「……なんか今日、色々な出会いがありそうだ」
ミンミンミ~ンと外でセミが鳴くこの季節、そう夏休み。
米屋の、の!ここ重要だぞ。光と小佐野は見捨てた。とにかく、勉強を見たけれども期末で一教科(世界史)落としたので補習確定。夏休みに来たくもない制服を着て、米屋は登校し補習を受けてなんとか乗り切りなんだかんだで夏休み折り返し地点ともいうべき山の日。
夏休みの宿題を一週間で終えた私は、市民体育館のジムを2日に1回のペースで通い、もう1日を自堕落に過ごす。米屋にプールに行こうぜと誘われたが、プールなんぞジムので充分だ。
「……あ、面倒なことが起きてる」
今日、外に出ると色々と出会いがあると占いが出た。
だがそれとは別に現在進行形で面倒なことが起きていると一階に降りるとなにかが噴出する音が聞こえ、時期的にあれだなと思いリビングのドアを開くとナイフが飛んできた。
「危な!?」
「よしっ」
「いや、よしじゃないよ……Gか」
リビングから聞こえた噴出音の正体はゴキジェットの音。
この時期はゴキブリが活発になる時期で、母さんはコックローチを退治した……ジェットじゃなくて、対ゴッキー用のナイフを投げて、一刺しで。もう、これ熟練の主婦が成せる技とかそういうのじゃないな。
「ちょうどよかったわ。ホイホイが切れたところなのよ」
「そこはジェットの方じゃないの?」
「甘いわね。6世代ぐらい進むだけでゴキブリは進化するのよ。
気のせいか今年のゴキブリ、中々にしぶとくて……部屋をどれだけ綺麗にしても、排水溝から来るわ」
「私、無駄に目が良いから見えるから排水溝の話はしないで」
風呂場とか下水道とか見ると、物凄くゴキブリがいるの見えるんだ。
極僅かな電磁波でカメムシとかそういうのがいるのも見えて……マンションのゴキブリの巣が見えたときは引いた。
「で、ホイホイを買いに行くよ……何処が安かったか」
「ショッピングモール内のドラッグストアにして。
ちょうど割引券もあるし、今夏休みフェアだかなんだかで色々と安くなっているわ」
「あ、じゃあちょっとショッピングモールでぶらっと遊んでくる。お昼はいらないから」
「いってらっしゃい……あ、ポイントカードと割引券よ」
「いってきます」
そんなこんなでゴキブリホイホイを買ってきてとおつかいを頼まれた私。
因みに修は美術の夏休みの宿題を終わらせるために美術館に行っている。あんなの、レビューとか見れば色々と偽造できるのだが、真面目な修は普通に美術館に行った。千佳……と、麟児さんと。それを聞いて母さんが聞こえるレベルの舌打ちをしたのは今でも覚えている。
「祝日だから人混んでるな……とりあえず、ゲーセンに行くか」
夏休み+祝日のコンボは何気に強烈で、人が物凄く多いショッピングモール。
ドラッグストアでゴキブリホイホイを買って飯食ってから家に帰るかと悩むのだが、今日はなにか色々と出会いがある。不吉な出会いじゃないらしく、取り敢えずはATMでお金を下ろした後、ゲーセンで遊んでからにしようと足を運ぶ。
「うがー!!失敗した!!両替お願い!」
「柚宇さん、程々にした方が」
「え~、もう3000円も注ぎ込んだんだよ?ここで帰れば損。次勝てば、チャラになるから」
「それ、麻雀で負けまくった堤とか諏訪さんが同じこと言って負けるパターンだ」
「……」
H78A84B78C109D85S100でなにかと優遇されまくりなあのポケモンのぬいぐるみが取れるクレーンゲーム前でなんか見たことのある集団がいる。
素敵な出会いってこれなのかと思ったのだが、一人しか顔見知りはいないので見知らぬフリをする。しかしまぁ、おバカガールは良いが、アゴヒゲ、不審者感強い。援交してるっぽく見える。
「あ、諭吉しかない」
お菓子を根刮ぎ回収するかと思ったが、財布に諭吉しかないことを気付く。
ついさっき大きいのに変えたんだったと両替機に向かうと出水が千円札を両替し、2000円分の小銭を用意しており100円玉を見て大きなため息を吐いた。
「あれ買った方が絶対に安いって」
「両替終わったら、のいてくれないか?」
