「プリムさん、怖かったですね」
「ほんとですわね。でも楽しかったわ」
「うん、楽しかった」
戦闘を終え、片付けも終えた私と白虎さんそしてフレズはマスターの部屋に戻ってきました。
ちなみに片付けろと怒っていたプリムさんですが、終わった後にローズさんとデートに出かけてしまいました。相変わらずのラブラブです。
イノセンティア姉妹は、逃げようとした罰として、デートから帰ってくるまで正座してることになりました。涙目になりながら姉妹は無実を主張していましたが、プリムさんはまったく聞く耳を持たない様子でしたね。
バーゼさんとアルキテクトさんはと言うと、ようやく猫との戯れから帰ってきたアルテナさんと今度は鬼ごっこして遊んでいます。
「その、ごめんね轟雷。最後まで守れなくて」
「私もですわ。最初に脱落するなんて」
「そんな、謝らないでください。むしろ作戦伝達せずにあそこまで連携を取れたのはいいことですよ。次は作戦をしっかり立ててやりましょう」
少し落ち込んでいる二人にしっかりとフォローします。出来る私はちゃんと仲間を労わるのです。
「確かに。連携はしっかり取れてたよね」
「私がわざわざジャンプしなければ、まだまだやれたでしょうし」
「それはどうかしら。結果的には悪かったけれど、あの時の判断としては間違ってないと思いますわ」
色々反省の話で盛り上がる私たち。しかしいつまでも立ち話もあれなので、ここはメイドらしくお茶の席でも用意しましょうかね。
「二人とも、良かったらこれからお茶にしませんか? 座って反省会です」
「あら、それはいいですわね」
「うん、いいよ」
二人とも快く承諾してくれます。どうやら白虎さんとフレズの間にも友情が芽生えたご様子。これはいいことですね。
あれでも、普通お茶会の催しってお姫様の役割のような気がしなくも。うーん、でもやっぱりメイドらしい行動? うん、わかりません。まあこの際どうでもいいです。
「では準備をしてきますね」
そう言って場を離れようとしたときでした。
「あらお茶会をするの? 私も仲間に入っていいかしら?」
メラスさんが私たちの顔色を伺いながら、そう申告してきたのです。
「あ、メラスさん。珍しいですね」
「ええ。たまには他の子とも話してみたいと思ってたのよ」
少し含みがあるような発言の気もしますが、お茶会は人数が多ければ楽しいもの。断る理由もありません。
「いいですよ。お二人もいいですよね?」
「ええ、構いませんわ。私も一度メラスさんと話がしたかったですの」
「うん、私もメラスさんとは話してみたかったし、白虎さんもいるから丁度いい」
あれ? なんか雰囲気が重くなったような気がするんですけど、気のせいですか?
「そう。やっぱりあなたたちも。そうなのね、ふふふ」
「当然ですわ。やっぱりここは白黒はっきりさせませんと」
「うん。やっぱりこれは大事だと思う」
いややっぱり気のせいじゃないです。なんか三人の間で火花が散ってるんですけど。めっちゃバチバチ言ってるんですけど。
あれ? そういえばさっきの戦闘の時も始まる前に白虎さんとフレズの間で火花が散ってましたよね。
もしかしてこの三人、仲が悪い?
「あの、仲良くしましょうよ皆さん
「さあ、始めましょう。楽しい会を」
「え? えと、一体何が始まるんですか?」
私の問いに、白虎さんが私の顔を見てこう言ったのです。
「あなたを一体誰のものにするか会ですわ」
「は?」
謎の会の催しに固まる私。そこへどこからか現れたアルキテクトさんが、そっと肩をポンとを叩いて一言「頑張れ」と言ったのでした。
これってもしかして、修羅場ってやつですか?
