「手を出せ」
三輪が試験官を務める特例中のボーダー内部における入隊試験。
ゲームボーイみたいな機械を取り出し、そこから伸びるチューブの様な物を握らされる。コレがトリオンを計測する装置か。
「知識としてこんなものがあるのは知っていたが、コレは量産する事が可能な装置なのか?」
一応は気になっているこのゲームボーイみたいな見た目をしている装置。
私がボーダーに出資する条件としてこの装置の量産及び学校の身体計測でついでにトリオン能力の計測もしてくれと頼んである。ボーダー推薦とかいう謎の枠組を作れるぐらいに三門市にボーダーの力は浸透しているので出来ないわけではないはずだ。
「知らん」
「そうか」
三輪に尋ねてみるも三輪はそんな事は知らなかった。エンジニアでなく戦闘員の三輪にそんな事を聞いたとしても致し方あるまい。
とりあえずはトリオンがどれくらいあるのか……レプリカで計測した際にはトリオン器官がおかしな事になっていると言われた。心当たりは普通にある……力の一部を彼女に譲渡しているから、それが原因だろう。
「測定が終わった」
「お、どうだった?サイドエフェクト持ってるから最低でも7以上はあると思うけど……」
「コレは……」
「おいおい、嘘だろ?」
トリオン能力の測定を終えると三輪は答えるべきか躊躇う。
米屋はどれくらいあるのか機械を出水と一緒に覗き込むのだが固まった……測定不能というオチはつかないだろうな。
「いくらだ?」
ボーダー基準で私のトリオン能力は幾つか聞けば三輪はゆっくりと口を開く
「トリオン能力は……19だ」
「おれ以上ってか、二宮さん以上のトリオン能力じゃねえか!」
「サイドエフェクトがあるからトリオンは豊富なんだろうけど、まさかぶっちぎりでトリオンを持ってるとはな」
レプリカが測定してくれた時と同じ数値を叩き出したか。
トリオン器官がおかしな事になっていると言わないのでボーダーのトリオンを計測する装置はそこまでの物なのかもしれない。私のトリオン能力の凄さに米屋は圧巻する……そしてここで問題が浮上する。
「お前、トリオン能力的に何処のポジションでも出来るよな」
私のポジションについて米屋はどうするか考える。
既にボーダー入隊は決まっているのでここから体力測定だ一般教養によるテストなんて面倒な真似はしない。ボーダーに入隊したらどうするかだ。一応はC級からスタートする事になっている。おまけのポイントは一切無い……斬月として活躍した部分はノーカンである。是非も無し
「んなの決まってるだろう、こんだけトリオンがあるんだ。贅沢に点も取れる
「いや、コイツは運動神経抜群で視力強化のサイドエフェクトを持ってる。
「なに言ってるんだ!このトリオンを使わず攻撃手とか宝の持ち腐れだぞ」
「間を取って
「おいそこ2人、なに勝手に言い合っている」
「なら
「秀次、ズリぃぞ!自分と同じスタイルを取らせるつもりだろう!!」
三輪まで話に参戦してくるか。
ポジションなんてぶっちゃけどうだっていい……なんて言ったのならば怒られる事は違いないだろうな。正直、どんなポジションでもこなせる自信はある……目指すのは全部のポジションが出来るオールラウンダーだ。
「盛り上がってるところ悪いけど、そいつのサイドエフェクトも調べておかないと」
「あ、そうだった」
サイドエフェクトについて雷蔵さんが話題に出すと言い争っていた米屋はそうだったと思い出す。
私のサイドエフェクトは視力強化、サイドエフェクトのランクで言えば五感強化のCランクのサイドエフェクトだ。ただCランクと呼ぶにはあまりにも強力過ぎる性能を持っている。
「ここじゃ測定する事が出来ないから、あそこでやるぞ」
「あそこ?」
それはいったい何処の事だろうか、米屋に連れられて行くとそこはボーダーの狙撃手の訓練所だった。
ここでどんな事をさせるつもりだ……なんとなくで何をするのかは予測することは出来るが、まさか狙撃を実際にやってみろと言うんじゃないだろうな。
「お、三雲じゃねえか」
「これはどうも当真さん」
「聞いたぞ、遂にボーダーに入るらしいな」
「えぇ、まぁ、色々とありまして……
No、1狙撃手の当真さんと遭遇する。私の事が具体的にどういう感じに触れ回っているのか、遂にボーダーに入ると言ったところか。
