事があって出掛けていた。そこで拾った……あんた達のトリガーとは全く異なる物で所有権は既に私達にある。サクラハリケーンもこのベルトも修の持ってるメモリも、なにもかも私達のものだ」
だからコレは返してもらうと修の壊れたロストドライバーとジョーカーメモリと夏目に託したディケイドロックシードを回収する。
悪意を持って接してはいないが貴虎はボーダーに対して色々と嫌悪している。故にあまり好意的に接する事はしない。
「待ってくれ、その怪我で歩くのは危険だ。ここからボーダー本部は近い、せめてそこで応急処置を」
「安心してください、今の私には死相は一切見えない……私のサイドエフェクトがそう言っている……ああ、くそ、ホントに痛いな」
貴虎は涙目になりながらも足を引き摺って病院へと向かっていく。
ボーダーの施しは受けるつもりは無いという彼なりの反抗の1つなのだろう。
「兄さん……」
そんな兄の背中を修は追いかけなかった。兄弟ではあるが修と貴虎は既に道を違えているから、修には修の道が、貴虎には貴虎の道がある。
兄のボーダー嫌いをどうにかしたいという思いもあるにはあるがどうする事も出来ない自分に情けなさを感じるが忍田本部長は修の肩に手を置いた。
「君のお兄さんは本当によくやってくれた……ここからは私達ボーダーの番だ。君はもう戦えないが残っているC級達を本部に連れて行ってくれないか?」
「はい、分かりました」
ここからは防衛戦の後処理がはじまっていく。
「こちら忍田、敵の
早速忍田本部長は各自どうなっているのかの確認を取る。
敵が帰還した事を伝えると一部の隊員達はホッとするがまだ完全に大規模な侵攻が終わったわけではない。
「こちら太刀川、南部。トリオン兵はあらかた片付けましたけど、C級の数が合わない」
「こちら東、基地東部。トリオン兵残党は撃退したもののC級隊員の数が合わない。到着までに何名か拐われた」
各々から報告を受ける。やはりというべきか被害を0に抑える事が出来なかった。
今はその事について悲しんでいる場合ではない。残っているトリオン兵を1体残らず撃退する様に忍田本部長は指示をする。
「さぁ、本部へ帰還しよう」
忍田本部長は修達を引き連れ、ボーダー本部へと帰還していく。
大規模侵攻の防衛に成功したのかイマイチ実感が湧いてこないが、防衛には成功したのである。
「……カッコつけすぎたか」
修達とは真逆の反対方向に歩いている貴虎は激痛に苦しまされる。
放出していたアドレナリンは切れて何時意識を失ってもおかしくはないギリギリの崖っぷちに立たされている。意識を失わないのは最早体力でなくボーダーに力を借りたくない意地の様なもので気力1つで動いているに近い
「オサムのお兄さん」
「遊真か……無事だった様でなによりだ」
本来であればヴィザに一度やられてしまう遊真だったが、貴虎のおかげかやられてしまう事はなかった。
文字通り時間を稼ぐ事に成功しただけである。格上の相手に金星をいただく事は出来なかったものの足止めという立派な責務を遊真は果たした。その事について貴虎はよくやったと頭に手を置いた。遊真は少しだけ嬉しい気分になった。
「オサムのお兄さん、大丈夫なの?そんな怪我してて」
「肋が逝っているが後遺症の残るタイプの怪我ではないさ。こういうのは名誉ある負傷だと思えばいい……まぁ、予想外の怪我だが」
ある程度の怪我は覚悟していたのだが、ここまでの大怪我になることは予想外としか言えない。
「名誉か……オサムのお兄さんには似合わない言葉だな」
「まぁ、名誉で人の命を救う事は出来ないからな……ノブレス・オブリージュなんて私にとってくそくらえだ」
力のある者が戦わないといけない犠牲にならないといけない、そんなのはただの自己満足のエゴか弱者の理論だ。
「そんな事を言う割にはオサムのお兄さん、色々とグチグチボーダーに対して文句言ってるな」
「当たり前だろう。アレは自分達でやると決意した組織なんだ。だったら1から10までちゃんとしておかないといけないだろう」
「なるほど、そういう風にも考えられるか」
選んだのか選ばなかったのか、そこに大きな違いがある。
三雲貴虎という人物は道を選ばなかった人間だが選んだのならそれはそれで固い人である。
「じゃ、おれはまだ残っているトリオン兵をぶっ倒してくる」
「ああ、頼んだ。ここからはボーダーの領分で私には関係無い事だ」
こうして貴虎は去っていく。痛みで意識を失いそうになるが気力一つで持ち堪えてみせる。
「迅、これはお前が視えていた未来の中で何番目の未来だ?」
後は敗残兵を処理していくだけとなり城戸司令は迅に尋ねる。
視えていた未来の中でコレが何番目の未来なのかを
「そうですね……3番目ぐらいじゃないですかね」
「随分と曖昧だな」
「すみません。今まで見えていた未来を急に変えられてしまったんでオレ自身も驚いてるんですよ」
酷ければA級B級隊員が攫われるどころか一般市民に死者を出してしまう未来も存在したが、それはもう無くなった。
各地にボーダー隊員達を派遣させたおかげで被害は極力抑え込まれている……とはいえ0でない事もまた事実。もっと早くに貴虎に出会っていればもっと良い未来に辿り着けたかもしれないが貴虎自身が迅を嫌っている為に会うことは殆ど難しい。
「城戸さん、メガネくんをあんまり責めないでね……メロンくんが居たからここまで抑え込む事が出来たんだから」
修は貴虎がトリガーを持っている事をずっと知っていた。ボーダーにボーダー製でないトリガーを持っている事を報告しなければならない義務はないのだが、ボーダーという組織の事を考えれば言わなければならない事だっただろう。しかし修はその事を言わなかった。
言っていたらまた別の未来が存在していたのだが、そんなタラレバの話をしていたらキリがない。未来を視る力を持っている迅はその辺りは割り切っている。最悪の未来を回避する事が出来て良かったねで終わる。
「敵も大分減ってきたから、そろそろ救護の人とか出しちゃってよ」
貴虎の事は何れは話し合うが今はその時ではない。今はこの大規模な侵攻を納める為に動かなければならない。
トリオン体がハイレインにやられた為に現場に出て指揮を取る事が出来ない迅だが何処に誰を配備するかの指示を送ることが出来る。迅は未来視のサイドエフェクトを思う存分に扱い最適の配置をする。
対近界民大規模侵攻三門市防衛戦 終結
民間人 死者0 重傷17名 軽傷43名
ボーダー 死者0 重傷2名 行方不明17名(全てC級隊員)
近界民 死者1名(近界民の手による) 捕虜1名
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