「あ、すみません……って、三雲じゃん。久しぶりだな」
「ああ、久しぶりだな。取り敢えず、コイン50枚にするか」
「お前、財布滅茶苦茶分厚いな!」
「預金通帳はある程度は差し押さえられてるが、スクラッチとかで増やした」
両替機に諭吉を入れ、5000円札と100円玉を50枚に両替をする。
出水はそんな私を見て、こいつも同じ……という哀れな視線を向けて来るが私は勝つ自信があるからこんな浪費を出来るんだ。
「金運半端ねえ……」
「出水、誰かと来ててパシられてたんじゃないのか?」
「パシられてねえよ。でもまぁ、そろそろ戻らねえと怒られるわ」
そう言うと出水は小銭を持って、さっきのクレーンゲームがある場所に向かい、私はそんな出水の後を追いかけ……るには、追いかけるのだが特に声はかけず2つ隣にあるトライポットというルーレットクレーンゲームに挑む。
ルーレットクレーンゲームとは光のルーレットがくるくる回り、スイッチを押して当たりの部分に止めるゲームで、当たりの部分に止めるとお菓子を支えている部分が無くなりお菓子が落ちてくる。
お菓子以外にもKINGサイズのカップヌードルが山積みになっていたりしていて、複数の当たりを当てないと取れなかったりするのだが一回か二回で当てると物凄く金を使わずにお菓子を手に入れることが出来る。
ボタンを押すと同時にルーレットも止まるので、運ゲーでなく実力で取れるゲームでショッピングモールのゲーセンには10個以上ある。が、ぬいぐるみと玩具系はいらん。転売するのは面倒臭いし使わない。
「最初はじゃがりこ、Lサイズで一回200円か」
持って帰るのはお菓子だけだと、狙いを定める。
ピラミッドの様に積まれているじゃがりこLサイズ。期間限定品はなく、チーズ、バター、サラダの定番の3つのみしか積まれていない。値段は1回200円で500円を入れても3回にならない糞使用。ルーレットは最速の設定で当たりは7つしかなく、その内の真正面にある当たりはフェイクで残り6つのうち1つでも当てればじゃがりこを手にいれることが出来る。しかし、そこにも問題がある。
「さて、幾つ手に入るか」
200円を入れ、ゲームスタート。
真正面にある当たりを当てても意味がない。かといって、斜め前のところを当てても積まれているじゃがりこが崩壊し、互いに支えあって元を取れるぐらいに落とすことは出来ない。ただ、積まれたじゃがりこで見えない奥の当たり。そこだけは別で、一番最初にそこを当てると多くのじゃがりこが取れる。
常人やYouTuberならば真正面のじゃがりこを狙いに行くだろうが、生憎なこと私は転生者。転生特典を悉く悪用するクソッタレで常人とは程遠い。
最高速度で回るルーレットは目押し出来るのか疑うほどに早いのだが、それは常人のみ。私にはサイドエフェクトが、その気になれば交差する新幹線の何両目の何処に誰が乗っているのか見抜くことを余裕で可能とする動体視力がある。時速100km以上を常時出している新幹線と比べれば断然遅いルーレットなど……止まって見える。
私はなんの迷いもなくボタンを押してルーレットを停止。ルーレットは奥の方に隠れている当たりに止まり、じゃがりこを支えている棒が一つ無くなりじゃがりこタワーが崩壊。雪崩れ込む様にじゃがりこは落ちていく。
「ひーふーみー……13か」
サラダ6チーズ2じゃがバター5とまぁ、随分と偏ったじゃがりこ。
200円でLサイズ13個、コンビニ価格170×13と考えれば2000円以上お得な買い物をした。
「お前、一発で成功したのかよ」
「これぐらいは、余裕で出来る……というか、まだなのか?」
「結構注ぎ込んでるんだけどな」
じゃがりこをゲーセンのビニール袋に入れていると出水が私に気付き声をかける。
ついさっき別れたばかりなのに一瞬で大儲けしていると目を見開いており、国近先輩を見る。クレーンゲームでXにもYにもなるあのポケモンを取ろうとしているが、取れない。
「む~!」
「三雲、お前クレーンゲームは得意か?」
「転売屋出来るぐらいには得意だぞ」
「柚宇さんの代わりに取ってくんねえ?