まぁ、それ自体は嘘でもなんでもない紛れもない事実……出資者になってボーダーに入れろとゴネた設定でも作ってみようか……いや、いいか。
「三雲、なにが見える?」
「なるほど、そういうことか」
遠くにあるものを視認させるには狙撃訓練所が1番か。メガネを外して近くの台に置くと、狙撃手達が必死になって撃っている的を見つめる。
真ん中にしか穴が空いていない物もあればキレイなスマイルマークに穴が空いていたりする……
「右から左斜下、右斜め上、ギリギリ右を掠めている、真ん中よりも少し下……そんなところか」
「おいおい、スコープ無しでそこまで見えるのかよ」
三輪達に質問される前に誰の的がどんな感じになっているのかを教える。
当真さんは狙撃銃のスコープを手にして的を覗き込むと私の言っている通りになっているので感服している。この程度の事ならば朝飯前……そう、朝飯前なんだ。
「米屋、その気になれば2km以上先まで遠くを見ることが出来る。遠視の性能を試すのはそれまでにして他の部分をテストしてくれ」
数百m先のものぐらいならメガネをかけた状態でも見抜く事が出来る。
これからkm単位でなにがあるか見ろと言われてもめんどうなので遠視能力はこれで充分だ。最大で何処まであるのか計測しても時間の無駄だ。米屋にその事が伝わってくれたので狙撃手の訓練場を後にして再び開発室に戻った。
「それで今度はなにを調べる?」
「動体視力を調べさせてもらう……ついてこい」
三輪についていくと真っ白でなにもない空間にやってきた。
このなにもない部屋はトリオンを用いることで擬似的にここではない何処か別の空間を再現する事が出来る……筈だったな。
「まさか戦闘をしろと言うんじゃないだろうな?まだボーダーのトリガーには馴れてないどころの話じゃないんだ、それは出来ない」
「違う……出水、起動しろ」
この部屋に入ってこなかった出水は外部から仕掛ける。
するとなにもない真っ白な部屋が急に豪華絢爛なカジノに切り替わり、無駄に大きなスロットが目に入った。
「前に聞いたけどお前、ルーレットとか滅茶苦茶得意らしいな」
「博打の類は大体得意だ。このサイドエフェクトを用いてそれはもう当てまくっている……ボーダーに出資する事が出来るぐらいにはな」
鍛えないと使い物にならないサイドエフェクトだが今や91%の的中率を誇る。
株とかFXとかやっていると本当に面白いぐらいに儲かるから本当にやめられない。金は天下の回りものだ。
「あのスロットの7を全部揃える事が出来るよな?」
「当然だ……試しに米屋が一回やってみてくれ」
「なんでだよ?」
「イカサマ防止、裏工作はされていないとの証明だ」
そんな事はされていないのは分かるが疑われるのは非常に心外だ。故に出来ることはやっておく。
米屋が無駄にデカいスロットを回すとスロットは高速で、それこそ絵柄が見えないんじゃないかと思える速度で回転する。
「普通のスロットよりも速いな」
「分かるのか?」
「ゲーセンのスロットやルーレットでお菓子とかを荒稼ぎしているからな」
アレは本当にお菓子代とかの節約になってホントにちょうどいい。
米屋がスロットのドラムを止めていくのだが絵柄が全然合わず、失敗に終わった
「視力、いい方なんだけどな……すまん、失敗した」
「コレは元々お前の為にあるものじゃない……三雲」
「真打ち登場といこうか」
米屋の失敗を取り返してみせる。スロットを起動させるスイッチを押すとスロットは回り始める……時速60kmといったところだろう。
米屋の動体視力は中々のものだが流石に時速60kmの物を見切る目は持っていない。これをなにも無しで目押ししろと言うのが無茶な事だろう……ただそんな無茶を通すのが私のサイドエフェクトだ。
確かトリコのココは秒速100〜150mのルーレットを目押しする事が出来ていた。ならば時速60km程度の速度は屁でもない
「開発陣に言っておいてくれ……これぐらいなら殆ど止まって見えると」
文句一つ言えないビタ押しでスロットを止めた。
7の字が一直線、ストレートに並んでおりそれを見た米屋はマジかよ~と言った顔をしている。この程度ならば余裕綽々だ。
「それで次はなにを試す?」
「そうだな……出水、電気を消してくれ」
