6対1じゃ、一方的ですよね……。
警察署の檻から出された承太郎は、翌日から学校に戻った。
いつものように、彼に言い寄ってくる女子達。
承太郎の威圧感につい道を開ける男子生徒。
それは、彼にとっていつもの光景だった。
キャアキャアと集まってくる女子生徒達の声も、耳に入らず、承太郎は考えていた。
スタンド。
DIO。
獄卒。
そして……、弟の煉。
煉の正体が、あの世の者達が作り上げたツギハギの鬼であり、DIOの討伐とその魂の回収が終われば、煉はあの世へ連れて行かれる。
家族としてともに過ごした承太郎達から記憶を消して……。
承太郎は、煉をずっと実の弟だと思っていたし、普通じゃないと分かっていても邪険に思ったことなど一度も無い。
だが、スタンドとして現世へやってきた獄卒達が、それを否定した。
母・ホリィの子宮を借りただけに過ぎず、血のつながりは一切無いという。
あの獄卒達の血と肉から作られた鬼であるため、同じ時を過ごすことはもうできないのだ。
煉自身も、そのことを産まれる前から理解しており、いずれ来る別れの時を惜しんでいる。
そして、考え事をしながら承太郎が階段にさしかかったとき。
突然、彼の左足が切れた。
その拍子にバランスを崩した承太郎は、真っ逆さまに階段から転落。
しかし、咄嗟の判断で、スタンドの手を出して木の枝を掴み、下に落ちるのを免れた。
傷は、浅いが、出血をしていた。
そこへ、見ない顔の男子生徒がやってきて、ハンカチを差し出してきた。
「君…、足を切ったようだが。このハンカチで応急処置をするといい。」
「……見ない顔だな。」
「…花京院、典明。昨日転校してきたばかりだ。よろしく。」
優等生風のその花京院という男子生徒は、そういうと、去って行った。
承太郎は、受け取ったハンカチをそのままに、医務室へ向かうことにした。
『……どう思う?』
『黒だ、黒。あの目は、まともな奴の目じゃない。』
『えっ? じゃあ、戦う? 戦う!?』
『興奮しすぎ。平腹。』
『ぶっ飛ばしていい?』
『機を見て助けに入ろう。』
「……。」
『煉。分かっているな? 早速だが実戦だ。』
『だりぃ…。』
『田噛。行こう。』
『…チッ。』
6人の獄卒が消え、煉は、立ち上がり、移動した。
一方の、承太郎は、保険医から治療を受けるためにズボンを脱ごうとして、ポケットから落とした花京院のハンカチが開けて、そこに書かれていた内容にギョッとしていた。
『空条承太郎 本日中 貴様を殺す 私の幽波紋で! 花京院典明』
っと、書かれてあったのだ。
その時、医務室にいた他の男子生徒達が悲鳴を上げた。
見ると、保険医が万年筆を振り回していた。
その顔はハッキリ言って正気のソレではない。そして口から泡を吹いていた。
そして、終いには万年筆で生徒の目を突き刺した。
「フヒャホ、フヒィフヒィ! フヒィー! ジョジョ…、あなた、まさか万年筆に見えるなんて…、言わないわよねーーー!」
保険医が引き抜いた万年筆を承太郎に向けた。
承太郎は咄嗟にその手を掴んで止める。
だが、女性のソレじゃない圧倒的な力に、万年筆の先端が顔に食い込む。
「フフフ…。」
「て、てめーは!」
「その女医には、私のスタンドが取り憑いて操っている。私のスタンドを攻撃することは、その女医を傷つけることになるぞ、ジョジョ。」
「き、貴様何者だ!?」
「私のスタンド名は、ハイエロファントグリーン(法皇の緑)。お前のところの、アヴドゥルと同じタイプのスタンドよ。私は人間だが、ある方に忠誠を誓った。だから! 貴様を殺…。」
その直後、花京院が操る操り人形を持つ手を、黒い鎖が絡み取った。
「なっ!?」
『……ふん。』
離れた箇所から手首から鎖を伸ばす、橙色の目の青年に、花京院は驚愕した。
『スタンドって、要するに本体さえ抑えられれば簡単って事だよね?』
花京院の背後に、チャキッと銃口が押しつけられた。
「お、お前達は…!」
『さあ、降参するか。あの女医の人からスタンドを出すかしないと、君…死ぬよ?』
「くっ!」
「なんでお前らがここに? 煉が来ているのか?」
『うん、そうだよ。あーあ、整った顔が台無しだ。ホリィさん泣いちゃうよ?』
木舌が承太郎に変わって女医を抑えながら穏やかに言う。
すると、ヌルッ!と女医の口からスタンド・ハイエロファントグリーンが飛び出してきた。
そして、両手から緑色の液体をボタボタと出す。
「ハッ! 花京院! 妙な真似をするな!」
「エメラルド・スプラッシュ!!」
ハイエロファントグリーンの手から放たれた翡翠色の宝石の形をしたエネルギー弾が医務室内を飛び交う。
外にまで飛んできたエメラルド・スプラッシュにより、佐疫と、田噛もその場から飛び退いた。
至近距離にいた承太郎を庇った人間がいた。
