幻想郷のリィンカーネーション   作:朱色の羊

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11話 会議

神社での戦いから数分、霊夢と魔理沙は妖夢に連れられ白玉楼へと来ていた

 

妖「紫様、お連れしました!」

 

紫「お疲れ様妖夢、これで揃ったかしら?」

 

霊夢と魔理沙を連れ妖夢が入った部屋には妖怪の賢者、八雲紫を中心に他数名が左右に分かれるような形で座っていた

 

霊「レミリアに早苗…それと犬?」

 

椛「犬じゃないですよ!?」

 

魔「それに妹紅に…勇儀まで

一体何の集まりなんだぜ?」

 

不思議そうに尋ねる魔理沙の問いに紫はゆっくり、はっきりとした声で告げる

 

紫「今回の異変…その関係者と思わしき、もといその代表の人々よ」

 

霊「異変…?」

 

紫「えぇ、これを見てちょうだい」

 

そう言いながら差し出された紙へ霊夢と魔理沙は目を通し始めた

 

霊「えっと…?

《幻想の地に住まう者達へ

今ここに我らはこの幻想の地へと宣戦を布告する事をここに示す

今日の神社への襲撃を起点とし数日おきに計5ヶ所へ襲撃を行う

我らの襲撃先へは目印を置かせて頂いた

我らが才能をその身を以て体感せよ

我らは組織【リィンカーネーション】

輪廻の輪より蘇りし者なり》

…なにこれ?

っていうか【リィンカーネーション】って…」

 

魔「あの…神社に来た奴ら、だよな?」

 

紫「今朝その張り紙が幻想郷の各地で見つかったの

それで急ぎ幻想郷中を調べたら紅魔館・妖怪の山・迷いの竹林・地底の4ヶ所で異常が起きているのを見つけて…」

 

勇「それでその情報交換と会議の為に私達が集められたって訳さ」

 

紫と酒を煽る勇儀の言葉に納得した霊夢はふと早苗の方を向き尋ねる

 

霊「事情は分かったけど…早苗はなんでここに?

見たところ山の代表はそこの犬なんでしょ?」

 

尋ねられた早苗の代わりに答えたのは白犬…もとい白狼天狗、犬走椛であった

 

椛「私がお連れしました、山で見つかった物に関して心当たりがあるとかで…

あと私は犬じゃ無いですよ?」

 

霊「見つかった物…?」

 

霊夢が詳細を尋ねようとした矢先、紫がゆっくり言い聞かすように口を開いた

 

紫「それを含めの…この会議よ

立ち話はそれぐらいにして始めましょうか?」

 

紫のその言葉にはっとなった霊夢と魔理沙は近くにあった空いていた座布団へと腰を下ろした

それを見た紫は集まった面々を一通り見ると満を持したように話し出す

 

紫「それでは…

今回の異変、その情報交換とそれに対する話し合いを始めましょう」

 

紫の会議開始の宣言に一同は無意識にも佇まいを正した

 

紫「まずそこの風祝の子の心当たりは…

最初に聞くよりも各地の報告を聞いて合っているかを確かめてもらってからが良いかしらね?」

 

早「は、はい!

おそらくはその方が良いかなと!

自分で言うのもなんですが…割と突拍子の無い考えなので」

 

紫「分かったわ、それじゃあ…

少し良いかしら、レミリア・スカーレットさん?」

 

レ「えぇ、何かしら?」

 

紫「紅魔館で起きた異常の詳細と…

もし、この【リィンカーネーション】とか言うのが欧米…外の世界の言葉なら和訳を頼めるかしら?」

 

レ「分かったわ」

 

紫から話を振られたレミリアはコホンッと咳払いを一つすると話し始めた

 

レ「まず先に和訳から教えるわね…

【リィンカーネーション】は確かに外の言葉よ

意味は…そうね、『輪廻転生』が近いんじゃないかしら?」

 

紫「輪廻転生…ね、分かったわ

それで異常の方は何があったの?」

 

レ「数日前にうちの門番である美鈴が…その…

居眠りしていた時に顔の横に巨大な氷柱が突き刺さったらしいのよ」

 

霊「それって…チルノの悪戯とかじゃないの?」

 

レ「えぇ、私もそう思ったわ

でも美鈴曰く…

『チルノさんなら悪戯する時はやる前に名乗りますし…

不意打ちをするにしても姿を見せないなんて事はまず無い筈です』

らしいのよ、それで咲夜に頼んで妖精達に聞き込みをさせたの」

 

椛「そうしたら妖精達がやっていないと?」

 

