セーフティーエリアに着いたわたし達は手持ちのセンスを把握するために
倒木を椅子にして相談しているわけですが・・・
「《毛皮》・・・大きくなりましたね」
【錬金】のセンスで10枚の《毛皮》が《大きな毛皮》に変換されました
「えらくアイテム使うセンスだな・・・」
「凄いですよユンお姉さん!」
実際凄い、唯の《毛皮》だと製作するにしても大きい物を作るとするならば縫い合わせる手間が必要だし何より強度が低くなると思われる
それにこの辺りでは《大きな毛皮》をドロップする敵MOBはいないので、売るにしても高く買い取ってもらえるはずだ
「でも、まとまっただけだぞ?」
「違いますよユンお姉さん、まとめたんじゃ無くて別の素材に変えたんですよ!」
先程の考えを伝えると正しく理解してくれたらしくユンお姉さんに笑顔が浮かぶ
「おーじゃあ手持ちの《毛皮》は全部変換しておくかな」
「ありがとな、俺だけじゃ気がつかなくて、落ち込むだけだったかも」
そう言いユンお姉さんがわたしの頭を撫でる
暫し撫でられていると、ハッとしてユンお姉さんが手を頭から退け申し訳なさそうな顔をしています
「どうかしましたか?」
「ついミュウにやるみたいに撫でちゃったけどごめんな、嫌だったろ?」
なるほど、そういうことですか
「商店街をお使いに行ったりするとよく撫でられてるから慣れてます」
「それに撫でられるのは嫌いじゃないですよ?」
バッチコイです
もっとわたしを褒めるのです
「そうか?」
「そうです」
聞いてくるので笑顔で返し肯定します
安心したのかユンお姉さんもにっこり、わたしもにっこりです
「あ、ちょっとチャットするな」
「はい、どうぞ」
それから二言三言言葉を交わしチャットを終えたようです
ユンお姉さんがこちらに顔を向けて
「これから俺の友達が来るんだけど、どうする?」
どうやらお友達が来るようです
んー・・・プライベートなお話だったら邪魔になりそうですかね
「それじゃあわたしは《毛皮》を集めてきます」
「お話終わったら呼んで下さいね、まだ一緒に遊びたいし」
「ユンお姉さんと居たら面白い所が見れそうでワクワクするので」
「わかったよ、じゃあまた後でな」
ユンお姉さんに見送られながら敵MOBのいる草原の方へ走る
途中で男の人とすれ違ったけど、あの人がお友達かな
草原に着いたので、武器を出して構える
「狩猟開始です」
先ずは沢山戦って武器の扱いを覚えないと
ネズミっぽいMOBに中距離から勢いよく振り下ろす
「てぇえい!」
イメージ道理の所に直撃しMOBが敵対状態になる
威嚇でこちらをにらみつける、何となく防御力が下がった気がしないでもない
とにかく直ぐにこちらへ突っ込んでこないので、もう一度武器を横に振る
避ける素振りも無く強烈な一撃を受けネズミMOBがデータの残骸となって消える
今回はドロップは無かったが、今の動きを素早く出来るようになれば
この辺りのMOBになら接近される前に倒せそうだ
「練習ついでにドロップ品置いて行って頂きますよ!」
暫し風切音が鳴り続ける
武器の扱いにも慣れてドロップ品もそこそこ溜まって来た頃
ぽーん、とチャットの着信を知らせる音が頭に響く
ちょうど倒しきり落ちているドロップ品を拾いつつチャットを通話状態にする
「ユンお姉さんお話終わりましたか?」
「ああ、やる事が決まったからこっちに戻ってきてくれないか?」
「わかりました、直ぐ向かいますね」
通話を切り手に持ったままだった《毛皮》をしまい駆け出す
「ただいま戻りました」
「おーお帰り、じゃあ早速だけどここの周辺を採取しようと思うんだが」
倒木に座っていたユンお姉さんが立ち上がり周りの採取を提案してくる
「いいですね、戦闘以外のセンスも鍛えたかったですから丁度いいですね」
「現状俺のセンスを上げるのとお金稼ぎ両立するならここで採取が良いって、フレンドに聞いてな」
「それじゃあ早速探しにいきましょう」
フンスと気合を入れて周りを見渡す
あ、折角だから探知系のセンスも鍛えようかな
【目星】を使用して改めて見回す
なんとなーく怪しいなって場所がわかるようになりました
「ユンお姉さんあの辺怪しいです」
足元の草を採取していたユンお姉さんに、木の根に指を刺して伝える
・・・ていうかそんな所にも素材在ったのですね
「あったあった、《キノコ》とか《鳥の羽根》それと《木の枝》も結構落ちてるな」
一緒になって採取物を拾っていく、いっぱいあります
これだけ取れれば【細工】や【木工】の実験に使えますね
「かなり集まりましたね」
集めた素材とわたしが獲ってきた《毛皮》や《胆石》などをシートの上に広げる
「さっそく【調合】を試してみるか」
ユンお姉さんは【調合】をするみたいなので、わたしは《木片》を使って何か作るとします
「ユンお姉さん《木片》を【錬金】で変換してもらってもいいですか?」
「ん?いいぞ」
作業を中断して30個ほどあった《木片》を3枚の《木の板》に変換してくれました
「ありがとうございます」
お礼を言って何を作るか思案します
わたしのセンスの【投擲】で使う武器が欲しいですね
厚みも申し分ないですしカイリーを作ることにします
カイリーとは狩猟用に作られる木製の投擲打撃武器です
スポーツ用のブーメランとは違い帰ってきませんがその威力は
カンガルーを一撃でダウン出来るほどだとか
初心者セットの工作ナイフやヤスリ、ノコギリを並べて作業開始です
まずは初心者セットの中にあった鉛筆で《木の板》へ適当にガイドラインとして線を引きます
引き終わったらノコギリでガイドラインに沿って切っていきます
切り終わったら工作ナイフで形を整え、ある程度形が出来てきたら
ヤスリで滑らかになるまで磨きます、ヤスリがけを終えたら完成です
本当なら装飾も付けたいですが材料も無いのでそこは妥協ですね
同じように作り3本のカイリーを並べて目視で出来を確認すると
やはりセンスレベルがまだ低いからか少し形が崩れている気がします
ふと、周りを見ると夕焼けで景色が赤く染まっていました
そろそろ戻らないとお夕飯の時間になっちゃいますね
「そろそろお夕飯の時間になるので今日はここで落ちちゃいますね」
「おっと、もうそんな時間か」
木の矢を作っていたのか矢を置きこちらへ顔を向けます
「今日はありがとうな、俺はもうちょっと作ってから落ちるよ」
「またな」
「はい、また一緒に遊びましょう」
その一言と同時に意識が現実に戻されます