2月6日、木曜日。
テスト前なので色々と詰め込んでいる。普段から勉強しているので赤点は無いと思うが万が一等があるので入念に抜かりなく勉強はしておく。
「起立、気を付け。礼……さようなら」
テスト前なので色々と授業は纏めに入っている。
部活動は当然無しでボーダーも防衛任務のシフトを入れない様に上手い具合にフォローをしている。例えばテスト期間をズラすとか。去年はバレンタインの後に学年末テストをやったが今年は前倒しをしてバレンタイン前に学年末テストがある。ボーダーも一応は学生生活を考慮している。
今日も授業を終えて帰りの挨拶をしたのでさっさと帰る。部屋でテスト前の勉強もしておきたいが、それよりもとボーダーに貸し与えられている部屋に帰った後にトリガーを起動して例の謎のマスクマンに換装する。
「今日は出てくんだな」
ボーダーのソロランク戦を行うブースに向かうとカゲさんと鉢合わせする。
昨日はソロランク戦をするつもりは無くて素の状態でボーダーの休憩スペースでテスト前の勉強をしていた。今日は普通にソロランク戦をするつもりだ。ただあんまりやり過ぎるとランク戦を遊びだと思ってしまう自分が居るので何事も程良くだ。
「やるぞ、隣の個室に入れ」
「【了解です】」
勉強も大事だがボーダーのトリガーに馴れるのも大事な事である。
カゲさんに絡まれたので早速ランク戦を受ける事に。私のポイントはカゲさん同様に少ないので部屋番号を覚えておかないと全く見知らぬ誰かに当たる可能性がある。
「今日はレイガストか……とろとろやってんならぶっ飛ばすぞ」
「【まぁ……お手柔らかに】」
今日のメインのトリガーはレイガスト……カゲさん相手だと射手はまず相手にならない。私自身の技量の問題もあるがカゲさんは機動力が高い。
動きに迷いが無いのもあって、弾を出してから弾道処理するのにどうしても1手必要になる。カゲさんにとってその1手はどうぞ殺してと言わんばかりのものである。
『ソロランク戦1本勝負、開始』
「じゃ、先ずは軽く」
「っ!!」
カゲさんが飛び出して来るのはサイドエフェクトで予測する事が出来る。
どの様な形で飛び出してくるのか見えているのでシールドを飛んだ先に出現させて邪魔をするとスコーピオンを伸ばしてくる。コレはスコーピオンを組み合わせることで通常の倍の射程になるスコーピオン+スコーピオンの合せ技、マンティスだ。
攻撃が来るのは分かるのでレイガストをシールドモードに切り替える。それと同時にカゲさんの進行を邪魔したシールドを消す。
「こりゃ厳しい」
一歩も間違いは犯してはならない。一手でも間違えれば負けてしまう。負けは死に直結している私にとって負けることは許されない。
マンティスをレイガストのシールドモードで防ぐとカゲさんは聞こえるレベルで舌打ちをしてくる。コレで倒されたら洒落にならない。
「スラスター
カゲさんの手が終わったのだと判断したのでレイガストのシールド突撃で突っ込んでいく。
カゲさんは少しだけ驚いた電磁波を出すのだが直ぐに冷静になりシールド突撃を迎え撃とうとするのだがそのせいで足元への意識が疎かになってしまう。カゲさんは一歩後退しようとするので後退先にグラスホッパーを展開、更には頭上にも展開して例えるならばバスケのボールのドリブルの様に上下に激しく揺らされてそのままシールドの突撃を受けてしまい間合いを詰められてしまう。
「掴んだ!」
カゲさんの肩をシールドモードで包み込んだ。
カゲさんが使っているトリガーはスコーピオンなので何処か特定の部位を破壊しても変なところから攻撃が飛んでくる可能性がある。油断はならないともう1度、スラスターを起動してレイガストを手放すとカゲさんはレイガストのスラスターに引っ張られていく。
「アステロイド」
此処からは余計な事はしなくていい、シンプルなトリオンの暴力に走ればいい。
アステロイドを作り出し大きく分轄して威力に数値を割り切ったアステロイドを飛ばすとカゲさんはシールドを展開する。私のトリオン能力は千佳ちゃんに劣るとはいえかなりどころか滅茶苦茶優秀、真の力を発揮すればそれはもうとてつもないものだろう。
カゲさんはシールドを出して防ごうとするがあっさりと私のアステロイドがパリンと割ってカゲさんを貫いた。
「くそっ……ちまちまかと思えば力技かよ」
カゲさんは個室内に転送された。私も無事に勝利を決めれたので個室内に戻る
「……ふぅ……カゲさんは強いな」
勝ち星を得ることは出来たものの油断は出来ない相手だ。
