メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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第83話

 

「ちょ、ちょっ。なんで無言で閉めるんや!」

 

「すみません、ちょっと気分が悪くなったんですよ」

 

「大丈夫か、医務室にまで案内したるで」

 

「大丈夫です。直ぐに収まったので」

 

 無言でドアを閉めると全力で開けに来た生駒さん。お隣さんが生駒さんとか呪われてるのか幸運なのかどちらかは分からないが色々と混沌としている事だけは確かだろう。ビックリ人間というか古典的な面白い人でなにが飛び出してくるか分からないコミカルな人……どちらかといえば苦手なタイプの人だ。いや、生駒さんは悪くない。コレは私自身が個人的に苦手としているだけで私が悪い。

 

「お久しぶりですと言った方がよろしいでしょうか?」

 

「せやな。ドラえもんのモノマネをした奴って印象が強いわ」

 

 昨年のボーダー主催のイベントで生駒さんとは会っている。ちゃんと話し合うのはコレがはじめてなので頭を下げる。

 さて……どうしたものか……とりあえず家に帰って洋服の荷造りでもしておかないといけないな。

 

「ありがとうな」

 

「なんの話ですか?」

 

「隠岐達から聞いたわ、うちの部隊が合流出来たん自分のおかげなんやろ?あん時まともに動けへんかったら今以上に被害がデカくなってたかもしれへん」

 

「……」

 

 お礼を言われるのはなんだかムズ痒いな、私としては部隊が合流すればそれで動ける駒が増えると認識していたが礼を言われるとは思いもしなかった……いや、待て……

 

「感謝をしてくれるならその前に拉致被害者を出さないでほしいですね」

 

「俺んとこは結構頑張ってんて……水上達も必死になって頑張ってキューブ化されたC級助けたんや」

 

「1人でも被害を出せば意味はない……っと、生駒さんを責めても仕方ない。責めるのならば……いや、もう既に終わったことか」

 

 ボーダーが記者会見という後始末まで終わらせたんだ。今更大規模侵攻であれができたこれができたと根掘り葉掘り掘り下げてはいけない。

 未来へはもう進み出している。ならば、出来る限りの最善の未来を掴み取る為に努力し精進を怠らないでおく…………。

 

「……私はなにをすればいいんだろうか……」

 

 今の今まで大規模侵攻について考えていた。いざそれが終わり、次に向かうことが出来ていない。次という目標が出来ていない。

 元々将来なにがしたいとかの夢を持っているわけではないのだから致し方ない事かもしれないが……暇になってしまっているな。母さんからボーダーでは修に力を貸してはいけないとまで言われている。修が本当の意味で成長するには私が助言したりしてはならない……私は修を甘やかしてしまう自信がある。

 

「どしたん、めっちゃ表情変わっとらんけど浮かない顔やで」

 

「表情が動かないのは親の遺伝です。少しだけ暇な時間が出来ただけで、そんなに気にする事じゃないです……多分」

 

「多分って随分と曖昧やなぁ」

 

 ボーダーに出資する事は正式に決まった、トリオン能力を身体測定と同時に調べる事になるだろう。

 ならばどうするか。私が自分ですべきと思ったことをすればいいんだろうが……

 

「こういう時は一箇所に留まっててもしゃあないわ。空気切り替える為にも場所、移そか。ボーダー内を案内したるわ」

 

「そうですね」

 

 このままだとこの部屋に引きこもってしまう。パソコン1つで株に手を出して金を増やしてしまうだろう。

 今のボーダーに必要なのは金ではない……いや、金も必要な物なのだが。生駒さんの言っている事にも一理あるので居住スペースを後にしボーダーの中を案内してもらう。

 

「ここがランク戦を行うブースで、今日も今日とて皆が腕を競い合っとる」

 

「イコさん、なにしてはるんですか」

 

 ブースに案内してもらうと水上先輩と遭遇した。

 

「三雲にボーダーを案内しとるんや」

 

「水上先輩、どうも」

 

「おぉっ……なんや随分と珍しいところで会うな。自分、ボーダー嫌いやなかったっけ?」

 

「嫌いな事には変わりませんよ……ただ世の中は好き嫌いで仕分け出来るほど甘くはないですし感情的にもならないんですよ」

 