なんか明日には商品変わるらしくて、今日取らねえと二度と手に入らない限定品なんだよ」
「構わないが、先に説明をしておいてくれよ……あのなんか色々と不審者っぽい髭とかに」
「あれ、うちの隊長!!」
「よんだか?出水」
ゲーセンが色々と五月蝿いから余り響かなかったが、出水の声はフルーツグラノーラのドライフルーツだけを食った男、太刀川には聞こえており振り向いた。やばっ!と言う顔をするのだが、直ぐに冷静になり適当な説明をはじめる。
「いや、ちょっと友達に会ってなんの繋がりがあるかって聞かれたんですよ」
「おお、そうか。俺と出水はボーダーの繋がりで、同じ部隊にいるんだ……ところで、お前は?」
「三雲です。出水とか三輪とか、赤点を取ったカチューシャ馬鹿の友人です」
「なんか勉強見てくれる同級生が居るとかどうとか言ってたな」
「多分それ、私ですね」
「で、こいつクレーンゲームが滅茶苦茶上手いんですよ。
このままだと柚宇さん諭吉まで使いそうな勢いだから、代わりに取ってくれないかって……いけるか?」
「……アレぐらいならば、簡単に取れる。
だが、私は他のトライポッドのお菓子を回収しなければならないから……ワンコイン分、奢れ」
「それぐらいならいいぜ」
「国近、チェンジだ」
交渉はあっさりと成立し、国近先輩と入れ替わる。
最後の1クレジット、無駄に使ったら絶対に許さないとジト目で睨んでくるのだが全く怖くない。ゆるふわアホガールに睨まれても、特になにも思わない。
クレーンゲームの前に立ってアームの位置とアームから発する電磁波、商品の位置と商品の弱点を見抜きボタンを操作し……一発で成功した。
「リザードン、ゲットだぜ!」
「はいはい。もう1クレジット残ってますけど取りますか?」
「え、取れるの?」
「余裕で取れます」
リザードンを手に入れることが出来て大喜びの国近先輩。
もう一回できるので、クレーンを操作して二個目のリザードンをゲットした。
「いや~ありがとう。このままだったら、これを使わないといけなかったよ」
二体のリザードン(ぬいぐるみ)を握り締める国近先輩。
財布を取り出して諭吉……ではなく、キャッシュカードを取り出した。A級のオペレーターだから、さぞや儲かっているのだろうが、大胆だな。
「お礼と言っちゃなんだけど、ジュース奢るよ」
「ジュースの前にお菓子を回収して良いですか?
