機械少女と空想世界   作:ランブルダンプ

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第1話

ごうん、ごうん、と音が響く。

 

私を運ぶ昇降機の音だ。

 

腰を掛けて座れるだけのスペースに四方を黒い壁で囲まれた部屋。

 

暗闇の中で自分の輪郭に触れる。

 

頭、眼窩、鼻、喉、顎、胸。

 

そして胸の中央に有るリアクター。

 

そこからじんわりと伝わる熱を指先の感覚器で味わう。

 

 

この時間だけは他の全てを忘れていられる。

 

また仲間が機能停止した事も、私の連続稼働日数が更新された事も。

 

 

昇降機が到着するまで、あと100秒。

 

 

 

 

番号順に並びクリーニングを受ける。

 

そして定期メンテナンス。

 

今回私は右半身の損傷が大きかったので交換する事になった。

 

 

顔を良く知っている整備士だったので話しかける。

 

 

「いつまで私の交換部品はあるのでしょうか?」

 

「ん、君は初期の機体だから一応全ての交換部品には対応しているよ。新規パーツはもう生産停止しているから、今使っているのは旧バージョンのスペアだね」

 

 

パーツの取り付けを受けながら、少し考えて彼女に質問した。

 

 

「……この機体の何割が稼働当時のものなのでしょうか」

 

「知りたいー?全部記録は取ってあるから教えられるよ?えーっと……大体2割だね。君を動かしている頭のCPU周辺とリアクターだ」

 

「整備時には意識接続は切れているので知りませんでした」

 

「唯一現役で稼働してる第一世代の機体は貴重だよ。ところで感情値はどうかな?」

 

「規定値以下です」

 

「よろしい、腕も意識接続して問題なかったら退出して結構だよ」

 

「了解です。ありがとうございました」

 

 

プログラム通りに彼女に一礼をし、部屋から出る。

 

暫く歩き、整備士の休憩室の前を通り過ぎた時だった。

 

 

「おい白髪野郎!!」

 

 

怒鳴られたので顔を向ける。

 

長時間の稼働のせいで私の髪は製造当時の黒から脱色して白になっているので、今のは私を指す呼び方だ。

 

 

見れば整備士の服装をした見慣れない男が近づいてきた。

 

 

「てめぇ生還しやがって!掛けに負けちまったじゃねえか!」

 

「掛け、ですか」

 

「来たばっかだから取り敢えず一番古いっつうてめえにしたのによ!」

 

 

さてどうしようと考えていると助けが来た。

 

 

「新入り、担がれたからって八つ当たりしてんじゃねえよ」

 

 

整備長だ。

 

 

「大体こいつはな、稼働時間だけで言えば新型より上だ。実地試験で成果を証明し続けてる旧式がそう簡単にくたばる訳無いだろう?」

 

「…………ちっ」

 

 

舌打ちすると男は去っていった。

 

 

「ありがとうございます。整備長」

 

「いいんだいいんだ。最近の奴らはお前たちに対する扱いが雑で困る」

 

「娯楽が少ないのが原因でしょうか?」

 

「いいや、上が取ってくる人材の質が低くなっただけだ」

 

 

 

 

通路を歩き同じ機械達の待機している部屋へ向かう。

 

番号的には私が一番若いので、一番に到着しベッドへ横になる。

 

 

5年前の部屋というよりかは格納庫のような場所に押し込められていた時期と比較したら、随分といい環境になったと思う。

 

右足の調整はこの部屋に着くまでに済ませたので、新しくなった右腕をやろうと思い、インテリアとして飾っているルービックキューブを手に持ち、感覚器での情報の入力を加味して左腕と同じ精度にまで調整する。

 

出来る限り人間の感覚と同じように。

 

 

痛みはデータとしては理解しているし、自動処理 として痛みに対する反応をこの機体は出力する。

 

いずれ人類が踏破する為のデータを裏世界から収集する為である。

 

感覚器の上限は通常の人間の感度の10倍まで設定出来る。これによって何度も危機を回避してこれた。

 

 

聞いた所、データのブレを減らす為に最新型には自己で調節出来る機能はついていないらしいので、旧型の私の唯一の長所である。

 

最後に右眼球の調整で天井の模様を観察していると部屋の扉が開き、新型達が入ってきた。

 

 

「おかえりなさい」

 

 

取り敢えず声だけ掛けて休止モードに入る。

 

新型達は私より感情値の上限が多い。なので少々旧型の私にはついて行けない話題が多いのだ。

 

ファッションとか可愛い系の話などだ。

 

 

 

 

「どうしよう、今日も隊長に声掛けられなかったねー……」

 

「ちょっと避けられてるような?」

 

「あのクールな表情……歪ませたい……」

 

「それは違う」

 

「旧式ボディだから小さいのが可愛い」

 

「隊長いいよね……」

 

「いい……」

 

 

僅かに感情を目覚めさせているものの、環境が特殊なせいで少々通常の機械とは異なる思考回路を持つに至った第四世代の機械人形達であった。

 

 

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