 何処まで行こうが私のボーダー嫌いは変わりはない。ボーダーは組織を大きくしたというのにちゃんとしていないのだから。

 だからといってグチグチと文句を言い続けるだけでは意味がない。そろそろこちらからアクションを仕掛けなければならない。ボーダーをちゃんとした組織にする為にも。

 

「大人やな」

 

「まさか、グチグチと文句をたれ流す駄目な男ですよ私は……結局のところまだなにも成し得ていない」

 

 ボーダーに対する不満があるのならばボーダーに直接介入して変えればいい……それを今までしなかったんだ。

 水上先輩は大人だと認識しているが母さんから見れば私はまだまだケツの青い子供なんだろう。

 

「ランク戦、しとくか?」

 

「入隊は決まりましたがトリガーがまだ支給されてないです」

 

 仮に支給されていてもC級のトリガーでは出力が低かったりするし、一個の装備だけになってしまっている。

 流石に手練のボーダー隊員を相手にC級の貧弱な装備で戦うのは厳しいな。

 

「せや、礼言うわ。隠岐をイコさんのところに連れてってくれて、お陰で生駒隊として大規模侵攻で活躍する事が出来たわ」

 

「……その事なんですが隠岐から具体的にどんな感じか聞いていますか?」

 

「三雲が送ってくれたって言ってたけど、詳細は伏せられとる……言うなと口止めされとるし、なんとなく予想はつくわ」

 

 流石はIQ高そうなブロッコリー、私がトリガーを隠し持っているのを薄々察している。

 ランク戦が出来ないし目ぼしい対戦カードがあるわけでもないのでランク戦を行えるブースを後にし、次に向かったのは狙撃訓練所。

 そこではボーダー隊員達が狙撃の訓練をしており、ここではメガネは外していた方が良いと私のサイドエフェクトが言っているのでメガネを外しておく。

 

「あ、メロンさんじゃないっすか!」

 

「ストップ!ストップ!」

 

 夏目出穂がそこで狙撃の訓練をしていたのだが私の存在に気付き喜々として近付いてくる。

 色々と危ない事を言ってきているので口を閉じさせる。

 

「私のあのメロンは一応は極秘扱いで上から喋るなと言われている……いいな?」

 

「す、すんませんっす……でも、あん時の印象が強すぎて。メロンをあそこまでカッコよく着こなせているのはもう凄すぎるっすよ」

 

「言うな照れるだろう」

 

 斬月のメロンエナジーアームズやメロンアームズの事を言っているのだろうが、恥ずかしい。

 確かにメロンをあそこまで着こなせる人は居ないだろうが……恥ずかしくてむず痒い。

 

「この、この色情魔がぁ!!」

 

「生駒さん、どうしたんですか?」

 

 夏目と仲良く談笑していると生駒さんはプルプルと震えて怒りを顕にする。

 怒っている理由に心当たりは特になくなにに対して怒っているのか疑問に思っていると横で水上先輩が呆れていた……いや、ホントになんでだ。

 

「なに素知らぬ顔で年下の女の子にあだ名で呼んでもらっとんねん!」

 

「それだけ初回の会合にインパクトがあったんです……なにか勘違いしているかもしれませんが、私には」

 

「隠岐と一緒でモテへんとか言いつつ滅茶苦茶モテてるパターンやろ」

 

「う〜ん、強ち間違いとは言われへんな」

 

「水上先輩、見捨てないでください」

 

 モテたいという欲望から来る嫉妬の炎を生駒さんは燃やす。

 私がそこそこモテている事を水上先輩は知っているのでどうしたものかと悩んでいる。そこは普通に助け舟を出してくれるだけで助かるんだが……仕方ない。

 

「生駒さん」

 

「なんや!イコさん、滅茶苦茶にプンプンなんやで!こうなったら話、全然聞かんくなるんや」

 

「その割には滅茶苦茶意識してはるやないですか」

 

「……そんなにモテモテになっても結局のところは1人しか選べないんですよ。わーきゃー言われてもホントに大事なのは如何にして1人の女性を愛し抜くかだと私は思うんです」

 

「ぬぅおぁ!目が、目がぁ!!イケメンビームを放ってきおった」

 

「まぁ、言うてる事には間違いないやろうけど……イケメンの自慢話にしか聞こえへんで」

 

「っは!せや、モテてる男やからそんな事を言えんねんで!!」

 

 っち、話がまた元に戻ってしまったか。生駒さんを煽てる方法は今のでなんとなく分かってきた、水上先輩が余計な事を言わなければそれでチャラになっていたが……ツッコミ役のこの人が居ないと色々と大変なので是非も無し。

