平腹が戦います。
飛行機でのエジプト入りは断念。
タワーオブグレーの襲撃で、他の人間を巻き込み大惨事になる可能性を危惧したためだ。
しかし、承太郎達は、50日以内に、DIOを倒さないいけない理由がある。
だからこそ、ひとっ飛びでの飛行機をまず選んだのだが、そんなことは向こうにも筒抜けであり、だからこそ敵が襲ってきたのだ。
嘆いていても仕方ないということで、香港の飲食店でひとまずくつろいでいると。
「すみません。ちょっといいですか?」
銀髪を高く立たせた独特の髪型の若い男性がやってきて、メニューが分からないから助けてくれと助けを求めてきた。
承太郎は、あっちへ行けと邪険に扱うが、ジョセフは、そんな承太郎をなだめ、自分が注文してあげることにした。
ところが……。
カエルの丸焼き
おかゆ
貝料理
魚の煮た物
「……お爺ちゃん。全然、ダメ。」
「ったく…。ヤレヤレだぜ。」
「わ、わははははは! ま、いいじゃないか! みんなで食べよう! わしの奢りじゃ! 何を注文しても結構美味いものよ、わははははは!」
「いや~、手間暇かけてこさえてありますなぁ。ほら、このニンジンの形……、星(スター)の形…、どこかで見覚えがあるな~~~?」
銀髪の男の言葉に、緊張が走った。
「そうそう…、私の知り合いに…首筋にこれと同じ形のアザをもっていたな……。」
「ジョースターさん! 危ない!」
ジョセフの前にあったおかゆから針剣が飛び出し、ジョセフを狙った。
だがその攻撃を…。
大振りなシャベルが防いだ。
「平腹!」
『もーーー、我慢できねぇ!』
黄色い目を血走らせた平腹が、そのまま銀髪の男に襲いかかる。
おかゆから飛び出していた針剣が、銀髪の男の方へ行き、銀色の騎士が現れ、そして男が軽やかに飛び退いた。男が飛び退いたあとの椅子を平腹が一撃で破壊した。
「ほう? 血の気が多いスタンドだな? 6人いるとは聞いたが、そのうちのひとりか。たったひとりでこの戦車のカードを持つ、シルバー・チャリオッツに…。」
しかし、男が名乗り上げる前に、平腹が襲いかかる。
「煉! 平腹を抑えろ!」
『場所を考えろ! 馬鹿者が!』
『グゲッ!?』
谷裂が飛び出し、平腹に背中に金棒をぶん投げた。
平腹は、ヨロヨロと起き上がり、ギロッと谷裂を睨んだ。
『谷裂~~…、てめぇぶっ殺すぞ!』
『店の中じゃんなく、外で戦えば良いんだよ、平腹。』
『関係ない人間を巻き込むな。』
『う~~~。』
フーフーっと平腹が荒い呼吸をする。
「ほう? 完全に自立したスタンドか。珍しい。だがそんなことは関係ないな。平腹と言ったか? お前がまず最初にこの俺に殺されたいと見た。外に出ろ! 一人一人順番に切り裂いてやる!」
銀髪の男が外へ出て行く、承太郎達も煉も獄卒達もその後を追った。
***
移動した場所は、タイガーバームガーデン。
「名乗らせて貰おう。我が名は、ジャン(J)・ピエール(P)・ポルナレフ! そちらの平腹というスタンドの使い手も名乗るがいい。」
「…煉。空条、煉。」
『おい! まだかぁ!?』
獄卒5名に押さえつけられている平腹が叫ぶ。
「…まったくこらえ性の無いスタンドだ。いつでもかかってこい。」
『行け。平腹。』
『おおおおおおおおおおお!!』
パッと放された瞬間、平腹がシャベルを手にして、ポルナレフに襲いかかった。
「ふっ、考えも無しに突進してくるとはな。ホラホラホラホラホラ~~~!!」
針剣が凄まじ速さで突き出される。
平腹は、凄まじスピードで、それをシャベルでいなし、凄まじいパワーで振り上げたシャベルで、針剣の刃を弾き上げた。
