「トリガー、起動」
ダミーメモリを使ったちょっとした裏技を使った翌日の1月30日、学校が終われば早速ボーダー本部の自分の部屋に帰って部屋に置いてあるトリガーを起動させる。一応はボーダーの内部なのでトリガーを使っても怒られる事はない。
「誰、アレ?」
「スーツを着てるって事は二宮隊なんじゃないの?」
ランク戦が行えるブース、ではなく狙撃手の訓練場にやってきた。
昨日は裏技を使って一気にレベルアップを図ったのだが、狙撃手としての戦いは一切していない。未来視のサイドエフェクト持ちを不意打ちに近い狙撃で撃ち落とすのはほぼ不可能、集団で連携を取った上で詰みの状態にしないと迅を撃ち落とせない。
私が目指している理想の自分は
「あ、イーグレットを取り出したぞ」
拳銃系の武器は持ち前の器用さで使いこなす事が出来ている。だが、狙撃銃はまだまともに使った事はない
1番シンプルな構造をしているトリオンが多ければ多いほど狙撃の距離が増す狙撃銃イーグレットを構築し、構えるがスコープに目は通さない。
的は300m先にある……こうすればいいか?
「あ、当てた……って、掠っただけかよ」
300m先にある的にイーグレットの弾は命中した……が、ど真ん中とはいかずちょっと端っこを掠るぐらいの形だった。
今ので掠るぐらいの形ならば……もうちょっと左に逸れてもなにも問題は無いな。1回目の弾で弾道がどうなっているのかを見極めたのでもう一度撃ってみると今度はド真ん中に命中した。300mの狙撃は特に問題無し、ならば次はと今度は500m先に的が出現するので照準を目の力だけで合わせ撃ってみるが、今度は真ん中から僅かに逸れて右斜下に穴が空く。
「ご,500m先をスコープ無しで当てやがったぞ」
またまたどれくらいなのか分かったので軌道を修正すると真ん中に当たる。
今度は750m先に的が出現する。ここから当てるのは至難の技だろうが、大分馴れて来たので今度はイケる。イーグレットを構えて引き金を引くとど真ん中に命中する。そこからはもう完璧にど真ん中を狙う事が出来るので今度は何処でも好きなところを当てられる様に特訓をしようと一旦的をリセットし、新しい的を出した後に漢字の月の形になるようにイーグレットで撃ち抜き成功させる。
「誰なんだよ、あのマスク」
綺麗な月の字を描き終えると周りからの視線に気付く。
マスクをつけたカジュアルなスーツ男なんて目立って仕方がない……コレも私の策略の内の1つ、派手に目立ちすぎるのも如何なものかというかめんどうな事になるだけだが仕方ない事だ……この場には来ていないのか?目当ての人物がこの場には来ておらず、来る可能性が結構低いので狙撃手の訓練場を後にし、ランク戦が行えるブースにまでやってきた。
100人以上は居るブースなので目立つことは早々に無い……と思いたいが、近くにいる人達は誰だアイツといった顔でこちらを見てくる……昨日は迅にボロボロにやられてしまったがアレは相手が悪かった筈だ。時間はまだ余っているので適当な個室の中に入り、誰か手頃な相手は居ないかと探す。
「お、ちょうどいいのが居るな」
弧月で8000点以上取っているマスタークラスで尚且10000pt越えじゃない、自分の実力を試すのにちょうどいいカモ発見
ランク戦を申し込むとあっさりと承諾してもらう。因みにだが私の点数は弧月に4000ptが振られている……弧月セットしていないが。
「……!?」
仮想空間に転送されると……A級6位、加古隊の若きエースとも言うべき最年少A級隊員の黒江双葉と向き合う。
流石にランク戦の相手がスーツを着たマスクマンなので驚いているが直ぐに冷静になって弧月を構えるのでこちらもレイガストを構える。
「韋駄天」
黒江がそう呟くと同時にピカチュウのボルテッカーを連想させるかの様に黒江はバチバチと光り出す。
韋駄天、その名に恥じない高速移動の攻撃だ……ただ相手が私であったならその素早さは命取りだ。クロックアップと違って感覚までは早くならない、射手系の弾の様にリアルタイムでどう動くか動作処理して高速で動く感じのトリガーの筈だ。
「──えっ」
高速で突撃してくるが私にはゆっくりと動いているかの様にも見える。
一歩、後退して体を反らして黒江の弧月の斬る攻撃を回避すると同時にレイガストをブレードモードに変更、ナイフぐらいの大きさのブレードに変換して黒江の首を刎ねた。
「意外と多く貰えるな」
レイガストでのポイントが元々低いのと黒江が高得点だったが為に勝利した私には多くのポイントが入った。
