難しかったです…。早く旅を始めたい。
承太郎が出所(強制)したあと、ホリィも入れてとある喫茶店で話をすることになった。
まず、煉の出自についてだ。
そこで信じがたい話が出る。
それは、煉は、獄卒と名乗る6人のスタンド達の血肉から作られた改造鬼であり、禁術を使ってあの世の世界である獄都からホリィの子宮に送り込まれて生まれた存在だということだった。
あくまでも、ホリィの子宮を借りただけなので、そのため血縁関係上は、ホリィや、彼女の夫の空条貞夫(くうじょうさだお)との血の繋がりもなく、だから肩に星のアザがないのだという。
それに怒ったのは、ホリィの父であるジョセフだった。
当然だ。一人娘の身体を勝手に利用されたのだから。
「……なぜそんなことを?」
『すべては、DIOという吸血鬼のせいさ。』
承太郎が聞くと、獄卒達は、語り出す。
DIOを討伐し、その魂をあの世へ連れて行くはずが、全員でかかっても敗北したことを。
その際に、バラバラにされた遺体は別の獄卒達に回収され、一件を案じた獄都のお偉いさん達の策により、斬島達をスタンドとして動けるようにするため、仮初めの本体として、斬島達の血肉から作られたのが煉であることを。
「ちょっと待ってくれないか?」
アヴドゥルが待ったをかけた。
「DIOが復活したのは、4年前だ。だが煉は、13歳だと聞いている。時期が合わない。」
『それは、時を渡る禁術を用いたからだ。過去を変えるのは、本来ならば禁忌中の禁忌だが、事態が事態だ。』
「つまり…、お前達が動くための人形として煉を作って、ホリィに生ませたということか!?」
『……非常に遺憾なことだろうが、早い話がそうだ。』
「貴様らぁ!!」
「パパ、やめて!」
「しかし、ホリィ!」
「例え、血のつながりがなくっても、煉は、私の子供! 大切な我が子だから!」
「…ホリィ。」
「………ありがと…、母さん…。」
「煉!」
少したどたどしい言葉で喋った煉を、ホリィが抱きしめた。
「煉には、お前達とは違う意識があるのか?」
『かれこれ、13年は人間として生きてきたんだ。独自の自我が芽生えているよ。』
『ま、これだけ時間かかっちゃったのは、僕ら6人分の精神をひとりの身体に馴染ませるためだったんだけどね。』
『そのせいか、言語を喋れないなどの弊害はあったな。』
「なるほど…。煉が喋れなかったのは、そのせいか。」
『うぅ~。』
「…ところで、さっきからあの黄色い目の…、平腹と言ったか? 田噛というのに尻に敷かれているようだが?」
『ほっとけ。13年以上もまともに身動きが取れなくてやっと動けるようなって、ウズウズしてるだけだ。』
『田噛が押えてないと、またあなたに襲いかかるかも知れませんよ?』
「それは困るな。」
『いいじゃねーーかよーー! ずっと暇だったんだし!』
『るせぇ。』
『いでぇ! 田噛~!』
『それはそうと、大事な話があるのでは? 承太郎のお爺さん。』
「むっ…そうじゃったな。」
それからジョセフは、自らのスタンド、ハーミットパープルで、カメラを使って念写を行い、そこに写ったDIOを承太郎らに見せた。
ハッキリと写し出されたソレには、DIOの肩にジョースター家の血筋にのみあるという星のアザがハッキリとあった。
それは、DIOがジョナサン・ジョースターの肉体を奪ったという証であった。
ジョセフが1年前にスタンドに目覚めたこと、そして最近になって覚醒した承太郎のスタンドも。
すべては、ジョナサンの肉体を得たDIOの影響だろうと考えられた。
煉は、ジッとDIOの写真を見つめていた。
「……勝たなきゃ…いけない。」
「煉?」
「…俺…そのために、作られた…から。」
「煉…、おまえ。」
承太郎は確信を持つ。
煉は、自分が獄卒達の仮初めの本体として作られたことを自覚しており、そのために動こうとしていることを。
「お前達は、自分達がどれほどに悲劇的なことをしたのか分かっているのだろうな?」
ジョセフが獄卒達を睨む。
『すべては、……閻魔庁もそれに同意しています。』
「えんま? 地獄がか?」
『……許されざる者には罰を。獄卒の名にかけて。』
『DIOを討伐し、その魂を捕える。我々の目的はただそれだけです。』
「…その後…、煉はどうなる?」
『……おそらく獄都に連れ戻されるでしょう。あなた方から記憶を消して…。』
「ふざけんな。」
『鬼と人では、寿命も違う。俺達はこうは見えてもあなた方より長生きしてる。桁が違う。』
「そんな…。」
「……ちっ。」
いずれ煉が獄都という世界に連れ戻されると聞き、ホリィは、口を手で押え、承太郎は舌打ちした。
その後、カフェをあとにしたあと、空条家に帰った。
ジョセフは、しばらく日本に滞在すると言った。
「煉。」
「……。」
「お前は…それでいいのか?」
承太郎は煉に聞いた。
仮初めの本体として、そして最終的には共に育った家族から離れて獄都へ連れ戻される運命にあることに納得しているのかと。
「……分かってる。……生まれる前から…決まってたこと。」
「……そうかよ。」
「…でも。」
「?」
「……別れは…寂しい。」
「………そうか。」
承太郎は、煉の頭をクシャリとなで回した。
煉には、独自の自我意識はあり、承太郎と兄弟として育ったことも理解しているし、代理母として産ませてしまったとはいえ、ホリィを母だと認識している。
DIOを倒し、捕まえれば別れが来ることも分かっており、その悲しみも寂しさも感じています。
次回は、花京院戦かな?