レ「そのとおり、しかも念の為パチェにその氷柱を調べてもらったの

そしたら魔法でも能力でも自然でも無い何かによって作られた物だったわ

私…紅魔館からはこんなところね」

 

紫「なるほどね…

それでは次に…藤原妹紅、竹林の異常について良いかしら?」

 

妹「私か、了解した」

 

指名された妹紅は崩していた足を直し背を伸ばす

そして周りを一通り見回すと話し始めた

 

妹「こっちも数日前の事だ

いつも通り迷い込んだ人間がいないか竹林の見回りをしていた

そうしたら前日まで無かった物が見つかったんだよ」

 

紫「具体的には?」

 

妹「まず竹林のあちこちの高所に縄が張り巡らされていた

そして切り裂かれたみたいな跡のついた竹や岩()()()物、それと…

これは後になって気づいたんだが地面のいたる所に(ひづめ)の跡があった」

 

魔「縄と跡は分かるが…

蹄の跡なんて珍しくもないだろ?」

 

妹「あぁ、蹄の跡だけならな…」

 

魔理沙の問いにゆっくりと頷き答えた妹紅は少し間を開け話す

 

妹「確かに蹄の跡単体なら異常でもなんでも無い…

しかしソレが見つかったのは入れば出られぬ迷いの竹林な上に…

私はここ数ヶ月間毎日竹林を見回っていたが馬や牛を、蹄を持つ動物を見かけて無いんだ」

 

霊「確かにそれなら蹄の跡なんて付く筈も無いし…

万一付いたにしてもそれを付けた犯人…犯獣?を見てない筈も無い」

 

紫「なのにある筈も無い跡があった…と」

 

妹「あぁ、そういう事だ

これで竹林の異常は全てだな」

 

紫「縄・切り裂かれた跡・蹄の跡…ね

次に勇儀、地底では何があったのかしら?」

 

勇「私らの所かい?

んー…異常って言うほどかわからないけど話そうかね」

 

紫に名指しされた勇儀は傾けていた盃を置き、少し赤くなった顔で口を開く

 

勇「この間の事なんだけど…

普段人の寄り付かない岩だらけの平地があるんだけどさ

そこにある一層大きな岩に手形がついていてね、しかも握りつぶされたみたいに砕けかけていたんだよ」

 

霊「一応聞くけど…あんた達鬼がやったんじゃ無いわよね?」

 

勇「それは無いね、私もこの話を聞いてすぐにそれを疑ったがね…

鬼連中は皆やってないって言うのさ」

 

紫「嘘を嫌う鬼が言うなら間違いなさそうね」

 

勇「あー…あともう一つ

最近その平地近くで大きな…私より大きいぐらいの人影を見たって話が増えてるね」

 

魔「勇儀のより大きいって…」

 

勇「地底からは…そんな所かね」

 

紫「それじゃあ…次

ここらで霊夢に魔理沙、実際に襲撃にあった貴女達の話を聞かせてもらえるかしら?」

 

霊「分かったわ」

 

魔「と言っても話せる事は少ないがな」

 

指名を受けた2人は座り直すと先の出来事を思い返しながら話し始める

 

霊「まず私達がくつろいでいると境内からカキンッて鍵みたいな音がしたの」

 

魔「それで怪しいと思って様子を見に行ったんだぜ、そしたら境内に見た事無い奴が3人いたんだ」

 

霊「でまぁ…詳細は省くけどそれぞれが強い攻撃をしてきてね…

魔理沙と作戦たててなんとかそいつらに勝ったのよ」

 

魔「それで安心してたらまたカキンッて音がして顔を上げたんだ」

 

霊「そしたらそこにさっきまでいなかった奴がいて倒した3人を連れて一瞬で姿を消したって訳」

 

妹「一瞬で姿を?」

 

勇「そいつ人間か?

なんかの妖怪じゃ?」

 

霊夢と魔理沙の話に一同がガヤガヤと話す中、そっと早苗が腕を上げ尋ね始めた

 

早「あのー…少し良いですか?」

 

霊「良いけど…なにかしら?」

 

早「その4人の特徴、もしくは名前って分かりますか?」

 

霊「えぇ、確か…赤髪・宇宙服・仮面、それとスーツだったかしら?」

 

魔「それで名前が…

戦った3人がニュートン・ガガーリン・テスラ…

それで迎えに来た奴がアインシュタインだったはずだぜ」

 

早「そうですか…やっぱり」

 

霊夢と魔理沙の話を聞いた早苗は確信を持ったような顔になる

それを見て紫は口を開いた

 

