女が強い世界で剣聖の息子   作:紺南

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第14話

「毒だぁ?」

 

ゲンさんの家に上着を返却しに行った時のことである。

戸を叩いて顔を見せたゲンさんに至極丁寧に礼を述べたところ、「土産はねえのか?」と言う感じで苛められた。

 

町にいる間はゲンさんのことは忘れていたので土産は買わなかった。そもそも母上が金平糖を持って行ったせいでまだ父上にも渡せていなかったりする。

ゲンさん自身土産なんて期待していなかっただろうに、恩着せがましくここぞとばかりに圧してくる。良い笑顔だった。

 

「ではその内持ってきます」と猿の討伐を画策する最中、そう言えばゲンさんはかつて医者志望だったことを思い出した。

医者ならば毒にも詳しかろう。そう考え、その場の雰囲気に流されたのも否めないが、不安に思っていることを打ち明けてみた。

 

最初は面倒くせえと言う顔で話を聞いていたゲンさんだったが、謀反の件を聞けば目を見開き、心中の件では気持ち悪そうな顔をした。

そして本題である毒の件について質問してみると、馬鹿じゃねえのと言う感じになった。

 

「何日経ってんだ」

 

「四日……五日?」

 

「五日ぁ?」

 

目を覗きこまれる。

首筋に手を当てられ体温を測られた。

「ふん」と鼻を鳴らしたかと思うと、首を横に振った。

 

「数日後に突然効き出す毒なんざあるはずがねえな」

 

「ないんですか?」

 

「ねえよ」

 

断言した。その言い様のなんと頼もしいことか。

心にわだかまっていた不安が綺麗さっぱり流されるようだった。

 

「定期的に摂取して、じわじわ効かす毒はあるがな。そう言うのは一回飲んだところで毒にも薬にもならん。小便と一緒に出るのがオチだ」

 

「いや、でも……何か、本当にないんですかそう言うの」

 

「しつけえな。ないもんはない」

 

二度目の断言は不安を完全に払拭するための後押しになった。

言い訳のように言葉を続けてしまう。

 

「心中に誘われたのは人生で初めてなもので。やっぱりちょっと動揺が……」

 

「ま、町に行って碌でも無い目に会ったっつうのは哀れだわな」

 

「哀れなのは、どちらかと言うとあの人たちの方ですよ」

 

「……ああ。自警団っつったか」

 

ゲンさんは首の後ろに手を回して眉をひそめた。

 

「あいつらもここ数年で一気に変わっちまったな。それこそ毒飲んだみてえによ」

 

その口ぶりは何か知っているようだったので質問してみる。

 

「数年前は真面だったんですか?」

 

「少し前は真面な連中だった。どいつもこいつも目をキラキラさせてよ。鬱陶しいぐらいだった。お前が会ったっつうババアもな。あちこちから身寄りのない子供を引き取って育てて……。それがまあ、随分とおかしくなったもんだ。世も末だな」

 

「何か切っ掛けでもあったんでしょうか」

 

「さあな。ババアがボケちまったのは年考えると仕方ねえ気もするが……。だからって周りの連中までボケるのはおかしいわな」

 

「そうですね。……やっぱり、本人たちに聞かないと分からないですね」

 

その言葉を吐いた瞬間、ゲンさんの視線が険しくなる。

じっと俺を貫く視線は、内心を見透かそうとでも言うような力強さだった。

 

「お前……まさかまた町に行こうとか思ってねえだろうな」

 

「ご明察です。最近よく図星を指されるんですが、俺ってそんなにわかりやすいですか?」

 

「お前ほどわからん餓鬼も居ねえよ」

 

「それはよかった」

 

「よくねえよ。二度も続けて町なんざ行くんじゃねえ」

 

「ま、それは追々考えますよ」

 

煙にまこうとしたのだが露骨すぎた。

ゲンさんはため息を吐く。

チラリと家の中を振り返って顎で示した。

 