◇
私たちはリビングルームに移動しました。
私はお茶を用意するために、私たち専用のティーポットにお茶っ葉を少々入れて、お湯を注ぎます。
注いで少し時間を置いている間、遠目で私は席に座る三人に目をやりました。
三人とも、剣呑な表情で睨み合っています。一体何がどうしてこうなっているのかさっぱりわかりません。
とりあえず怖いので、お茶が出来るまで遠くから聞き耳でも立ててようと思います。
「さて、今回の議題はあの子を一体誰のものにするか……ですわ」
あの子って私のことですよね。いわゆるちょっとしたハーレムってやつでしょうか。あんな怖い雰囲気漂わせるならいらないです、私。
「異議あり。まず轟雷は物じゃない。だからその議題からして間違い」
「確かにそうね。なら、一体誰が轟雷ちゃんとくっ付くか、ね」
というかお三方、私に気があったんですか? プリムさんとローズさんみたく。それはとても嬉しいのですが、何故に私を差し置いてそんな議題に走るのか謎なんですけども。
「そうね。じゃあ白虎ちゃん。あなたどうして轟雷ちゃんのことが気に入ったの?」
「そ、それは勿論……あの、メイドをしてくれるって言ってくれたからですわ」
白虎さんが顔を赤くして答えます。ちょっとその反応はズルい。可愛いです姫さま。
「あー、なるほどねー。たしかに今まであなたの姫プレイに協力してくれる子いなかったものねぇ」
「姫プレイとはなんですの!? 私は立派な姫ですわ!」
「それでフレズちゃんは?」
「無視ですの!?」
メラスさんの問いに、フレズも少しだけ頰を赤らめて答えます。
「私はただ、起動した日が近かったから仲良くなりたいなって。だから私、正直あの子と仲良くなれればそれだけでいいというか」
フレズもフレズでなんて可愛いことを言ってくれるんでしょうかっ!
「でもあなたバーゼちゃんと仲良くしてなかったかしら?」
「バーゼさんは姉さんと仲がいいから、その流れで遊んでもらってるだけ。本当は轟雷と遊びたいけど、なかなか言えなくて」
「なるほど。ですが先の戦闘の時、やたら轟雷を守ろうとしてませんでした?」
白虎さんの問いに、フレズはすごく真剣な表情で二人を見据えます。一体何を言うのでしょうかね、あんな真面目な顔をして。
「あれはメイド服の轟雷が殺人的に可愛いのが悪い」
「なるほど、それは激しく同意」
フレズの発言に、二人は同時にうんうんと頷いて言いました。
いや、仲いいのか悪いのかどっちなんですかあの三人は。謎なんですけどホントに。
でも仕方ないですね。この私のメイド姿はマスターも可愛いと太鼓判を押したのですかそう思って当然です。可愛い私と可愛いメイド服、ベストマッチです。
「なるほど。だったら別にあなたこの会に参加しなくてもいいんじゃないかしら?」
「それは少し違う。私は確かに轟雷と仲良くなりたいだけ。でも私は轟雷以外とも仲良くなりたい、それだけ」
あれ、もしかしてあの三人の中で一番まともなのフレズなのでは? でもそうなると、どうして二人と一緒に火花散らしていたのかが謎なんですけども。
「でもあわよくば、轟雷に抱きついたりしてみたい」
前言撤回。この子なんかプリムさんの影響受けてます? なんかおかしなこと言っているんですけど。
「なるほど。フレズちゃんのこともわかったわ」
「ところであなたはどうですの? メラスさん」
確かに気になります。プリムさんが特に気に入らないと、そもそもあまり話そうとしないと言ってましたし。
「別に初めて会った時、ああこの子可愛いなって思っただけよ」
「それだけ?」
「ええ、それだけ」
とりあえず言いたいこと言っていいですか?
私、この方たち全員いただいてもいいですか!?
皆さん可愛すぎですか! フレズも白虎さんもメラスさんもみんな可愛すぎてもう見てられないんですけど!
ほら、私が皆さんをゲッチュすればみんな幸せお花畑だやっほーいてなるじゃないですか。ね? ねぇ!?
「でしたら私が一番思いとしては強いですわね! それにあの子自らメイドをやってくれると言ったのですから!」
「それはあの子の優しさよ。あの子は誰にでも優しくしているのだから、その一環でしかないわ」
「それにあなたのそれ、まるで所有欲みたいで私は好きになれない」
「なんですって!?」
あーもうなんか喧嘩になり始めたんですけど。丁度いい頃合いですし、お茶とちょっとしたお菓子でも持って乱入してきますかね。
「はいはい。皆さんそこまでにして、お茶が入りましたのでーー」
「あなたは黙ってて」
あ、今のちょっとカチーンと来ました。
よし、こうなったら奥の手を使いましょう。ついさっき学んだことです。きっと効果覿面のはず。
「ぐすん……わかりました。ではちょっとプリムさんに相談してきますね……ぐすん」
