竜司がシャワーを浴び制服に着替えて、学園の理事長室に向かう。というのもメールで理事長に呼び出しをくらったからというのが大きい。
「はぁ……いったいなんの話なんだ…」
朝の悲鳴そして理事長の呼び出し。当事者ではないが連行されるさまを見た竜司そしてそのタイミングでの呼び出し……嫌な予感しかなしないので、その足取りはどこか重いものを感じさせる。そして遂に理事長室前に到達する。ドアの三回ノックすると入れと理事長から入室の許可が下る。
「失礼します。」
一礼をして顔を上げると、顔に手の跡がついた一輝の姿があった。それで何となく分かったが、一輝が部屋っを間違えるはずがないと思った。
「……理事長これはどういう状況だ?」
「そうだな、説明してやろうそこの紳士が何をしでかしたのかを」
破軍学園の理事長、新宮時黒乃から今朝の悲鳴騒ぎの事の顛末を聞かされる。最初はふむふむと聞いていた竜司だが最後の方には呆れた表情になる。ため息すらつくレベルだ。
「頭が壊れて筋肉になったか……」
「いやなっていからね!?」
「じゃあ、朝練の負荷で頭が……」
「そんなわけないから!?幾ら何でも!」
そう言う一輝だから竜司はからかう。そして何がどうなってそういう行動をとったのか、その時の一輝に聞きたいくらいだった。
「下着を見たから、自分も脱ぐことで相殺しようって……ある意味フィフティフィフティで紳士的だな」
「変態紳士の下りはもうやったよ!あの時の僕は今考えれば突然の事で混乱していたんだよ!というか笑いながらいう!?」
「だって……どう混乱したらそうなるんだ……混乱のじゃなくて暴走の間違いじゃねぇの?」
竜司は肩を揺らしながら俯いて笑っている。心底可笑しいのだろう。
「それを言われるとぐうの音も出ないです…ハイ」
竜司の情のない言葉で小さくなる一輝。理事長は竜司を見て続きを言う
「さらに問題なのが、女子学生は、留学してきたヴァーミリオン皇国の第二皇女、ステラ・ヴァーミリオンがその被害者という事だ」
「ステラ・ヴァーミリオンって言えば、《紅蓮の皇女》と言われている伐刀者だよな、十年に一人の天才って名高き」
「はぁ。留学初日に申し訳ないことをしてしまったなぁ。このことで日本を嫌いにならないといいんだけど。それにしても本物のお姫様で、首席入学なんてすごいですよねぇ」
「それもぶっちぎりのナンバーワンだぞ。全ての能力平均値を大幅に上回り、伐刀者にとって一番大切な能力である《総魔力量》に至っては新入生の約三十倍と言う正真正銘のAランクだ。皇樹の数値も見たが平均値と比べ約二十倍と類を見ないが、あの皇女の次だしな。……能力値低すぎて留年してもう一度一年生をやるFランクとは偉い違いだな。なあそう思うだろ?《落第騎士》」
「ほっといてください」
「ほんと、ヤバいやつだよな紅蓮の皇女様は」
むすっとした表情で理事長の黒乃に講義しつつ、否定出来ない黒鉄一輝と話を聞いてステラの魔力量に溜息をつく皇樹 竜司。黒鉄一輝の《総魔力量》は平均の十分の一しかない。対象に皇樹 竜司の《総魔力量》は平均の二十倍とかなり高くほかのステータスも高いが、そう魔力量は倍率の差でステラ・ヴァーミリオンに劣る。ステラの陰に隠れた天才と言いべき人物だ。
「しかし困ったことになった。留学には色々な手続きがあるから、入学式よりも早く来日してもらったのだが、初日からこんなハプニングが起こるとはな。下手をすれば国際問題にもなりかねん。黒鉄には非は無いが……責任を取ってもらう。理不尽に感じるだろうが、男の度量を見せろ」
「……理不尽以外の何者でもねぇな」
「男ってなんでこうも都合のいい時だけ利用されるんだろう」
「さぁな、それはこの世の男の半数は疑問に思うことだろうよ」
一輝の立たされている状況に面白がっている竜司。それを察して助けてくれと目で助けを求める一輝がいた。互いに溜息をついたその時
「………失礼します」
後ろの扉、理事長室の扉が開き、件のステラ・ヴァーミリオンが入室してきた。炎のような紅い髪が特長的な少女だ。服装は破軍学園の制服だ。その目は泣いていたのか、恨みが増す視線を一輝に投げつけていて目元赤く腫れている。
「ごめん」
その謝罪は一輝の口から自然と出た。
「あれは不幸な事故で、僕も別にステラさんの着替えを覗こうと思ったわけじゃない。ただ見てしまったものは見てしまったわけだから、男としてケジメはつける。ステラさんの気が済むように煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「……潔いのね。これがサムライの心意気かしら」
「口下手なだけだって」
「(本当にそうなんだから困る)」
一輝の会話は偶に一言が足りず誤解を生む事がある。それに友として振り回されたことがある竜司は苦笑いをしていた。
「正直なところ、来日していきなり痴漢に遭うだなんて、なんて最低な国なのかしらと心底この国が嫌いになりかけたし、国際問題にしてやろうかとかも思ったほどだけど、貴方のおかげで少し気が変わったわ。貴方がそれほどの心意気を見せたからには、アタシも皇族として寛大な精神で応じなければならないわね」