ポイント移動で死なない訓練……こりゃあ米屋や太刀川さんがゲーム感覚で楽しむのも無理はない。ただ私は楽しもうとはしない、流石に生き死にを左右する為の訓練をゲーム感覚で楽しむことは出来ない
『もう一度、勝負してください』
A級の精鋭を倒せて気分がいい中で通信が入った。先程倒した黒江からで再戦を望んでいる。
私としては他のボーダー隊員と戦って自分が今どれくらいの位置に居るのかを確認したいところだが無視すると背後に控えているファントムばばあもとい加古さんがなんかしてきそう。チャーハンに巻き込まれるのは嫌なので3本先取勝負なら受けると返事をすればそれで構わないと勝負に応じた。
『ランク戦 3本勝負 1本目開始』
「つ」
次は負けない、おそらくはそう言おうとしたのだろう。だがそれよりも先に私は動いた。
具体的に言えば、ホルスターにセットされている
『ランク戦 2本目 開始』
1本目が終わっても次がある。
気を取り直したのかそれとも私の事を強者と認識してくれたのか黒江は真剣な顔になっており、私に向かって韋駄天を使ってくるので先程と同じ様に避けつつレイガストで今度は胴体を刎ねる。
『ランク戦 最終戦 開始』
「……」
自慢の韋駄天は完璧に見切られている筈なのに、懲りずに黒江は韋駄天を使ってくる。
韋駄天が通じない事に焦りを感じていると同時に現実を受け入れようとしていない感じだな。若いのでなんでも出来ると勘違いしてしまって自分の決め手が全く通じないなんてありえない認めたくないといったところだろう。若さ故に欠点を認めたくないのだろう。
「韋駄天──っ!?」
ただ毎度毎度カウンターを狙うのも芸が無いもの。韋駄天がどんな感じのトリガーなのか、どういう動きをするか手に取るかの様に分かる。
黒江が突っ込んでくるその先に足元にシールドを展開すると黒江は盛大なまでにずっこけるのでそこの隙を逃さず、レイガストをスラスターで推進力を増した状態で投げて黒江の頭を貫いた。
『……もう一度お願いします』
「【次があると思うな。コレは本番を想定した訓練の筈だ】」
携帯端末の音声を使って返事をする。コレならば私だと気付かない……謎のマスクマンとして登録されている……悪くないな、謎のマスクマンとしてボーダー内の実力者として伝わればそれで御の字だ。
黒江というA級隊員を倒せたので今度は目標を低くし、5000pt辺りを狙ってみるのだが、サイドエフェクトが1人のスコーピオン使いが危険だと発している……危険な道は後々歩まされるんだ、ならば喜んで歩もう
「あ”?」
5000点台のスコーピオン使いに対戦を申し込むと対戦相手は影先輩だった。
私の占いはホントによく当たるな、この人はポイント詐欺の代表格みたいな人で……要注意人物だ。
「てめえ、なに考えてやがる」
影先輩のサイドエフェクトは感情受信体質、向けられている感情が分かるサイドエフェクトだ。
それ故に奇襲や狙撃などは通じず何処を狙って攻撃してくるのかを見抜かれる……なので心の中を空っぽにする。結界師で言うところの無想状態に意識を切り替えると影先輩は警戒心を強める
「おら、どうした。さっさと掛かってこいよ!!」
影先輩がそういうのでレイガストを両手で構えて斬りかかる。影先輩は1本のスコーピオンで弾くともう1本のスコーピオンで斬りかかってくるがシールドを手元に展開して攻撃の妨害をする。シールドで妨害された事に影先輩は驚くのだが視線で感情を受信してしまうので直ぐに頭を切り替えていき、私に向かって動きを邪魔されていない方のスコーピオンで攻撃してくるので私はレイガストのブレードの形状を変えてS字フックの形に切り替え、影先輩のスコーピオンに引っ掛けてスラスターを起動する。
「っ、てめえ……」
スコーピオンを叩き折ると同時に切り裂く事も出来るS字フックブレード
耐久力が高いレイガストならではの攻撃でレイガスト人口が圧倒的なまでに低いのと製作者の意図通りに使われていない為に流石の影先輩も未知なのか私を強く睨みつける
『おい、もう一回だ。もう一回勝負しろ』
影先輩を倒し個室内に戻ると影先輩から通信が入った。
他の人とも戦いたいけれども、影先輩と戦うのもいい経験になるので承諾し再び個人ランク戦を行う事に
「さっきみてえにはやらせねえよ」
今度はガンガンと攻めてくる影先輩。
コレが影先輩のスタイルかと飛んでくる剣撃を寸でのところで避けまくる。サイドエフェクトのおかげで動きが手に取る様に分かる、影先輩の攻撃を簡単に回避する事が出来る……ただ守っていても何時かは破られる。攻めに転じる……今回はそうだな、この手を使おう