カゲさんは直ぐに学習する。村上さん程とは言わないが直ぐにさっきやった手段が通じなくなる可能性がある。そもそもで感情受信体質があるので飛んでくると分かってても避ける事や防ぐことが出来ない系の攻撃をしなければ……トリオンによるゴリ押しは自身の戦闘スタイルにするのは良いとしても参考にしてくださいとは言い難い。
「もう1本、いいか?」
「【え〜】」
「1本だけでいいんだよ。今度お好み焼き奢ってやるからよ」
「【分かりました】」
私ってつくづく甘い人間だな。カゲさんはもう一本要求するので承諾すると再びランク戦を行う。
市街地と思わしき仮想空間に転送されたのでレイガストを取り出すとカゲさんは早速飛びかかってくる。イケイケドンドンな戦法……嫌いじゃねえけども真似するのは難しいな。カゲさんは既に確立された個の力を持っている。カゲさんだから好き勝手に出来ている感じがあるな。
「逃げる!」
「逃げんじゃねえ!」
堂々と戦闘をするだけでは芸が無い。カゲさんに背を向けてグラスホッパーを展開してカゲさんと大きな間合いを取る。
カゲさんのトリガー構成の中にグラスホッパーは無い、追いかける事は出来ても追い付くことは不可能だ。マンティスがあるので間合いは20m以上開いていないと意味はない。
「このタイミングで、スラスター
一本道に出る事に成功した。
照準をカゲさんに合わせてレイガストをブレードモードに変化させブレードをV字の形に変形させ、スラスターで推進力を与えて投擲する。
感情受信体質があるカゲさんは強化視覚を持っている私が何処目掛けて投げたのか分かるので直ぐにシールドを展開しつつ回避する。ただ普通に回避しているならばアステロイドを使って狙い撃ちをすればいいだけだがシールドを出しつつの回避だからな、当てづらい。
「全く、強いな」
グサリとレイガストはカゲさんに刺さる事はなく地面に突き刺さった。
シールドを展開していたカゲさんはもう大丈夫だと判断したのか全速力で此方に向かいつつスコーピオンを構えてくるのでアステロイドを展開する。カゲさんの表情が乏しくない。私がアステロイドを当てに行かないのに気付いているが避けなければ当たるぞとさっきとは逆の細かな弾を撃っておく。カゲさんは避けながら突っ込んでくる。
「スラスター
突っ込んで来るならばそれはそれで対処する事は出来る。
レイガストを一旦消してもう一度手元に出してナイフほどの大きさにブレードの形状を変化させてカゲさんに突っ込みカゲさんを切り裂いた。
「……よし……」
二本目もなんとか取ることが出来た。
私自身のサイドエフェクトに頼っているところがややあるのでマニュアル作りには向いていないと思いつつランク戦を行う個室内から出る。
「よぉ、見ないから部屋で引きこもって勉強してると思ってたわ」
個室を出てソファーや椅子があるスペースに向かうと米屋がいた。
紙パックのジュースを片手に面白いものがあるなとランク戦を見ていた。
「米屋先輩、この人は?」
「おぉ、そういやお前はこの姿だとはじめて会うな。三雲だ」
「【謎のマスクマンだ、決して三雲とは呼ばないでくれ】」
三輪の部隊で唯一の年下である古寺と遭遇する。
古寺とは面識はあるもののボーダーの本部で会うのは初なので米屋が軽く紹介してくれるのだが一応は謎のマスクマンと言う設定で通しておきたい。
「【それでなにを見ていたんだ?】」
何時もならばランク戦をして燃えているところだろうがランク戦をしていない。
面白い試合でも見ていた観戦モードに入っており「アレ見ろよ」というので指をさした先に写っているモニターには遊真と緑川が居た。成る程、2人はランク戦をしてバチバチと盛り上がっているのか。
「あ〜ダメだ。やればやるほど遊真先輩との差が感じるよ」
「ふっ、緑川も成長してきているな」
「よぉ、見ていたぜ。中々に悪くない勝負だったぜ」
遊真と緑川の戦いは終わり、個室内から出てくる。
勝敗は21対9,10本やって3本だけ緑川が勝てている……実際のところは違うのだが、大体勝率が3割、A級のエース相手に勝ち越ししているので遊真は桁違いに強い。ランク戦を観戦していた人達も緑川相手に7勝とかマジかよと言った視線を向けている。
「って、ぁあ!?」
「どうした緑川?」
「マスクマンが居るじゃん!なんで!?」
「っむ……誰だ?」
「謎のマスクマンだよ。基本的に1本しか相手してくれないけど滅茶苦茶強い奴が居るって噂になってるって双葉から聞いたよ!!」
ホントに居たんだと視線を向けてくる緑川。