「!?」
そしてシャベルを突き出す。顔に向かって突き出されたソレを、ポルナレフは、すんでのところで横に避け、顔の頬部分が僅かに抉れた。
「くっ! 貴様、パワーだけじゃないか!」
『ギャハハハハ!』
ベロを出し、涎を撒き散らしながら平腹が飛び上がり、シャベルを振り下ろす。
ポルナレフが後ろへ跳んだ直後、振り下ろされたシャベルがタイガーバームガーデンの地面に当たり、大きく抉れ、土が舞い上がった。
「うう…、なんてパワーだ!」
「獄卒…、これほどとは…!」
平腹の暴れっぷりに味方であるアヴドゥルも花京院もゾッとしていた。
「平腹は、君達の中で一番強いのか?」
『そういうわけじゃねぇよ。』
「だが、あれだけの剣術を操る相手に…。」
『ありゃ、本能だ。アイツは、強いって言うよりは、…単純にバカなだけだ。』
田噛はそう言って、タイガーバームガーデンの置物のひとつに背中を預けて寝た。
「くぅ!」
『おおおおおおおおおおおおお!!』
周りを見境なく破壊しながらポルナレフを追い詰めていく平腹。
そこで、ポルナレフは、奥の手に出る。
シルバー・チャリオッツが、突如首から下の鎧を外した。
「見るがいい! 甲冑を外したシルバー・チャリオッツの戦いを!」
だが構わず襲いかかってくる平腹。
直後、シルバー・チャリオッツが何人にも分身し、今まで以上のスピードで針剣を突き出してきた。
さすがに捌ききれず、平腹の体中に穴が空く。
手にも穴が空き、シャベルが落ちた。
「フフフ! 本能でのみ戦っていたようだが…、さすがにこれには驚いただろう? 見えたか? 見えなか…。」
見えなかっただろう? と言いかけた、ポルナレフの身体が吹っ飛んだ。シルバー・チャリオッツもろとも。
シルバー・チャリオッツの腹部には、くっきりと平腹の拳の跡が残っていた。
ボタボタと血を流していた平腹の左手には、シルバー・チャリオッツの針剣が握りしめられていて、シルバー・チャリオッツの手から離れていた。
『アイツ…、バカだから、騎士道精神とか云々は、何一つ分かっちゃいないんだよ。』
ポルナレフは、騎士道精神により隙を見せたのが敗因となった。
「相手が悪かったな…。しかし、敵でありながら、礼儀を忘れぬあの精神…、死なせるには惜しい。承太郎。」
「ああ、抜くぜ!」
そして、倒れたポルナレフの肉の芽を引っこ抜きということになった。
しかし、引っこ抜いたものの、ポルナレフは、大量の血を吐いた。
どうやら平腹の最後の一撃で内臓をやってしまったらしい。
「こりゃいかん! このままじゃ…。」
「……。」
「煉?」
すると煉が、グッと拳を握りしめ、血を流すと、その血をポルナレフの口に流し入れた。
ポルナレフは、ゴホゴホと咳き込むが、やがてハッと目を開け、起き上がった。
「…これは…?」
「……うまくいった。」
「俺を…助けてくれたのか?」
「煉…お前…。」
「俺は…、改造鬼だ。不死身の血なら…、回復も早い。っと、思った。」
「人体には影響は無いのかい?」
『んー…、たぶん大丈夫じゃない?』
『吸血鬼じゃないんだしね。』
意外と適当な獄卒達に、ジョセフ達は、絶句した。
煉の血が、怪我の治りを早めることが判明。
なんとなく、平腹は、鍛錬などで鍛えたセンスというよりは、本能で戦うタイプじゃないかと思って。
そして、基本バカだから騎士道精神とか関係なし。考えてないから。
3部は、怪我の割に回復手段がないようなので…、無理矢理に煉の血で怪我の治りを早めるという捏造設定を入れました。