部屋から出た俺はサクラの案内に従って地下に続く階段を降りる。いくら改善したとはいえ俺の頭は依然壊滅的なままなのでサクラの案内がないと迷ってしまうこともあるのだ。
『次の角を曲がった先です』
「あんがと」
角を曲がった先にあった扉が自動で開いて部屋の中に入る。
そこは亡国機業IS部門の技術開発局ーーー通称技術部と呼ばれる部屋。いつもなら色んな機械が煩いくらいに騒音を出し、研究員たちのキチガイな笑い声が聞こえたりするのだが今日は珍しく静かだった。
「あら、来たわねハルキちゃん」
「王鎌さんチィース」
中に入ると作業着を着たおネエ言葉を操る大男が話しかけてきたので挨拶を返す。
この人は開発局局長の王鎌さん、拳法だかナンタラ神拳だかの使い手で、二メートルを超える長身でありながらおネエ言葉を使っているというギャップで初対面の人にはほぼ間違いなく精神的障害を植え付けるある意味で亡国機業最終兵器。ちなみに妻子持ちである
「今日は王鎌さんだけ?他のキチガイたちは?」
「他の皆はハルキちゃんの新しい機体をほぼ徹夜で作ったから帰らせたわよ。不眠不休で作業したところで作業効率が落ちるだけなのよね」
「ふーん・・・・・・新しい機体?」
「そうそう、今日呼んだのはそれなのよ。着いてきてちょうだい」
王鎌さんに着いていくと奥にあるカーテンの前まで案内された
「ところでハルキちゃん、貴方のISのサクラちゃんのことどのくらい理解してる?」
「正規のISのコアのレプリカで俺の世話焼いてくれるメチャメチャ良い奴。サクラ無しの生活なんて考えられない」
『ハルキの面倒は私がみます、一生』
「そうじゃなくて性能的な意味よ」
「性能的な意味・・・・・・防御の堅さと拡張領域(パススロット)の異常なまでの広さ?」
サクラの機体の堅さは凄い。恐らくそれだけなら今まで登場しているどのISよりも堅く、もしかしたらいまだ出ていない第四世代型異常なのかもしれない。
あと拡張領域の広さもヤバイ。正規のコアのレプリカという特異性からか拡張領域が並のISで換算すると二十台以上だとか何とか。
「そうそれよ。サクラちゃんの拡張領域に別の機体を入れて任意で変更出来るようにしたのよ。名付けるならなら【衣装変更(メイクチェンジ)】かしらね?
まぁ大前提としてサクラ並の拡張領域が必要になるのだけどね。それでも半分は使っちゃうけどサクラちゃんなら問題ないわよね?」
「確かにそうだな」
使っても近距離用と遠距離用、それに弾薬入れても三割使わないし。
「それじゃあお待ちかねのサクラちゃんの新しい機体(いしょう)の御披露目よ!!」
王鎌さんがかけられたカーテンを思いっきり《引き千切った》・・・・・・うん、王鎌さんの腕力ならあり得るから突っ込まない。
カーテンのかけられた先の部屋には・・・・・・忍者をイメージさせるような紅い機体があった。見た限り装甲はかなり薄く周りには小型のスラスターが十機転がっている。
「・・・・・・高速機動型?」
「その通りよ。コンセプトは速く、ただ速く、何よりも速く。
速さが重視されるあまりに装甲が【宵桜(ヨイザクラ)】よりも薄くなっちゃったけどハルキちゃんなら問題ないわよね?」
「何とかなりそうだけど・・・・・・本当に真逆の機体だな」
今使ってるサクラ・・・宵桜の機体は防御をメインにした機体で最高速度はともかく平均速度は並よりも若干遅い程度、お世辞にも速いとは言えない。
『ハルキなら問題ありませんが・・・・・・それだと宵桜の機体はどうなりますか?』
「それなら大丈夫よサクラちゃん♪説明が足りなかったかもしれないけど宵桜の機体自体は残ってるから何時でも変更出来るわよ。