 

「メロンさん、このゴーグルの人は誰ですか?」

 

「ボーダーでも指折りの攻撃手、剣の達人と書いて生駒達人と呼ぶボーダーの頼れる先輩だ」

 

「……そう!俺こそがボーダー1の旋空弧月の使い手の生駒達人、気軽にイコさんって呼んでや」

 

「手のひら返し早いなぁ、オレは水上敏志、イコさんところの部隊(チーム)の1人で射手(シューター)やっとる」

 

 生駒さんを盛り上げる形で自己紹介すると生駒さんはそれに便乗してきた。

 ホントに乗せやすい人だなと思いつつもサイドエフェクトを用いて未来を占う……ふむ……

 

「皆さん、これから少しだけ時間が空いていたりしますか?」

 

「夕方から防衛任務やから、それまでは暇や」

 

「オレも夕方までなんか用事があるとかは無いで」

 

「アタシもちょっと息抜きをしたいんで手が空くっすよ」

 

 生駒さん、水上先輩、夏目の3人は時間を作れるか……3人を巻き込むか否か……まぁ、言い出したのは私だしある程度は責任を取らないといけない。今から行う行為に多少の罪悪感を抱きながらも私は3人を連れて歩く

 

「こうしてちゃんと顔を合わせるのは久しぶりだな」

 

「三雲、さん……」

 

「え、なんなん。三雲、ボーダーの狙撃手の女の子も毒牙にかけとるん?」

 

「イコさん、今からシリアスになると思うんで黙っといてください」

 

 ちゃんと向かい合って顔を合わせるのはそれなりに久しぶりの日浦茜。

 生駒さんがバカな事を口走っているのを水上先輩は叱りつけると今までの明るい空気から一変して不穏な空気が醸し出される。

 

「私から切り出した方がいいか?」

 

「っ……ぅ……どぅぁわあああああ!!」

 

 私から言うべきだったのかもしれない、日浦は大きく涙を流し声を上げる。

 周りで狙撃訓練をしていた人達は急に何事だと慌てているのでとりあえずは日浦の肩に手を置いた。

 

「ここではなんだ、場所を移すぞ……生駒さん、水上先輩、夏目、悪いですけどちょっと話に付き合ってください」

 

「ええで」

 

「なんや重い話になりそうやな」

 

「私で力になれるならいいっすけど……」

 

 3人から許可を頂いたので狙撃場を後にし、飲食スペースにやってくる。

 連れてきたのは私なので飲み物代は出すと5人分の飲み物を購入し、空いている適当な席に座る。

 

「ほんで、なんで泣いとったん?」

 

 緑茶を飲み一息つくと、水上先輩から話を切り出す。

 日浦はグスグスと涙を流しつつも呼吸を整えて何故泣いていたのかを教えてくれる

 

「三門市から引っ越す事が決まったんです………三雲さんの言うとおりになりました」

 

「メロンさんの言うとおり?」

 

「去年、高校の学園祭で三雲さんに占って貰ったんです。そしたら私に不吉な相が浮かんでて……三雲さんの占いどおりになって」

 

「三雲、お前占いなんか出来たねんな」

 

「まぁ、色々と裏技を使いましたけども……私の占い通り災害が起きて、常識や法律に負けてしまったか」

 

「……はい」

 

 目を真っ赤にしながら日浦は頷く。

 私が裏で活躍したおかげで死人こそ出なかったものの、重症者や拉致被害者(C級)が出てしまった。常識的に考えればこんな街に住みたくないし、こんな組織に自分の子供を置いておけない。

 

「どの辺りまで引っ越すんだ?」

 

「電車で2時間ぐらいの距離のところで……私、何度も何度も言ったんです。引っ越したくないって、でももう決まった事だから変える事は出来ないって」

 

「……別に引っ越してもいいんじゃないか?この前の一件で危うく死人が出るところだったんだ。なら、安全なここではない何処か遠いところに避難しても、電車で2時間は中々に遠いが決して会えないわけじゃないだろう」

 

「嫌です、私、那須隊の皆と離れたくありません!!お母さん達は大人になってからもう一度って言ってましたけど大人になったらトリオン器官が成長しなくなって……どぅああああ!!」

 