紫「それじゃあ最後、犬走椛並びに東風谷早苗…

妖怪の山の異常と心当たりについて教えてちょうだい?」

 

早「了解です!」

 

椛「私が話せる事で良いならば…」

 

トリを任された2人は背筋を伸ばし呼吸を深く一つするとゆっくりと話し始めた

 

椛「まず初めに…

数日前から山の中腹で…腐敗臭のような物が発生し始めました」

 

霊「腐敗臭?」

 

椛「えぇ、とは言っても腐敗臭自体はそう珍しくは無いんです

住んでいる野良妖怪や獣の死体が腐れば臭うので…

なので最初は皆気にしていませんでした」

 

紫「なら何故それを異常と?」

 

椛「普段ならば腐敗臭は1日あれば収まりますし近寄らなければ分からない程には強くありません

しかし…今回は収まらず日に日に匂いは強くなっていきました」

 

早「普段匂いが届かないうちの神社まで匂いが来てましたからね…」

 

レ「数日続く腐敗臭…ね

私ならそんな所ごめんだわ」

 

椛「ははは…

それで、ここからが本題です」

 

魔「今までのは前置きか」

 

椛「えぇ、そういう事です

この腐敗臭騒ぎを受け原因を探るため調査隊かが組まれました

しかし近づいた者達は皆羽や皮膚が腐敗し戻ってきたのです

そこで千里眼を持つ私が駆り出され腐敗臭の中心と思わしき地点を覗き見ました」

 

勇「へぇ…

それでどうなったんだい?」

 

椛「はい、中心地らしき場所には2名の…

人間と思われる者がいました」

 

紫「人間と…()()()()

何故断言出来ないのかしら?」

 

椛「その…片方は身体の半分近くが腐敗したようになっており、もう片方は周りが腐り続ける中平然とした様子でいたからです」

 

紫「なるほど…

その2人の容姿や特徴は?」

 

椛「まず…先に挙げました身体が腐敗した者は高身長の大男、スーツらしき服を着用しておりました

そしてもう1名は…軍服らしき物を着用し、大きな椅子に腰をかけ足を組んでおりました

そして…その…」

 

霊「どうしたの?

なにか気になる事?」

 

椛「偶然だとは思うのですがその椅子に腰かけた者が…

急に気づけも視認も出来る筈の無い距離にいた私の方を向き挑発するかのように明らかに笑みを浮かべたのです」

 

魔「犬の千里眼に気づいたってのか?」

 

椛「だから犬じゃないです!

…とそれはさておき、それを見て私は千里眼を切りました

そして、件の腐敗臭が広まると同時期に山のあちこちで野良妖怪や獣の体に…コレが取り付けられているのが目撃され始めたのです」

 

そう言い椛が取り出したのはシールのような物だった

その裏面、体に触れたであろう場所には鍵十字を反転させ斜めへと傾けたマークが描かれていた

 

霊「このマークは…?」

 

早「それは逆鍵十字(ハーケンクロイツ)と呼ばれる物です

実は私の心当たりと言うのもこれに関係していて…」

 

紫「なら…話してくれるかしら?」

 

霊夢の問いに答えた早苗へと一同の視線が集まると紫はゆっくりと話すように促した

 

早「えっと…まずこの逆鍵十字(ハーケンクロイツ)は外の世界の物なんです」

 

霊「外の?」

 

早「はい、そしてこのマークはヒトラーという…

外の世界の有名人のシンボルでもあります」

 

紫「その人と関係なしにマークが使われている可能性は?」

 

紫の問いに早苗は静かに首を振り否定する

 

早「無い事も無いですが…

とても低いかなと思います」

 

霊「なんで?」

 

早「ヒトラーもなんですが…

霊夢さん達が襲撃されたという4名のうちニュートン・ガガーリン・アインシュタインの3名は外の世界の有名人なんです、それこそ知らない人などいないくらいには…」

 

勇「なら…外の世界の奴らが幻想郷を襲いにきたってとこか?」

 

早「はい…

でもそうだとするとどうにも不可解な事があるんです」

 

レ「不可解な事?」

 

早「今私が有名人だと言った4名は…

何十何百年前の人で…既に死んでいる筈なんです」

 

魔「つまりなんだ?

今幻想郷を襲いにきてるのは死人だとでも?」

 

早「そう…なるかと」

 

紫「なるほど…確かにそれは不可解ね」

 

早苗の話を聞き終えた一同は頭を抱え考え始める

その後数時間話し合い襲撃があった時には伝令を送る事とし解散したのだった

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