「ちょっと家入れ」

 

「これから稽古がありますので」

 

「入れ」

 

「最近妹が反抗期に入って不安定なんです。こうしている間も俺のことを待っているので」

 

「あの小娘はずっと反抗期だったろうが」

 

逃げるのは許さねえよと睨まれたので、素直に聞き入れることにした。

正座する俺の対面にゲンさんが胡坐で座り、ぞんざいな所作で上着を投げ出す。

 

「で、だ」

 

ゲンさんぐらいの年齢の人と、真剣な雰囲気で向かい合うのは緊張する。たぶん前世の性だろう。魂に沁みついた癖だ。

 

「あのなぁ。お前に心中持ちかけた女は、西都あたりを魔境とか言ったようだがな。俺に言わせればあの町も十分魔境だ」

 

「西都ってどこですか」

 

「お前が行った町よりもずっと東の町のことだ」

 

東のくせに西なのかと思ったが、恐らく東国からみて西なのだろう。

だとすると西都は昔の名前か。今はなんて言うのだろうか。

 

「そもそも、お前自分の髪色分かってんのか」

 

朱殷(しゅあん)です」

 

「あ?」

 

「血みたいな赤黒い色のことを朱殷と言うらしいですよ」

 

「誰が色の名前なんざ聞いたんだ」

 

呆れたと言う感じの顔をされる。

なんとも納得いかなかったが、話は続いた。

 

「その赤黒い髪は、東の物狂いどもには恰好の的だ。だからこれ着てけって言ったんだ。何されるかわかったもんじゃねえ。そんなことはお前もわかってたんだろ?」

 

東の危険度は知識で知っている。

加えて、帰る直前には西の人が東で殺されたと聞いた。

それもかなり陰惨な死に様だったらしい。東の人間がどれほど恨みを募らせているのか、もはや俺ごときでは想像もできない域に達している。

 

「髪の色が違うってだけで殺されちゃうんですね」

 

「ああ」

 

「髪の色が違えば、例え東の生まれでも迫害されるってことですよね」

 

「そうだ」

 

「随分とおかしな世界だと思いませんか?」

 

「……そうだな」

 

束の間沈黙が訪れる。

居心地の悪さに身体を揺するゲンさんを見ながら、町にいる間ずっと監視していた三人組を思い出す。

あの悪意に満ちた視線の意味は、俺が西と東のハーフと知ってのことだったのだろうか。西への憎悪を俺に向けて、あわよくば復讐を考えていたのだろうか。あんなにも若いのに、復讐心を募らせていたと言うことか。

 

そう思うと気分が沈む。哀れみで胸がいっぱいになる。可哀想な人たちだ。

過去のことに縛られて、決して前を向くことが出来ない人たち。目に映る物を全て睨みつけ、憎悪をぶちまけている。

この村から東に行けばそんな人たちばかりらしい。哀れみと共に妙な共感を覚える。

考えてみれば、過去に縛られているのは俺も同じだった。だから嫌いになれない。自分のことを棚に上げられるほど、開き直った生き方は俺には出来なかった。

 

「まあ、おかしいかもしれん。でもな。それが社会だ。そんなもんなんだ。仕方ねえことだ……」

 

自分自身に言い聞かせるような声音に、ゲンさんの過去を偲ぶ。

どんなことがあったのか、決して俺には聞かせてくれないだろうが、色々なことがあったのは確かだ。

ゲンさんだけじゃなく、母上も父上も、カオリさんや例の三人、あの老婆だって色々あっただろう。

 

生きていれば過去がある。様々な経験をして今に至る。

失敗なんて数えきれないほどしただろうし、後悔や未練も腐るほどあるだろう。

だからこそ、先ほどのゲンさんの言葉が脳裏に浮かんだ。

 

『あいつらもここ数年で一気に変わっちまったな。それこそ毒飲んだみてえによ』

 

身寄りのない子供を引き取って、領主の悪行から住民を守って。

そこには正しい志があったはず。そうじゃなきゃそんなことは出来ない。戦後何十年もずっとそうしてきたのだから。

 

それが、どうして今更謀反を企む?

