メガネ(兄)   作:アルピ交通事務局

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火ノ丸相撲の大相撲偏の辻を見て1日1本勝負を思いついた


第89話

 

「意識を落とさない為?」

 

 私が影先輩や黒江との再戦を拒む理由は色々とある。その内の1つは意識を落とさない為だ

 

「東さんはボーダーでもベテランで年長者ですよね……なら、ぶっちゃけて聞きます。ランク戦を一種のeスポーツかなにかだと思って楽しんで遊んでいるボーダー隊員はどれぐらいいると思いますか?」

 

 東さんがここに居てくれたのはある意味ありがたかった。

 他の太刀川さんや迅には聞くに聞けない……と言うよりはあの二人はランク戦を一種のeスポーツとして捉えているフシがある。まぁ、迅はオン・オフ出来てそうだけど、太刀川さんがなぁ……

 

「意外と難しい事を聞くな……」

 

「答えづらいかもしれませんけど、だからこそなんですよ。私はこの前の大規模侵攻の現場にいた……そして三輪との約束を果たす為に、復讐の共犯者になる為にボーダーに入ったんですよ」

 

 ボーダーの協力者になる道だって有ったが、その道を選ばなかった。全ては三輪の復讐の共犯者になる為だ。

 だから不要な感情は取っ払っておかないといけない。例えばランク戦をeスポーツ感覚に走らない様にするとか。

 

「太刀川さんや迅辺りはランク戦をゲームの一種、eスポーツ感覚で楽しんでるところがあります。ランク戦というのは実戦を想定し色々と試行錯誤を繰り返し様々な戦略や戦術を生み出す場所である。私は……油断しているとゲーム感覚に走ってしまう自分が居るんですよ」

 

「だから1本だけにしているのか?ランク戦は実戦を想定して色々と出来る場所でもある。1回だけと誓約をつけるのは勿体無い気もするが」

 

「確かに東さんの言うことにも一理あります。ただ、私はこの前の大規模侵攻の現場に居て色々と動いていました。一度やられれば即死に繋がる危険な道を綱渡りしている様なもので……私はコンティニューが出来ないんです」

 

 今現在、ボーダーからトリガーを支給されているが有事の際には躊躇いなくベルトを使う。

 戦極ドライバーにもロストドライバーにもバグルドライバーⅡにも緊急脱出機能は付いていない、それどころかトリオン体を構成しておらず敗北は死に直結する。

 

「トリオン体が破壊されて新たにトリオン体を再構築するのに誰がどれだけの時間を費やすかは知らない。だが、これだけはハッキリと言える。私は東さんの様な優れた指揮能力を持っているわけでもオペレーターの様にバックアップを出来るわけでもない、現場に立って戦う事しか出来ないと……倒された時点で影先輩達は今日はもう戦えない。どれだけ相手を倒していてもだ」

 

「なるほど……確かにコレが実戦だったら影浦達は今日はもう戦えないな」

 

「それに加えて1本をより大事にしたいんです。ここぞという時に絶対に勝ち星を上げる……例えるならばそう、大相撲の横綱の様に」

 

「大相撲の横綱?」

 

「どっちかが潰れるまで戦いが終わらないのがソロのランク戦です。コレは相撲と同じで勝敗が付かないといけない試合で、力士は1日の内の約一分あるかないかの1本に全てを注ぎ込みます。10本勝負とかすると先に2本取られたけども後で本気を出して8本取れて結果的には勝ったことになると甘えた考えになってしまいます……私達は防衛隊員、たった1度のミスも許されない。相手が未知の相手だろうとも初見の戦法だろうともミスを犯せば責任を追及される……だからこそ心を緩めたらいけない。テニスなら野球ならサッカーならバスケなら挽回のチャンスはあるがコレはホントの殺し合い、異世界との戦争なんだ、1本も落としてはいけないと」

 

 私は修の様な折れない強靭な心を持っているわけではない、皆が思っているほどに高潔な人間じゃない。

 だから油断をすると自惚れる、慢心をする。ランク戦をやり続ければ楽しい一種のeスポーツという認識をしてしまう。迅や遊真はゲームとしてのランク戦と実戦は違うものだという認識を持っているだろうが……太刀川さんは怪しいな。強いやつとバトルしてぇとハッキリと言ってるからなあの人は。

 

「黒江、お前がもしミスを犯してそれを部隊(チーム)の誰かがフォローしてくれたらどう思う?自分のミスをフォローしてくれてホッとするか?それとも……自分の失敗に対して憎悪の念を燃やすか?」

 

 私は後者、憎悪の念を燃やす。気にしない事も1つの取り柄なのかもしれないが憎悪の念を燃やしておかないといけない。

 三輪の共犯者となる為には絶対にミスや失態を犯さない安定した実力者にならなければならない。だから1本に集中する。

 

