東方神鬼録   作:月と風

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今回は会話が少なめです。
ご了承下さい。


第二話

どうやらここは神社へ続く階段の踊場らしい。

て言うか、本当にここがどこだかわからない。

俗に言う「あの世」よりは現実味があるが、元いた世界とは違う気がする。

まずはあの神社へ行っていろいろ聞くべきだなと思い、階段を一歩踏み出した時、神社から人が出てくるのが見えた。

 

―サア、カゲオニヲハジメヨウヨ......

 

良かった、人がいた。

その少女に向かって僕は声をかけた。

反応はなかった。でも少女達はこちらを向いている。

もう少し近づいたらきっとわかるか。

そして階段を駆け上がった僕は、その場で凍りついた。

その少女たちの目は確かにこちらを見ている。

しかしその目に光はなく、明らかな殺意を伴っている。

なんで?出会い頭に殺意を向けられるなんて、僕何かした?

なんとかコミュニケーションをとらないと......階段をもう一歩上がって0.5秒後には一気に5段飛ばしで飛び降りていた。空腹で死にかけの体にこんなにも体力が残っていたとは感慨深く、久しぶりに自分が吸血鬼であることを思い出させた。

というか滅茶苦茶追いかけられている。

後ろを振り返ったら即死する気がして、前だけをみて階段を駆け下り、猛烈な逃避行を開始した。

追いかけて来ているのは、見た感じ黄色と赤の二人。

どれくらいの距離になっているのかは全く見当がつかないが、開いていることを信じて走った。

森の手前まで来た。ここまで全力を尽くせば大丈夫だろう。そんな安易な想像は後ろを振り返った瞬間粉々になった。

少女達は空を飛んでいた。距離はかなり縮まっているようだ。

いきなりの反則行為に呆然としてしまう。

こっちは全力で逃げていたのに空を飛ばれたらそれは萎える。

でも今はそんなことを考えている場合ではない。

僕は森に飛び込んで走った。

走りながら僕は色々考えていた。

黄色の少女のほうは、箒にのっていたところから見るに魔法使いだ。出会い頭に追いかけられる理不尽すぎる世界なのだから、あまり違和感はなかったが、赤い少女の方は、違和感がひどすぎた。なにもないのに空を飛んでいる。おかしい。どうやって飛んでいるのか教えて貰いたい。

しかも追いかけられている理由が全く思い付かない。

僕をこの世界から追い出そうとしているのならそれは理不尽すぎる。だって僕は一回死んだはずだ。

この世界に来ようと思ったことは一切ないと、神に誓って言い切れる。なのに追いかけられている理由はなんなのか。何もかもよくわからないまま走り続け、いつの間にか湖についていた。

案の定二人もついてきている。

湖に沿って回って逃げると腹を括った時、何かの気配を感じて飛びすさった。何もかも凍ってしまいそうな強烈な冷気を放つ物体―氷だろうか―が自分の今いた場所に突き立っていた。危ない。危なすぎる。その場にいたら確実に串刺しになっていた自分を想像し、冷や汗が垂れる。誰がやったのかを見ようとしたが、またもや気配を感じて僕は駆け出した。ここにいたら絶対に死ぬという予感がした。二人にも追われていることをすっかり忘れていた。冷や汗が吹き出した僕を待っていたのは猛烈な風だった。いや、前に進めない。氷とか風とか誰の仕業だよ!木の影に隠れて風をやり過ごそうとした僕には油断という末路が待っていた。

木が粉々に砕け散ったのだ。完全に隠れたと気を抜いていた僕は地面に穴を開けそうなほど吹き荒れる風に吹き飛ばされた。周りの木が流れるように過ぎていく。

気がつけば僕は湖の上にいた。風に抵抗できず流される僕に氷の刃が襲いかかる。

「大ちゃん!もう少し風を押さえて!ジャナイトヤツヲコロセナイデショ?」

「ソウネ、モウスコシオサエルワ」

恐ろしく冷たい声が聞こえる。でも、声変わりをしていないその声は子供のものだとはっきりわかった。

でも僕はまだ死にたくなかった。せっかく別の世界に行けたのだから、精一杯生きてやる!という熱いものが体の中に吹き出し、僕は風が収まった瞬間を逃さずに湖に飛び込んだ。

恐ろしく冷たかった。多分あの声よりも冷たいだろう。

しかし僕は吸血鬼だ。体力切れで負けるなんてことは許されない。僕はガチガチなる歯を抑え、抜き手をきった。

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