地獄から救い出したはずの子供たちを、また地獄に叩き落とす真似をする?

 

最初から復讐が目的だったとでも言うのか。

何もかも、この国に一矢報いるための下準備だったとでも?

 

カオリさんを思い出す。

あの人は諦めていた。自分の行く末を悟り、目前に迫った死をただ眺めているだけだった。

仲間の暴走にすらあまり興味を抱いていないようだった。

かと思えば東に行くなと忠告したり、一枚岩ではないと襲撃の可能性を示唆したり、すべきことはきちんとしていた。

 

あの人は何を考え、何をしたかったのだろう?

何のために生きて、どんな気持ちで死ぬのだろう?

なんだか、無性に知りたくなった。

 

もう一度話が出来たらと思う。今度はきちんと一対一で、腹を割って話したい。

また嫌な思いをするかもしれないし、今度は無理心中に誘われるかもしれない。けれど、話がしたかった。

何が本意で何が本音なのか。毒とか謀反とかその辺どうなのか。

この理不尽な世界のことを、どう思っているのか。

 

それを聞くにはやはり、もう一度出向かなくてはいけない。あの町まで、もう一度。

 

「決めました」

 

「あ?」

 

「決めましたよ俺」

 

「……なんだ?」

 

「母上が戻ってきたら、もう一回あの町に行きます。あの人が死ぬ前に、もう一度話をしてきます。ついでに謀反の件も問い質してきますよ。また子供たちを戦渦に巻き込むのかって」

 

「……はぁ」

 

頭を抱えるゲンさんを見つめる。

一寸たりとも視線を外さなかった。

 

「お前たちの家系は、ほんとうに頑固だよなあ……」

 

「母上譲りですよ。責めるならそっち責めてください」

 

「いや、曾祖母譲りだ。あの人もこんな感じだったからな。だから責められん」

 

祖母の顔すら知らないのに曾祖母の話をされても困る。

確か雅様と言ったか。あの老婆が何か言っていた。剣聖についても言っていた気がするが、あまり覚えていない。

 

「……椛をけしかけるしかねえか」

 

小さい声だったが俺に聞こえるように呟いていた。

ゲンさんとしては俺を止めたいらしい。無用なお世話だった。

 

「母上には俺から話しておきます。きちんと了解を得てから行くつもりですのでご心配なく」

 

「いくら椛でもそんなん了解するわけねえだろ。自分の子供を危険地帯にノコノコ行かせるような真似なんぞ、いくらあいつでも……」

 

「たまには子供の我が儘ぐらい聞いてもらわないと、ぐれちゃいますよ?」

 

「……頼むから、餓鬼の台詞を吐いてくれ」

 

頭を抱え続けるゲンさんはどうにか思いとどまらせようと頭を悩ませていた。

俺のために悩んでくれているのなら、出来る限り付き合ってあげたいが、これからアキの稽古がある。

いつまでも油を売っている訳にも行かず立ち上がった。

「お邪魔しました」と去ろうとする俺に、ゲンさんは低い調子で声をかけてくる。

 

「せめて、これだけは着ていけ」

 

ついさっき返したばかりの上着を放られる。

これは獣くさいからあまり好きではないけど、折角の好意を無下にするわけにもいかないだろう。

 

「天日干しすればこの臭い抜けますか?」

 

「やってみろ。獣の匂いはしつけえぞ。なにせ臭えからな」

 

「やってみます」

 

上着を持って家を出る。

その直前に大きなため息が聞えたが、今度は聞かす意図はなかったようだ。

振り返ることなく扉を閉める。次はちゃんと土産を買ってこようと心に決めて、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻る道すがら、父上にも町に行くことを伝えるか迷っていた。