 しまった、言葉を間違えてしまった。常識的に考えれば戦場に娘を立たせたくない日浦の両親が正しい。潔く諦めて第二の人生を謳歌すればいいと勧めようとするが日浦はそれが嫌で涙を流す……

 

「生駒さん達は今回の一件でなにか親達から言われたりしましたか?」

 

 くだらない同情は却って悲劇を生んでしまう。私の一言で日浦を大号泣にまで追い詰めてしまったのだが、そこは仕方がないことだ。

 ここでついてきてもらった3人に意見を求める。

 

「まぁ、当然と言えば当然の反応としか言いようがないわ」

 

 ポリポリと頭を掻きながら水上先輩は冷静に答えてくれる。

 

「根付さんとか嵐山隊が色々と頑張って勧善懲悪の組織に見える様に動いてるけど、やってることは戦争で三門市の一部地域は戦線の最前線と言うてもおかしない。ボーダーはこの街から出ていけいう意見も無いわけやないし、日浦のオカン達がとったんは当然の行動や、なんも間違いない」

 

「水上、もうちょい言葉を選べや」

 

「イコさん、それはあきませんよ……三雲は率直な意見を求めてるんや。オレに仮に息子や娘が居て今回の一件が起きたらボーダー辞めて引っ越そうて言いますよ」

 

 意外とドライな事を言う水上先輩。日浦は涙目になっているので生駒さんは水上先輩を咎めるが、今欲しいのは綺麗な言葉じゃない。汚くて醜い現実だ。本当に欲しい物が分かっているからこの3人についてきてもらったんだ。

 綺麗事でなく厳しい言葉を送って欲しいと言うと生駒さんは目を閉じて真剣に考える。

 

「やっぱ戦争はアカンって、こんな可愛い子を戦わせるなんてボーダーは酷い組織や」

 

「生駒さん、真面目に……いや、コレが素なのか」

 

 ウンウンと頷きながら生駒さんは意見を出してくれる。

 そんな酷い組織からスカウトを受けてやってきた人が生駒さんや水上先輩なのだろうが、それを言ってしまえばおしまいだ。

 

「夏目は?」

 

「私は……心配されましたけど、それでもボーダーにいたいと言ったらそれ以上はなにも言ってきませんでした」

 

 割と放任主義なところはあるな。水上先輩、生駒さん、夏目の意見が出揃う。

 

「私、まだボーダーにいたいです!三雲さん、占いでボーダーに残ることが出来る未来を当てることが出来ませんか!?」

 

 私の占いに頼ってくる日浦。

 メガネは既に外しているので日浦から放たれる極々僅かな電磁波から日浦の未来を読み取る……私のサイドエフェクトは迅のサイドエフェクトと違って数秒先は読めるが数手先を予想することはできても読み取る事は出来ない。

 日浦がボーダーに残留出来る未来はなくもないが……これは、厳しいな。

 

「三雲のところはどうなんや?なんか言ってこんかったん?」

 

 3人の意見等が出終えたので水上先輩は聞いてくる。

 

「母さんからは危険だから止めておきなさいと言いつつも本当にやりたい事ならば好きにしなさいとは言ってもらっています、弟はホントにやりたい事だからあんな事があってもボーダーを辞める道は選んでません」

 

 我が家は我が家で色々とアグレッシブだ。私の事も母さんはああだこうだ言ってきていない、むしろ頑張れと応援してくれている。

 

「日浦、どうしてもボーダーに残りたいなら残っても大丈夫だと親に安心させないといけない」

 

「ボーダーの事が家で話題に出ると大丈夫な組織だって何度も何度も説明しました」

 

「それじゃあ足りないんだ……お前自身が雑魚である事には変わりはないんだ」

 

「おぉっ、ハッキリと言いおった」

 

 今回は厳し目にいっておかないと大変なのでハッキリという

 

「奈良坂や当真さんの様なトップクラスの腕前を持っているわけではない、謂わば替えが何時でも利くレベルのボーダー隊員だ。ボーダー側に辞めないでほしいと言わせる程の魅力も価値もお前には無い。お前が辞めてもお前と同じぐらいの腕の狙撃手がどうにかフォローするだろう」

 

「うっ……」

 

「そこで涙を流すな、現実と事実を受け入れろ……今回攫われたC級隊員は今頃どうなっているんだろうな。お前はどう思う?」

 

「……それは……」

 