チラッと見えたんですけど、コアラのマーチが滅茶苦茶取れるのありまして……」
「トライポッドのやつだね。どうぞどうぞ」
「ということで出水、500円を出せ」
「100円じゃねえの!?」
「ワンコインと言ったはずだ」
「確かにそう言ったけども……まぁ、臨時収入とかもあったしいいか」
出水から500円を受け取り、場所を移動する私達。
透明なビニールでバラバラにならないようにギッチギチに固定されたコアラのマーチが骨組みの様に複雑に置かれているトライポッドにつくと、迷いなく500円を導入。
「今だ!」
回りだすルーレットを見て、叫ぶ太刀川…さんは目押ししろとタイミングを言ってくるのだが、全て見事に外している。
「太刀川さん、私はちゃんと見えているんで良いです」
「お、そうか?」
「それ殆ど運ゲーみたいなのだけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ……これぐらい、止まって見えますから」
首を傾げて心配している国近先輩だが、本当に問題はない。
なんの迷いもなくボタンを押して6つの当たりすべてを当ててコアラのマーチを42個手に入れた。
「6つ全部、一発で当てやがった」
「何処ぞの千発百中とは格が違う、格が」
「まだそのネタ引き摺るか!……にしても、運じゃなくて、目押しだよな?」
「前に目が良いと言っただろう。単純に遠くの物が見れる以外にも動体視力も良いんだ」
「え、お前メガネなのに目が良いの?」
「目が良すぎるから、メガネをしているんです。
2、3kmぐらい先の物ならば割と簡単に見ることが出来ます」
メガネな私に驚くアゴヒゲ。
目について説明をするとなにかに気づく。
「……お前、それサイドエフェ」
「太刀川さん、言っちゃダメだって!!」
私に関心するので、色々と教えると口をうっかり滑らせる太刀川。
サイドエフェクトを口外すれば色々とややこしくなるだろうと出水は全力で黙らせ、少しだけ遠くに引っ張っていく。
「いやでも、あるならスカウトした方がいいんじゃないのかね?」
「出来たら、おれがとっくにしてますよ。
唯我の事もあるから、目が良いこいつを入れてって……」
「そういえば、太刀川隊は4人じゃなかったか?なんか前、愚痴ってたのは?」
「暑いから涼しいところで夏休みの課題を終わらせるとかどうとかで、軽井沢の別荘に今居るらしいぞ。まぁ、居ても大して変わらんどころか足手まといだから問題ないがな!!」
この髭、堂々と言いやがった。
確かに実力の無い成金野郎で何一つ間違っていないんだが、堂々と言うとは肝が据わっている。
ここで出会ったのもなにかの縁だと、残りのお菓子回収も付き添ってくる三人。お菓子以外の物を、たこ焼き機とか最新のイヤホンがほしいと言うので一発で取り、一通り取り尽くす。
「あ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
「じゃあ、私達は休憩をしよっか。なんでも出すよ」
「ゴチになりまーす」
「え~出水くんは自腹だよ。三雲くん、好きなの選んでね」
「じゃあ、メロンソーダで」
太刀川さんがトイレに行ったので、ちょうどいいと国近先輩のご厚意に甘え、メロンソーダを貰い戦利品でパンパンになったお菓子が入った袋を一旦足元に置いて、メロンソーダを飲む。やはりメロンソーダはうまく、太刀川さんがなんかアホな事を言わないので落ち着く。
「そういや、7月なにしてた?」
「夏休みの宿題を徹夜して一週間で終わらせてから、中学の時の友人と遊びにいったり映画館前で3DS構えてポケモンを手に入れたり」
「いや、最後のダメだろう」
「でも、手に入っちゃうって分かったらついついやっちゃうよね~私も映画見る前についつい取っちゃう」
私は電磁波が見えるので何処に立っておけばポケモンが貰えるとか分かるんだ(悪)
「出水達はなにを?
なんか補習を終えた馬鹿が遊ぼうぜと誘って来たが、ピンポイントでハブられてたぞ」
「あ~……ボーダーの合宿だよ、合宿。
今は何事もないけど何時物凄く強い近界民が襲来してくるか分からねえからな、この夏休みを利用してボーダーでもトップクラスの人達とかと今以上に強くなるために訓練してた」
「と言う名の近界民の世界に遠征してたんだろ?」
「ぶぅう!?」
7月辺りになにをしていたかと聞き返すと、少しだけ間が空いた。
出水から発する電磁波やオーラなどが少しだけ揺れて説明中にも揺れまくるので嘘だと見抜き、なにをしてきたか当てると吹き出した。
「おまっ、おまっ!!」
「なんのことかな~私達は色々と戦術を覚えたりしてたんだよ?」
「いや、もうそういうの良いですよ。