三輪がそう注文すると部屋は真っ白な状態に戻り電気が消える。
「お前のサイドエフェクトは遠くの物を見たり、とてつもない動体視力を発揮している様だが本来は見えない物を見ることが出来る、そうだったな」
「ああ、赤外線や紫外線、電磁波などを視認出来る……勿論暗いところでも暗視が出来る。今、三輪は左手に拳銃を持っている」
「……明かりをつけろ」
暗い中でなにをしているのかなにを持っているのか当てさせるつもりだった様で、私が直ぐに答えたので三輪は中止にする。
暗くなっていた部屋に明かりが灯されると部屋から一旦出て開発室に戻る。
「他にはなにが出来る?」
「トランプを2セット用意してくれないか?」
三輪達が調べたい事を調べ終えたが、私の事だからまだなにか隠している事があるのではと尋ねる。
遠くの物を見る、時速60km程のスロットをビタ押しする、暗い部屋で暗視機能を一切使わずなにを持っているのかを見抜いた。普通ならばコレで終わるが、まだ終わらない。出水にトランプを2セット持ってきて貰うとシャッフルし、開発室の空いているテーブルにカードを扇状に並べる。
「なにをするつもりなんだ?」
「コレとコレだな」
扇状に開いた2つのカードの束から2枚カードを引いて出水に渡す。
まさかと言った顔の出水はカードの絵柄を見ると固まった……私はが渡した2枚ともスペードのエースだった。
「次はコレとコレ、更にはコレとコレだな」
「全部一緒のカードだ……いったいどんな手品だよ」
「私は人間が本来見えない光が見ることが出来る、その中には電磁波も分類されている。トランプのカードが発する極僅かな電磁波を共感覚で形や色を付けて識別している……そしてそれらの技術を応用する事により占いを行う事が出来る」
「てことは学園祭でやってた占いはサイドエフェクトを使った物なのか……滅茶苦茶贅沢じゃねえか」
「そこまでのものじゃない、外れる時は外れるさ。現にこの前の大規模な侵攻のあった日の朝に修に死相が見えていたが、なんとか上手く乗り切る事が出来た」
私のサイドエフェクトは便利で万能であるが絶対でも全能でも無い、使い物にならない時だってある。
とはいえ、そんな時は早々に来ない様に未来を調整している……迅が。私は数秒先なら見通す事が出来るが数手先は見通す事が出来ない……予測することは出来るがな。
「数km先まで遠くを見れて時速約60kmのスロットをビタ押しで当てて、暗いところでもなにがあるのかを見抜く暗視能力に加えて本来は見えない電磁波を共感覚で彩り形を作って擬似的な予知能力……コレだけやれてよく今までボーダーに入ろうと思わなかったな」
その後も色々とテストをして私のサイドエフェクトの性能を確かめる。
識別能力とか何処になにがあるのか見つけるといった本当にシンプルなものだったので割愛させてもらう。
私のサイドエフェクトからデータを取り上げた雷蔵さんは少しだけ呆れている。コレだけの力ならばもっと早くにボーダーに入隊してくれたら良かったのだと。
「すみませんね、ボーダーはそんなに好きじゃないんですよ」
原作云々はさておき私はボーダーがあまり好きじゃない
どれだけ優れた才能を持っていたとしても入りたいとも思わないし、自分の見つけたやりたい事でも無い……まぁ、三輪の復讐に手を貸すことはやりたい事の1つだが。
「コレだけやれるんだったら実戦でどんだけ出来る事か……よし、三雲のトリガー構成を決めるか。やっぱここは手堅く弧月かスコーピオンで」
「だからトリオンに物を言わせた射手の弾トリガーだろう。C級はシールドとかないし
「いや、ここは
一通りの検査を終えたので私は訓練生用のC級トリガーを貰うことになるのだが、そこで出水達がモメる。
私のサイドエフェクトとトリオン能力ならばある程度、いや、かなり好き勝手に自由なトリガー構成にする事が出来るのだろう。
「あんな感じでモメてるところなんだけどレイガストはどうだ?君の弟も使ってるトリガーだ」
「そうですね……」
ボーダー関連では修に余計な力を貸してはいけない。修が試行錯誤を繰り返したり人に頭を下げたりしなければ本当の意味で力にならない。
修と同じもしくは似たようなトリガー構成にして修の手本となる……それならばレイガストはありかなしかで言えばありよりのありだが……