「未知の相手だから、格上だから、相性が悪いから、負けた理由は幾らでも取り繕う事は出来る。でも、負けは負けだ、負けたんだと認めるしか道はない……ソロのランク戦で1回でも負けたらその日はもうトリオン体を破壊されて動けなくなった、使い物にならない状態になったと想定して戦わないつもりだ……だが、その代わりに1本を極限まで研ぎ澄ませる。そうすることで本番に強くなり技のキレも増す……筈だと私は思っている」

 

「最後の最後で個人的主観ですか!?」

 

「当たり前だろう。コレはあくまでも私の流儀だ、私のやり方だ。修の様に動きがぎこちない隊員は何百回のトライ&エラーを繰り返した方が良い。ここはやり直しがきく挑戦する事が出来る場所でもある……ただ、それだと絶対に心の何処かで慢心をする、自惚れる。そして影先輩みたいに普通に強い人に負ける、残念な事にそれが現実なんだ」

 

 世の中割と理不尽である。

 1本に集中し、1本を極限まで研ぎ澄ます、例えそれが初見の相手だとしても初見殺しの技を持っていたとしても叩き潰す、どうにかして対応する。私のサイドエフェクトは視力を強化するもので本来見えない電磁波も見ることが出来る代物だ、便利過ぎるものなんだ。それを持っていての敗退は流石にダメだろう。

 

「というわけで私は極力同じ人とは対戦しません。1日1本を貫いていこうと思っているんですよ」

 

「……マスクマンさんの考えは分かりました。ですが、もう1本だけお願いします」

 

「話、聞いてたか?」

 

 私の考えに黒江は納得をしてくれた様だがそれでもまだ戦ってくれと頼んでくる。

 既に黒江から1本を取ることが出来ているので今日はもう戦うつもりは無いのだが

 

「1本だけでいいです。負けてももう1本なんて言いません」

 

「黒江もこう言ってる事だし、1本ぐらい受けてやれよ」

 

「はぁ……分かりました。1回だけだからな」

 

 東さんも私のやり方を理解した上でもう1本と言ってきている。

 1本に集中する為に何百回のトライ&エラーを捨てている、何百回のトライ&エラーも決して悪いことじゃない。

 

「次は俺だからな」

 

 ちゃっかりと自分も予約を入れないでくださいよ、影先輩。

 面白い考え方をするなと東さんはついでだからとソロランク戦を見学していってくれる……そんなに面白いものは見れないだろうに

 

『ソロランク戦1本勝負、開始』

 

「韋駄天」

 

「見切った!!」

 

 ピカチュウのボルテッカーの様にバチバチと体を光らせる黒江。

 韋駄天は高速で動いて攻撃するトリガーだが射手の弾道処理の様に事前に動きを設定している……故に単調、何処からどう飛んでくるのかみえるのでグラスホッパーを展開すると案の定グラスホッパーに触れて弾かれる

 

「お前のターン、終わり!!」

 

 グラスホッパーに弾かれて飛ばされた黒江を追い掛ける。

 突如として起きた反射の為に体勢を立て直す事が出来ず、私の伸ばしたスコーピオンに刈り取られる。

 

「コレで下手に韋駄天は撃ってこない……問題は次か」

 

 相手も学習してくるので油断ならない。黒江は次からは無闇矢鱈と韋駄天を使ってくることはない。小回りが利いた立体的な動きをしてくるのかもしれない……が、サイドエフェクトがあるので見抜けなくもない。まだ黒江自身も底を見せていないのでどうなることやら。

 

「コレで今日はホントにラストですからね」

 

 黒江が終わると影先輩に対戦相手は変わる。既に5本もやってて、これ以上はやるつもりはない。それでも強請ってくるのでコレを本日のラストとする。

 

「じゃあ、いかせてもらいますよ」

 

 影先輩は冗談抜きで強いから油断はしない……勝ったり負けたりを繰り返してるとここぞという時に勝てなくなる可能性も無きにしもあらず。

 今までは一手妨害やフェイクを入れたりしたのだが、今度は真正面から堂々と攻め込むと影先輩は笑みを浮かび上げる……ランク戦が楽しいという感情の電磁波(オーラ)が溢れ出ている……誰だったか、ボーダーはアマゾネスの巣窟みたいなものだと言っていたが正にそうだろうな。

 

「どうした、そんなもんじゃねえだろう!!」

 

 っと、余計な事に思考を割くのはやめよう。ボーダーが戦闘民族なのは今に始まったことではないんだ。

 影先輩にどうやって一撃を入れようかと考えていると閃いたので攻撃を当てる部分に視線を送ると影先輩のサイドエフェクトは当然の様に反応する。影先輩のサイドエフェクト、ホントにこういう事には便利だな。影先輩に突きを入れるも普通に回避される。

 

「もらっ!」

 