「当たるかよ、そんなもん」
攻撃の隙を見つけてはレイガストを振るう。
心の中を空っぽにする技術はまだまだ未熟、心の中を見透かされているかの様に影先輩は私の狙っているところに攻撃を回避するのだが甘い
「っな!テメエ……」
影先輩もレイガストの振りを寸でのところで避ける……影先輩ほどの実力者ならばそれも可能だ。
故に視線のフェイクを入れる。レイガストのブレードを予め短めにして一撃を入れ、更に追撃を入れる際にブレードを伸ばしておき寸でのところでの回避を不可能とする……理屈では簡単だろうが実際にやるのは難しく特に先の仕込みであるレイガストの短めのブレードでレイガストの長さはこんな物だという印象を与えるのも難しい、特に影先輩の様な機動力のある人には難しい、強化視覚のサイドエフェクトを持っているからギリギリ出来る様な技術だ。
『もう一回だ!』
個室内に転送されると影先輩から通信が入る……もう一戦、悪くはない。悪くはないのだけれど本来の目的を忘れてはいけない。
私のサイドエフェクトがそろそろだろうと告げているので影先輩には申し訳ないのだが個室内から出る。既に私の事なんて忘れ去っているかの様な空気が流れている……うん、悪くはない
「茜、大丈夫かしら……」
ランク戦のブースを後にし自販機が置かれている場所にやってくると熊谷がスポドリを購入していた。
日浦の事を心配しておりスポドリのキャップを開けて、飲んでいると視界に私が入ったのか驚いて蒸せて吹き出した
「【なにをやっているんだ熊谷】」
「ゴホッ、ゴホッ……えぇっと……」
「【私だ、三雲だ】」
「三雲くん、なの?……なにその格好」
「【悪くないだろう】」
携帯端末を使用して熊谷と会話をする。
私のこの奇妙奇天烈な姿に流石の熊谷も困惑するしかない……道を歩いている人達もなんだアイツといった目で私を見つめている……だが、後悔はしない。この姿の方がなにかと効率がいいんだ。
「【それで日浦の方はどうなった?狙撃手の訓練所に足を運んでると思ったが姿を見なかったんだ】」
「くまちゃん、誰その人?」
日浦の事を尋ねるとトリオン体に換装している那須と鉢合わせする。
やはりというか怪しい人物を見るような視線を私に向けてくる。ここはちゃんと状況を説明したほうが
「おいゴルァ!!テメエ、何処に逃げやがった!勝ち逃げしてんじゃねえぞ」
良いだろうと思ったが余計な邪魔が入りそうだ。
「か、影浦先輩」
若干キレ気味の影先輩に那須は一歩引いてしまう。
「んだテメエ、女のところに行ってたのか?」
「【また明日】」
「あぁ、勝ち逃げするつもりか!」
「【明日、ちゃんとしたトリガーにしてくる。今日は那須隊に用事があるから】……だからお願いします」
「その声……オメエ、何時の間にボーダーに入隊したんだ」
「【内緒です】」
「っち、しゃあねえな。明日まで待ってやるからさっさと要件片付けろ」
影先輩はそういうと渋々ランク戦のブースヘと戻っていった。なんだかんだ言っても優しくて男前だな、影先輩は。
とりあえず影先輩が去っていったので話を進める事が出来る
「三雲くん、どうしてそんな格好をしているの?」
「【トリガーを支給されたから思う存分にエキサイティングした結果、こうなった】」
「エキサイティングしすぎじゃないかしら?」
「【私の事は気にしないでくれ……それよりも日浦の一件はどうなっている?狙撃手の訓練所で会えるかと思ったが会えなかったんだが】」
「茜ちゃんはもうすぐ来るわ……ほら、噂をすればなんとやらよ」
噂をしているとホントに日浦がやってきた……のだが、あんまりいい顔はしていない。
パーッと明るい笑顔を見せて場の空気を盛り上げてほしいのだが……まさか良い結果にならなかったのだろうか。
「えっと」
「茜ちゃん、三雲くんよ」
「【あの後、交渉が上手く行ったのかどうかの確認に来た】」
よくわからない謎のマスクマンが居るので上手く喋れない日浦。
那須が私だと教えてあげると私は端末で音声を流し、どうなったかの確認を取る
「交渉は上手く行きました……今期が今までで1番の順位じゃなかったら即座にボーダーを辞めるって、それだけじゃなくてボーダーが原因で成績が落ちても辞めるって色々と交渉してなんとか認めてもらう事が出来ました」
「【また随分とハードルを上げたな】」
学校の成績を落としたらボーダー辞めるって、修と同じ条件じゃないか。
日浦の成績って真ん中よりもちょっと下で……決して悪くはないが良くもない成績じゃなかったか?