「それ確かオプション機能前提のトリガーですよね?」
「っぐ、痛いところをついてくる」
レイガストは推進力を与えるスラスターが必要なトリガーだ。弧月やスコーピオンの様に単体で戦える道具じゃない。
雷蔵さんもその事を薄々自覚している様で指摘されると困った様な顔をしている
「ああ、もう埒が明かねえ。三雲、お前が決めてくれよ!お前の初期装備をよ!」
そんな中でもまだ言い争っていた出水達。私のトリガーを最終的には私に決めてくれと言い出す……いざ決めろと言われてもな
「まだ正式な入隊日にまで時間はあるし、もう少しゆっくりと……悩むな。狙撃手とかもありかもしれない」
「あんだけ動けて狙撃手なんて勿体ねえ!百歩譲っても荒船さんみたいな二刀流だろうが!」
「……う〜ん……参ったな」
ボーダーに入隊する事がいざ決まったのはいいが、具体的にどうしたいのか明確なビジョンが見えない。
勿論、修が安心して遠征する事が出来る様にこちらの世界を全力で防衛するつもりだが、ボーダー隊員としてこうなりたいという明確なビジョンは持っていない。
「強いて言うならば……ボーダー隊員のお手本になるようなトリガー構成をしたいな」
本当に強いて言うならば、そうだ。ボーダーはトリガーを渡して後は自分のやり方で試行錯誤を繰り返してくれと若干だが投げやりなところがある。曲がりなりにも使っているのが軍事兵器なのにマニュアルもカリキュラムも一切存在しないというのは如何なものかと思う。
「つー事はレイジさんみたいな完璧万能手でも目指すのか?」
「いや……それとはまた違う別のアプローチをしたい」
「そっか……お前のサイドエフェクトとトリオン量なら好きに出来る、頑張れよ。ってなに上手い感じに話を纏めようとしてんだよ!お前のトリガー構成を決めねえと」
「めんどうだから追尾弾の拳銃か通常弾の突撃銃でいい」
どっちか後で試してみて、しっくりと来る方を初期のトリガーにする。
攻撃手系のトリガーはどうせ器用に使いこなせるのが目に見えているんだ。
「
「B級に昇格すればトリガー構成は好きに出来る。だったら最短でB級に上がる事が出来ればそれでいい」
細かなトリガー構成はB級になってからでいい。
出水達はなにか言いたそうな顔をしていたのだが、B級に上がってから決めれば良いことだと深くは聞いてこない……ぶっちゃけた話、戦極ドライバーで斬月に変身するのが1番しっくりと来るがそれは有事の際にのみだろう。
雷蔵さんに追尾弾の拳銃と通常弾の突撃銃のC級トリガーを後で用意してもらう事になり、一先ずは入隊試験を終える……入隊が既に決まっているのに入隊試験とは改めておかしなものだ。
「ここか」
開発室を後にし、やってきたのはボーダーの主に外部スカウトを受けた隊員が住んでいる居住スペースの様な場所だ。
冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンと4種類の家電製品は完備されているとの事で服だけ持ってきてくれればそれでいいとのこと。
服はまだ取りに行っていないので後で取りに行くとして部屋がどれだけの広さなのかを確認しておきたい……場合によってはガイアメモリとかが入ったアタッシュケースを持ってこれる。
「……一人部屋としては充分な広さか」
8畳1kの一室で既にベッドは完備されている。外部スカウト組はこんなところで生活しているのか……ちょっと妬いてしまう。
机とかも置かれていてコンセントもある……パソコンを持って来る事を考えればタコ足配線を買ってきた方がいいな。何処にどう物を置こうか考えているとインターホンが鳴った。まだ引っ越しすらしていないのに誰かとドアを開いた。
「お隣さんが引っ越してくるって聞いたんやけどホンマやったんやな」
「……」
ゴーグルが特徴的なボーダーのお笑い芸人もといボーダー随一の旋空弧月の使い手である生駒達人がそこにはいた……ので無言でドアを閉めた。
私のサイドエフェクトが言っている、アレと関わるとおかしくなる……というよりは第三者が見て面白い事になる。
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