承太郎と煉(斬島達)の会話と、ジョセフとアヴドゥル。
後半は、平腹暴走。
ここは、警察署。
しかも、檻の中と外。
承太郎は、中。
煉は、外。
「つまり? なんだぁ? お前らは、悪霊じゃなく……獄卒って鬼か?」
『ざっくりとまとめると、そういうことだ。』
煉の周りにいる、軍服のような制服を纏った者達。
彼らは、承太郎の悪霊と同様に普通の人には見えない。
そして、何者なのかと聞いたところ、自分達は獄卒だと名乗った。
獄卒。
それは、日本の地獄の話に描かれる、罪人を罰する鬼の総称のようなものとして承太郎は認識している。
昔話の鬼退治の鬼と違い、悪者ではなく、あくまでも罪を犯した悪人を裁く側だ。
しかし…。
「どう見ても、鬼には見えねぇな。」
そう、彼らは、目の色こそ変わっているが、外見は完全に人間なのだ。
『だろうね。だって、僕ら、元は人間ですから。』
空色の目の獄卒が答えた。
「人間だと?」
『死んだ亡者が獄卒になる場合もあるってことさ。みんな死んだ時期や、死因も違うけど、色々とあったんだよ。』
翡翠の目の獄卒がそう言って穏やかに微笑む。
承太郎はそれを聞いて納得はした。
元の人間の鬼ならば、角がなくても不思議ではない気がしたからだ。
「……なぜ、煉にお前らが憑いている?」
『それは…。』
「見てください! さっきから、ず~~~~っと、見えない誰かと喋ってるみたいで!」
警官がそう焦っている声が聞こえた。
「承太郎。煉。」
そこへやってきたのは、祖父・ジョセフだった。
「……そこにいる君達は、誰かね?」
「見えんのか?」
『おっと、お邪魔?』
獄卒達が、ジョセフの前からどく。
「……お…じぃちゃ…。」
「! 煉。お前…。」
「驚いたか? 喋りだしたのはつい最近だぜ?」
「むぅ…、やはり、奴の影響か?」
『さて? それはどうかな?』
「…自我があるのか?」
ジョセフが聞くと、獄卒達は、それぞれ反応を返す。
「……まあ君らのことはあとで聞こうと。それよりも承太郎。出ろ! わしと帰るぞ。」
「お呼びじゃねぇんだよ。わざわざニューヨークから来てくれたようだが、なにができるってんだ?」
すると承太郎が、いつの間にか、ジョセフの左手の義手の小指を持っていた。
「見えたか? 気づいたか? これが俺の悪霊だ。」
「……それは、悪霊ではないんじゃよ。」
「なに?」
「アヴドゥル、君の出番だ。煉、こっちに来なさい。危ないから。」
『なになになに? 面白いこと?』
『っるせぇな…。』
黄色い目の獄卒・平腹が目をキラキラさせ、橙色の目の獄卒が面倒くさそうに立ち上がった。
煉が移動し、それに続いて獄卒達も移動する。
そして、アヴドゥルという異国の衣装を纏った男がやってきた。
アヴドゥルは、ジョセフに多少手荒になることについて了承を得ると、不思議な構えを取った。
そして、背後から、鳥の頭を持つ人型の悪霊が飛び出す。
「これは、お前の言う悪霊を、アヴドゥルも持っている! アヴドゥルの意志で自在に動く悪霊! 『マジシャンズ・レッド(魔術師の赤)』!」
マジシャンズ・レッドという悪霊が口から火を吐くと、その火は、牢屋の中にいる承太郎を張り付けにした。
ホリィには見えているらしく、困惑と焦りの声をあげる。
「ぐぅう!?」
『おっ? おおお!? 来た来た来たー!』
平腹が承太郎の背後から飛び出してくる存在を見て興奮する。
それは、たくましく、そして強靱な意志力の塊。
それを名付けるのだとしたら、傍に立つモノ。
その者の生命エネルギーのビジョン(像)。
スタンド(幽波紋)。っと。
承太郎の背後から現れたソレ…、スタンドは、ついに檻をへし曲げ、檻の一部をねじ切って武器として手にした。
すると、アヴドゥルは、自らのスタンドであるマジシャンズ・レッドを引っ込めた。
「ジョースターさん。見ての通り、彼を檻から出しました。」
承太郎は気がつけば、檻の外に一歩ほど足を出していた。
相手の戦意が無くなったのを感じたのか、承太郎のスタンドが引っ込み、鉄の棒を落とした。
「……俺がこの鉄の棒を投げるのをやめなかったら、どうするつもりだった?」
「俺の能力…、マジシャンズ・レッドは、その程度の鉄棒なら、空中でとかすのはわけは…。」
『ヒャッハーーーーー!!』
「!?」
直後、アヴドゥルに向かって、平腹のシャベルが振り下ろされようとし、アヴドゥルは、咄嗟に転がって避けると、アヴドゥルがいた場所を大きく平腹のシャベルが抉った。
『おんもしれーーー! なあなあなあ! 俺も混ぜろよ!!』
『平腹! やめるんだ!』
「煉! 何をやっておる!?」
「……。」
しかし煉は無反応。
その間にも、凄まじい勢いとスピードで周りが壊れるのも気にせず平腹が暴れ、アヴドゥルを追い詰める。
『……やめろと言っているのが…、分かんねぇのか、この猪突猛進馬鹿が!!』
『ギャッ!』
近くにあった消化器を掴み、橙色の目の獄卒が、平腹の頭にぶん投げた。
バタッと倒れる平腹の足を掴み、青い目の獄卒が、煉の方へ引きずって戻してきた。
「煉? なぜあんなことを?」
「ありゃ、煉の意志じゃねぇ。」
「なんじゃと?」
「ちぃとばっかし、煉の場合は、事情が違うみたいだぜ、お爺ちゃん。」
承太郎が、歩いてきながら言った。
「そういや…、名前…、まだ聞いてなかったな?」
『俺は、斬島(きりしま)だ。』
『僕は、佐疫(さえき)。』
『谷裂(たにざき)だ。』
『俺は、木舌(きのした)。で、こっちに倒れているのが、平腹(ひらはら)で、それを踏みつけているのが…。』
『……田噛(たがみ)だ。』
ジョセフも、アヴドゥルも、ハッキリと自我意識をそれぞれ持つ者達に、驚いていた。
スタンドが発現する時期まで、大人しくしなきゃならなかったので、平腹メチャクチャ暴れたくて仕方ないのです。
今後も、敵味方問わず襲いかかる可能性があるかも。
次回は、DIOのことやらなんやらかな?
あと、煉の事情も。