ただこの機体のデータも欲しいから出来ればこっちをメインで使って欲しいわ」
「りょーかい、サクラしばらく我慢してくれるか?」
『ハルキが決めたなら私には異論ありません』
「ならサクラちゃんを貸してくれる?この機体のインストールしちゃうから」
「あいよ」
待機状態のサクラを渡すと王鎌さんはコンソールを動かし始めた。俺が手伝えることなんて欠片も無いのでボケぇ~とその光景を眺めている。
「ハルキここにいたか」
「よぅ数時間ぶり」
作業を見はじめて少しすると白衣姿のオータムがやって来た。ちなみにオータムの役割は荒事メインで開発局のサポートがサブに当たる。
「オータムは寝なくて良いのか?開発局の皆は徹夜だったって聞いてるけど」
「あぁ私は昨日の仕事があったからな、機体の組み立てには参加してねぇんだ。帰ってからこの事知って参加しようとしたけどはね除けられてよ、一人だけ除け者にされた気分だぜ」
「オータムちゃん、昨日は参加しなくて正解よ。最後の方なんて皆三連続の徹夜のテンションで壊れて可笑しくなっていたわ。そんなところハルキちゃんに見られたく無いでしょ?」
「なっ!!だ、黙れ!!余計なこと言うなよオカマ!!」
「だぁれがオカマだごるぅあぁぁぁぁぁぁ!!!」
あヤベ、王鎌さんキレた。王鎌さんに向かってオカマと言うとおネエ言葉が取れてなんか・・・ぶるぅあって叫びながら斧を振る人みたくなる。
「っつたく最近の若僧ときたら・・・・・・あ、ハルキちゃん機体のインストール終わったわよ。ついでに試作の武器も幾つか入れておいたからこれのデータもよろしくね♪」
「へいへい、じゃあ行くぞオータム。新しい機体の試運転に付き合ってくれ」
「ちっ!!分かったよ!!いきゃあ良いんだろ!!だから押すな!!」
「それはもっと押してほしいという意味か?」
「ちげぇよ!!」
なんでか知らないけどカリカリしているオータムを後ろから押すようにして開発局から出る。その時の王鎌さんは手を振りながら笑っていたが・・・・・・目だけが笑っていなかった。
「さて、訓練場に行くとするか。ところでオータムは何の用があって俺を探してたんだ?」
「あ・・・あの、えっと・・・・・・」
急に小動物のようにあわあわしだすオータム。普段は仕事ができる女性の雰囲気を出してるのでこの光景はなかなか珍しい。てか可愛い。
「っ!!こ、これ!!」
「・・・・・・?なにこれ」
意を決したように白衣から取り出して渡されたのはさっきの機体のように紅いブレスレット。なんかサクラの待機状態に似ている。
「・・・・・・前から作っていたハルキをサポートするための人工AIだ。今はサクラがサポートしているがサクラはあくまでISのコアだからこれから先のことを考えると不自由すると思って作っといたんだ」
「オータム・・・・・・」
ヤベ、素直に嬉しいんだが
「オータム、ありがとうな」
お礼の意味を込めてオータムの額にキスをする。これはマドカたちにもよくやっていることである。ちなみにスコールがオータムにしているところを見てこれを覚えた。
「~~~~~~っ!?!?!?」
「オータム!?」
キスされたオータムは顔を真っ赤にしてその場から走っていった。・・・・・・嫌われたかも。
『ハルキ、これからはあのような行為は控えないといけませんね』
「・・・・・・うん」
サクラに返事をしながらもオータムに嫌われたかもしれないショックでしばらくその場から動けなかった。
そして数時間後、世界中に新たなニュースが流れることになる。
≪四人目のIS男性操縦者表れる≫
オータムちゃんの純粋っぷりを書いているだけでニヤニヤしてしまう私は間違いなく末期なのでしょうね