竜司と一輝はその好意的な表情を見て認識を改める。皇女というから気難しい人だと想像じていたが、話のわかるタイプの人
「イッキ。貴方の潔さに免じてこの一軒、ハラキリで許してあげるわ」
………本当に思っただけであった。竜司は頭に?を浮かべ、一輝は抗議に移る
「いや、ちょっと待って。なに?大負けに負けてハラキリなの!?」
「名誉死にしてあげるだけでも出血大サービスよ!」
「出血するのは僕なんだけど!?」
「ははは。黒鉄。なかなか上手いこと言うな」
「上手い。山〇君、一輝君に座布団一枚あげて」
「いや笑ってないで竜司も理事長もこの校内殺人止めようよッ!」
「黒鉄。お前の命一つで日本とヴァーミリオン皇国の恒久的な平和が買えるんだ。安い買い物だとは思わないか?」
「人の命を差し出しておいて安い買い物という言い草はないよね!!?」
「惜しい人を亡くした」
「勝手に殺さないでくれる!!?僕はまだ生きてるよ!!」
「好きにしろって言ったのそっちでしょ!男なら自分の言った言葉には責任を持ちなさいよッ!!」
「い、いや、あれは日本語独特の言い回しというか、本当に煮て焼かれる予定だったなんて思わなかったし!」
「言い訳も言い逃れもしまくりだな黒鉄。男としてのケジメとは何だったのか」
一輝は黒乃にうるさいと抗議の目を向ける。一輝とったら目先の命が優先だ。一輝は助け舟を出してくれるだろうと藁にすがる気持ちで見るが
「………」
「(全力で空気になってるぅー!?)」
息を殺して気配を完全に殺している親友が、そこにはいた。
「……と、ともかくたかだか下着姿を見た位で命までは支払えないよ!」
「あ、バカ!んなこと言っちまったら……」
「こんなこと……?」
竜司の制止も届かず。一輝の不用意の言葉にステラの瞳に怒りの炎が灯る。燃えているのは瞳だけではなくステラの周りの大気が、ひりつくような熱を帯びてその燐光を散らす
「もう許せない!アンタみたいな変態・痴漢・無礼者のスリーアウト平民はこのアタシが直々に消し炭にしてあげるわ!!」
その熱で理事長の火災報知器が音を鳴らす。一輝は徐々に下がっていく
「待って待ってよ!ステラさん!ちょっと落ち着こうよ!」
「人の部屋に忍び込んで、この肌汚しておいてよくもそんな……!」
炎を撒き散らしながら一輝を追い詰める。一輝は後退りをしながら
「汚した!?別に何もしてないじゃん!」
「いや、脱いだんだろ?」
「え?それ!?いやいや、汚すようなことしてないよね!?」
首を降りながら抗議をしつつ下がる。炎と共に迫るステラに為す術なく
「うそ!アタシの裸を、いやらしい目付きでじーっと見てたくせに!」
「確かに見てたけど、でもあれは……ただそのなんと言うか、あんまりにもステラさんが綺麗だったものだから見とれちゃったんだッ!」
「ふぇッ!?」
瞬間、怒りで沸騰していたステラの顔が一層真っ赤になる。
「な、ななにをい、言ってのよバカ!み、未婚の女性に軽々しく、き、綺麗だなんて……こ、これだからデリカシーの無い庶民は……!」
さっきまでの炎はただのとろびまで弱まる。居心地が悪そうに視線をモジモジし始める。瞳は戸惑うように潤んでいた。どう照れているようだった。
「ともかくさ、今回の事はそっちが間違えて僕の部屋で着替えてたのが根本的な原因なんだからさ、ハラキリは勘弁してよ」
この一輝の説得に表情を険しくするステラ
「何をわけのわからない言っているのよ!あたしに部屋に勝手に入ってきたのはアンタの方でしょ!アタシはちゃんと理事長先生から貰った鍵であの部屋に入ったのよ!?」
その時にステラのセリフに違和感を覚えた竜司は、一輝に確認をする
「なぁ一輝、習慣のランニングの時は、いつも部屋の鍵をして来たよな?」
「勿論だよ。僕はいつも通りに部屋に鍵をかけた」
「ヴァーミリオンは鍵を開けて入っただよな?」
竜司はステラに質問を投げたステラの回答は
「ええそうよ。理事長先生から貰った鍵で入ったわ。それが何かあるの?」
「破軍学園の寮は基本二人一室。同じ部屋で鍵がある。どちらかが間違えたのではなくて……」
竜司は理事長の方を見ながら呆れた表情を浮かべる。理事長の黒乃は笑いをこらえていたという言うようにくっくっと笑う
「そうだ。皇樹の推察通りだ。つまり黒鉄もヴァーミリオンも、どちらも部屋を間違えていない。簡単な話……君達はルームメイトなんだよ」
黒乃は笑いながらとんでもないことを口にした。竜司はやっぱりかっというふうに手で顔を覆う。一輝とステラは
「「え、ぇぇえええええええええええええ!?!?」」
理事長室に驚愕の悲鳴が響き渡った。
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オリ主のステータスは次回後書きにて貼ります
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