煉だった。
承太郎を庇った煉の背中に、エメラルド・スプラッシュが着弾する。
「煉!」
「……。」
「チッ。弟の方か。」
背中から血を流す煉だったが、すぐにバランスを整え、花京院を見た。その顔にはひとつも苦痛のくの字もなかった。
「…なに?」
ハッキリ言って、軽い怪我では無い。それは誰が見ても分かるほどの大怪我だった。だが煉は、まるで痛みを感じていないようだ。
「まあいい、いずれにせよ、貴様らは始末する予定だったのだからな! トドメだ! もう一度くらえ!」
『フッ!』
再び発射されたエメラルド・スプラッシュを、間に割って入った斬島が刀で全て弾き飛ばした。
「なっ!?」
『ヒャッホーーー!』
「また!? まさか、貴様らは…!」
『煉のスタンドだよーーーん!!』
医務室を破壊しながら襲いかかってくる平腹に、花京院はハイエロファントグリーンもろとも壁際に追い詰められた。
『後ろががら空きだ。』
「ハッ! ぐぁ!?」
谷裂が金棒の柄の部分で、花京院の後ろ首を殴り、気絶させた。
「……ろ、6人…だと?」
意識を失う間際、花京院は、そのことに驚きながら意識を失った。
『ちぇー、もう終わり? つまんねぇ!!』
平腹がブーブー文句を言う。
『で? どうするつもりだ? この男。』
『この男の子…、忠誠を誓ったって言ったけど、正確には違うね。』
気絶している花京院を仰向けにして、佐疫がそう言った。
「どういうことだ?」
『家に連れて帰ってから、お爺さん達と話を聞けば良いよ。』
「煉…、だいじょうぶか?」
「…へーき…。」
「お前…まさか痛みが…。」
「痛い…けど、我慢。」
「やせ我慢かよ。」
出血は止まっていて、もうかさぶただが、承太郎は、ペシンッと煉の頭を叩いた。
***
そして、花京院を空条家に持ち帰り。
ホリィには、びっくりされたが、とりあえず無視して(でも顔色が悪いが、元気かと承太郎は言っていた)、茶室にいるジョセフとアヴドゥルのところへ。
「……ダメだなこりゃあ。手遅れじゃ。コイツはあと数日の内に死ぬ。」
「……。」
「承太郎、煉。お前達のせいじゃない。コレを見ろ。こやつがなぜDIOに忠誠を誓い、そしてお前を殺しに来た理由じゃ!」
ジョセフが花京院の額にかかっていた髪をどかす。
そこには、芽のような肉がヒクヒクと動いていた。
『肉の芽…ですね?』
「なんじゃ、知っていたのか?」
『ええ。こちらに来る前に色々と調べ物はしましたので。』
佐疫がそう言って微笑んだ。
それは、肉の芽という、DIOの細胞から作られた物であり、植え付けられた者の脳に働きかけ、強制的に忠誠を誓わせるという凶悪な代物だ。
しかも肉の芽は、脳に刺さっており、現在医学の手術では取り除けないのだという。
そんな中、アヴドゥルが4ヶ月ほど前に、エジプトでDIOに接触し、危うく肉の芽を植え付けられかけた話をした。
咄嗟に逃げたものの、判断を誤っていれば、数年の内に花京院のように脳を食い尽くされて死んでいたと語る。
「死んでいた? ちょいと待ちな。花京院はまだ死んじゃいないぜ!」
「やめろ、承太郎! 優れた外科医でも肉の芽を取り除けないのは、脳がデリケートなだけじゃない! なぜ肉の芽が額から飛び出しているのか! それは…。」
自らのスタンドの正確性の高い動きで肉の芽を引っこ抜こうとする承太郎にジョセフが叫ぶ。
肉の芽を摘まんだ途端、肉の芽から触手が伸びて承太郎の腕に突き刺さった。
「摘出しようとする者の脳に侵入してこようとするんじゃ!!」
「ぬうう!」
「な、なんということじゃ…! なんて孫じゃ…。体内に侵入されておるというのに…、震えひとつおこしておらん! スタンドも!!」
そして、機械を越える正確性で引き抜かれた肉の芽を承太郎のスタンドが触手もろとも承太郎から抜き取り、トドメにジョセフが波紋を流して肉の芽を灰にした。
「……なぜ? 命に危険を犯してまで私を助けた?」
目を覚ました花京院が、心底不思議そうに聞いた。
「さあな…。そこんとこだが、俺もようわからん。」
『やれやれ…、素直じゃ無いんだから。ね? 煉。』
「承太郎は、素直じゃない。」
「おい、煉に変なことを言わせるな。」
『やーい、照れてやんの。』
『めんどくせぇ奴だ。』
「…お前ら、そこに直れ。」
「待て待て待て! 承太郎! コイツらは仮にも煉のスタンドじゃ! スタンドが傷つけば、本体も傷つくんじゃぞ!」
「……ちっ!」
「殴る? 俺…殴る?」
「いや…、お前は殴らねぇよ。煉。」
首を傾げて聞いてくる煉の頭を、承太郎は、ハア~っとため息を吐きながら撫でた。
花京院…ごめんよ。
うーん、これだと、ポルナレフ戦どうすっかな?
平腹をぶつける?
煉は、獄卒達の血肉で出来ているので、傷の治りが速いです。