遊真はジッと私の事を見つめてくる……此処で私だと言えばそれで終わるが謎のマスクマンという設定を押し通しておきたいので余計な事は言わない様にしておく。
「【どんな感じの噂になってるんだ?】」
「A級やマスタークラス相手にバチバチにやりあえる謎のマスクマンでちょっとした話題になっているぞ」
ボーダーって暇な組織なの?今ランク戦の真っ只中だってのに、よくわからない謎のマスクマンに夢中って……まぁ、いいか。
「空閑、此処に居たのか」
「お、修。もう用事は終わったのか?」
「うん。終わったよ」
この後どうしようかと考えていると修がやって来た。
用事でやって来ていたらしく、その用事が終わったので遊真を迎えに来た、そんな感じなんだろう。
「白チビ中々にやるぜ。緑川相手に勝ち越した」
「緑川も筋は悪くないぞ」
「そう、か……」
「【緑川を相手に遊真は勝ち越す事が出来ている。だったら次のランク戦も安心して……なんて甘えた事を考えていると手痛い目に遭うぞ】」
「……なにやってるの?」
お、流石に修は気付くか。
緑川相手に勝率7割の勝ち越しをしているのでホッとしている反面、このままで大丈夫なのだろうかと心配している。上手く行き過ぎている時ほど大丈夫かどうかの疑う心を持ってしまう……まぁ、それぐらいに慎重派なのはいいことだ。本番で万が一が起こっても対処する事が出来ないとか割と冗談抜きで洒落にならない。
「【私も私なりに出来る事を探しているんだ。ただ普通にボーダー隊員をやっていても代えが利く駒の1つじゃ意味が無い】」
「だからマスクマンになってるんだね……」
私がマスクマンになっている事に関して微妙な顔をしている修。
もっと他に色々とあるだろうと言いたげだが普通にやったとしても意味はない。
「緑川、ちょうど良いところに居てくれた」
「あ、村上先輩!」
「お、来たか」
「?」
とりあえずランク戦を挑むべきかと考えていると村上さんがやって来る。
緑川が居たのでちょうど良かったと言う……視線の先には遊真が居る。
「次のランク戦、スコーピオン使いが相手だからお前で予習をしておきたいんだが」
「いやぁ……ついさっきポイントを搾り取られたばかりなんで勘弁してください」
「えっと、この人は?」
「ん?メガネボーイは初対面か。この人は村上先輩……鈴鳴第一のエースで攻撃手4位のボーダーで7人しかいない10000点を超えている攻撃手の1人だ」
村上さんと初対面なので米屋に説明を求めると修は驚く。
攻撃手4位、カゲさんを考慮してもボーダーの攻撃手の中で5本の指に入ると言ってもいい実力者……持っているサイドエフェクトも中々にチートなものだ。
「鈴鳴第一といえば次の対戦相手か」
「そういうことだ。マスタークラス並のスコーピオン使いが出てきたって聞いたから、予習をしておきたいんだが……ダメか?」
「ダメです。これ以上ポイントを搾り取られるとガクンとします」
「じゃあさ、おれと勝負しようよ。10本勝負」
「空閑……」
「大丈夫だって、オサム。おれに任せとけ」
今ここで戦うのは手の内を曝け出すのも同然だ。
相手に手の内を曝け出すのは危険な行為だが遊真は大丈夫だと村上さんに10本勝負を提案するのだが村上さんは5本を終えたら15分の休憩を挟んでいいかどうか尋ねてそれでいいと遊真は承諾する。
「空閑が勝ち越してる」
ランク戦を外から見物する。
遊真が上手く村上さんから勝ち星を得て4対1と上手く勝ち越している。修は4位を相手に上手く戦える事が出来ている、コレならば次のランク戦も安心して戦える……というのは心の贅肉、隙である。
「まぁ、見とけよメガネボーイ。村上先輩の本領はここからだ」
此処から15分の休憩に入る。
たった15分でなにが出来るのかと修は考えている。流石にサイドエフェクトを持っているという答えには辿り着かず、あっという間に15分が過ぎてランク戦が再開され……遊真は1本も取れず結果は6対4で村上さんが勝ち越して10本勝負は村上さんの勝ちに終わった。
「村上先輩は強化睡眠のサイドエフェクトの持ち主だ。1回寝て起きれば学習した事が100%反映される……5本の勝負で白チビの戦闘を学習して後の5本を勝ち越した。白チビは強えのは認めるけど、それだけで上に行くことは先ず無理だぜメガネボーイ」
ボーダーの先輩としてアドバイスを送る米屋。
村上さんと遊真が出てきて遊真は修に「すまん。負けた」と軽く平謝りをする……ホントならば勝てなくもない場面があったが手の内を全て晒すわけにはいかないから一部手を抜いていた……のを修は気付いていないだろうな。