「いや、それだけはホントにやめて轟雷ちゃん。姉さん喧嘩とか嫌いな人だから本気で怒らせちゃう」
「うっ、イノセンティア姉妹が受けた説教みたいなのはゴメンですわ……」
「ア、アノヒトノアンナカオハモウミタクナイデスゴメンナサイ……」
どうやら正解だったご様子。うんうん、何事も仲がいいのが一番ですからね。
「ほら皆さん。落ち着いてこれでも飲んでください」
私は笑って、紅茶をカップに注いでそれぞれの前に出します。そしてお茶受けとしてマスターがこっそり隠してたビスケットを小さくしたのをテーブルの中央に置きました。
正直私たちガールにも人間同様のリラックス効果があるのかはわかりませんが、無いよりはマシでしょう。元々お茶会のつもりでしたし。
「お茶会はみんなで仲良くが鉄則です。守れないのであれば皆さんプリムさんの刑ですよ?」
「そうですわね。ごめんなさい轟雷。私ともあろう者が」
「いえいえ。姫さまのお気持ちは大変嬉しく思いますよ。ですが私は常に姫さまと一緒にいるわけにはいかないのです」
「そう。そうよね」
「そしてそれは他のお二方も同様です」
「そっか……」
「そう、なのね……」
三人とも何故か落ち込んだ様子で膝に手を置いています。それがなんだか可笑しくて、笑いが止まりません。
あ、別に侮蔑的な笑いではないのですよ? 本当に微笑ましいなって、そう思うのです。
「私は沢山のガールと仲良くなりたいんです。それはこれからやってくる方ともですし、今いる皆さんともっと仲良くなりたいとも思っています。そのために私は一人一人との出来事を大事にしているのです」
三人を眺めて、私の気持ちを言います。だってそれが三人に対する精一杯の答えですから。
「そう。私は皆さんのことが好きなんです。皆さんそれぞれに可愛いところがあって、変なところもあって、明るいところも暗いところもあって、色々がある」
メラスさんの顔を見て、微笑みかけます。
「メラスさんはすごく人見知りです。私とプリムさんとローズさんくらいとしか話しているのを見たことがありません。最初は私たち以外に興味がないのかなって思ってましたけど、今回のことでよく分かりました。やっぱりメラスさんはただ素直になれないだけなんだって」
「そ、そんなことないわ。私は興味のない子に興味がないだけよ……」
白虎さんを見て、微笑みかけます。
「白虎さんは、誰よりも繊細で傷つきやすい人です。いつも一人でいる自分が嫌で、誰かにそばにいて欲しいっていう思いを持ってる。でも本当の自分に自信が無くて、お姫様というのを演じていますよね。別に私、白虎さんは演技などしなくても十分誰かと仲良く話せると思いますよ?」
「そう……かしら?」
「ええ、だって白虎さんすごく可愛いですから」
「か、かわ……っ!? きゅう……」
ありゃ、白虎さんの顔が爆発したように煙吹いちゃった。まあ大丈夫でしょう。
そしてフレズにも微笑みかけます。
「フレズは静かです。いつも一歩引いた感じで誰かと接しています。理由は誰かに詰め寄られるとついつい恥ずかしくなっちゃうから。その見た目のせいもあるんですかね? 本当はバーゼさんのことも、姉のように接したいと思ってるんでしょう? バーゼさんてば普段はふざけている感じですけど、すごく面倒見がいい方ですから」
「うん……あの人、すごく優しい。いつも気にかけて遊んでくれる」
実際バーゼさん、私にも「遊ぼー」って声を掛けてくれますし。
え、そんなシーン無かった? いずれ出てくるんですよ。いずれ。それにほら、どうしてフレズがバーゼさんと一緒に戦闘に参加したのかって考えたら、ね? ほら、ね?
「そんな感じで、皆さんいいところも悪いところ一杯だから、なんか楽しいんですよね」
いやまあ流石に似た日常ばかり送ってたので、日付飛ばしましたけど?
「だから私は皆さんと仲良くなりたいように、皆さんには仲良くしていてほしいんです!」
なんか最後はちょっと無理矢理な感じでしたけど、言いたいことははっきりと言いました。そりゃハーレムもいいですけど、やっぱりこれは譲れません。あれでもみんな仲良ければハーレム結成も可能なのでは?
私の発言に、三人は顔を見合わせました。そして同時にくすりと笑うと、私の顔を見て言いました。
「なんか、轟雷が案内役に選ばれた理由わかった気がする」
「ええ、本当。大したものですわ」
「轟雷ちゃん以外には出来ないことって、なんかわかったわ。マスターの勘もやるじゃない」
「え? そうですか? いやー!照れますねー! やっぱり私最強のヒロインっていうか、私ってば完璧すぎますからねー!」
「たまに心の声が漏れなければ、だけど」
なんか言われたような気がしますが、気にしません。確かに心の声を漏らしちゃうこともありますけど、それが私なのです。えっへん!