「ボーダー推薦を使わずに三門第一高校に入学してみせます!」
まぁ、そこは頑張れとしか言いようがない。
米屋とか仁礼とか小佐野みたいな成績残念な人達と一緒のグループに入っても私は一切責任を負わない。残りたいという意思を持ったのは日浦で交渉のカードとして成績維持を取ったのだから……遊真の一件もあるし、貴重なボーダー推薦の枠を潰すわけにはいかない。まぁ、余程の馬鹿じゃなければ合格する事が出来るだろう。
「それで上に上がる算段はついているのか?」
今まではバカをやっているフリをしていた戒めを込めて声を発する。
那須隊はコレからA級を目指さなければならない、今期はなんとしてでも前期以前の成績で、今までのシーズンで最も点を取って上位に食い込まないといけない。しかし昨日、水上先輩が言ったように1日2日でパワーアップを果たす方法も一気に上位を駆け抜ける戦術があるわけでもない。
「それは……」
「無いんだろう、確実に上位に上がる算段が」
原作知識で知っているのだが那須隊は上位入りを果たす……がしかし、それはあくまでも原作知識の上での話だ。
もしかすると上位入りを焦って欲張ってしまい点を取れるところで点を取れなくなってしまう可能性もありうる事だ。故に確実にコレならば上位の人とバチバチにやり合えると言える物がない
「……私が、私がマスタークラスにまで上り詰めて安定した強さを保つ事が出来たら上に行くだけじゃなく上位に安定して居ることも出来る筈よ」
「それはつまり今、この部隊でお荷物なのは自分だと認めるんだな?」
「三雲くん、言い過ぎだわ!」
「いいのよ、玲。こればっかりはどうしようもない事実、マスタークラスに安定して居られない中途半端な実力なんだから」
手の甲に写し出されるポイントを熊谷は見せてくる。
7792、決して悪くはないポイントだがマスタークラスと呼ばれる8000ポイントのラインを越える事は出来ていない。B級上位には元A級のマスタークラスしかいない二宮隊とポイント詐欺の影先輩がいる元A級の影浦隊に、ボーダーで数少ない万超えの攻撃手である生駒さん率いる
「さっき影浦先輩が勝ち逃げするなって言ってたけど」
「なに、ちょっと試しにバトルをして勝っただけだ」
「影浦先輩を相手に勝ったんですか!?」
「結構、手強かったが迅よりはやりやすい相手だ……それで熊谷、お前はこれからどうしたい?どういった道を進むつもりだ?」
このチームを引っ張っていってるのは那須でエースも那須、作戦の要も那須だ。
修のところほどとは言わないが、那須に頼り切りのワンマンチームに近いところがある……
「玲にばかり負担を掛けてられないわ。どうにかしてマスタークラスに安定して入る事が出来るぐらいに強く……」
「強くなりたいと言うのならば、力を貸してやる……ただあまり口外する事が出来ないやり方になる。故に聞こう、悪魔と相乗りする勇気はあるか?」
相乗りする勇気があるのならば、きっと熊谷は強くなる事が出来るだろう……多分
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