「マスクマン、お前とも勝負してみたかった」
「【私は1人に対して基本的には1日1本しか勝負しませんので学習は出来ませんよ?】」
ランク戦を多くこなして睡眠学習をする村上さんに対して私は1本に極限にまで注ぎ込む、謂わば相反するスタイルだ。
確かにランク戦を多くこなしていけば成長する事は出来るが……それだと意識が緩くなる自分が居ると自覚している。
「だったらオレ達とやった後に村上先輩がランク戦をすればいいんじゃねえか?」
今日やれば明日にならないとやるつもりは無いと意思を示すと米屋が提案してくる。
オレ達と言うことは他にもと緑川や遊真に視線を向けるとやる気満々だった。まぁ、それでいいのならば構わないと意思を示すと早速米屋とソロランク戦をし、軽く1本もぎ取り続いて緑川、遊真と1本ずつもぎ取っていく。
「流石は兄さんだ……空閑や緑川、それに米屋先輩を相手に一歩も引けを取ってない」
「【こんなところで負けたらいけないんでな】」
遊真達を相手に当然の如く勝利する私に流石だと言ってくる……もっと言ってもいいんだぞ、修。
若干天狗になっているところはあるものの、兄として褒められるのは決して悪い気分じゃない。むしろ良い気分だ。
「成る程、これは一筋縄じゃいかないな」
村上さんは私の戦いをしっかりと見た……そして15分間眠りについた。
村上さんはコレで異常なまでにパワーアップをしてくる。強化視覚のサイドエフェクトを持っている身としては羨ましい。いや、確かに私のサイドエフェクトは便利で色々と出来るが強化睡眠は万能型のサイドエフェクトだ。ダミーメモリでありがたく利用させてもらっている。
『ソロランク戦1本勝負、開始』
仮想空間に転送される。
さてと、米屋はともかく緑川と空閑はスピーディな戦闘スタイルだ。対して村上さんは……ガンダムスタイルだ。とりあえずレイガストをシールドモードにしてアステロイドを出現させる。
「アステロイド」
散らす様に撃つ事は出来るのだがとりあえずアステロイドを撃つ。
威力に割り振ったアステロイド、私の目測が正しければこの距離でこの弾速でこの威力が1番最適な筈だ。村上さんはレイガストを構えてシールドモードに変形し、シールドで防ぐのだがレイガストのシールドにヒビが入る。
これはまずいと感じた村上さんは直ぐに前に出て私を倒しに行く。ちんたらやってるとアステロイドの波にやられてしまう。私はレイガストをシールドモードからブレードモードに切り替える。
「それは見ていない……が、雪丸レベルじゃないなら対処する事が」
ブレードモードでの戦闘はそんなに見せていない。村上さんが対応する事は出来ないが村上さんには今まで積み上げてきたものがある。
村上さんは弧月を降ってくるのでレイガストで受け止めてレイガストのブレードをdの形に変形させて弧月の動きを封じると村上さんはレイガストをブレードモードに切り替える
「スラスター、お!?」
スラスターの勢いに身を任せて斬りかかろうとする村上さんだがそれも見えている。
腕の部分にシールドを展開してスラスターの進行を妨害する。スラスターの起動自体は成功しているので村上さんは変な体勢になりバランスを崩してしまい、当然その隙を私は逃さない。d字に固定していたレイガストのブレードを元の修が使っている形に変化させてバランスを崩している村上さん目掛けて突っ込む
「スラスター
ダメ押しとスラスターを起動して推進力を増す。
村上さんは綺麗にバッサリと斬られ、このソロランク戦は私の勝ちに終わった。
「もう1本、ダメか?」
「【ダメです。基本的に1日1本にしておきたいので】」
油断すると気が緩むので連戦はしない。次があると思ってしまえば気が緩む。村上さんのワン・モアプリーズを断る。
ソロランク戦を行う事が出来る個室を出て修に顔を合わせる。
「【テクニックを極めるとこういう事も出来るようになるぞ】」
「……スゴいな、兄さんは」
「【ふっ、もっと褒めてもいいんだぞ……と言いたいが、サイドエフェクトの恩恵があったから出来る技やトリオン能力に身を任せてやっている部分もあるから手本にはならないな】」
普通の隊員が真似出来るような技術なんかを開発しないといけない。
サイドエフェクトやトリオン能力によるゴリ押しは手本にはならない……困ったものだ。
ギャグ短編(時系列は気にしちゃいけない)
-
てれびくん、ハイパーバトルDVD
-
予算振り分け大運動会
-
切り抜けろ、学期末テストと特別課題
-
劇団ボーダー
-
特に意味のなかった性転換
-
黄金の果実争奪杯