「拐われてきた奴隷として馬車馬の如く扱き使われてるかもしれない……次はお前かもしれない、それでもお前はこの道を歩むつもりか?こう言ってはなんだがお前はボーダーの活動を部活動の一種かなにかの認識に近い形で捉えている。水上先輩が言った様にボーダーは戦争を起こしていて未来視のサイドエフェクトというチートを用いた上でもこの前被害者を出した。この先、やっていくのならばその辺りの認識を変えなければ話は進まない」

 

 ボーダーのランク戦は人によっては最高のeスポーツだ。

 太刀川さん、米屋、緑川は恐らくだがランク戦をゲーム感覚で勤しんでるところがある。それが悪いかと言われれば彼奴等はA級隊員という結果を残しているのでなんとも言えないところだ。日浦にも似たような事は言える……ボーダーがそういう風に見せない様にしているがランク戦はゲームでなく軍事演習の一種だと私は認識している。

 

「私に言われたからじゃない、自分の意志で本当にボーダーに残りたいと思っているならば……目指すしかないな」

 

「A級を、ですか?」

 

「A級になれば流石にボーダーも辞めないでくれと言ってくるだろうし、なによりも親を安心させる事が出来る。私の占いではA級に昇格すればああだこうだ言ってくる可能性が減る」

 

 替えの利かないボーダー隊員になれば、ちょっとやそっとで辞めさせようとはしない。

 

「親に交渉する際に高校卒業までにボーダーのA級隊員になれなかったらキッパリとボーダーを諦めて普通の生活を送ると言って……そうだな。次のランク戦で今のランキングよりも上位に食い込まなければこの話は最初から無かった事にしていいと言えばいい」

 

 最初に無理難題を押し付けて、それが無理ならばコレでどうだと妥協をする。妥協した内容こそ本来の交渉の目的、最初から言えば無理だと思われてしまうが、それよりも無理難題を出すことでそれならばいいと妥協させる交渉術、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックだったか。

 

「今より上位に……」

 

「ファイトやで!」

 

「イコさん、応援するんは構いませんけど那須隊が今より上位になるって事は最低でもB級中位からB級上位にならなアカンって事で生駒隊(うち)とぶつかり合う事になるんですよ」

 

「だからどうしたんや、必死になってボーダーに残ろうとしてんねんで。敵とか味方とかそんなん関係無いわ」

 

 やだ、生駒さん滅茶苦茶イケメン

 

「でも現実的な話、那須隊B級上位に食い込めるん?中位から上位に繰り上がる事は出来ても上位の中じゃカモになるんが目に見えとるで」

 

「それは……ど、どうしよう……」

 

 那須隊は弱いとは言わないが特段強いというわけではないB級中位の部隊。

 危険視すべきはリアルタイムで弾道処理が出来る那須だけで後はどうにでも出来る、A級の精鋭なら倒せる相手だ……

 

「日浦、最後の確認だ……お前はボーダーに残留したいんだな?その道は下手すれば生と死の境界線を跨ぐ事になる。危険でしかない道で、明日は我が身の道だ。それ等全てを覚悟した上で那須隊に、ボーダーに残りたいんだな?」

 

「……はい」

 

 返事をした日浦から発せられる電磁波は覚悟を決めたものだった。

 認識としてはまだ部活動の一種なのかもしれないが、それでも日浦が本当にやりたい事だと思っている……

 

「決まりだな、早速親に交渉してこい……A級になると言うんだ」

 

「はい……あのっ」

 

「なんだ?」

 

「なんでここまでしてくれるんですか?同情、とかじゃないですよね」

 

 占いで分かってるからと言って助言をしてくる事に日浦は疑問に持つ。

 どうして自分にここまで力を貸してくれるのか、冷たく強く見放す選択肢もあったのにどうして手を差し伸べるのかを。

 

「私は……いや、俺は弟達と共に歩む道を選ばなかった、嫌な事から逃げ出す道を選んだダメな奴だ。それでも、そんな奴でも誰かの行く手を阻む壁を越える為の踏み台になることはできる。信じられる友や家族と共に歩むことも誰かの見本となることも選ばなかった俺の……ノブレス・オブリージュだ」

 

 なにをやっているんだ、私は。大分らしくない事を口走っている……呉島貴虎の様な高尚な人間じゃないんだ。

 しかしコレでまた目標の様なものが出来たな。那須隊を上位にまで食い込ませるという目標が……まぁ、修達の敵になってしまうのならば手を抜くが。

ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯
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