もし万事思い通りに事が運んだら丸一日姿を消すのだし、母上経由で伝わる可能性は十分にある。

そうなれば説教は確定だ。生まれて初めてのゲンコツを食らう可能性すらある。

今更ゲンコツ程度怖くもなんともないが、父上を怒らせるのは気が引ける。かと言って、なら事前に伝えてどうなるかと言うと、どうにもならない気がした。

 

二つに一つ。どちらかを選ばなくてはいけないが、そんなことを考えながらも、隠し事にはいい加減飽き飽きしている自分がいた。

 

生まれてこの方隠し事ばかりである。

前世の知識があるなんて、父上はおろか母上にも話していないことだ。話したところで妄言で片づけられる。最悪は気狂いだ。あの老婆と同類扱いはご勘弁願いたい。

 

主に前世のことを始め、言えないことはたくさんある。

だからこそ、せめてこれだけは話したい。正直後が怖いけど、父上のことを思うなら、全部話した上で町に向かうのが一番良い気がした。

子供の我が儘と言えども、聞いてもらうのなら筋を通してこそだろう。通せる筋はなるべく通したい。

 

天秤が傾いた。

父上に話す方向で考えることにした。

まずは説得する文言からだ。にっちもさっちも行かないようなら母上の助けを借りる必要がある。

会話の流れを想像し、情報を整理しながら家に近づいた。

 

考えに耽っていたので視線は下に向けられていて、家の前の人影に気づくのが遅れてしまった。嫌な気配を感じて顔を上げる。

 

家の前にはアキが立っていた。

木刀を腰に携え、不機嫌な雰囲気を周囲に撒き散らしている。

俺がいつまでたっても帰ってこないから怒ったのかと焦ったが、よくよく見てみると違うらしい。

 

隣の人影が目に映った。

最近は村の爺婆ですら避け始めているアキに、何ら臆することなく話しかけまくっているその人は見たことのない風貌の老女だった。

 

毛先が黄色く、根元を辿るにつれて白く染まっていく髪。髪型は纏めるでもなくざんばらに乱れている。かと言って不潔感があると言うわけでもない。大雑把な人と言う印象を抱いた。

 

左手には杖を持っている。背格好や体勢からして歩行補助に必要と言う感じではない。両足でしっかり地面に立っている。一見して壮健そうだ。

 

右腕に視線を向けて目を見張る。

だらりと垂れた袖にはあるべきものがない。片腕がなかった。この世界で不具の人を見たのは初めてだ。

 

頭のてっぺんから足の爪先まで印象的な人だ。

色こそ抜け始めているが、元が黄色の髪なら西の人に違いない。

記憶を辿ってもこの老人に見覚えがないので、少なくともこの村の住人でないことは確かだった。

 

一体何の用だろうかと不思議に思いながら二人に近づく。

近づくにつれ、二人の表情がよく見えた。

 

アキは顔をしかめて至極面倒臭そうだ。

他人と接する時はいつものことなのだが、それにしたって目つきが悪すぎる。たまに口を開いて何か言葉を交わしているが、失礼な口を利いている気がする。

 

対する隻腕の老女は、ニコニコと人当たりの良い笑顔で喋り続けていた。アキの態度なんか気にも留めていない風情だ。

口の開き具合を鑑みて、マシンガントークばりに喋っているらしい。

アキがとてつもなくうんざりしているのはそのせいか。老人が喋り好きなのは、国や地域が違っても変わらない。

 

俺と二人の間にはまだ少し距離があったが、見ているだけでもアキが可哀そうだったから声をかけることにする。

 

「アキー。お客様か?」

 

「兄上!」

 

負の感情に満ち満ちていた表情が一転して綻ぶ。

心情的には救いの手だろうか。現金な奴だと苦笑した。

 

「母上のお知り合いだそうです!」

 

「母上の?」

 