「てませんよ」

 

「っちぃ、チマチマとやりやがって」

 

 突きを回避した影先輩は腕を振り被るが腕の移動先にシールドを展開して妨害する。

 影先輩はスコーピオンを触手の様に操るからこの技に頼りきりなのはいけない……狐月を持っている人には効果は絶大なんだがな。

 

「1,2」

 

「っ」

 

「……3!」

 

「!!」

 

 よし、上手く行ったぞ。

 斬りかかると同時にスコーピオンの形状を徐々に徐々に変化させる……スコーピオンの基本的な能力を応用しただけなので技名は特に無い。攻撃が何処に来るのか分かっていてもどの様にやってくるのかは分からない影先輩はスコーピオンの形状変化に付いていく事は出来ず、最初に振りかぶったスコーピオンよりもほんの少しだけ長いスコーピオンに首を斬られる。トリオン伝達脳が損傷で私の勝ちである。

 

「おい」

 

「もうやりませんからね」

 

「違う……また明日、首洗って待ってろよ」

 

「1本だけですから……行ったか」

 

 影先輩は約束を守ってくれた。明日はまだ戦っていないので普通に戦う。

 ボーダーの上位陣は中々にやる……ただ、何時かは迅とぶつかり合わないといけない……本気の迅を相手に勝たなきゃいけない。私のサイドエフェクトが予知している

 

「お前、戦い馴れているな」

 

「まさか、ボーダーからトリガー支給されて一月も経ってないですよ……経験不足にも程がある」

 

 私の戦いを見ていてくれた東さんは素直に褒めてくれる。

 1つ1つの動きに無駄が無くて洗練されている様に見えるが、まだまだだ。まだ1対1だから上手く出来ているだけで多対一や多対多、一対多の戦闘経験を積んでいない。経験値を一気に得る裏技はあるから一気にレベルアップは可能だろう。

 

「経験不足でそこまで出来るのか……確か強化視力のサイドエフェクトを持っているんだったな」

 

「ええ……影先輩とそれなりにやれたので近距離戦は大体どうにかなりそうです」

 

 影先輩とやりあって白星を上げることが出来ている。迅とは色々と相性がある……アイツの未来視のサイドエフェクトを撃ち破るには私自身のパワーアップが必要だ。その為にはなるべく強い人と戦って勝ち星を上げなければ。

 

「お前はコレからどうするつもりなんだ?何処かの部隊(チーム)に入るのか?」

 

「自分で蒔いた種を自分で回収するつもりです……ただ、やらなくちゃいけない事が徐々に徐々に見えてきました」

 

「というと?」

 

「ボーダーの訓練方法が蠱毒形式なので、どうにかしないと……マニュアルの1つでも作らないと危ないですね」

 

 私達が色々とやった結果、ボーダーは毎月隊員を入隊させる事になった。

 スポンサーも隊員になりたいという子も増えてくれば今までの様にトリガーを渡して後は自力でどうにかして形式はマズい。トリガーを渡して貰っている身で言うのはワガママなのだろうが、マニュアル本の1つでも用意しとかないといけない。

 米屋みたいな典型的な右脳タイプならば自力で上に上がれるが修みたいな左脳タイプで自主的に勉強出来るタイプならばコレを取り敢えずは見てくれと言うようなマニュアルの1つでも用意していれば格段と隊員の質が上がる……筈だ。

 

「マニュアルか……確かにボーダーのトリガーを渡して、後は自力で師匠を見つけ出すか独学でやってくださいというのは酷なところもある。実際に実戦で動ける人間を間引かないといけないが……上を目指すんじゃなくて上に上げるか、面白そうだな」

 

「面白くないですよ。試行錯誤で色々な手を作り出させるのは良いですけど、肝心な基礎的な指導の部分を東さんぐらいしかやってない現状……ボーダー、貴方が居なくなったら大変な事になりますよ」

 

「ハハッ、それだけ頼りにされているわけだ……マニュアル、試作品が出来たら見せてくれ。添付や削除しないといけない部分があるのかチェックするよ」

 

「いいんですか?こんなド素人に任せてしまって」

 

「そのド素人を1人前にする物を今から作るんだろう」

 

 おっと、これは一本取られてしまったな。

 マニュアル作りは大事だが今すぐに必要なものじゃないのでじっくりと時間をと言いたいが、あまり難しい物を作っても意味は無い。

 

「雷蔵さんにカメラとかないか聞くか」




本日のトリガー構成

メイン

スコーピオン
グラスホッパー
シールド
バッグワーム

サブ

スコーピオン
メテオラ
シールド

ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)

  • てれびくん、ハイパーバトルDVD
  • 予算振り分け大運動会
  • 切り抜けろ、学期末テストと特別課題
  • 劇団ボーダー
  • 特に意味のなかった性転換
  • 黄金の果実争奪杯
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