そんなこんなで、最初は火花散る謎のお茶会だったものが、みんな笑顔のお茶会へと変わりました。
私もメイドらしく給水したり、途中参加してこられた方々にもお茶を振舞ったりして楽しく過ごしました。
色々と頭を抱えたくなるようなこともありましたが、この日はとてもいい日になったと、そう思うのです。
◇
夜、私は白虎さんと一緒に外を眺めていました。
白虎さんは私に寄りかかるように座り、私の肩に頭を乗せています。なんだかカップルみたいで少し照れくさいです。
「今日はありがとう、轟雷。あなたのおかげで一日とても楽しかったわ」
「いえいえ。あまり姫さまにメイドらしいことをしてあげられませんでしたけど、楽しんでいただけたようで何よりです」
白虎さんは微笑むと、そっと手を私の手に重ねました。
これはもしや、告白されるパターンですか? いやでも私は誰か一人のものになるつもりはあまり無いというか、でも白虎さんであれば吝かではないというか。
え、お茶会で言っていたことと違う? それはそれというかなんというか。
「ねえ轟雷? もしよかったらまた私のメイドやってくれる? あなたの気が向いた時に」
「はい。また今度、姫さまのメイドやらせていただきますよ」
「ありがとう……やっぱり優しいのね」
そう言うと白虎さんは立ち上がりました。
おや? 告白はないのですね。残念。
「さてと、私はそろそろ寝ますわ。夜更かしは肌に悪いですもの」
「はい、おやすみなさいませ姫さま」
「今日一日、ご苦労さま。これは感謝の印ですわ」
不意に、左の頰に何か柔らかなものが当たりました。
一瞬何をされたのかわからず、白虎さんの顔を凝視してしまいます。すると白虎さんは一度ウィンクをすると、自分の寝床へと向かってしまいました。
私は左の頰につい手を当てました。
え? 今もしかしてキスされました? しかもウィンクまでされましたよ?
「あわ、あわわわわわわ!」
嬉しさと恥ずかしさから顔が発熱し出します。ちょっとそれは想定外というか、構えてなかったというか。なんですかあの人、やっぱり可愛すぎません!?
「轟雷! ゲームしよ、ゲーム!」
白虎さんの行動に戸惑っていると、フレズが背中に抱きついてきました。
「今からバーゼさんとゲームするんだけど、多人数で出来るやつだから。遊ぼ?」
今までと打って変わり、フレズは明るい口調になっています。とても微笑ましいものです。
「わかりましたよ。遊びましょう」
「うん! あとそこに隠れてるメラスさんも遊びませんか?」
フレズに言われて、彼女の視線の方に目をやりました。するとそこには、紅潮して物陰に隠れて見ているメラスさんの姿がありました。
「えっ!? わ、私は別にその……」
「ふふふ、メラスさんも遊びましょう。沢山いた方が楽しいんでしょう? フレズ」
「うん。チーム戦も出来るやつだから」
「ほら、ね? なんなら私とチーム組みませんか?」
「ご、轟雷ちゃんがそう言うならやってあげてもいいわよ?」
フレズとメラスさんを連れて、私はバーゼさんとアルテナさんがいるところに向かいます。
なんだかこの日を境に、より絆が深まっていくようなそんな気がしました。きっとこれからもっともっと、私たちは仲良くなっていくのでしょう。きっとそれがマスターの、願いなのですから。
ちなみに余談ですがこの日夜になるまで、クラウンさんの姿だけ全く見ることがありませんでした。
マスターから聞いた話によると、クラウンさんは仕事に持っていく鞄の中にこっそり入ってついて行ってたのだとか。
職場のロッカーを開けて、鞄の中を見たときにマスターは思わず「ヒェッ」と声を上げてしまったそうです。その際に彼女が吐いた台詞が次のような感じのものだったそうですよ。
「これで二人きりになれたね? 愛しのマスター♪」
いやほんと、愛が重すぎますね。
どうもこんにちは。マスターによる以下略。
バカな、今回ギャグ成分が薄め……だと?
そんなことを思ってしまったマスターの私です。確かにいつのまにかみんな凄く仲良くなってたので驚きました。今ではみんな和気藹々と乳繰り合っています。勿論、プリムとローズの二人は乳繰り合うの度合いを超えていますけど。
ちなみにクラウンがこっそり入っていたのはあの日が初ではありません。何度も入っています。その度に二人きりになれたねとか言うもんだから可愛いのなんの。仕事で荒んだ心に安らぎを与えてくれます。はい、親バカですとも。
というかなんか最終回みたいな流れでしたけど、先生どうなんですか? え? まだまだ続く。だそうですよ皆さん、ご安心ください。先生曰く「日記に終わりはありません!」なんだとか。
またその度に私のポメラは使えなくなるのかというところで今回はこの辺とさせていただきます。
皆さま、これからもうちの轟雷の活動日誌と可愛いうちの子達の日常をよろしくお願いします。