ブンブンと手を振って俺を呼ぶ。早く来てくれと全身でアピールしていた。

その隣で老女が俺の方を見ていた。俺もその人を見返す。

 

近づきながら見つめ合った。一歩近づくにつれて鼓動が速くなる。

全身に鳥肌が立つ。老女の瞳の奥の感情に危機感が湧きたつ。この感覚を俺は知っている。

 

早足から駆け足へと。刀に手をかけながら叫ぶ。

 

「そいつから離れろっ!!」

 

「え――――」

 

俺の目の前で――――アキの背後で、老女は杖に仕込んでいた刀を抜いた。

時の流れが緩やかになり、緩慢な動作でアキが振り向く。すでに老女は得物を振り上げていた。

 

――――ダメだ間に合わない。

 

既に『三の太刀』を放っている。全速力で駆けている。

それでも間に合わない。『三の太刀』が届く前にアキが斬られる。その光景が脳裏に浮かんだ。

 

「――――っ」

 

最悪の未来だった。それはすぐ目の前までやって来ている。一秒後にはそうなっている。

こうしている間にも老女が刀を振り下ろす。その太刀筋はアキを真っ二つにする。

 

やばい。まずい。死ぬ――――。

 

諦観が心を支配した。

俺の脚じゃ間に合わない。何をしても間に合わない。助ける手段がない。

絶望に染まる俺の目前で、しかしアキは諦めていなかった。

 

次の瞬間、アキは誰よりも速く動いた。

木刀を抜き去り、老女の顔面にぶん投げる。同時に自分は背後に跳んでいた。

 

アキを真っ二つにするはずだった太刀筋は木刀を斬る。

そして――――返す刃がアキの身体を斬り裂いた。

 

肩口から鮮血が舞う。

血と共にアキの身体が宙に浮かんだ直後、三の太刀が老女に届いた。身構えていた老女は、不可視の刃を身を翻して躱す。

 

ようやくたどり着いたときには、投げ出された身体が地面に倒れる瞬間だった。

 

「――――いやはや。やるねえ」

 

老女の呟きを聞く。

妹の身体から血が溢れるのを目の端で見ている。

大量の血がとめどなく溢れている。

 

視界が真っ赤に染まった。

 

「――は?」

 

沸騰する感情のせいで脳がやられたのかもしれない。

それ以外に言葉が出なかった。言いたいことはたくさんあったのに、何も言えなかった。

 

「三の太刀か……。あんた、男の子だよねえ?」

 

老女が何か言っている。どうでもいいことをほざいている。

重要なのはそれじゃない。もっと大切なことがある。

 

「……お前……何してる?」

 

「お前って……はぁ、まったく椛の奴一体どんな教育を――――」

 

またどうでもいいことをほざいたので斬りかかった。

最速で、殺すつもりで、ぶっ殺すつもりで、渾身の力を込めて。

 

その一瞬でどれだけ切り結んだか分からない。軽く十合は打ち合った気がする。

『太刀』を使おうとした瞬間、老女は背後に大きく後ずさり、その分アキとの距離が離れた。

 

「男の子、だよねえ……男の振りした女ってわけじゃないんだよねえ……」

 

頬についた切り傷を撫でる老女。その一挙手一投足が鼻につく。

とっくの昔に感情は爆発していた。

何を遠慮しているのか。こんな奴は殺して構わない。早く殺せ。

 

「邪魔だよ。とっとと死ねよクソババア」

 

「……ったく。失敗した。男の癖になんつう奴だ。初めてだよこんなのは」

 

ババアが逆手に刀を握る。途端に空気が重くなった。濃密な殺気が肌に突き刺さる。

 

母上を彷彿とさせる威圧感。

応じる他に術がなく、構えざるを得ない。

ほんの僅かでも目を離せない。少しでも隙を見せれば、その瞬間殺されると本能で理解していた。

 

睨み合いになる。

俺は動かず、老女も動かず、嵐の前の静けさが周囲を包んだ。


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