近界民の襲来する場所を誘導する装置とかこの前出水に話した事とか倒した近界民回収してたりするのを考えれば、近界民の世界に行く船とかボーダー隠しててもおかしくないです。何回かどころか、あのクソデカい建物が出来る前からあるボーダーの頃から近界民の世界に何度も行ったり来たりしてるんですよね?とっとともう襲いませんの和平交渉とかしてきてくださいよ」
「……言ったの?」
「こいつ、自力で当てやがったんすよ」
「……」
惚ける国近先輩だが、別に隠してても特に意味は無い。
余りにも知りすぎているので出水がバラしたのかと聞くのだが、出水は無関係。自力で考えて、当てたことを聞けば大きく目を見開いた。
「あれ持っててここまで分かってるなら、スカウトを」
「この前、それやって無理でした。
三雲、頼むからそういうのをサラッと言うのをやめてくれ。ほんと、心臓に悪い」
「いや、それよりも近界民の世界でドンパチやってる方が心臓に悪いだろう。流血沙汰だろう?」
「だから、なんで分かるんだよ!?お前、人の心でも読めるのか!?」
「割と本気を出せばそれとな~く読める、占いで未来も見える。なんかこう、出水にはその内、素敵な出会いが待ってる」
「マジで……もしかして、おれにかの――」
「男だ」
「ガッテム!!」
出水に素敵な出会いが待っている。具体的に言えば馬鹿が一人増える。
誰とは言わないが多分あの子だろうなと頭に浮かべるが、彼女的な意味での出会いじゃ無いので全力で落ち込む。少なくとも、後二年は彼女は出来ないぞ。
「じゃあ、私はここで」
「もう行くの?」
「これ以上、話をしていたら出水がなにかやらかしそうなので。
それに太刀川隊で遊びに来ているんですから、私が居たら邪魔でしょう」
「じゃあ、お前もボーダーに入れよ。太刀川さんに推薦するからさ」
「それは絶対に嫌だ。じゃあ、また新学期に……ここでは楽しく会話をしたと言うことで」
「う~ん、それがいいよね。じゃあ、バイバ~イ」
「あ、もしかしたら夏休みの宿題」
「それは自分で解決しろ」
逃げるようにそそくさとゲームセンターを後にする。
このまま彼処にいると、お互いに余計な事をポロっと言いそうで怖い。後、太刀川さんにボーダー入れとかしつこく言われそうだ。というか、普通にサイドエフェクトと言いかけたからなあの人。
「……まだ、消えてないな」
太刀川隊に夏休みで会っただけでも充分な気がするのだが、まだ私には色々な出会いが待っていると占いに出ている。
なにかまだ出会いがあるのかと考えていると曲がり角で帽子を被った可愛い女の子にぶつかった。
「あ、ご、ごめんなさい」
ぶつかってバランスを崩し、尻餅をついた女の子は直ぐに私に謝る。
私は女の子とぶつかった際にバランスを崩すどころか一歩も動いていないので、逆に心配になり手を差し伸べる。
「大丈夫か?」
「は、はい。すみません、前を見てなくて」
「茜ちゃん、走っちゃダメよ……申し訳ありません」
女の子は私の手を掴み、立ち上がると可憐な何処かで見たことのある女性が近付いてきて、女の子をメッ!と叱りつけ、私に頭を下げる。
「怪我が無いなら、それでいい。私も前を見ていなかった」
特に怒る理由も無く、騒動を起こしたいわけでもないので穏便に済ませる。
しかしまた、ここで一つ面倒なことが起きてしまう。
「玲、茜、先に行き過ぎよ!!」
「くまちゃん、ごめんね。茜ちゃんを追いかけていたら、つい」
「すみません、熊谷先輩」
手に袋を持った熊谷が二人を追いかけるようにやって来た。
先々進む二人を怒るのだが、謝るのですんなりと許すと視線を私に向ける。
「三雲くん!?」
「熊谷、出水達と同じく部隊で遊びに来たのか?」
「ええ、そうだけど……出水達ってことは太刀川さん達も居るのね」
「ついさっきゲームセンターにいて、景品回収を手伝ったところだ」
「一番大きいサイズの袋、パンパンじゃない!どれだけ使ったの!?」
「1500円」
「や、安い……元どころか利益が取れてる」
目押しをすれば簡単に手に入れることが出来るからな。
「熊谷先輩、この人と知り合いなんですか?」
「ええ、同じ高校で防衛任務で休んだ際にノートとか貸して貰ったりしてるのよ」
「そうなの?くまちゃんが何時もお世話に……同級生?」
「クラスは違うが、同じ学年です」
「……くまちゃんが何時もお世話になっています」
「……正直に、言ってくれ」
「……先生かと思ったわ」
顔が手塚国光なので老けている自覚はある。
ここ最近、高校の友人と会っていなかったのでそういう会話をしていないが改めて老け顔なのを思い知らされる。
「そうか……」
太刀川隊に続き、まさかの熊谷がいる那須隊と出会うとは本当に今日は色々と出会いがあるな。
メガネ(兄)「当小説が二乗ほど面白くなるおまけコーナーと言う名の設定とか裏話!!」
弾バカ「前回に引き続き、各ポジションについて説明をするぜ!
今回は中距離での戦闘をメインとし、戦術に彩りを増やすとも言える
メガネ(兄)「凄く分かりやすく言えば、バトル物とかでよくあるエネルギー弾を放つやつだな」
弾バカ「まぁ、平たく言えばそうなるな。
四角形の立方体のトリオンキューブを出して、縦×横×高さで均等に分割して射って相手にぶつけるのが主な戦い方で、10×10×10の攻撃とか出来るぜ」
メガネ(兄)「はいは~い。心臓とか脳みそとか撃ち抜けば大抵の生物はぶっ殺せるから、正直そこまで分割しなくても良いと思います」
弾バカ「良い質問……じゃねえよ!なにサラッと恐ろしい事を言ってんだよ。
まぁ、確かにお前の言うとおりトリオンで出来た肉体とかトリオン兵とかの核となる部分を破壊すればそこまで要らねえ。
メガネ(兄)「銃を盗まれた時点で終わりだが、手から出せるから盗まれる心配はないとかか?」
弾バカ「あ~確かにそれも入るっちゃ入る。やってる奴、見たことねえけど。
射手は手から弾を出した際に、弾の速度、威力、射程、更に何分割するか決めることが出来る。銃手は銃に弾の射程とかを設定することが出来るけど、その設定を戦闘中や状況に応じて帰ることが出来ず、銃を使って撃ってるから一度に発射することが出来る弾に限界がある」
メガネ(兄)「銃手の良いところはなんだ?」
弾バカ「射手は弾を出す、相手にどういう風にぶつけるのか演算処理する、発射。対して銃手は銃を相手に向ける、発射の2行程で済むからよーいドンの早撃ちとかになると銃手の方が強い」
メガネ(兄)「中々に使い分けづらいな。人気の度合いで言えばどっちなんだ?」
弾バカ「あ~……やっぱ、銃手だろうな。
射手のトリガーを入れてるけど、それはあくまでも撹乱とか相手を妨害とかフィールドぶっ壊すとかをメインにしてる奴ばっかだ。戦って回りを見ながら相手にぶつける弾をどうするか演算処理すんのが難しいから、現に銃手のトップもそれが出来ないから銃手やってるって感じだ……そう考えれば、メガネくん中々に頭が良いな」
メガネ(兄)「馬鹿を言うな。
修のトリオン量ではあれやこれやと色々な事が出来ず、選択肢が絶望的なまでに少ないだけだ。
頭が良いと言うが、特別良いわけではない。自分も強くなるんだと例え年下や同い年だろうが頭を下げたりすることは出来るが、修の場合はそもそもで合格する基準を満たないトリオン量じゃないんだ。出水をお手本になんて逆立ちしても出来ないから、それこそ師匠無しでツインスナイプ自力で会得した佐鳥の様になんらかの開祖になるぐらいに努力しなければいけない」
弾バカ「弟に、スゲエ厳しい……てか、佐鳥の評価大きいな」
メガネ(兄)「裏口入隊には厳しくしなければ、一応命がけなんだぞ。それと佐鳥の評価は大きくて当然だろう。
お前達が奉る狙撃手の東さんの弟子でもなんでもなく、ツインスナイプという使い方と運次第では影浦先輩を撃ち抜ける技を作り上げたのだから」
弾バカ「いや、お前、あれでどうやって影浦さん撃ち抜くんだよ。東さんでも誰かの力借りて大きく隙作ってんだぞ」
メガネ(兄)「それはいずれということで。次は弾の種類だな」
弾バカ「狙撃手の時、ゲスト、誰になるんだ?
えっと、弾だな。射手と銃手の弾は同じで四種類ある。
一つは通常弾、アステロイド。まぁ、これは普通の弾だな。直線上にしか飛ばせない普通の弾。
普通な分、威力が他の三種類の弾よりも高くてトリオン量が多いオレとかお前とかならアステロイドを撃ちまくるだけで、余計な小細工無しでトリオン兵を一発で倒せる……あ、言い忘れてたけど、射手が出すトリオンキューブはトリガー使ってる奴のトリオンの最大値によって決められてて大きさの変更は出来ないからな」
メガネ(兄)「サイズまで処理すると、頭が追い付かなくなるだろう。次は?」
弾バカ「次は変化弾、バイパー。
アステロイドと違って、直角に曲げたりUターンさせたり色々と弾道を変化させることの出来る弾だ。
ただまぁ、弾道を真っ直ぐ以外にも変化させないといけないから演算処理が尋常じゃなく大変で事前に設定した変化をさせる奴が多くて、一回一回リアルタイムで弾道を入力することが出来るのはボーダーでも極僅かで大半は銃手のバイパー使いみたいに複数に設定した弾道の中から一つ選んで撃つな。因みにオレはリアルタイム弾道を入力することが出来るぜ!!」
メガネ(兄)「あ~私、頑張ったけどサイドエフェクトが逆に邪魔してきて64発をコントロールするのが限界だな」
弾バカ「お前、本当になんでも出来るんだな……一回一回リアルタイムで弾道を入力することが出来れば、どんな弾が飛んでくるか予測不可能だ」
メガネ(兄)「あ、私、サイドエフェクトで弾道の先読みが」
弾バカ「お前のサイドエフェクト、チート過ぎるから無しだ無し!!
次はハウンド……漢字で書けば誘導弾、追尾弾でどっちが正しいかって言えば、どっちだこれ?」
メガネ(兄)「私に聞かれても……原作者のミスとかどうとか」
弾バカ「……ハウンドは2つの追尾方法がある。
1つ目は相手のトリオン体、要するにエネルギーを探知して追いかける。2つ目は視線で対象を追いかける。
追尾機能は割と便利なんだが、弾の速度を上げすぎると追尾しなくなる。相手に当てて、相手を倒すとかよりも相手の手前に向けて撃って、撹乱したりして行動を制限したりするのに使うのが多いな」
メガネ(兄)「というよりは、相手に向かって最適で最速な追尾機能付きなら変化弾の価値が落ちるだろう。不意打ちオンリーの弾になりかねん」
弾バカ「まぁ、その辺もありえるな。
最後は炸裂弾、メテオラだ。読んで字の如く爆発する弾で、トリオン量の調節で爆破の規模を弄くれる。
普通に撃つ以外にも地面に置いて近づいてきた相手にボカンと地雷みたいにする、至近距離から投げつける、住居に隠れている相手を炙り出すと色々と使え」
メガネ(兄)「出水くん、出水くん」
弾バカ「どうした?」
メガネ(兄)「あの、メテオラって防衛任務で使って大丈夫なのか?
なんか一部の弾もそうなんだが対人戦前提で使っててフィールド破壊したりするとかそういう使用方法が……玉狛第二みたいに、対人戦特化で普段から襲撃してくるトリオン兵と戦う防衛任務じゃ三門市を守るどころか三門市を破壊しまくりなのが多いんだが……」
弾バカ「……次回は射手の必殺技とも言うべき、合成弾について説明をするぜ!!」
メガネ(兄)「……お前、何回かやらかしたな」
ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)
-
てれびくん、ハイパーバトルDVD
-
予算振り分け大運動会
-
切り抜けろ、学期末テストと特別課題
-
劇団ボーダー
-
特に意味のなかった性転換
-
黄金の果実争奪杯